“光る言葉”を鋭くキャッチできる人
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 言葉は不思議だと思います。自分のこころの叫びが結果として言葉になるのでしょう
が、それとは反対に言葉そのものが自分をその方向に動かすこともできるようです。
「自分の夢は、・・だ。」と人に話していますと、自分でそうしたい気持ちになってき
て、本当に夢が現実になってくるのです。よく言葉は、言霊(ことだま)からきたのだ
ということを聞きますが、そうなのかもしれません。

 人との話の中で「なるほど!」と感心させられる言葉に出合うことがあります。講演
会の2時間のうちに心に残った言葉が幾つかありますが、自分の心に響いて心を動かす
ほどに凝縮された、またズバリ言い当てた表現の言葉に出会うことがあります。この言
葉をいつのころからか、“光る言葉”と言ってきました。

 この光る言葉に出合えた時、その一日があったことが何よりもすばらしいことに思え
てくるのです。この短い言葉にこそ、人を動かす力がこめられていることに気づくから
です。

 光る言葉は、心に響く言葉です。

 この光る言葉を鋭くキャッチするのには、聞き手側にも話し手のポイントに対して、
心の中で同調するものを持っていることが条件になります。話し手のポイントの価値が
分かるレベルである必要があると思います。そうしなければ、心で波長が合いませんか
ら。
「教える者は、教わる者の3歩前を歩きつづけることである」とチェリストの斉藤秀夫
さんが、ある番組で言われたことを覚えています。これは、相手に分かってもらうため
には、10歩も20歩も先を行ってしまっては、だれも着いてこれなのだから、常に「
3歩前」を大切に心掛けたいと思っているのですと言っておられました。
 この師に師事した小澤征爾さんは、こうして世界的指揮者に育てられたのだというこ
とです。

 この考え方は、その後の私の人との関係を作っていくあらゆる場で、活かされてきて
います。このように、一つの光る言葉との出合いは、人生を大きく変えて行くもものよ
うです。岡 潔さんは、その著書「春宵十話」の書き出しの中で、「人の中心は、情緒
である」「情緒とは、人の悲しみがわかる心」と言っておられます。この言葉はまさに
「光る言葉」として心に刻まれました。この言葉で、私の人生の中で出合った最も大切
な本となったのです。

 何気なくいつも話している言葉も、気をつけて心で聞いてみると、光る言葉に出合え
るように思っています。あくまで、自分自身の心で聞こえてくる言葉を鋭く捉えようと
してみることです。静かに目をとじて「★トロイメライ」の曲を心で受け止めているので
しょう。静かであればあるほどに心の底からドキドキしてくるのです。