Via Vino
No. 37 "Cinema & Wine"<映画とワイン>
<日時・場所>
2011年4月23日(土)12:00〜15:00 表参道「レ・クリスタリーヌ」
参加者:16名
<今日のワイン>
シャンパーニュ・辛口「ボランジェ・スペシャル・キュベ・ブリュット」
ロゼ・辛口「フランシス・コッポラ・ソフィア・ロゼ2009年」
赤・辛口「ラセター・ローヌ・スタイル・レッド・ブレンド・ソノマ・ヴァレー2007 年」
赤・辛口「ドメーヌ・ド・モンティーユ・ポマール1級レ・ペズロル1997年」
赤・辛口「ルビコン・エステート カスク カベルネ2006年」
<今日のディナー>
前菜の盛り合わせ
魚介のロースト・アメリカンソース
鹿肉のパイ仕立て
デザート盛り合わせ
1.はじめに〜「映画とワイン」
●映画の世界で時折顔を出す、古今東西の銘酒の数々。
●新世界でも旧世界でも、自らワイン造りを手掛ける著名な映画人達。
●ランキングと評価点につきまとわれながらも、ひたすら作り手は邁進を続ける。
映画の中には、かなり頻繁にワインが顔を出します。元々西洋の大衆芸術として花開いた映画は、ヨーロッパとアメリカで、まさにワインの新旧両世界において花開きました。ワインは単なる小道具としてだけでなく、登場人物の生い立ちや経済状態、教養や待遇をさりげなく観客に伝える重要なアイテムとして、慎重に選ばれていることが多いようです。
そしてまたユニークなことに、映画監督を務めた多くの人々が、ワイナリーを所有していたりします。強烈な個性や明確なポリシーが求められる一方で、小説や絵画とは違って作品を仕上げるために多くの人々の協力が必要とされるところは、確かに映画製作とワイン造りの共通点に思われます。
ワインがパーカーポイントやその他の評価点でランキングされることが避けられないように、映画もまた、興行成績やアカデミー賞といったいわゆるランキングと無縁というわけにはいかず、作り手は顧客を意識しながらも自らのスタイルを作り上げていかなくてはなりません。それでも確かに、良いワインにも良い映画にも、人をワクワクさせる出会いがあり、その味わいで人を感動させることができるのです。
2.映画に登場するワインについて
【シャンパーニュ】
上級シャンパーニュは、華やかさを演出するにはもってこいのアイテムで、当然ながら映画には欠かせないアイテムです。 特に英国諜報部員の活躍する「007シリーズ」では、殆ど定番となっています。1作目「ドクター・ノオ」では「ドン・ペリニヨン1955年」。2作目「ロシアより愛をこめて」ではテタンジェ・コント・ド・シャンパーニュ。第3作「ゴールドフィンガー」「サンダーボール作戦」では再びドン・ペリですが、ロジャー・ムーアに代わった第8作「死ぬのは奴らだ」ではボランジェに、そして第9作「黄金銃を持つ男」では再びドン・ペリ1964年が登場します。第13作「オクトパシー」ではボランジェRDが登場し、以後ボンドの飲むシャンパーニュはドン・ペリからボランジェに。
その他の有名どころでは……「タイタニック」「プリティ・ウーマン」のモエ・エ・シャンドン・ブリュット・アンペリアル、「ニキータ」のテタンジェ、「危険な情事」ではベル・エポック。もはや古典と言える作品「カサブランカ」の「君の瞳に乾杯!」の台詞で有名なマム・コルドン・ルージュとヴーヴ・クリコ。 「ダイ・ハード3」で金塊強奪に成功した犯人達が祝杯を挙げるのがドン・ペリなら、「フィラデルフィア」でトム・ハンクス演じる主人公の病室に持ち込まれるのもドン・ペリ。悪人だろうが悲劇の主人公だろうが、祝杯を挙げる時にはやはりドン・ペリニヨンなのでした。 異色なところでは、「スター・トレック・ジェネレーションズ」のオープニング。エンタープライズ号の進水式に登場する宇宙を舞うドン・ペリニヨンのビンテージは2265年と記されていました。
【白ワイン・赤ワイン】
五大シャトーはさすがに映画に登場する回数も多いようで、前述の「007シリーズ」でも第7作「ダイヤモンドは永遠に」でシャトー・ムートンが効果的に使われています。既に十年以上前となった映画「失楽園」で有名なシャトー・マルゴーですが、「ソフィーの選択」でもメリル・ストリープ演じるソフィーがマルゴーを飲むシーンがあります。奇しくも、悲劇的な女性と死という組み合わせが共通項となっています。「ディープ・インパクト」にも「シャトー・ムートン1993年」が一瞬登場するそうなのですが、観たはずなのに思い出せません。「パリで一緒に」でオードリー・ヘップバーンがレストランで注文するのが「シャトー・ラフィット」と「プイィ・フュイッセ」。
ワインの最高峰「ロマネ・コンティ」が登場するのは「タワーリング・インフェルノ」。ビルの完成披露パーティで供されるはずが、飲まれることなく大惨事に。映画は未見ですが、「バベットの晩餐」には「クロ・ド・ヴージョ1845年」が登場。1947年公開の「肉体の悪魔」には「ポマール1906年」がそれぞれ登場。いずれも充分に熟成された状態で供されています。「裏窓」「世界崩壊の序曲」に登場するのはモンラッシェ。
イタリアのキャンティは、シャンパーニュのドン・ペリニヨンと同様、映画での登場回数の多いワインのようです。「太陽がいっぱい」から「イングリッシュ・ペイシェント」まで、数多くの映画に登場しました。今は普通のボルドー瓶に詰められていますが、以前は藁に包まれたフィアスコ瓶が使用されていました。その藁に包まれたキャンティが登場するのが、有名な「ローマの休日」や、「旅愁」「家族の肖像」「ニュー・シネマ・パラダイス」だったりします。 同じヨーロッパでも、フランスワインやイタリアワインに比べて、スペインワインやドイツワインの出番は少ないようですが、タイロン・パワー主演の「陽はまた昇る」にはスペインの「マルケス・デ・リスカル」が、アル・パチーノ主演の「ジャスティス」にはドイツ・フランケンのワインが登場します。
「ブラッド&ワイン」でジャック・ニコルソン演じるアレックスが飲むのが「オーパス・ワン」。炎天下で濃厚な赤ワインを飲み下す極悪非道のワインディーラー、という設定。「ディスクロージャー」では、「パルメイヤー・シャルドネ1991年」が重要なアイテムとして登場します。同じアメリカが舞台でも、「サイドウェイ」は小説家を目指すワインマニアの教師が、結婚式を間近に控えた悪友とサンタ・バーバラのワイナリーを旅するほのぼのとした作品。全編飲酒運転しまくりという快作でもあります。 「幸せのレシピ」では、南オーストラリア出身のスコット・ヒックス監督自身が所有するワイン「ヤッカ・パドック」が登場するとのこと。
【シェリー・ポート】
食前酒や食後酒も、当然ながら出番は多く、人物の背景をうまく説明している場合が多いようです。ミュージカル映画「メリー・ポピンズ」では、館の主が食前酒にシェリーを味わいます。「サブリナ」では、主人公がシェリーをがぶ飲みします。登場人物がイギリス家の中産階級の出身であることがさりげなく演出されているのだとか。
ポートが効果的に使われているのが「日の名残り」。晩餐会用に用意されたのが「グラハム・ヴィンテージ・ポート」です。「炎のランナー」で、学長が校庭を見下ろしながら手にしていたのがポート・ワインのグラス。いかにも権威の象徴という感じ。一方、「スモーク」でクリスマスを祝うのに飲まれるのは「マテウス・ロゼ」。カジュアルなデザートワインがアットホームな雰囲気を演出していました。
【映画の中の名言】
2004年の映画「サイドウェイ」では、実際のところ飲酒運転したり、タバコをふかしてグラスを傾けたりするシーンが結構出てくるのですが、2006年のタバコを扱った映画「サンキュー・スモーキング」では、実際にタバコを吸うシーンが一切登場しません。ちなみにこの映画で、「死の商人」トリオとして登場するのが煙草業界の主人公と、銃製造業界の人間、そしてアルコール業界の人間で、この3業界の中では銃による死亡率が最も低く、三人の中で一番肩身の狭い思いをしている、という設定になっていたりします。さすが禁酒法を実施したアメリカだけに、酒に対する規制もかなり厳しいものがありますが、そのうちタバコと同様にお酒を飲むシーンも制限されてしまうのではないかと気が気ではありません。映画の中での決め台詞も、そのうち使えなくなってしまうのでしょうか。
「聖書にも酒はちゃんと出てくる。しかしドラッグは出てこない」(「ハスラー2」)
「人生はシャンパンの泡のようなものだ」(「めぐり逢い」)
「私はお酒を飲みません。現実に満足していますから」「私も現実に満足しています。もっとも私の現実にはお酒が入っていますがね」(「ピンク・パンサー」)。
3.食前のワイン
まずは食前酒で乾杯です。本来ならシャンパーニュで乾杯というところでしょうが、今回は敢えてロゼワインから。「フランシス・コッポラ・ソフィア・ロゼ2009年」(タイプ:やや辛口のロゼワイン/品種:ピノ・ノワール/産地:アメリカ/カリフォルニア)
コッポラ監督が愛娘“ソフィア・コッポラ”の結婚を記念して造ったスパークリングワインとして大人気の「ソフィア」。その「ソフィア・シリーズ」のロゼです。明るくあざやかなロゼ色、イチゴやキウイ、フルーツのような香り、フレッシュでフルーティーなストロベリーやラズベリーの果実の味わいが広がります。ドライでありながらイチゴのフレッシュジュースのようなさわやかな果実味を感じるロゼワインでした。
4.シャンパーニュのテイスティング
次に登場するのはシャンパーニュ「ボランジェ・スペシャル・キュベ・ブリュット」(タイプ:辛口の発泡性白ワイン/品種:ピノ・ノワール+シャルドネ+ピノ・ムニエ /産地:フランス/シャンパーニュ)
映画「007シリーズ」では、ロジャー・ムーア主演となってからドン・ペリニヨンに代わりボランジェが登場するようになりました。「映画によく登場する」という点ではドン・ペリニヨンの方が有名でしょうが、男性的な力強さのあるシャンパーニュということで、ここはやはりボランジェを飲みたいところです。使用されるブドウの約80%が、グラン・クリュとプルミエ・クリュ畑のもの。オーク樽で一次発酵を行い、カーヴで最低でも3年間熟成させます。焼きたてのパンのような香ばしい香りがあり、ノンヴィンテージでも3年以上の熟成後に出荷されるため、非常に力強く、上品さ深みともにバランスの良いしっかりとした白ワインに近い味わいです。
5.赤ワインのテイスティング
赤ワインでは、まずは「ラセター・ローヌ・スタイル・レッド・ブレンド・ソノマ・ヴァレー2007 年」(タイプ:辛口の赤ワイン/品種:シラー/産地:アメリカ/カリフォルニア)。「トイ・ストーリー」や「ファインディング・ニモ」で有名なピクサーの映画監督ラセターの造るワインです。2002年に歴史あるソノマ・ヴァレー・ワイナリーが売りに出されました。大規模な修復が必要とされていましたが、ラセター夫妻がこれを購入、自然環境に配慮しながら、畑とワイナリーの修復に着手しました。彼らはブドウ畑を全て有機栽培に転換し醸造家のジュリア・イアントスカをパートナーに迎え、歴史あるワイナリーは最新設備を揃えたエコ・フレンドリーなワイナリーへと変身しました。実際に味わってみると、新世界ワインらしい甘味がありながら、シラーの魅力をしっかりと表現した好ましいワインに仕上がっています。
メインディッシュには、ブルゴーニュの「ドメーヌ・ド・モンティーユ・ポマール1級レ・ペズロル1997年」(タイプ:辛口の赤ワイン/品種:ピノ・ノワール/産地:フランス/ブルゴーニュ )を。ヴォルネの優良生産者の一人として名が挙がる、ユベール・ド・モンティーユは、映画「モンドヴィーノ」でテロワールを重視する伝統的な造り手として紹介されていますが、その代表作のひとつとして知られるのが、このポマール・ペズロルです。そのスタイルから、熟成してこそ楽しめる美味しさとして知られています。10年以上の熟成を経てもまだまだ若々しく、熟成香に果実味が重なり、非常に長い余韻が印象的でした。ポマールの1級畑、レ・ペズロルの男性的な魅力が再確認できる一品です。
最後に「ルビコン・エステート・カスク・カベルネ2006年」(タイプ:辛口の赤ワイン/品種:カベルネ・ソーヴィニヨン/産地:アメリカ/カリフォルニア) ニーバム・コッポラのトップ・キュヴェ「ルビコン」のアナザー・キュヴェ「カスク」は、イングルヌック全盛期を築き上げ、さらに最後の所有者でもあったジョン・ダニエルに敬意を表して造られました。ジョン・ダニエルが1949年にリリースした「カスク」を模して、かつての製法にのっとりカリフォルニアらしいワインを追求しています。濃い赤紫の色調、チャーミングな赤い果実の香り、アメリカンオークの熟成からくるバニラ、キャラメル、ファッジといった甘いアロマがあります。濃縮された果実味とインパクトの強さが印象的なワインでした。
6.ワインを造る映画人たち
【チャールズ・チャップリン 】
タイユヴァンを訪れ、「私より少しばかり若いところが良い」とシャトー・マルゴー1895年を注文したと言われるチャールズ・チャップリン。その作品「殺人狂時代」の中で、毒薬入りのワインを女に差し出し、その後に引っ込めてしまうシーンは非常に有名です。晩年にはアメリカで赤狩りに巻き込まれスイスのラボーに亡命、レマン湖に面したワイナリーの端に居を構え、その後20年以上をこの地で過ごしました。映画ビジネスの変遷の中もがき続けたチャップリンにとって、スイスのワインはその生涯の締めくくりの時に安らぎを与えてくれたのに違いありません。
【フランシス・コッポラ 】
カリフォルニアワインの黎明期、1887年にフィンランド出身のグスタフ・ニーバウムが完成させた「イングルヌック・ワインリー」。かの「ゴッドフアーザー」で一流監督の仲間入りを果たしたフランシス・コッポラは、「地獄の黙示録」を完成させる前に、1975年にナパ・バレーの歴史あるこのワイナリーの一部を購入。現在は、「ニーバウム・コッポラ」から「ルビコン・エステート」に名称を変更し、マスター・ソムリエの資格を持ちパリのインターナショナル・ベスト・ソムリエ・コンクールで優勝した初のアメリカ人であるラリー・ストーン氏がジェネラル・マネージャーをつとめます。2006年にはソノマ・カウンティに「ロッソ・ビアンコ・ワイリー」をオープン、カジュアルなワイナリーを製造しています。
【ジョン・ラセター】
アニメーション映画で、「トイ・ストーリー」「モンスターズ・インク」「ファインディング・ニモ」と、続々とヒットを飛ばすピクサー社のジョン・ラセター監督とその奥さんのナンシーがワイン作りに興味を持つようになったのは、ソノマに居を構えるようになった1992年頃のことだとか。2000年から友人のワイナリーでワイン作りをはじめ、2002年にワイナリーを購入、「ラセター・ファミリー・ワイナリー」を立ち上げます。「才能のあるクリエイターに最大限の裁量を与える」というピクサー方式が、ワイン作りに応用できるのかどうかが注目されています。
【スコット・ヒックス】
「シャイン」「幸せのレシピ」の監督スコット・ヒックスは、南オーストラリアのアデレード・ヒルズに生活し、「ヤッカ・パドック・ヴィンヤーズ」というワイナリーを所有しています。自身の作品「幸せのレシピ」にも、このワイナリーのワイン「アデレード・ヒルス・ドルチェット2002年」と「アデレード・ヒルズ・シラーズ&タナ2004年」が登場しています。
【その他】
俳優でもありシナリオ作家でもあるダグ・バールはワイナリー「ハリウッド&ヴァイン・セラー」をスタートさせています。ファースト・ヴィンテージは1998年です。元ハリウッドスターのフェイス・パーカーは1989年にサンタ・バーバラに「フェス・パーカー・ワイナリー&ヴィンヤーズ」を立ち上げており、こちらは2006年「サンフランシスコ・インターナショナル・ワイン・コンペティション」にてワインメーカー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。
7.映画とワインの歴史
1928年 映画「シャンパーニュ」(監督:アルフレッド・ヒッチコック)
1942年 映画「カサブランカ」(監督:マイケル・カーティス)
1973年 TV「刑事コロンボ・別れのワイン」
1975年 フランシス・コッポラ、イングルヌックの一部を購入
1976年 パリ・テイスティング〜カリフォルニアワインがフランスワインに圧勝
1979年 映画「地獄の黙示録」(監督:フランシス・コッポラ)
1997年 映画「失楽園」(監督:森田芳光)
1998年 日本におけるワインブーム
2004年 映画「サイドウェイ」(監督:アレクサンダー・ペイン)
2005年 映画「モンドヴィーノ」(監督:ジョナサン・ノシター)
2008年 映画「ボトル・ショック」(監督:ランドール・ミラー)
2009年 映画「約束の葡萄畑〜あるワイン醸造家の物語」(監督:ニキ・カーロ) 映画「サイドウェイズ」(日本版:チェリン・グラック)
TVシリーズとはいえ、長さ的には充分映画なみの満足感のある「刑事コロンボ」にも、ワインを扱った名作「別れのワイン」があります。イタリア移民としてアメリカに渡り、量より質を重視したワイナリーを運営してきた兄は、ワイナリーを売却しようとする弟を殺害、コロンボは相手が無類のテイスティング能力を持つことを逆手に取って追い詰めるが……ワイン造りの伝統そのものへの愛情から殺人を犯すことになる人間と、捜査を進める上で他ならぬ犯人からワインを学ぶことになるコロンボとの交流が胸を打つ一品です。このストーリーに感化された方は多く、TVシリーズ「相棒」でも、この作品へのオマージュとも思える「殺人ワインセラー」で並外れたテイスティング能力を持つ犯人を佐野史郎が演じています。
最近ではワインそのものをテーマにした映画が色々と作られるようになりました。2004年の「サイドウェイ」は、アカデミー賞で脚色賞を受賞し、ワイン産地であるカリフォルニア州サンタ・バーバラの観光客増大にも大いに貢献した作品。ワインを愛する小説家志望の主人公と、結婚式を後に控えているのに旅先で女性を物色してばかりいる売れない俳優との珍道中が笑わせてくれます。2005年の「モンドヴィーノ」は、まさにワインのグローバリゼーションを弾劾したノンフィクション映画で、一応公平な立場に立って記録されているとはいえ、ミッシェル・ロランやロバート・パーカーはかなり批判的に描かれています。この映画の公開直後に、アメリカの名門ロバート・モンダヴィがコンステレーションに買収されたのも記憶に新しいところです。
さて、カリフォルニアワインが並みいるフランスワインをブラインド・テイスティングで破ったという、まさに映画の題材としてはぴったりな1976年のパリ・テイスティングについても、いくつか映画化の企画が持ち上がり、「ボトル・ショック」という映画が完成したという話を聞きました。ネットなどではそれなりに話題になっていたのですが、日本で公開されたという話は聞かず……果たして上映されたのでしょうか。DVDでも入手できればと思っているのですが。低予算映画で、かのテイスティングシーンも屋外でやっているようです。あのアラン・リックマンがテイスティングを企画したスティーヴ・シュパリエ氏を演じているのですが、シュパリエ氏はその描かれ方が気に入らず抗議した模様です。
<今回の1冊>
須賀碩二「映画の中のワインで乾杯!」東急エージェンシー
映画好きのソムリエである須賀氏が、長年ノートに記録し続けた「映画の中のワイン」についてまとめた本です。1928年のヒッチコック「シャンパーニュ」に始まり、1998年「ジャッカル」に至るまで、実に様々な映画に目を通していることに驚かされます。ボトルの一部がちらりとしか登場しないようなワインについても、ボトルの形状とラベルの印字の具合から銘柄を推定してしまうという念の入れようです。やや本筋に関係のないギャグがやたらと間に入ってしまうのは少々困りものですが、実際に観てみようかなと思わせるようなコメントが多いので、その意味では色々ある映画の中のワイン紹介本の中でもお勧めの一冊ではあります。