Via Vino
No. 65 "Gibier & French Wine III"
<ジビエ&フランスワイン3>
<日時・場所>
2015年12月12日(土)18:00〜21:00 広尾「マノワ」
参加者:16名
<今日のワイン>
辛口・白・発泡性「ルネ・ジョフロワ・キュミエール・エクスプレション ・ブリュット・マグナム」
辛口・白「ジャン・ピエール・ベルトネ ・モンタニィ・プルミエ・レ ・ヴィエイユ・ヴィーニュ 2013年」
辛口・赤「プリュール・ブルネ・サントネイ・プルミエ・クリュ ・ラ・フルール・ド・マラディエール ・キュヴェ・クロード 2010年」
辛口・赤「ドメーヌ・デュロシェ ・ジュヴレ・シャンベルタン 2011年 」
辛口・赤「ポール・シャペル・サントネイ・プルミエ・クルュ・グリヴィエール 1980年」
<今日のディナー>
【アミューズ】
マノワの3種のアミューズ 千葉県で仕留めた、日本キジのクロケット 蝦夷鹿のコンソメジュレ イノシシのリエット
【4種の国産ジビエ】
伊豆天城山、メスの日本鹿のテリーヌとその心臓のロースト
岐阜県、網獲り天然鴨のロースト その内臓ソース
山梨県、小菅村村、熟成オスのイノシシのロースト 猪のジュ
北海道、上川町、4歳メスヒグマの赤ワインエピス煮込み
【デザート】
マノワの球体モンブラン 2015年
1.ジビエについて
国産ジビエをフランスのワインで愉しむ!
土地の恵みを食べて育ったジビエは、凝縮された野生の旨味。
【日本鹿(ニホンジカ)】
日本に住む鹿には、北海道の蝦夷鹿と、本土の本州鹿(日本鹿)がいます。蝦夷鹿は本州鹿より大きく、雄は体重約140kg、雌は体重約80kgにもなります。肉は赤く脂肪は少なめで、2、3歳までの若い物が柔らかく味が良いとされます。本州に住む本州鹿は、体重約40kgから80kg、肉は赤身できめが細かく、蝦夷鹿よりもさらに柔らかで脂肪が少ないとされます。主として木の葉を食べるため、新緑の季節が良いという説もあります。ちなみにフランスで食べられている鹿の多くは、体重20kg前後の小型の野呂鹿ですが、体重300kg以上にもなる大型の赤鹿なども一部家畜化されています。
【青首鴨(アオクビガモ)】
北半球に広く分布し、日本には主として冬鳥として飛来します。水草などの植物を食用としており、血の色が濃く、野趣に満ちた味を持っています。雄の頭部は光沢のある緑色で、首にはっきりとした白い輪が見られます。雌は褐色で、黒褐色の模様があります。雌の方が脂肪層も厚く、風味も強いとされています。ちなみにコルヴェールとは「緑の首」という意味であり、日本語での鴨の異称である「青頸」と同義語です。
【猪(イノシシ)】
日本でも古くから食用にされ、肉の色から「ぼたん」とも呼ばれています。秋に木の実やキノコなどを豊富に食べて蓄えた脂肪が旨味になるとされています。11月下旬から約1ヶ月間が最も美味とされています。12月後半から発情期を迎え、蓄えた栄養を消費してしまうので、雄、雌ともに味が落ちてしまいます。日本では成獣を狩りますが、フランスでは肉が硬くなるのを嫌って、生後3〜6ヶ月の幼獣を珍重します。味、料理法等は豚肉に準じますが、加熱しても豚肉より柔らかさが保たれます。
【熊(ヒグマ)】
ユーラシアと北米に分布するヒグマと、東アジアに分布するヒマラヤグマ(アジアクロクマ)がいます。ヒグマは体重400kgにも達する大型のクマで、体毛は黒褐色、赤褐色、灰褐色など様々です。肉食傾向の強い雑食性で、各種の動物や、木の芽、果実などを食べます。肉は固いものの味にクセがなく、うっすらと甘さを感じる上品な風味と言われます。鮭が遡上する時期は肉に鮭の風味が移って味は落ちるとされ、むしろ果実を多く食べる時期が美味とされます。。
2.ワインテイスティング
「ルネ・ジョフロワ・キュミエール・エクスプレション ・ブリュット・マグナム」(タイプ:白・辛口・発泡性 品種:ピノ・ムニエ50%、ピノ・ノワール40%、シャルドネ10% 産地:フランス/シャンパーニュ/ヴァレ・ド・ラ・マルヌ)
ジャン・バティスト・ジョフロワは、「レコルタン・マニピュランは、畑での作業が命」と言い切ります。自然堆肥、天敵虫の活用によって15年前からほぼオーガニック。キャノピー対策も万全で、日照と風通しを十分確保するための葉落しなど実にきめ細かく畑をフォローしています。ワインに複雑性をもたらすため、オークの大樽で発酵させられます。また力強い黒葡萄のバランスを保つ為に、マロラクティック発酵を一切行ない造りです。区画やプレス毎にオークの大樽に入れ、シュール・リーにて熟成、その後ブレンド、瓶内発酵へと続きます。注目すべきは、最終的に瓶内に残る糖度が6g程度と非常に低いことです。
「ジャン・ピエール・ベルトネ ・モンタニィ・プルミエ・クリュ・ ヴィエイユ・ヴィーニュ 2013年」(タイプ:白・辛口 品種:シャルドネ 産地:フランス/ブルゴーニュ/コート・シャロネーズ)
ベルトネはモンタニーにあるドメーヌで、本拠地モンタニーを中心に9AOC、約10haを所有しています。現当主ジャン・ピエール・ベルトネはこのドメーヌの3代目で、彼がドメーヌを引き継いだ当時はぶどうを協同組合に販売していましたが、息子さんがドメーヌを継ぐことが正式に決まった2002年から元詰めを開始しました。環境負荷の低減に積極的に取り組み、リュット・レゾネを実践。畑の平均樹齢は50年、Combes等を含め6区画のブレンドとなっており、除梗はしません。新樽1/3、1回使用樽1/3、2回使用樽1/3で11ヶ月熟成させ、ノンフィルターで充填します。バランスが非常に良く、かつ、適度な凝縮感があり、まさに長期熟成可能なタイプのワインです。フレッシュで豊かなミネラル感は、シャブリと同じキンメリジャンの石灰岩土壌に由来。果実味と旨みがみごとに調和した味わいに仕上がっています。
「プリュール・ブルネ・サントネイ・プルミエ・クリュ ・ラ・フルール・ド・マラディエール ・キュヴェ・クロード 2010年」(タイプ:赤・辛口 品種:ピノ・ノワール 産地:フランス/ブルゴーニュ/コート・ド・ボーヌ)
1804年に設立されたドメーヌ・プリュール・ブルネはサントネイ村に位置し、代々家族経営を行なっているコート・ドールで最も古いドメーヌの1つです。現在は8代目に当るギョーム・ユニ・プリュール氏がこの歴史あるドメーヌの運営を行なっています。祖父方のプリュレ家が所有していたサントネイの畑と、祖母方が所有していたムルソーの畑を中心に、コート・ド・ボーヌの主要な6つの村に20ha以上の畑を所有しています。 ワインのスタイルは、どのレンジも長熟タイプのクラシックな味わいで、サントネイ・マラディエールを筆頭に、安定した信頼のおけるワイン造りを目指しています。果実味豊かで程よいボディがあり、滑らかで心地良い味わいです。
「ドメーヌ・デュロシェ ・ジュヴレ・シャンベルタン 2011年」(タイプ:赤・辛口 品種:ピノ・ノワール 産地:フランス/ブルゴーニュ・コート・ド・ニュイ)
デュロシュは、ジュヴレ・シャンベルタン村にて5世代に渡って続く歴史あるドメーヌで、1973年に現当主ジル・デュロシュ氏が引き継ぎ、2003年から息子のピエール氏も加わり、現在もこの父子によって運営されています。所有する畑は8.5ha、4つのグラン・クリュに加え、3つのプルミエ・クリュを所有しています。赤系果実のアロマに、フレッシュな果実味があり、タンニンは控えめですが、ジュヴレ・シャンベルタンの特徴であるしっかりとした骨格はきちんと表れています。
「ポール・シャペル・サントネイ・プルミエ・クルュ・グリヴィエール 1980年」(タイプ:赤・辛口 品種:ピノ・ノワール 産地:フランス/ブルゴーニュ/コート・ド・ボーヌ)
ドメーヌ・ポール・シャペルは1976年にサントネイ村からモンタニー・レ・ボーヌに移ってきました。ボーヌ市内でワインの分析所も経営し、醸造学のエキスパートでもあります。 チャーミングな果実味に割とボディがあるのがサントネイの赤で、今回ご紹介のグラヴィエールは、この地の筆頭と言われる一級畑です。 畑は樹の樹齢も高く土壌由来のミネラルが豊かなタイプです。
3.日本のジビエについて
古代の日本において、狩猟は人々の生活の糧であっただけでなく、土地の支配者が神と交流するという意味もあったとされています。王の狩猟は、大地が生み出す初物を狩り、神に捧げる生産儀礼でもあり、大地に対する領有権を確認するものでした。
その後仏教伝来により、「殺生禁断」が唱えられるようになると、獣肉食は忌避されるようになり、天皇の狩猟も鷹狩や鵜飼へと移っていきました。本格的な武家政権を打ち立てた源頼朝は、将軍就任の翌年に富士の裾野で大規模な巻狩(まきがり)を行いましたが、これは軍事政権の首長としての儀礼だったとされています。その後幕府においても、狩猟禁止令が出されるようになります。
しかし全く狩猟が途絶えてしまったわけではありません。諏訪大社の「酉の祭」で執り行われる「饗膳儀式」などでは山の幸、海の幸と酒が振る舞われ、江戸時代後期に菅江真澄という旅人が残した記録によると、神前には75頭もの鹿の首が献じられたとあります。
ちなみに鹿肉は牛肉と比べて脂肪が1/10以下と少なく、タンパク質はほぼ2倍と多いことが知られています。また脳の働きを活発にし、善玉コレステロールを増やす働きのあるDHA(ドコサヘキサエン酸)をはじめとする不飽和脂肪酸が多く含まれており、栄養価の高い食材であることが証明されています。 天敵であるニホンオオカミが絶滅したため、北海道でも長野でも、近年鹿の数が増えて農林業への被害が拡大しています。食材としてのジビエを見直し、適正な捕獲と消費で、人間と自然の共存を図ろうという試みが各地で始まりつつあります。