Via Vino
No. 80 "Champagne VI"
<シャンパーニュ6>
<日時・場所>
2018年8月18日(土)12:00〜15:00 広尾「マノワ」
参加者:15名
<今日のワイン>
白・辛口・発泡性「アンリ・ド・ヴォージャンシー・ラ・ミス・ブラン・ド・ブラン 2008年」
白・辛口・発泡性「ルイ・ニケーズ・エクストラ・ブリュット 2008年」
白・辛口・発泡性「ジャン・ミッシェル・カルト・ドール 2009年」
白・辛口「ポール・バラ・ブーズィ・ブリュット・マグナム 2007年 」
<今日のディナー>
【アミューズ】 北海道のムラサキウニと北海道北見の新玉ねぎの 軽いムースとコンソメジュレ
【魚料理】 和歌山県天然あわびのパイ包み焼き あわびの肝とピノ・ノワールのソース
【肉料理】伊豆 河津の夏鹿のロースト そのジュとビーツのソースで
【デザート】山梨県 一宮の桃の瞬間コンポート シャンパーニュのムースとソーテルヌのグラニテ
1.ヴィンテージ・シャンパーニュ
「ヴィンテージ・シャンパーニュを味わう!」
より深みのある味わいのヴィンテージ・シャンパーニュ。
ヴィンテージの個性を反映させた味わいが楽しめる。
熟成を想定したシャンパーニュとなっている。
シャンパーニュは、フランスを代表するブルゴーニュと並ぶワイン産地で、正統派ワインとしてフランス王家のお膝元で栄えました。しかし現在のシャンパーニュのワインは、スパークリングワインに特化しており、そしてその製法は、アッサンブラージュと称してヴィンテージの異なるワインをブレンドし、かつビートまたはサトウキビから作った糖液と酵母を後から加えて2次発酵させるという、ある意味正統派のスティルワインとは全く異なるものとなっています。赤ワインと白ワインを混ぜてロゼを造ることも、シャンパーニュでは認められているのです。
葡萄のみ、水すら加えずに造られるスティルワインとは、あらゆる意味で異なった製法が認められているシャンパーニュ。様々な規制が制定される前に製法が確立されていたことが一番の理由でしょうが、テロワールや純粋性だけをうたうのではなく、ブランド性や娯楽性、スパークリングワインとしての自由度の高さを持っていることは、シャンパーニュを語る上で非常に重要なポイントとなっています。
その中で、あえて収穫年や畑にこだわった、ある意味さらに限られた特性を持つシャンパーニュは、より格別な味わいがあります。ノンヴィンテージのシャンパーニュが、ウイスキーのブレンデッドと同様に造り手のスタイルを表現するものならば、ヴィンテージ・シャンパーニュは、収穫年ごとの個性を持つスティルワインの世界に一歩踏み込んだものだと言えるでしょう。
【ヴィンテージ・シャンパーニュとは】
収穫年の表示がないものをノンヴィンテージといい、NVと表記されています。シャンパーニュの多くがNVなのは、複数の収穫年のワインを混ぜて造られているからです。シャンパーニュ地方はブドウ栽培の北限に位置しており、年によってブドウの出来にかなり差が出てしまいます。その為、造り手は良い年に造られたワインの一部をリザーヴしておきます。様々な年代のリザーヴワインを混ぜることで、味の均一化、安定化を保ち、メゾンのスタイルを確立しているといえます。
しかし、ワインと同じように収穫年が書かれているシャンパーニュも存在します。これは、その年の天候に恵まれてブドウの出来が非常に良かった為、その年のブドウだけで特別に造られたシャンパーニュです。これをヴィンテージ・シャンパーニュといいますが、良い年にしか造られないので、価格もNVより高くて非常に貴重です。NVが変わらない味を提供してくれるのに対し、ヴィンテージ・シャンパーニュは、その年のぶどうの特徴が表現されたものとなっているのです。
ヴィンテージ・シャンパーニュは、ティラージュ(瓶詰め)の後、3年以上熟成させてから出荷することが義務づけられていますが、もっと長期の熟成を経てからリリースされるものも多く、ノン・ヴィンテージよりも高価であることがほとんどです。
【近年の注目すべきシャンパーニュのヴィンテージ】
シャンパーニュのヴィンテージは、ぶどうの収穫からリリースまでに時間がかかるため、スティルワインに比べて市場に出回るのがかなり遅くなります。2018年現在、2012年以降に関しては評価がまだなされていません。
ロバート・パーカー評点については、97点と高評価のつく1996年以外に、1985年、1988年、1989年、1995年、2002年は95点と評価されています。近年では2008年が92点と比較的評価が高くなっています。
<2000年以後のヴィンテージ>
●2002年(95点) 日照量の多い、乾燥した暑い夏で、より濃厚で凝縮感のあるぶどうが育った年でした。特にピノ・ノワールが理想的に成熟しました。
●2004年(90点) ぶどうの成熟がゆっくりだったので、収穫自体は遅めにはなりましたが、酸度は保持された健康なぶどうが実った年でした。
●2007年(80点) 春先暖かく、生育は早く進みましたが、夏に雨が降り続き、平均的なヴィンテージとされています。
●2008年(92点) 夏の温度差が激しかったために、十分な熟度のぶどうができ、また酸度も高めで、バランスの取れたぶどうが収穫できた年でした。
●2009年(84点) 8月から暑く乾燥した日が収穫期まで続き、酸は低めですが熟度の高いブドウが収穫できた年です。
2.ワインテイスティング
「アンリ・ド・ヴォージャンシー・ラ・ミス・ブラン・ド・ブラン 2008年」(タイプ:白・辛口・発泡性・RM/品種:シャルドネ100%/産地:フランス/シャンパーニュ/コート・デ・ブラン/オジェ)
アンリ・ド・ヴォージャンシーは、ノーマル・キュヴェでさえ全生産量の90%がフランス国内のシャンパーニュ愛好家に販売されてしまう人気の辛口シャンパーニュですが、中でもこの特別作品「ラ・ミス(La Miss)」は、当主のパスカル・アンリ氏が愛する夫人に捧げるために、グラン・クリュ・オジェの区画の中でも特に素晴らしい区画の厳選されたシャルドネから造り出したものです。年間生産量わずか1000本のみの稀少品で、アールデコ風&エンボス加工風のドレスを着た女性のきれいなラベルが印象的です。ブラン・ド・ブランならではの、香ばしさとキレの良さを兼ね備えた、まさにランチの最初を飾るのにふさわしいシャンパーニュでした。
「ルイ・ニケーズ・エクストラ・ブリュット 2008年」(タイプ:白・辛口・発泡性・RM/品種:シャルドネ70%+ピノ・ノワール30%/産地:フランス/シャンパーニュ/ヴァレ・ド・ラ・マルヌ/オーヴィレ)
新世代生産者の一人としてその存在感を確固たるものにしつつあるルイ・ニケーズの4代目であるロール氏は、ジャック・セロスで栽培、醸造を担当した後、2012年からメゾンに参画。オーヴィレのテロワールを正しく表す事で品質を飛躍的に向上させ、よりピュアで上質なシャンパーニュを生み出しています。さらに濃い色合いで、その芳香にはシトラス、アプリコットのアロマに、ナッツやドライフルーツの風味が感じられます。
「ジャン・ミッシェル・カルト・ドール 2009年」(タイプ:白・辛口・発泡性・RM/品種:ムニエ70%+シャルドネ30%/産地:フランス/シャンパーニュ/ヴァレ・ド・ラ・マルヌ/ムーシー)
ジャン・ミッシェルは、エペルネの南、ムーシー村に1847年に創業したRM(レコルタン・マニピュラン)です。「薫り高く、しっかりっとした味わいが濃厚なシャンパーニュを造る」というポリシーのもと、自然派のRMらしいしっかりしたボリュームをそなえたワインに仕上がっています。顧客の80%が個人のシャンパン愛好家とレストランと地元のワインショップに限られ、平均樹齢30年のムニエを主体に使用し、全てのボトルは出荷1ヶ月前にデゴルジュマンされます。ムニエを主体としたヴィンテージ・シャンパーニュならではの、コクのあるシャンパーニュとなっています。
「ポール・バラ・ブジー・ブリュット・マグナム 2007年」(タイプ:白・辛口・発泡性・RM/品種:ピノ・ノワール90%+シャルドネ10%/産地:フランス/シャンパーニュ/モンターニュ・ド・ランス/ブージィ)
ポール・バラは、素晴らしいピノ・ノワールが育まれるグラン・クリュ、ブージィ村に1800年代から居を構え、この村の南斜面の絶好の場所に30もの区画を所有しています。当主は7代目にあたるシャンタル・バラ。父ポール・バラはこのドメーヌの名声を不動のものとした名傑で、約60年前に十代で当主となりました。また高品質志向のRM(レコルタン・マニピュラン)同士で結成したクラブ・トレゾール・ド・シャンパーニュの主要メンバーです。この組織では第二次発酵前のキュヴェが会員の試飲チェックに認められないと、保証シールを得ることができないという厳しさで、ポール・バラのフラッグシップである特定のミレジムは、このシールを獲得しています。バランスの取れた酸味に林檎のようなフルーツの風味が重なる濃厚な味わいは、メインディッシュの夏鹿の旨味を見事に引き上げてくれました。