自分の宝物と同時に、人の宝物を発見できる人
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自然のものは、木の葉一枚どれとして同じ物はありません。ひとつひとつ色合いも形
も違っています。このことがどれほど魅力的に思えたことでしょう。石ころ一つ、一つ
一つが有り難くて、じっと見つめていた子供の頃がありました。大人になってからも、
このように、じっと自然のものを見続ける時間を多く持とうとする人はどれだけいるの
でしょう。



画像をクリックすると、HPにリンクします♪ 作: 波暮旅二


テンペラ画という描き方を知っていますか。油絵より以前に中世によく描かれたとの
ことで、宗教画などによく使われたということです。たまごの黄身を接着用にして、そ
こに顔料を加えたものを使います。油絵とちがって長年たっても酸化しにくく、変色し
にくいのだそうです。ところが、たまごの黄身は、そのまま筆に付けてキャンパスに描
こうとすると、油絵のように伸びないため、一筆一筆重ね塗りのようにしながら、顔料
を少しづつ置いていくような描き方になるため、とても手間と時間がかかる描き方にな
ります。このテンペラ画を描く方の思いを、2人の画家の方から教わりました。一人は
アンドリュー・ワイエスさん、二人目は波暮旅二さんです。直接にお会いして、話を伺う
ことができたのは波暮旅二さんです。
 不思議なことに、この2方とも実に良く自然の表情をとことん見続けていることです。
そして自然物の質感まで、実に詳細にあるがままに描こうとして突き詰めていくと、
まるで生き物のように生命をもって描かれていくことです。作者は、「何者かに、描か
せられてしまったかのようだ」との思いを語ってくれるます。他の描き方にはない“自
然物が画家を動かして語りかけてしまう”というような境地にまで、自然物をとことん
見続ける者を引き込んでしまうものなのかと感動したことがあります。


 こう考えますと、これまで述べてきた「自分らしさの宝物を大切にする」ということ
は、自然物の一つである私たちの一人一人の個性を、すべて大切なものとして受け入れ
ることのように思えてきます。

 この地球上に存在しているかけがいのないものの一人として、自分を素直に感じ、そ
の得意とするところを育成してくればくるほど、自分以外の人々の個性も大切な宝物と
して捉えることができるようになってきました。

 きっと、自分のことをわかってもらおうとするときは、まずこちらが、相手の個性と
して光っている部分を理解しようとする姿勢が大切なことのようです。あくまで、選ば
れて生まれてきた大切な一人として、その人の個性を肯定的に受け止めてみることが、
まず大切にしたいことのようです。私たちは同じ自然物の中でも“人”という自然物を
一番愛すべきこととしてとらえられたらどれだけ幸せなのでしょう。それと同時に、す
べての自然物の存在について、日常生活を通してもっともっと目を向けていく生き方が
、きっと人生を深く楽しめることのように思えてなりません。

一つとして同じもののない自然物、その個性にこそ魅力があるのかもしれません。