Via Vino No. 87 "Sushi, Sake & Wine"
すしと日本酒とワイン


<日時・場所>
2019年10月19日(土)12:00〜15:00 淺草「寿司初総本店」
参加者:12名
<今日の日本酒とワイン>
辛口・白・発泡性「ランソン・ブラックラベル・ブリュット」
発泡性・純米酒「八海山 瓶内2次発酵酒 あわ 」
辛口・白「クラギー・レンジ・シャルドネ・キッドナッパーズ・ヴィンヤード 2015年」
純米大吟醸「雅山流 純米大吟醸 極月」
辛口・白「カザル・ガルシア」
純米大吟醸「幻 純米大吟醸」
辛口・赤「クラギー・レンジ・ピノ・ノワール・テ・ムナ・ロード・ヴィンヤード 2015年」
特別純米酒「黒帯 悠々 特別純米」
リキュール「大雪渓・苺酒」
<今日のディナー>
【先付け】  
・林檎の白和え ・小松菜の煮浸し ・いぶりがっこクリームチーズのせ
・季節の牛筋煮込み ・海老しんじょう揚げ
【お造り】  
本鮪づけ
【蒸し物】 
秋の茸とクエのホイル蒸し
【握り寿司】  
・中とろ炙り ・墨烏賊炙り ・いくら ・〆鯖 ・煮穴子 ・玉子
【焼き物】  
和牛サーロインの和風仕立て 季節の野菜焼き
【デザート】  
寒天 苺ソース

       


1.「すしとオーガニックワイン」

米を使う寿司。米から作る日本酒。
日本酒は英語では「Sake」。世界に通用する酒類の総称。
境界線を越えていく世界の食と酒。  


 寿司は米から作る料理で、日本酒は米から作る酒です。当然のことながら、主原料が同じ寿司と日本酒は、味覚の上で非常に繋がりがあり、相性も良いと言えます。また、寿司は今でこそ握りが主流ですが、本来は魚を米と塩に漬け込んで発酵させた保存食品でした。寿司も酒も新鮮な素材を味わうという側面を持ちながら、保存を想定した発酵食品という一面も持っているのです。

 また、「酒の肴(さかな)」とよく言われますが、もともと、「さかな」の語源は、「酒」+「菜(な)」で、「菜(な)」は「おかず」を意味しました。 つまり、「さかな」は本来、酒を飲むときのおかずを意味し、江戸時代以降、肴(さかな)として魚介料理が食べられるようになると、生きている「魚(うお)」のことも、「さかな」と呼ぶ人が増えました。室町時代までは「さかな」は酒のつまみである塩や味噌を指していたと言われています。その意味でも、日本人にとって、魚介と米は、寿司と日本酒を通じて強く結びついていたのです。

 その寿司も日本酒も、今では日本の食文化を代表する存在となり、世界へと広まりつつあります。本来、ビールやウイスキーすらも包括する、酒類全般を意味する「酒(Sake)」という言葉は、「Sake」として英語の中に定着しつつあります。2014年から英国ワイン&スピリッツ・エドケーショナル・トラスト(WSET)ではロンドン本部でSAKE講座を発足し、2017年から日本ソムリエ協会(JSA)が「酒ディプロマ(Sake Diploma)」認定制度を発足しています。

 果実から造られるワインは、酢酸系の食材とは合わないと言われていました。しかし、ヨーロッパにも葡萄から造るヴィネガーやバルサミコが食材に使われます。これらを使うと一気にワインとの相性も高まります。寿司も日本酒も、そしてワインも、本来は保存性を高めるために食材を発酵させ、遠くへと運ぶための物でした。生産国の中から生産国の外へ広まることで、その姿形は徐々に変わっていくかも知れませんが、その本質はやはり残っていくのではないでしょうか。

2.寿司と日本酒について

【寿司について】
● 寿司の歴史 およそ一千年以上の歴史があり、既に奈良時代から存在していることが知られています。魚肉を米と塩に漬けて保存した発酵食品で、平安時代には米を除いて食されていたようですが、室町時代から着け床の米も食されるようになったと言われています。1600年前半からは、発酵を待たずに酢飯を使う「早寿司」が登場し、「江戸前寿司」こと「握り寿司」が登場したのは1800年代前半のことです。 なお、漢字の表記ですが、「鮓」は最も振るい表記で関西系のなれずし等に使われ、「鮨」は元々中国では塩辛を意味したようですが、江戸前系のすしに多く使われます。「寿司」は本来当て字ですが、魚を使わない五目寿司や稲荷寿司も含めて、より幅広く使われているようです。
● 寿司の種類

 なれずし(馴れ寿司):魚に塩と米を混ぜて長期保存し、乳酸菌で発酵させたもの。滋賀の鮒寿司や和歌山の鮎寿司など

 いずし(飯寿司):日本海側に見られる米麹を使って魚を乳酸発酵させた寿司。

 押し寿司:酢飯と具を重ね、力をかけて押した早寿司。大阪のバッテラや富山の鱒寿司など。

 握り寿司:小さな酢飯の塊に寿司種を載せ、両手で握って馴染ませたもの。江戸前寿司。

【日本酒について】
● 日本酒の歴史 奈良時代には口嚼み(くちかみ)酒と麹カビによる醸造酒が記録されており、酒を「醸す」という言葉は、「噛む」に由来するという説もあります。当初殆どが濁り酒でしたが、濁りを除いた「清酒(すみざけ)」は「清め」の儀式などのために平安時代には既に造られていたと考えられています。流通が盛んになる中世末期には、清酒の割合がかなり増えていたとされています。
● 日本酒の種類 普通種と特定名称酒に分けられ、特定名称酒は下記の純米酒、吟醸酒、本醸造の3種に大きく分けられます。

  純米酒:原料米と米麹、水だけで造られた酒で、醸造アルコールは添加していません。

 吟醸酒:精米歩合60%以下で、特別に吟味して製造された酒です。一部醸造アルコールを添加しているものもあります。

 本醸造:精米歩合70%以下で、醸造用アルコールを添加していますが、醸造用糖類は使用していません。

● 精米歩合 米を精米した後の、残った白米の割合を表します。値が少ないほど米はより多く削られています。 精米歩合40%とある場合、60%を糠として削り取り、残り40%で仕込んでいることになります。 ● 日本酒度 4℃の蒸留水と同じ重さの酒の日本酒度を0とし、それよりも軽いものはプラスの値、重いものはマイナスの値をとります。日本酒度が高いほど糖分が少なく、従って辛口になります。

3.テイスティング
 
  

「ランソン・ブラックラベル・ブリュット」
(タイプ:白・辛口・発泡性、品種:ピノ・ノワール+シャルドネ+ムニエ、産地:フランス/シャンパーニュ)

 ランソンは、シャンパーニュ地方の大聖堂で知られる美しい街ランスにある、最も古いシャンパーニュハウスの一つで、1760年ランスの行政長官フランソワ・ドゥラモットにより設立された「ドゥラモット・シャンパン・ハウス」がランソンの前身となります。ランソンのボトルネックラベルとコルクには十字のマークが刻まれており、これは、創設者フランソワ・ドゥラモットの息子が聖マルタ騎士団に所属していた事に由来しています。1837年にジャン・バプティスト・ランソンにより社名を「ランソン」に変更後、ブランドの確立と国際的販売網の拡大に成功し、世界的ブランドへと発展してきました。マロラクティック発酵を行わない数少ないシャンパンメーカーのひとつでもあり、トーストのニュアンスに加え、さまざまな花の蜜の香りがあります。余韻が長く、あらゆる機会に楽しませてくれます。

「クラギー・レンジ・シャルドネ・キッドナッパーズ・ヴィンヤード 2015年」
(タイプ:白・辛口、品種:シャルドネ100%、産地:ニュージーランド/ホークス・ベイ)

 1998年に設立されたクラギー・レンジは、ニュージーランドで単一畑にこだわった、高品質のワインを造る生産者です。気候・土壌にあった品種の栽培を行っている点で、新世界ワインの革新性と、フランスワインのクラシックなスタイルを合わせ持っています。シャルドネは手摘み収穫90%、フレンチオーク及びステンレスタンクにて発酵、フレンチオーク樽(新樽16%)にて9ヶ月熟成されています。やや緑を帯びた黄金色を呈し、控えめなレモンなどの柑橘類、はちみつなどの豊かなアロマが感じられ、甘みを帯びたシトラスやメロンのような味わいも楽しめます。

「カザル・ガルシア」
(タイプ:白・辛口、品種:アリント、ローレイロ、トラジャドゥラ、産地:ポルトガル/ヴィーニョ・ヴェルデ)
 アヴェレーダ社は、ポルトガル産ワイン「ヴィーニョ・ヴェルデ」の代表的な生産者で、1939年に誕生した「カザル・ガルシア」は、ヴィーニョ・ヴェルデ世界売上No.1ブランドとして知られています。魚介料理の多いポルトガルでカジュアルに楽しまれています。  ぶどうは新鮮な風味を保つため低温でプレスされ、果汁は温度管理の下、ステンレスタンクで発酵されます。瓶詰め前にろ過され、低温で保管されます。ライムジュースのような淡いグリーンを帯びたクリアな色調。青リンゴを想わせる繊細でフルーティーな香りで、口に含むと爽やかな微発泡が感じられ、新鮮な果実味を引き立てています。軽やかでフレッシュな余韻も印象的です。

「クラギー・レンジ・ピノ・ノワール・テ・ムナ・ロード・ヴィンヤード 2015年」
(タイプ:赤・辛口、品種:ピノ・ノワール100%、産地:ニュージーランド/マーティンボロー)
 高品質ワインを生産するクラギー・レンジの展開するピノ・ノワールは、ステンレスタンク及び一部フレンチオーク樽にて発酵され、フレンチオーク樽(新樽25%)にて9ヶ月熟成されています。  深く濃い色調を呈しており、ブラックチェリーやボイセンベリー(木いちごの一種)の際立ったアロマにバラの花びらや樹皮、フレッシュミントのニュアンスが感じられます。芳醇な樽熟成の風味とマッシュルームやハーブのフレーヴァーが、根底にあるダークフルーツの微かな甘みと調和することで複雑味のある味わいをもたらし、余韻はしなやかで長く魅力的です。2018年ニュージーランドワイン・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。

「八海山 瓶内2次発酵酒 あわ」
(タイプ:アルコール13%、日本酒度-5.0、原料:麹米:山田錦/掛米:山田錦、五百万石、美山錦他/精米歩合50%、産地:新潟県・八海醸造)

 大正11年創業の八海醸造が提供する「八海山」は、新潟魚沼地区を代表する地酒であり、 新潟の日本酒を代表する人気の辛口の銘柄でもあります。銘柄の由来となった名峰・八海山の地層から一日に400トンも沸き出でる湧水を、酒造りの仕込みから器具の洗浄まで贅沢に使用しています。 「あわ」は、瓶内二次発酵で造るすっきり爽やかな日本酒です。ワインのシャンパーニュと同じ製法で、火入れをせず酒を瓶に詰め、瓶内でさらに発酵を進めて生じた炭酸ガスを閉じ込めています。澄んだ色と繊細な泡、上品で軽やかな味わいは乾杯用のお酒としてもお薦めです。

「雅山流 純米大吟醸 極月」
(タイプ:アルコール16-17%、日本酒度+1.0、原料:出羽燦燦(自社栽培)/精米歩合40%、産地:山形県米沢市・新藤酒造店)
 「雅山流」の名は「山は動かぬもの、川は流れるもの」、すべての物事に対して固執した考えに捉われずに、という思いで命名されました。「本物の地酒、人の求める酒」を目標に、自社田で原料米(出羽燦々)から一貫して生産してみようという発想から、蔵主でもある新藤杜氏自身の手によってお酒になりました。 「極月(ごくげつ)」は、鑑評会出品酒と同様の手法で上槽された、「雅山流」シリーズの最高峰に位置付けられる純米大吟醸雫酒です。綺麗でふくらみの有る味と華やかな香り、上品な飲み口が特徴です。

「幻 純米大吟醸」
(タイプ:アルコール16.4%、日本酒度0.0、原料:山田錦/精米歩合45%、産地:広島県竹原市・中尾醸造)
 中尾醸造の創業は明治4年。風光明媚な瀬戸内海に面した竹原の地で蔵を興したのが始まり。「杯に注いだ酒の表情を鏡にたとえ、酒造りに精進する蔵人の誠の心を酒の出来栄えに映し出してほしい」という初代当主の願いを込めた銘酒「誠鏡」が誕生。  戦後間もない昭和15年のこと。四代目当主であった先々代の中尾清磨が出会ったのは、リンゴの皮から採取した酵母でした。日本酒にフルーティーな芳香を醸し出すという、従来では考えられないきわめて特殊な力をもっていました。そのお酒は昭和23年に全国品評会で第一位を受賞しましたが、それから25年後の昭和49年に忠実に復活させたのが大吟醸「まぼろし」です。厳選した酒米を高度に精白、リンゴ酵母活用などの技術を駆使して醸し出す、果実香豊かな純米大吟醸原酒です。

「黒帯 悠々 特別純米」
(タイプ:アルコール15%、日本酒度+6.0、原料:山田錦55%(兵庫県多可町中区産)、金紋錦45%(長野県下高井郡木島平産)/精米歩合68%、産地:石川県金沢市・福光屋)
 昭和51年の発売以来、金沢の老舗料亭をはじめ、数々の食の職人に鍛え育てられた日本酒です。酒米に山田錦と金紋錦を使用し、吟醸仕込みと純米仕込みとでキレの良い芳醇な旨味を持つ辛口に仕上げています。ブレンドではなく、独立した味わいの酒をバッティングさせることで得られる「コク」「ふくらみ」「キレ」「品」の絶妙なバランス。さらに、時間をかけてじっくりと熟成することで「まろやかさ」を加えた味わいは、肴の旨さを引き出しながら、自らの旨さをも深めていきます。苦心を重ね完成させた「ただの酒」が渾然と人を酔わせる。そんな酒を有段者のための酒として「黒帯」と名付けられました。  また、「燗上がり」にもこだわりを持っており、「黒帯」は熱燗、ぬる燗、人肌燗、どの温度帯でも見事に味わいの形を完成させるように造られています。

「大雪渓 苺酒」
(タイプ:アルコール8%、原料:清酒(大雪渓・風さやか純米酒)+苺(安曇野産)+糖類+酸化防止剤(ビタミンC)、苺使用割合:33%、産地:長野県北安曇郡・大雪渓酒造)
 安曇野産「夏秋いちご」を使用したリキュールです。「夏秋いちご」は「冬いちご」に比べて酸味が強く、スイーツなどの加工品に適しており近年は需要が高く、安曇野では生産者が増え特産品の1つに育ってきています。そんな話題の「夏秋いちご」と安曇野の「風さやか」を用いた純米酒を元に造られた、安曇野生まれのリキュールです。 

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