湯煙の向こうに自分が見える
  (北海道・東北編)




(北海道)カルルス温泉 国民宿舎
(北海道)登別温泉 第一滝本館
(北海道)洞爺湖温泉 ホテル湖畔荘




(北海道)★摩周温泉

 父と母と3人で北海道を旅した。その日に泊まる場所を探しながらの、車中泊の気
楽な旅。
道の駅「摩周温泉」に夜に到着。

「風呂に入れてくれる温泉宿ないかなあ」

さっそく、温泉街にでかけ尋ねてみる。

「こんにちわ。通り掛かったものなんですが、両親と3人、今の時間はお風呂いた
  だけませんか?」

「どうぞ、大丈夫ですよ」

有り難い、有り難い。まる一日運転し高ぶった神経を休めるために、手足を伸ばし
てきままな湯の揺れに身をまかせられるのは、何よりのこと。
 その上、玄関で靴を脱ぎ、スリッパに履き替えて廊下を歩きながらお風呂場へ向か
ううちに、そこで感じる空気、その宿屋に泊まったかのような思いに感覚が満たされ
ていく贅沢さを味わった。

風呂から出て、街の酒屋で父と酌み交わす寝酒と酒のつまみを仕入れる。

湯冷めしないように着込んで、折畳みの椅子に腰をおろし、熱く沸かした湯をコッ
プにそそぎウイスキーを注ぐ。

「こんな気ままな旅行、最高の贅沢だなあ」

星空を眺めながら、ほろ酔いに・・・。

「おやすみ、また明日」




(北海道)★十勝温泉

 “モール温泉”って知ってますか?
そう、この温泉は植物性温泉ということ。つまり、ほとんどの温泉は、鉱物性温泉
といえるように、鉄とかナトリウムとかイオウとかを含んだもの。でも、ここ十勝温
泉は、地層に閉じ込められた大昔の森林の植物性成分が含まれている。

「そうそう、ここまできて東京の温泉を思い出した」

東京の温泉は、大昔に海だったことからそこに生えていた海草が閉じ込められた、
いわば“海草の化石”ともいうべき植物性温泉だと教わったことがあった。

雨が降りだした露天風呂。黄色っぽい色で肌にやわらかい湯を浴び、また脇を流れ
る川を見つめながら岩に腰をおろしていた。

とてつもなく長い年月かかって、この湯が出来た。すでに植物が回りを埋め尽くし
ていたころを思いやってみていた。

大陸からの大勢の観光客が宿に到着したのを、先ほど玄関ロビーで見ていた。その
大陸からのお客さんもいっしょに露天風呂に入ってきた。言葉はわからないけど、温
泉の湯に旅の疲れがほぐれ、満足そう。

「大陸と地続きだったころに生えていた植物が、この温泉の湯に溶け出しているの
ではないだろうか。きっと、大陸からの訪問者と何千年かに再開したのではないか」

帰りに、高校の修学旅行でほしくても買えなかった“十勝石”のネクタイピンを土
産物屋でみつけた。この時が来るのを待っていたかのように、ガラスのショウウイン
ドウの隅にそれはあった。

「そうですか。そんな思いがあって、この十勝石を求めてくれるんですね。型がち
  ょっと昔のもので、ほこりもかぶったこれを求めるなんてどうして、と思ってい
  たのですよ。それなら、お安くしておきますよ。」

長い間“待っているもの”に出会った、温泉での話です。


(北海道)羅臼温泉
(北海道)釧路温泉

(青森県)温川温泉 国民宿舎ぬる川




(青森県)★嶽温泉

 雪解けの春、山のすそ野の斜面に数件の温泉宿。木造の浴槽と洗い場にこんこんと
溢れる湯、窓から吹き込む引き締まった風を顔に感じながら、体は暖かい湯舟の中。
ふうっとイオウの香を嗅ぎながら、頭の芯が手放しで喜んでいる。意識が遠のきがち
な程の心地好さの中、うつらうつらしながら湯舟から立ち上る湯煙を見るともなく眺
めている。そこへ、湯煙に乗って聞こえてきた三味線の音に心が揺れた。思わず「日
本の音だなあ、心を揺らす音だなあ」。

湯上がりのほてった体で運転し、山のすそ野の林道に入る。春の日差しに温められ
た 雪から立ち上った霧、落葉松の林に音もなく、一定の目の高さほどに広がって、
霧の中の幻想の世界と現実の世界が、同時に存在するのを気づかせてくれた。




(青森県)★恐山温泉

 本州の果てに霊山としてある恐山。その門をくぐってイオウが吹き上げる参道のか
たわらにその浴槽がある。入った母の明るさに、霊山の気配すら負けてしまった。子
供らもいっしょにはしゃいでいる。通りがかりの参拝者が何事かと、ドアの前に来て
手を掛ける。

 「すみません。家族で入っていますので・・・」。

 これでは、霊もいっしょに家族で入ってきたお客を横目で見ながら笑っている様子。

 おかげで、皆元気で毎日を過ごさせていただいていますから・・・。


(青森県)国吉温泉 耕富館(百人風呂)




(青森県)★酸ケ湯温泉

 大きくすそ野が広がる八甲田山のバスの終点、男女のドアを明けて数段降りると、
そこは大きな湯舟。板で囲まれた薄明かりの中、湯煙の向こうに深く刻まれたシワの
顔、顔、顔。

 「どちらが男でどちらが女かなんて、どうでもいいじゃない。良い顔、良いシワだ
  ねえ。」

 どんな者でも懐深く暖かく包んでしまう湯煙。そこは、安堵感で満たされた、ただ
ただ有り難いところ。




(青森県)★青荷温泉
     画像

 「ここにくると、家族は皆仲良くなって帰っていくよ。闇の中に灯るひとつのラン
プの灯りが、皆の気持ちを一つにしてしまうんだ。」「今の生活には、明かりがたく
さんあって、ひとりひとりが向いている心の方向が違ってしまうんだろうなあ」「だ
から、ここに来て、ランプの湯に入って泊まると仲良くなるんだよ」

“一つの灯りに集まることが、家族を一つにするんだそうな”

 どうです? 家族の心の灯り、明々と灯っていますか?


(青森県)蔦温泉




(青森県)★奴温泉

 竜飛崎を目指して、見知らぬ土地を家族とともに車で走っている。無線で土地の人
と繋がって、互いに自己紹介やら、今回の温泉巡りの様子やらで何十分も話した。

 「竜飛崎は夜に走っても危ないし、金木町の奴温泉の駐車場で仮眠とったらどう?
  」
 「明日の朝、湯舟で逢いましょう」

 翌日、
 「やあ、こんにちわ。」。

 湯舟の中で顔合わせ。なんと、地元の由緒あるお寺の住職さんだった。

 「朝のお勤めがあるから、それが終わる頃ぜひ寺に来てくださいよ。」

 苺を手土産に「こんにちわ」。
 「どうぞ・・・」とお茶を頂いて、「さて、竜飛崎をご案内しましょう」とさっと
立ち上がったのにはおどろいた。

 スイスイと車で先導していただき、到着した竜飛崎の展望台で手際よくアンアテナ
を設置し、

 「ハローCQ、CQ。こちらは7K1・・・、入感局ありませんか」
 
 「こちらはJJ8・・・、札幌市です」

 海の向こうの北海道の人から返事が返ってきた。海峡の波、吹き付ける風、そして
無線の波、波にゆられて心が伝わってくる。 

 お陰様で・・・!


(青森県)湯殿温泉




(青森県)★不老不死温泉 黄金崎不老不死温泉

 すごい名前の温泉である。“不老不死”なのだから、とても御利益のある温泉に思
えてくる。
東北、黄金崎灯台の下、日本海の荒波が削り取った切り立った一面の岩の中にその
湯はあった。ゴボゴボと波が打ち寄せるようにパイプから湯が溢れ出るのを、岩の露
天風呂に溜めたもの。子供らといっしょに脱いだ衣服を岩の上に掛け、湯にとっぷり
浸かると、もう気分は天国。波打ちぎわには遠いが、磯の香りと潮風に吹かれながら
の湯浴みは格別。
これでは、不老不死の命名も分からないではない。寿命が何年も延びた心持ち。

気分良く湯に入っていると、手足の肌に吸いつくアブが寄ってくる。以外にしつこ
くて、何度も追い払っても吸い付いてくる。子供は、すぐに岩かげの虫除けを探し出
し、しつこく飛んではぴったりと吸い付いてくるアブと格闘し始めた。

そこに住む生き物「アブ」は、不老不死ではなかった。


(青森県)竜飛崎温泉 ホテル竜飛

(秋田県)玉川温泉
(秋田県)黒湯温泉




(秋田県)★鶴の湯温泉

 動物が入っていることで、温泉が沸いているのを知ったものがある。この鶴の湯も
その一つか。それにしても山深く入ってポツンとある。しかも水車で電気を起こして
いるから、裸電球がゆらゆら揺れる。まるで火の灯りのように。

 こんな、温泉に夕方たどりつき、飛び込みで宿泊を尋ねた。車とテントで泊り歩く
旅にとって布団に包まれるのは天国の気分(敷き布団2枚の間にサンドウィッチのよ
うにして眠ったけど・・・)。

 夜遅く、白く濁った湯にとっぷり浸かる。玉砂利の足元の感触のままに、川のトロ
トロと流れる音が妙にまわりの静けさを引き立たせていた。湯の上にあるランプの灯
りの揺れが、立ち上がる湯煙の揺れに重なっている。

翌日、隣の部屋ごしに秋田民謡が聞こえてくる。何日も泊まっている湯治客のおば
あさん。民謡は良いなあ。その土地に住む人々の生活の叫び。ひやりとした山間の朝
もやの中、暖かい湯舟から立ち上る湯煙の中、自然に民謡を口ずさんでいる自分が居
た。


(秋田県)湯瀬温泉 老人いこいの家

(岩手県)つなぎ温泉 旅館さぜん
(岩手県)鉛温泉 藤三旅館
(岩手県)花巻温泉 蓬茉湯
(岩手県)真湯温泉
(岩手県)須川高原温泉
(岩手県)瀬美温泉 瀬美温泉旅館(露天風呂)
(岩手県)川尻温泉 ほっとゆだ(陸中川尻駅)
(岩手県)巣郷温泉 憩いの家 福寿荘




(岩手県)大沢温泉 自炊部(露天風呂)

 「いま、何と言う交差点ですか?」

 「じゃ、そこを左に曲がって・・」

 こんなふうにして、地元の人と無線で繋がって教えていただいた所。

 入り口にお稲荷さんと思って覗いてみておどろいた。だって、男性のシンボルが木
造りの神様として鎮座しているのだから。まだ、幼稚園に通っている息子、娘も互い
に顔を合わせてゲラゲラ笑ってしまった。まさに、子孫繁栄の神様であった。

自炊部の入り口を入ると、お土産ものといっしょに自炊用の野菜や漬物がならんで
、シワが刻まれたお年寄りが、腰をかがめては晩のおかずを見ていた。
 板敷きの廊下を進んで風呂場に出た。屋根掛けの半露天風呂、その湯舟のへりに腰
を下ろして横を流れる川や山を眺めていた。夕暮れのその景色は、心にしみわたるよ
うな“何とも懐かしいこころもち”にしてくれる不思議な気配を持っていた。これま
で出会ったことのない守られた安心感のある景色に出会った。暮れ掛かった空に、灯
りのともった板張りの湯治宿が見える。まるでその景色に溶け込んでしまっているか
のように木々の中にあった。手前にはゆったりとした川の流れ、そしてやさしく草で
覆われた川岸が広がり、流れは柔らかい丸みの重なった山並みに消えていた。

この湯は、宮沢賢治が小学校のころ父に連れられて佛教の教えを学ぶために尋ねた
湯だったとか。きっと、湯煙の中で賢治と同じ“心象風景”に出会っていたのかもし
れないなあ。


(岩手県)湯川温泉 旅館 大扇(露天風呂)

(宮城県)遠刈田温泉 共同風呂
(宮城県)鬼首温泉郷 国民宿舎 鬼首ロッジ




(宮城県)★作並温泉 岩松旅館

 山形に生まれ、小学校のころの子供会で、ばあちゃんといっしょに入った湯。近所
の遊び仲間に、サワガニを見せつけられ、どこに行ったらカニがいるのかと、この作
並温泉の露天風呂の横を流れる川に目をやりながら入った湯。そして、結婚してから
妻の両親と、私の父母といっしょに入った湯。こんな、思い出の湯である。

渓谷沿いに流れる川と露天風呂。裸のまま河原に降りて水遊び、滝つぼに潜りを楽
しんだり、そうして冷えた体を露天風呂に浸かって温める。自然の中で、思う存分裸
のままで水や湯と触れ合った。

露天風呂に通じている長い階段の途中に、おもしろい鏡がある。等身大の鏡の前に
立ってみるとおのれの姿がびよーんと伸びたり、ぐにゃと縮んだり、子供心に不思議
な鏡の別世界に引き込まれていった。鏡の向こうに写っている自分の姿だけで、いっ
しょに風呂に入った仲間同志で大いに楽しんだ。

子供会の思い出、それはばあちゃんと行った温泉場。地区の年寄りとその地区の子
供たちといっしょに湯に入って、いっしょに触れ合ったところ、そこは自然に温泉場

温泉は、ごくごく自然に人と人の距離感を縮める魔法があるみたい。

良いなあ! じいちゃんの深いシワ、ばあちゃんのしなびたおっぱい。


(宮城県)秋保温泉 共同風呂
(宮城県)吹上温泉 峰雲閣(湯滝)




(宮城県)青根温泉 不忘閣 共同風呂 大湯

「おーい!」

「はーい!」

「良いねえ。家族の顔がみんな見えるよ」

女湯のばあちゃん,お母さん,女の子、そして男湯のじいちゃん,お父さん,男の
子が、真ん中の低い仕切りの間から声を掛け合っている。

「昔ね、伊達の奥方様が療養のために長く泊まってこの湯に入って、だんだんと穏
  やかな心持ちになったんだそうな」

「本当だね。こうしていると本当にやさしく落ち着いた心持ちになってくる」

調度良い温度の透き通った湯が、なみなみと湯舟にあふれている

湯から顔を覗かせている家族一人一人の心の中が、なみなみと濡れた心が満ちてい
くのを感じていた。

「また、来ますから・・・」



(宮城県)白石蔵王温泉郷 浮清水の湯
(宮城県)鳴子温泉 共同浴場 滝の湯


 ※山形地域 公共温泉MAP

(山形県)りんご温泉


(山形県)★姥湯温泉 桝形屋旅館(露天風呂)

 よくまあ、こんなところまで温泉宿屋があるものだと思う。先人の強い思いに感激
してしまった。

 ここまでたどりつく道すがら、峠駅をさらに下って谷に滑川温泉、そこからガタガ
タの林道を通っていくと、今度は急な曲がり坂のためにスイッチバックで登る。スイ
ッチバックってわかりますか? そう、前進ギアで登っていたのを、曲がりのコーナ
ーで一旦止まってバックギアに切り替えて後ろ向きに登り、また次の曲がりのコーナ
ーで一旦止まって前進ギアに切り替えて前向きに走り出すというめったに経験できな
い場所を通らないと行けないところ。

小高い山の終点に車を止める。ここから歩いて宿へ歩き始めようとして、ハッと息
をのんでしまいそうな光景。掛け軸の山水画が目の前に表れたかのよう。高い山の頂
きから川が流れ落ち、中腹に人のすむ庵のように宿屋が位置し、その下に河原が広が
っている。ここで釣糸を垂らす人でもいれば、まさに山水画そのもの。

ここを下って、さらに登って宿屋へ。

 「なに、見てるんですか」

 「ほら、あの岩影に動くもの見えませんか」「あれが、カモシカなんですよ」「登
  山の途中で、ここに腰を下ろして見ていくんです」

ツン!としたイオウの香りと湯煙の中、沸き出た湯を岩で囲った露天風呂。子供と
いっしょに自然のど真ん中で混浴。

 「いいなあ、家族で混浴なんて」、岩影からカモシカがうらやましそうに見つめて
いた。

 「ね、ね。いっしょに入んない!」


(山形県)峨々温泉
(山形県)海老鶴温泉 海老鶴温泉




(山形県)★銀山温泉
ジニーさん 「日本人はね、自分の国の良いところ、たぶん忘れていると思います。」
NA ニッポン人が日本を知ること。
国際交流もそこから始まります。
  ♪AC〜
         公共広告機構(⇒全国キャンペーン⇒国際化)



(山形県)碁点温泉 クアハウス碁点
(山形県)黒沢温泉




(山形県)小野川温泉 共同浴場「尼湯」

 小野の小町は、どれほどの美人だったのかなあ。

 ここ、小野川温泉も小町ゆかりの温泉。“美人が入った湯、その湯に入った人は美
人になれる”そんなロマンを心に抱きながら、風呂に身を浸す人が大勢いるんだろう
なあと・・・。

でも、ロマンって大切。心にロマンを描いていると、顔つきが優しくなって、本当
に美しい人になる。だから、湯に入ると美人になれる。これ、きっと本当!!




(山形県)★上山温泉 共同浴場

 上山(かみのやま)は、いとばあちゃんの生まれたところ。山形市の隣の市で、蔵
王の登り口に当たる。ここ城下町上山にもお城が復元され、その駐車場近くに共同浴
場がある。
ばあちゃんもいっしょに、共同風呂に入りにいった。いまでも町の人の集まる温泉


 「おばんです」

 「あ、どうもおばんです。お寒いですねえ」

みんな顔見知りだから、方々であいさつ。番台のおばさんも「今日は、良く雪降っ
たねえ!」などと、来る人と話かけられると、心はニコニコと心地好くなってくる。

番台の上に、神棚が祭ってあって、神様も毎日毎日来る人を見て、毎日の生活のい
ろんな話が聞こえてきて、ニコニコ。いつかも、銭湯の番台に座っているおばさんか
ら聞いた話だけど、「座っているだけでと思われるけど、楽しいよ、いろんな人が来
てくれて、いろんな所に出かけた話もしてくれて・・・・」なんて、結構楽しんでい
る。

どんどん沸いて湯舟いっぱい。ありがたい!こんなにきれいな、熱い湯が沸き出し
つづけてくれている。その湯の上に温泉場の共同風呂があって、じいちゃんもばあち
ゃんも毎日集まれる。人が自然に集まって、あったまっていく。こんなありがたい気
持ちになれるのは、自然の恵みへのありがたさ、お年寄りの顔のしわの深さに人生の
深さを感じる。人が集まるから、迷惑をかけない振る舞いが自然に身についていく。

 地の中から沸き出した温泉に入れる銭湯、だからかな?“地に足がついた考え方”
がスッとできるのは・・・。

 ふと、93歳まで長生きした祖母の言っていたことを思い出す。

 「ニュ−スは見ないよ。90年生きてきても、どうせ人を殺したとか、盗まれたと
かの繰り返し。人のことで心配してもしょうがない。毎日朝起きて、お日様に感謝す
ることで長生きしたのかなあ。」

 きっと、本当の宝物が分かった“地に足がついた”生き方をしたばあちゃん。ここ
上山の自然の風土が、あるがままの生き方を生んだんだよ、きっと・・・。


(山形県)新高湯温泉
(山形県)西蔵王温泉 厚生年金休暇センター
(山形県)青田温泉 臥龍温泉




(山形県)★蔵王温泉 共同浴場「河原湯」

 山形生まれの小生にとって、家族、親戚で何度もいったのが蔵王温泉。夏場の避暑
として、汗疹(あせも)を直す湯として地元山形市の人にとって、“温泉”といえば
ここ蔵王温泉が真っ先に上がる。ゆで玉子のようなイオウの香りこそ温泉、と思って
いたのは、ここ蔵王温泉の湯が小さい頃の思い出にあったから。

 ここには昔から共同風呂が数カ所あるが、河原湯が気に入ってよく入った。河原と
いうことばにあるように、湯が沸いて川のように湯が溜っている所をそのまま囲った
というような浴槽である。だから、湯の水面が外の水面と同じ。そう、草津温泉のか
つての共同風呂の「凪の湯」も、こんなふうだった。湯舟の脇は開いていて、外の湯
がそのまま沸き出したまま流れている。だから、とても透明度があり透き通ってトロ
トロしている。うっかり顔など洗おうものなら目に滲みて開けていられない。とても
酸性度が強く、傷口などあればビリビリと滲みる。でも、透き通っていてとっても有
り難い心地になる。

 湯の透明さに、両親や子供、そして妻も自分も、家族みんなの心の中まで澄み渡っ
ていった。


(山形県)蔵王温泉 大露天風呂
(山形県)大野目温泉 大野目温泉
(山形県)東根温泉 厚生会館
(山形県)白鷹温泉
(山形県)左巻温泉




(山形県)★柳川温泉

 「次のバスで、お母さんが帰ってくるんだよ」

って、よろこびいっぱいのニコニコ顔で、湯舟の中の小さな女の子が語りかけてき
たんだよ・・・。

ここは、深い山の突き当たりの村の湯。湯も良いけど、その湯に入りに来る村の人
の澄んだ心に出会えるところ。そうそう、村の人が入りに来る夕方から夜にかけてい
つも出かけるから、もう町から出かけた人はいない時間だから。

町では雨でも、ここは雪。あたたかい心を包んだ深い雪の里。


そして待ち焦がれた春、村を流れる澄んだ雪解けの水が、一面の枯れ草の間を縫う
ように流れていた。その枯れ草の間から、やわらかそうな黄緑のシダの新芽が顔をの
ぞかせた。
いきものの気配がいっぱいの里、いきものの中でいっしょに生きてきた生活がそこ
にはある。

 「また、来ますから・・・」

 「どうぞ、仲間に入れてくださいね。私の先祖が生まれたのも、この近くなのです
  から。」


(山形県)中山温泉 ひまわり温泉
(山形県)白布高湯温泉 共同浴場
(山形県)白布高湯温泉 東屋・西屋・中屋
(山形県)肘折温泉 共同浴場
(山形県)葉山温泉 共同浴場
(山形県)龍王温泉
(山形県)湯野浜温泉 共同浴場
(山形県)由良温泉

(福島県)いわき湯本温泉 玉の湯温泉保養所
(福島県)芦ノ牧温泉 ドライブ温泉浴場
(福島県)奥土湯温泉 川上温泉




(福島県)岳温泉 岳の湯

「ねえ、郁美ちゃんね、ホテルに泊まったんだよ」

 家族4人で宿泊は、ほとんど車の中かテントで、子供が小学校になるまでは、旅館
やホテルなどに泊まることがなかった。だから、娘にとってはとってもうれしかった
のだろう。
「すごいすごい。布団があるよ」

押し入れを開けて、布団があるところに泊まってお湯に入れるなんて、きっと最高
の贅沢だったのだろう。こんな贅沢ができるところは、娘にとって“ホテル”そのも
のだったに違いない。

ここは、素泊まりではあるが、どんな立派な所も適わない。わが家にとって、思い
出一流の“ホテル”である。


(福島県)穴原温泉 公衆浴場
(福島県)甲子温泉 大黒屋
(福島県)新野地温泉 相模屋旅館
(福島県)裏磐梯川上温泉 旅館「いちろう荘」
(福島県)大塩温泉 観山荘
(福島県)土湯温泉 中の湯
(福島県)湯ノ花温泉 共同浴場
(福島県)幕川温泉 水戸屋旅館
(福島県)土賊温泉 共同露天風呂
(福島県)檜枝岐温泉 公衆浴場