Via Vino
No. 102 "Champagne 9"
<シャンパーニュ9>
<日時・場所>
2025年8月16日(日)18:00〜21:00 広尾「マノワ」
参加者:18名
<今日のワイン>
辛口・白・発「ドゥラモット・ブリュット・ブラン・ド・ブラン 2018年 マグナム」
辛口・白・発「ピエール・ペテルス・ブラン・ド・ブラン・マグナム」
辛口・白・発「ユレ・フレール・アンヴィタシオン・キュヴェ・ド・レゼルヴ・マグナム」
辛口・白・発「リシャール・シュルラン・ブリュット・キュヴェ・ジャンヌ 2015年 マグナム」
甘口・白・発「モエ・エ・シャンドン・アイス・アンペリアル・ドゥミ・セック」
<今日のディナー>
焼き茄子のムースと甘エビの昆布締め
鰹のたたきとバジルソース
イサキのトマトソース
和歌山産熊野牛のロースト、インゲン豆のサラダ、赤ワインソース
桃のコンポート、マスカルポーネ
1.シャンパーニュの歴史
【古代】
シャンパーニュの地名は、ローマ語の「カンパーニュCampagne(=平原)」に由来しており、殆どが森に覆われていた当時のヨーロッパでも珍しく草原が広がっていました。平坦地は戦場となることが多く、451年「カタラウヌムの戦い」で、フン族のアッチラ王をローマの名将アエティウスが破ったのもシャンパーニュの地でした。そしてこのアエティウスの子シアグリウスを破り、アレマン族をラインの彼方に追い払ったのが、フランク族のクローヴィスです。クローヴィスはシャンパーニュのランスで戴冠してフランスの基礎を作り、追われたアレマン族はアルマーニュ、すなわちドイツとなりました。
【中世】
ブルボン朝の開祖アンリ4世に愛飲されたシャンパーニュは、それまでのブルゴーニュワインに対抗して宮廷で頭角を現していきます。当時のシャンパーニュは非発泡の赤ワインでした。ルイ14世と同じ年に亡くなったドン・ペリニヨンは、嗅覚と記憶力の優れた人物で、ブレンド技術の先駆者として知られています。同じ頃、発泡性のワインも登場しますが、発泡性ワインの瓶詰めに成功したのは、石炭が豊富でガラス産業の発達した英国でした。スペインやポルトガルと交易していた英国はコルクも普及していて、瓶詰めエールの製造も行われており、その技術がワインにも応用されたのです。1660年の王政復古の後、チャールズ2世の宮廷では発泡性のシャンパーニュが流行し、ルイ14世死去後のフランスでも評判となりました。
【近世】
最古の大手シャンパン・ハウスは、1729年創業のリュイナール社とされています。シャンパーニュ地方は中世の大市の伝統を受け継ぎ、当初から外国貿易に対する視野が開けていて、大きな資本にも恵まれていました。現在の著名なシャンパン・ハウスは、既に19世紀に名声を築き上げています。1836年、瓶内二次発酵のための残留糖分を測定する比重計が開発され、瓶の破損が大幅に減少し、また同じ頃、ヴーヴ・クリコで「澱抜き(デゴルジュマン)」の技法が開発され、シャンパーニュの製造技術は飛躍的に向上しました。また当時のシャンパーニュは甘口が主流でしたが、食後にポートやマデイラが飲まれる英国では辛口嗜好が高まり、1874年にポメリー社はブリュット(辛口)を発売、大成功を収めました。
2.試飲
「ドゥラモット・ブリュット・ブラン・ド・ブラン 2018年マグナム」 (タイプ:白・辛口・発泡性、品種:シャルドネ100%、産地:フランス/シャンパーニュ/コート・デ・ブラン)
ドゥラモットの拠点は、コート・デ・ブランのグラン・クリュのひとつ、ル・メニル・シュール・オジェ村にあります。あの幻のシャンパーニュ「サロン」のリリースされない年のブドウがドゥラモットに使われており、まさに姉妹メゾンという位置づけを担っています。「ブラン・ド・ブラン2018年」は、冬の降雨と夏の猛暑によって、理想的なコンディションのもと成熟が進みました。甘く繊細な桃の香りや、しっかりローストされたヘーゼルナッツの優しい甘味が連結し、夏の果実の風味が含まれた深みのある味わいとなっています。今回は、焼き茄子のムースと甘エビの昆布締め、甘エビコンソメのジュレとキャビアと共に味わいました!
「ピエール・ペテルス・ブラン・ド・ブラン・マグナム」 (タイプ:白・辛口・発泡性、品種:シャルドネ100%、産地:フランス/シャンパーニュ/コート・デ・ブラン)
ピエール・ペテルスは、150年以上前からぶどう栽培家として知られており、最高級シャンパンを造るメゾンとして名声を高めているブラン・ド・ブランの造り手です。「ブラン・ド・ブラン」に関して、「海を感じる味わい」とペテルス社は表現しています。ミネラル感の余韻、凝縮された旨みが味わい深い、辛口のシャンパーニュです。1988年から良年のワインのみを注ぎ足し、大切に保管している秘蔵のリザーヴ・ワインを、贅沢に35%も混合しています。鰹のたたきと山椒、コリアンダー、クミンの入ったバジルソースと楽しみました。
「ユレ・フレール・アンヴィタシオン・キュヴェ・ド・レゼルヴ・マグナム」 (タイプ:白・辛口・発泡性、品種:ムニエ45%+ピノ・ノワール40%+シャルドネ15%、産地:フランス/シャンパーニュ/モンターニュ・ド・ランス)
ユレ・フレールはモンターニュ・ド・ランスの東、「ベレッシュ」など実力者が多いリュ―ド村で、1960年代から家族経営を続ける歴史ある造り手です。「アンヴィタシオン」に加えるのは、1982年からソレラ・システムで熟成させた特別なリザーヴ・ワインです。シェリーのソレラ・システム同様、毎年1/3を残して新しいヴィンテージを継ぎ足しています。複数のヴィンテージが合わさる事で、バランスが良く、かつ複雑な味わいを実現させています。イサキのトマトソースと共に頂きました。
「リシャール・シュルラン・ブリュット・キュヴェ・ジャンヌ 2015年マグナム」 (タイプ:白・辛口・発泡性、品種:ピノ・ノワール100%、産地:フランス/シャンパーニュ/コート・デ・バール/セル・シュル・ウルス) 「モエ・エ・シャンドン・アイス・アンペリアル・ドゥミ・セック」 (タイプ:白・甘口・発泡性、品種:ピノ・ノワール、シャルドネ、ムニエ、産地:フランス/シャンパーニュ)
恵まれた日照量により、高品質のシャンパーニュを生み出すセル・シュル・ウルス村。代々この地でブドウ栽培を続け、1919年よりドメーヌ元詰を開始。「キュヴェ・ジャンヌ」は、地の利点と造り手の技術の高さを活かして造られる秀逸なブラン・ド・ノワールです。キュヴェ名は現在の当主リシャール・シュルランが、祖母への敬意を込めて名付けました。力強いピノ・ノワールを樽で醸造する事で、豊かな風味と適度な骨格を備えた味わいを実現しています。和歌山産の熊野牛ロースト、新生姜エキス入りの赤ワインソース、ローストナッツと共に堪能しました!
モエ・エ・シャンドンは1743年にクロード・モエによって創立され、270年以上にわたりシャンパーニュ地方を代表する最高級メゾンとして君臨しています。氷を入れたロックスタイルで飲むことを想定した「アイス・インペリアル」は、トロピカルフルーツのような甘い香りと、シナモンやハーブなどの甘いスパイスを思わせる複雑なニュアンスがあり、香りが豊かで、凝縮感のある味わいが楽しめる特別なシャンパーニュです。今回も実際に氷を入れて、デザートの桃のコンポートと味わいました。