Via Vino No. 44 "Sparkling Wine"<スパークリングワイン>

<日時・場所>
2012年7月14日(土)12:00〜15:00 神谷町「レストラン"S"」 
参加者:13名
<今日のワイン>
白・辛口・発泡性「フジッコ・ワイナリー・クラノオト・甲州」
白・辛口・発泡性「シレーニ・スパークリング・ソーヴィニヨン・ブラン」
白・辛口・発泡性「チャペル・ダウン・ブリュット・ピノ・レゼルヴ 2004年」
白・辛口・発泡性「ドメーヌ・フルーロ・ラローズ・クレマン・ド・ブルゴーニュ・ブラン・ド・ノワール」
ロゼ・辛口・発泡性「ドメーヌ・フランツ・ソーモン・ラ・カーヴ・ス・ルビフ・ペティアン・ナチュレル」
白・辛口・発泡性「アリストン・ミレジメ 2000年」
ロゼ・辛口・発泡性「アリストン・ブリュット・ロゼ」
ロゼ・辛口・発泡性「四恩ワイン・クレマチス・ロゼ 2010年」
<今日のランチ>
アボガドと蟹の取り合わせ・レモン風味
ウズラのロースト・タイムソース
サワークリームのソルベ・アメリカンチェリーソース

  


1.バラエティ豊かな発泡性ワイン!

色、香り、味に次ぐ第3の要素である「泡」。
ビールの泡ともコーラの泡とも異なるシャンパーニュの「泡」。
当初は嫌われたものの、後に一番の嗜好品となった「泡」。
 
夏の暑い日に、披露宴に、そしてクリスマスに…細かい泡立ちが魅力のスパークリングワイン、そしてその王道であるシャンパーニュは、すっきりとした味わいと、なによりもそのとっつきやすさから、最初の乾杯には欠かせないアイテムとなっています。ワイン初心者にも受けいれられやすく、またかなり年季の入った飲み手もうならせる奥深さがあります。

瓶内2次発酵で造られるシャンパーニュの泡は、酵母の発酵によって生じた炭酸ガスの泡をそのまま瓶内に閉じ込めて溶け込ませるという意味で、タンクで造ったビールや、後からガスを添加したコーラとは異なり、まさに泡がワインに自然に溶け込んだ発泡性ワインだと言えます。

元々は寒冷な地域で、発酵が途中で止まってしまい、それが再び発酵して泡が出来てしまったのが始まりで、当初は欠陥品として嫌われました。しかし輸出先のイギリスでは、エールの醸造やガラス瓶製造で先行していたこともあり、泡入りワインは新しい味覚を持つものとして脚光を浴びるようになりました。ワインそのもののグローバルな動きが、シャンパーニュをはじめとするスパークリングワインを広めるきっかけとなったのです。

2.テイスティング〜日本、ニュージーランド、フランス、イギリス
 
  

   

「フジッコ・ワイナリー・クラノオト・甲州」(タイプ:辛口の微発泡性白ワイン 品種:甲州100%  産地:日本/山梨)
 煮豆や昆布のフジッコ株式会社が株主となって、平成2年4月に手作りで少量の限定生産を行うブティックワイナリーを設立。「クラノオト」は、醸造家が品質のチェックの時に味わう発酵が終わったばかりの新鮮なワイン。まだ炭酸ガスが含まれているので、はじけるような微炭酸を感じることができます。また、無濾過なので果実の成分をそのまま味わう事が出来ます。爽やかな柑橘系の香り、酵母の香りがし、生き生きとした酸が感じられ、フレッシュでキリッとした辛口の味わいです。白く濁っていて、香りはまるで清酒の搾りたてのにごり酒の様でした。

「シレーニ・スパークリング・ソーヴィニヨン・ブラン」(タイプ:辛口の発泡性白ワイン 品種:ソーヴィニヨン・ブラン  産地:ニュージーランド/ホークス・ベイ)
 シレーニはニュージーランド北島東部の海岸部、ニュージーランドで初めてワインの生産が行われたホークス・ベイにあります。そしてワイナリー名の「SILENI」は、ローマ神話に登場する、酒の神であるバッカスの従者シレーニ神に由来しています。砂利と沈泥を含む粘土質土壌からなる畑で収穫されたソーヴィニヨン・ブランは、味わい深く、複雑味のあるワインに仕上がります。桃や梅などの果実や、スグリのクラシックで上品な味わい。いきいきとしたクリアな余韻。フレッシュさと力強さのあるスタイルに仕上げられています。ソーヴィニヨン・ブラン独特のさわやかなハーブの香りがしっかりと感じられる、非常にユニークなスパークリングワインです。

「チャペル・ダウン・ブリュット・ピノ・レゼルヴ 2004年」(タイプ:辛口の発泡性白ワイン  品種:ピノ・ノワール+ピノ・ブラン  産地:イギリス)
 イギリスワイン界期待の新星として2005年にはワイン品評会の賞を総なめにし、一気にイギリスワイン界の注目をさらったイングリッシュ・ワイン・グループのワイナリー、チャペル・ダウン。2011年4月のウィリアム王子の結婚式でも振る舞われました。「ロンドンの台所」と呼ばれるイングランドの南東の農業地帯、中でも多くの良質なワインを生産する地域であるケント、サセックス、エセックスにまたがり、約50ヘクタールの契約ぶどう園と約81ヘクタールの自社ぶどう園を所有するイギリス最大のワイナリーです。ピノ・レゼルヴはピノ・ノワールとピノ・ブランを使用しており、香ばしいアーモンド、ベリー香、そして軽やかな花の香りが特徴です。

   

「ドメーヌ・フルーロ・ラローズ・クレマン・ド・ブルゴーニュ・ブラン・ド・ノワール」(タイプ:辛口の発泡性ワイン  品種:ピノ・ノワール100%  産地:フランス/ブルゴーニュ)
 現当主ニコラ・フルーロの祖父オーギュスト(1876〜1935)と曾祖父クロードによって、サントネイに設立されたドメーヌです。瓶内熟成を経ることで、細やかでしっかりとした泡が生まれます。持続性のある泡立ちと非常に豊かな果実味が特徴。やや濃いイエローの色調。香りは青リンゴ、洋ナシのような果実香が感じられます。クリーミーな泡立ちとフレッシュな酸味が広がります。

「ドメーヌ・フランツ・ソーモン・ラ・カーヴ・ス・ルビフ・ペティアン・ナチュレル」(タイプ:辛口の発泡性ロゼワイン 品種:ガメイ+カベルネ・フラン 産地:フランス/ロワール)
 フランツ・ソーモン氏は2002年から独自のワイン造りを始めた新星の醸造家。1999年〜2000年にジャッキー・ブロ氏、また、個性的なワインを造ることで知られているドメーヌ・ル・ブリゾーのクリスチャン・ショサール氏のもとでワイン造りを学び、現在は6.0haほどの畑を所有しています。葡萄は自然農法により栽培され、化学肥料などは使っていません。また、独自の方法により、SO2の添加も最小限に抑え、自然なワインの味わいを表現しています。メソッド アンセストラル(一次発酵途中のワインを瓶詰めして瓶内で残りの発酵をさせる)で発酵させた自然の炭酸ガスを有する優しい泡立ち、 酵母、リキュールの添加一切なしのロゼペティアンです。又デゴルジュマン(瓶内オリ引き)をせず、オリを瓶内に残す造りをしていますが、色合いは濃くて輝きがあり、思った以上に力強い味わいのロゼでした。

 前菜は、「アボガドと蟹の取り合わせ・レモン風味」。色とりどりの野菜とアボガドが、スパークリングワインの持つミネラル感とマッチして、なおかつビンテージ物の持つボディが、ズワイガニの味わいと微妙に重なり合います。ワインの酸味はお皿の手前に用意されたレモン風味のソースを使って調整するという、まさにスパークリングワインを味わうための一皿に仕上げられていました。

     

「アリストン・ブリュット・ミレジメ 2000年」(タイプ:辛口の発泡性ワイン  品種:シャルドネ60%+ピノ・ノワール40%  産地:フランス/シャンパーニュ)
「アリストン・ブリュット・ロゼ」(タイプ:辛口の発泡性ロゼ  品種:ピノ・ノワール100%  産地:フランス/シャンパーニュ)
 2000年物のビンテージは、栽培面積0.5ha、生産本数5,000本、樹齢平均40年の稀少品。ドザージュは6g/L、6年〜8年間の瓶内熟成を経た本格的なシャンパーニュです。色調はやや濃いイエロー、広がりのある香りで熟したリンゴや洋ナシのコンポート、焼いたパンやドライフルーツの香りも加わります。やわらかな口当たりからふくよかな果実味とまろやかな酸味がバランス良く広がります。バランスの良い余韻が長く持続します。一方、同じ銘柄のロゼはノン・ビンテージですが、ややオレンジの色調を帯びた鮮やかなロゼで、こちらも非常にバランスの取れた味わいに仕上がっていました。

四恩ワイン・クレマチス・ロゼ」(タイプ:辛口の発泡性ロゼワイン 品種:巨峰主体  産地:日本/山梨)
 四恩醸造は、2007年に山梨県牧丘に設立されたワイナリーです。栽培と醸造をたった一人で取り仕切る小林剛士さんのワインは、自然体で無限に広がる可能性をもつユニークな存在で、入手困難な稀少品となっています。色はうす濁った淡い桜色で、フレイズの淡い香りとアスパラガスの香り、ブラックオリーブのような香りもやや見えます。口中ではやや軽快な泡にフレッシュな苺の果実香とバニラ系とミルクの重厚な味わいが広がります。 やや見えるスパイスさがフレイズの黒い種を連想させます。淡い色合いながら、口に含むとしっかりと風味が後に残る、まさに独特な味わいを持ったロゼ・スパークリングでした。

3.スパークリングワインの製法

トラディショナル方式(瓶内2次発酵方式)/Méthode Traditionnelle
 スティルワインを瓶に詰め、糖分と酵母を加えた上で密閉し、瓶内で2次発酵を起こさせる方式です。澱抜きも瓶ごとに行う、一番本格的で、かつ手間の掛かる方法です。フランスのシャンパーニュ地方で確率されたため、シャンパーニュ方式とも呼ばれますが、「シャンパーニュ」「シャンパーニュ方式」のいずれもその記載はシャンパーニュ地方のみで許可されています。

シャルマ方式(タンク内2次発酵方式)/Méthode Charmat
 密閉した大型タンク内で2次発酵と澱抜きを行う方式です。葡萄のアロマを残したい発泡性ワインなどには向いています。大型タンクを使うため、低コストでの大量生産が可能です。

トランスファー方式/Transfer Method
 瓶内2次発酵後の発泡性ワインを、加圧下のタンクに移し、冷却・澱抜きしてから再度瓶に詰め替える方法。トラディショナル方式のルミアージュ(動瓶)とデゴルジュマン(澱抜き)を簡略化した方式と言えます。

リュラル方式(田舎方式)/Méthode Rurale
 発酵途中のワインを瓶に詰めて密閉し、残りの発酵を瓶内で継続する方式です。南仏で造られ、「メトード・アンセストラル」「メトード・ガイヤコワーズ」などとも呼ばれます。シャンパーニュのトラディショナル方式よりもさらに古い製法と言われ、瓶には澱が残ります。残糖と炭酸ガス圧のバランスのいい状態で完了するタイミングをはかる為に大変手間がかかります。

炭酸ガス注入方式/Méthode Gazeifiée
 瓶に入ったワインに炭酸ガスを吹き込む方式です。

4.各国のスパークリングワイン

シャンパーニュ Champagne
 
フランス最北の生産地で、生産量の90%以上が発泡性ワインとなります。製造工程が複雑で投資も必要となるので、比較的大規模な会社による生産が主体となりますが、近年ではレコルタン・マニピュランと呼ばれる自社畑生産者が注目を浴びています。ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ、シャルドネを主体に、品種・畑・収穫年のブレンドによる製造が一般的です。シャンパーニュはフランスのAOC(原産地統制名称)で規定されており、シャンパーニュ地方で定められた方法で作られたもののみがその名を冠することが出来ます。

クレマン Crémante
 フランスのスパークリングワインは、通常ヴアン・ムスーと呼ばれますが、その中で「クレマン」は、トラディショナル方式、いわゆるシャンパーニュ製法と同じ方法で造られており、収穫と搾汁段階での選果、泡の発生とワインの熟成、検査と品質追求における厳格さといった、厳格な規定があります。ボルドー、ブルゴーニュ、アルザス、ロワール、ディ、リムー、ジュラの7地方で造られます。

カバ Cava
 シャンパーニュ製法で造られるスペインのスパークリングワイン。CAVAはカタロニア語で「洞窟」を意味します。産地・品種・製法が規定されており、90%がペネデスを中心とするカタルーニャ州で造られています。マカベオ、チャレッロ、パレリャーダといったスペインの地場品種が主体となりますが、他にシャルドネやピノ・ノワールの使用も認められています。

フランチャコルタ Franciacorta
 1995年にDOCGに昇格した瓶内2次発酵で作られるスプマンテ(イタリア泡ワインの名称)で、ロンバルディア州ブレーシャの北側に位置する場所で作られます。フランチャコルタという名称は、フランチャコルタ指定の地区で瓶内二次発酵により作られたワインのみに使用されます。シャルドネ、ピノ・ビアンコ(ピノ・ブラン)、ピノ・ネーロ(ピノ・ノワール)の使用が認められています。

5.スパークリングワインの歴史

1086年 イギリスのドゥームズデイブックにナイティンバー荘園の記載あり
1531年 ラングドック地方リムーでベネディクト派の修道士がメトード・リュラル(田舎方式)発見
17世紀前半 イギリスにてガラス製造技術の進歩
1615年 イギリスにて、ガラスの製造に石炭の使用を義務づける法律が制定される
1660〜1685年 イギリス王政復古、チャールズ2世の在位
1635年 英国のヘイウッド、「瓶詰めエールの発泡性」の研究、コルク栓の使用にも言及
1662年 英国のクリストファー・メレット、スパークリングワイン製造に関する論文を提出
1668年 ドン・ピエール・ペリニョン、オーヴィレール修道院の醸造長に就任
1715年 ドン・ペリニョン死去
1728年 ルイ15世、ランス市に対し瓶詰めシャンパーニュを独占的に交易する特権を与える
1729年 ニコラ・ルイナール、最古のシャンパーニュ・ハウスを設立
1743年 クロード・モエ、モエ・エ・シャンドン社設立
1810年頃 ヴーヴ・クリコにてルミアージュ方式の開発
1830年 ブルゴーニュの白でスパークリングワイン製造
1836年 シャロン・シュール・マルヌのフランソワ、「フランソワ比重計」の発明
1850年頃〜 英国でシャンパーニュの辛口嗜好高まる。
1860年 均質なガラス瓶の生産が可能になる。
1865年 シャンパーニュ地方で学んだカルロ・ガンチア、アスティ・スプマンテの開発
1868年 シャンパーニュ地方で学んだアントニオ・カルペネによるワイナリー創立、プロセッコの開発
1872年 スペイン、CAVAの生産開始。
1936年 モエ社、スペシャル・ブレンド「ドン・ペリニョン」製造開始
1980年頃 フランチャコルタの製造開始
1986年 ナイティンバーにてスパークリングワインの製造開始
1994年 ドイツにて、ゼクトのシャンパーニュ方式の表示禁止。「フラッシェンゲールング方式」とする。
1995年 ロンバルディアのフランチャコルタ、DOCGに昇格 スパークリングワインの歴史

 スパークリングワインは、まずシャンパーニュから、と考えられていますが、1回ワインを完成させてから糖と酵母を加えるシャンパーニュ方式よりも、より簡易な手法を取る「田舎方式」ことメトード・リュラルの方が先に開発されたと言われています。醗酵しているワインを瓶に詰め、冬の間酵母は冬眠し、春にまた活動を開始して炭酸ガスを発生させるというもので、1531年、ラングドック地方のリムーでベネディクト派の修道士が発見したとされています。標高の高いリムーの地では酵母が冬眠し、これを醗酵が終わっただろうと慌て者の修道士が勘違いして瓶詰めし、再び春になって活動した酵母によって、偶然美味しいスパークリングワインが出来たというわけです。

 ただし実際のところ、スパークリングワインが商品として完成するには、ガスを閉じ込める丈夫なガラス瓶と、しっかりとしたコルク栓の開発が不可欠でした。その点で先行していたのは産業革命に先陣を切ったイギリスです。エールが普及していたこともあって、瓶詰め技術はイギリスの方が発達しており、石炭燃料を確保できなかったフランスではガラス瓶の普及は遅れていました。ワインを生産するフランスでは、ワインはあくまで樽で運ぶものであり、一方ワインの流通を握るイギリスは自由にワインを詰めて販売していたため、スパークリングワインの開発はむしろイギリスで始まったとも言えるのです。

 本来は本場のスティルワインとして、ブルゴーニュと競い合い、パリに近いことから優位にあったシャンパーニュは、16世紀以後の寒冷化に伴い赤ワインの生産が難しくなっていましたが、18世紀以後、多くのシャンパーニュ・ハウスが設立され、ルミアージュによる効率的な澱抜き、比重計の発明による2次発酵のコントロールとガラス破損の低減、辛口シャンパーニュの開発等によって、シャンパーニュは次第に洗練されたワインとして独自の地位を確立していきます。

 一方イギリスでも、本来修道院によって葡萄栽培とワイン生産が行われていましたが、16世紀以後の寒冷化に加え、ヘンリー8世によるカトリック教会からの離脱と修道院の破壊に伴い、ワインを生産する立場から、ただひたすら流通・消費する立場へと変わっていきました。しかし近年、地球温暖化と共にイギリスでもワイン製造が復活しつつあります。英国南部は海洋性気候のため温暖で、ドーバー海峡を越えてシャンパーニュ地方と同じ白亜質土壌が続いているため、特にスパークリングワインの製造には適しているとされているのです。

<今回の1枚>

   
ジェラール・リジェ・ベレール「シャンパン・泡の科学」(白水社)
 シャンパーニュの泡について、科学的にアプローチした一冊。瓶内2次発酵によって生まれたシャンパーニュの泡には、様々な性質があって、その中にはまだ充分に科学的に解明されていないものもあるとされていますが、この本ではそのかなりの部分が細かく解説されています。シャンパーニュの泡は、グラスの内壁に付着している不純物によって生じること、従って何も付着していない完璧に清潔なグラスの内壁からは泡が全く立たないことなど、多くの写真と共に、泡の科学について他に類を見ないほど詳細な分析が記載されています。

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