お人柄が、唄になる。そんな恭蔵さんライブに、行って来たんだ。
そもそも「トリム企画社長室」でのライブって、何だ?
僕は、ビレッジプレスの村元さんからお誘いを受けた時、思ったさ。
「今までやっていたすき焼きパーティのノリだそうです」
「ふ〜ん?」といまいち納得できなかったが、一も二もなく予約をしたのだった。
「早く行かなきゃ一杯になります」という村元さんの言葉で、急ぎ足で向かう。
夕御飯も我慢して、6時過ぎに着くと、まだだぁれもいなかったさ。
「村元さんは来れないんだって」社長さんはそう言って、席を勧めてくれる。
会場に入ると、とりどりの椅子が所狭しに並べられている。
そこで始めてスキンヘッドの恭蔵さんにお逢いした。
実は、本を読んでおられた恭蔵さんをしばらくは気づかなかった。
ど〜んと大きな体格に、斜め後ろから見るとスキンヘッドだけが見える。
そうだろうか?と戸惑いながら声をかけられないでいると、
人の気配で、こちらを向かれた恭蔵さんが、にっこりと微笑まれる。
「あがったさん!」と、スキンヘッドに似合わぬ笑顔で握手をすると、
なんだか、もうずっと前から知っているかのように、話し始められる。
そりゃぁ、僕ならずっと恭蔵さんの唄なら、聞いてきたさ。
でも、お逢いしてお話するのはこれで三度目なんだが、そんな気がしない。
「胡散無産」の原稿のお礼を言い、新しいアルバムの話をし、話題は尽きない。
クリスマスライブの話をし、友部さんの話をし、幸介さんのアルバムを話す。
「KUROさん」のことをお話し、ツアーのことを話す。
恭蔵さんの目はとても柔らかだ。「春一番」の話題となり、風太さんを語り、
森林公園を話し、とても柔らかな時間が流れていく。
ぼちぼちと会場も埋まっていき、お名残を惜しみつつ衣裳変えに行かれると、
その間にも所狭しと並ぶ椅子に、所狭しに人が座っていく。
最前列を除く椅子が満席となる頃、部屋の照明が落とされ、
恭蔵さんの巨躯が、手拍子ひとつで、「月の祭り」の唄声をあげる。
7時10分に始まったライブは、アンコールが続き、9時半になってお開きとなる。
12月10日に出る「FAREWELL SONG」からの唄で始まって、
「START」からの唄へと続き、「サーカスにはピエロが」から、名曲が続く。
「ろっかばいまいべいびい」へと続き、「プカプカ」は言うまでもなく。
「君住む街に」も「PARADISE CAFE」も唄われ、僕はもうまったくご満悦。
口ずさみながら僕は、足踏みを踏みならして、恭蔵さんの唄に応えるんだ。
それはまるで、秋の夕暮れの一瞬前のえも言われぬ心地よさに、似て。
もう、暮れていくよ。そう、暮れていくのね。というあうんの呼吸にも、似て。
現実離れした柔らかな時間は、唄にのって、ふわりふわりと続いていくんだ。
「珈琲ルンバ」のリクエストの後、僕が「アフリカの月」をリクエストし、
すると興に乗った恭蔵さんは、クリスマス・ソングを唄い、
遅れてきた人のために、もう一度、「プカプカ」のリクエストに応えられ、
「それじゃぁもう一曲」とラストソング「GOOD NIGHT」でダメを押し、
そうして、深々と頭をさげてのごあいさつの後、ステージからその巨躯が去る。
お別れのご挨拶ができなくて残念な僕だったが、
ようやっと静かになりつつある街角を歩きながら、
あんまりたらふくの満足感のやり場に困ったものだから、
口笛をひとつ吹くことで、震わせた空気を、僕のこころに共鳴させてみた。
こころは、と〜んと震えて、悦びの合図に代えた、そんな夜。
97/10/10(金) 22:40 あがった(VYT00134)