9月14日(日)、だびよんにて、自主制作映画『赤木カルタさんの夢』の上映が終わり、さて、アンケートでも記入しようかな…と、その時、おっさん二人が入って来た。
話を聞けばこの、酒と音楽と女の人が好きな二人、これから東北行脚に出かけるそうな…。
さて、だびよんでのライヴ当日、いやあー盛り上がりましたねえ。
そして大阪の怪人、西岡恭蔵さんは赤の毛のぼうしを被り、ギター1本持ってやって来た。
「いやぁー、日曜だからどっこも開いてねーよー、やっぱしここしかオレら居るとこねーよー」
とかいい乍ら、おもむろにギターを持ち出して唄い始めた… さてはこの二人、完全にできあがっているではないか。
実はこのうたごえ喫茶状態のおっさん二人こそが、高坂さんと西岡さんだったのである。
「あんた知ってる?西岡恭蔵、18日にライヴやっからみにきてね〜んららららら〜ん」(知ってるも何も、西岡恭蔵といえば'70年代フォークブームが成熟を迎える中で、あの名作、「ディランにて」でソロデビューした怪人じゃないですかっ)
いやはややたら陽気な唄う怪人である。
青森在住フォークシンガー“だびよんの鳥”高坂一潮さんは、この地を本当に愛している、生粋の青森県人!という人なのです。
少し照れ乍ら、ステージで力いっぱいに、あのあったかなうたの数々をうたってくれました。
“ビンボーソング”じゃ彼自身が肩にのっかって「酒くれよ〜」と云ってるビンボ神さんに見えてしまったり、“急行八甲田”じゃ青森の女(ひと)がいちばんきれい(こりゃ愛しの奥方様のことじゃなかろか… そういえばステージの高坂さんと客席の奥様との掛け合いが美しかった…)と唄う、人柄そのまんまの素朴であったかなステージでした。
月の祭り、コンケンのおじいさん、最近のアルバムからの数曲を披露してくれました。
これらの曲はどれもシリアスなもので、怪人はすこぶるいい声で朗々とこれを唄う。
うっ“プカプカ”の西岡も、もはやあっち(シリアス)へ行ってしまったのか… と思いきや『今回の東北のツアーで思ったこと、それは“人生、怠けることやっ”
ここから先はもうとどまることを知らぬ大怪人、うたを唄う為に生まれてきた男、『即興バナナスピリット』から風来坊、相合傘、みちゆき『プカプカ』へとお客さまとともにいっきに駆け抜けたのであった…。
♪ おれぇのあん娘ぉはぁタバコが好きぃでぇぇ〜♪
今、若いミュージシャンの間でも伝説の曲と云われる『プカプカ』('72年、西岡恭蔵「ディランにて」収録。
去年、大槻ケンヂ氏もカバー)えもいえぬ魅力のあるこのうたをこうやって生で聴けるというのは何とも幸せな気分でした。
ところで、このライヴ、一体いつまで続いたのでしょうか? アンコールに継ぐセルフアンコール(!?) ステージの上にだびよんのマスターまでひっぱりあげてしまった怪人西岡恭蔵、彼のうたは懐が深い。
そして陽気だ。
聴く者の全ての肩をポンと叩いて、
「ほら力をちょっと抜いて、みな、楽しくやろうや」、そして「人生は怠ける位が丁度いいんだ」
ということを気付かしてくれる、おおらかさが在るのです。
〜 そして、だびよんの夜は更けてゆくのです・・・・・・
西岡さんといえば、私ごとになりますが、最近のマイブームで Tin Pan Alley が来てまして、その煽りでもって、“ろっかばいまいべいびい”('79年)というアルバムを愛聴させて頂いておりました。
このたる〜っとしたリズムセクションと怪人西岡んのあったかい、でか声がホント気持ちいい、なんともいい時代だったことを窺わせるのです。
機会があったら是非聴いてみて下さい、隠れた名盤です。
今回うたってくれた“ろっかばいまいべいびい”と“3時の子守唄”も収録されてます。
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