Via Vino No. 98 "Sherry & Sherry Cocktail"   
<シェリー&シェリー・カクテル>


<日時・場所>
2024年11月9日(土)19:00〜21:00 銀座「しぇりークラブ」 
参加者:9名
<今日のワイン>
辛口・フィノ「ウィリアムズ&ハンバート・ドン・ソイロ・フィノ」
辛口・カクテル「マンサニージャ・カクテル(シェリー・ベルモット・ドライを使用) 」
辛口・アモンティリャード「ウィリアムズ&ハンバート・ドン・ソイロ・アモンティリャード15年 」
辛口・オロロソ「オズボーン・バイレン・オロロソ 」
辛口・マンサニージャ「デルカド・スレタ・ラ・パケラ・マンサニージャ・エン・ラマ」
甘口・カクテル「ペドロヒメネス・カクテル (ソーダ、レモンを使用) 」 
<今日のディナー>  
 
あん肝のコンフィと赤玉ねぎのピクルス〜レモン風味〜 ウサギのテリーヌと人参のサラダ 鶏むね肉のハム〜ガルムソース〜  
浅利のアヒージョ 
秋鮭のパイ包み トマトソース  
ラボ・デ・トロ・牛テールの煮込み  
魚介のパエリア  
チョコレート・テリーヌ ローズマリー・アイス

     


1.シェリーについて

 シェリーはスペインを代表する酒精強化ワインです。生産地はイベリア半島最南端のカディス県、「ヘレス・デ・ラ・フロンテラ」「サンルーカル・デ・バラメーダ」「エル・プエルト・デ・サンタ・マリア」の3つの町を結ぶ三角地帯で、葡萄品種は辛口ワインではパロミノを主体として使用し、甘口にはペドロ・ヒメネスとモスカテルを使用します。発酵終了後酒精強化されますが、その際産膜酵母によって「フロール」が形成され、これにより独特の風味が付きます。 
 

【シェリーの歴史】

 「シェリー」という名前はあくまで英語で、スペインでは「ヘレス」という地名がそのままワインの名称となっています。「ヘレス」の地は元々この地を治めていたイスラム教徒によって「シェリッシュ」と呼ばれており、そこから転じて「シェリー」と呼ばれるようになりました。もともとスペインの濃厚な酒だったシェリーは、大航海時代に劣化を防ぐために酒精強化されるようになり、1519年マゼランの世界航海の時には、265名の乗組員に対して253樽のシェリーが積み込まれ、その金額は全航海予算の約1/6を占めていたと言われています。1588年にスペインの無敵艦隊をイギリスが破ってからは、シェイクスピアの時代にイギリスに広まり、18世紀から19世紀にかけて、現在の様々なスタイルのシェリーが開発されました。

【シェリーの製法】

<フィノとマンサニージャ>
 まず基本となる辛口の白ワインをパロミノで通常のアルコール発酵で造ります。そしてそれを樽へ移して熟成させますが、満量充填せずにワインがやや空気に触れる状態にします。これにより「フロール」と呼ばれる産膜酵母による膜が液面に発生します。ワインは15%までアルコールが添加され、これにより酸化による褐変が防止され、黄色く透明なすっきりとした辛口の「フィノ」が造られます。なお、「サンルーカル・デ・バラメーダ」で造られるフィノは「マンサニージャ」と呼ばれます。

<オロロソとアモンティリャード>
 上記と同様にまずパロミノから白ワインが造られますが、フロールが付かなかった、もしくは敢えて付けなかった物は、18%までアルコールが添加され、これによりフロールの発生は抑えられるため、酸化の影響で褐色になり香ばしい風味の強い「オロロソ」となります。なお、フロールの付いていたフィノ・タイプから、フロールが途中で消失した、もしくは人為的に消失させた物は、17%まで酒精強化され、「アモンティリャード」となります。

【シェリー・カクテル】

 とろっと濃厚な旨味を持つシェリーは、カクテルのリキュールのような使い方ができます。
 「レブヒート」は、シェリーをお好みの炭酸飲料で割ったものです。「アドニス」は、ドライ・シェリーにスイート・ベルモットとオレンジ・ビターズを混ぜたもので、スイート・ベルモットの仄かな甘さがドライ・シェリーの刺々しさを和らげます。「バンブー」は、「アドニス」のベルモットをドライに変えたカクテルで、横浜グランドホテルのバーが発祥とされており、非常にドライな飲み口になっています。


2.ワインテイスティング
        

    

「ウィリアムズ&ハンバート・ドン・ソイロ・フィノ」  (タイプ:辛口/フィノ 品種:パロミノ100%  産地:スペイン/ヘレス アルコール度15%)
 1877年、イギリス人のアレクサンダー・ウィリアムズが義父のアーサー・ハンバートと共に興した、スペイン最大のボデガを持つウィリアムズ&ハンバート社。同社は世界的名声を築き上げてきたルイス・パエス社の「ドン・ソイロ」ブランドを引き継ぎ、より優れた品質と長い熟成を重ねたシェリーとしてリリースしています。厳選したパロミノ種のファーストプレスの果汁のみを使い、ホワイトオーク樽でのソレラ・システムによる熟成を経て生まれる辛口のフィノで、かすかに緑色を帯び、輝く透明感のある黄色の色調があります。その香りはストレートで華やかで、すっきりとした酸味を持ちながらも丸みがあり、口中には熟成による繊細な複雑さが広がります。

 この後、「浅利のアヒージョ」には、シェリー・ベルモット・ドライとマンサニージャを混ぜた「マンサニージャ・カクテル」を合わせました。ハープのような香りが印象的でしたが、マンサニージャとベルモット以外は使っていないと言うことで、その香りの華やかさには驚かされました。

「ウィリアムズ&ハンバート・ドン・ソイロ・アモンティリャード15年」  (タイプ:辛口/アモンティリャード 品種:パロミノ100%  産地:スペイン/ヘレス アルコール度19%)
 全面にフロールを生じさせてできるフィノに対し、アモンティリャードは樽の上面の70-80%しかフロールが生じないものを更に時間をかけて熟成させています。「12年」の表示はソレラ・システムによる平均熟成年数を示しています。トパーズのような魅力的な色合いと、ほのかな甘さを感じさせる豪直な香りが特徴です。香ばしくローストしたニュアンスが 酸味と引き立てあい、その味わいを一層甘美に、かつ複雑にしています。中国料理やエスニックのスパイシーさや、熟成の進んだチーズ、ハム、ソーセージとの相性は最高です。

  

     

「オズボーン・バイレン・オロロソ」  (タイプ:辛口 品種:パロミノ100% 産地:スペイン/ヘレス アルコール度20%)
 オズボーン(オスボルネ)は、1772年、英国人のトーマス・オズボーン・マン氏が創設した、真っ赤な闘牛のシルエットがトレードマークのメーカーです。オズボーン氏は、英国大使ジェームズ・ダフ・ゴードン氏と共にシェリーを英国に紹介、その後、英国王室、ベルギー王室、ロシア王室をも顧客に持つようになりました。「バイレン」とは1808年にナポレオン戦争でスペイン軍が勝利した場所の名称に基づいています。コクと柔らかさの中に香りが有り、アーモンドを焦がしたような余韻が残ります。又軽いブランデーを飲んでいるようなふくよかな味わいがあります。

「デルガド・スレタ・ラ・パケラ・マンサニージャ・エン・ラマ」  (タイプ:辛口 品種:パロミノ100% 産地:スペイン/ヘレス アルコール度20%) 
 1744年創業のデルガド・スレタ社は、以後代替わりするたびに社名が変わってきたものの、19世紀末のホセ・デルガド・スレタ以来、現在の名称が定着しました。サンルーカルの町に多くのボデガを所有しています。エン・ラマとは、「無濾過」「生」という意味を持つ季節限定のシェリー酒で、最低限のフィルターによる不純物除去のみを行い出荷されます。1年に1回、春にボトルリングされるエン・ラマはフレッシュで樽の個性をそのまま感じることのできる特別な味わいで、通常のマンサニージャよりも香り高く、ふくよかな酵母の香りが広がります。通常食前酒として出される「マンサニージャ」ですが、今回はパエリヤとの相性が抜群とのことで、あえてこの段階で供されることとなりました。

 デザートには甘口シェリー「ペドロ・ヒメネス」をソーダで割ってレモンを少し加えたカクテルを合わせました。甘みの強いペドロ・ヒメネスの味わいがソーダで割ることで軽快で飲みやすくなりました。使用したのは「バルバディージョ・ペドロ・ヒメネス」、そのまま味わっても黒糖のような自然な甘さが楽しめる極甘シェリーです。

  

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