Via Vino No. 103 "Sushi & Wine VII"   
<すしとワイン7>


<日時・場所>
2025年10月25日(土)18:00〜21:00 銀座「壮石」 
参加者:13名
<今日のワイン>
 辛口・白・発「シュティフト・クロスター・ノイブルク・クロスターゼクト」
 辛口・白「ヒードラー・グリュイナー・フェルトリナー・レス 2023年」
辛口・ロゼ「セッツァー・イン・ピンク・ロゼ」 
辛口・赤「リネッツル・ルーヴィン・カルヌントゥム」
辛口・赤「マラート・ピノ・ノワール・クラシック」
<今日のディナー>  
 
前菜・江戸五珍(小鯛のなます/湯葉の蟹あんかけ/イチジクのごまだれ) 
お造り(マグロ/カツオ)
子持ち鮎と野菜の炊き合わせ
毛蟹の甲羅揚げ
江戸前鮓(トロ(赤酢)、アジ、ヒラメ、スミイカ、サバ、アナゴ(赤酢))としじみの赤出し
甘味(塩アイス)

 

     


「すしとオーストリアワイン」
ハプスブルク帝国の輝かしい歴史に支えられたオーストリアワイン。
素材の良さを活かしつつ、最低限の職人技を加えていくこと。
その純粋さと深遠さは、日本の食文化にも通じるものがあります。

1.品種について

【ヴェルシュリースリング Welchriesling】

 有名なリースリングとは無関係とされている品種で、ヴェルシュとは「外国の」という意味です。成熟が遅く酸を充分に備え、軽いボディの比較的香りの高いワインを造ります。生産性の高さから東ヨーロッパで多く栽培されていますが、オーストリアではブルゲンラント州ノイジードラー湖畔で遅摘みにより濃厚なレベルの高いワインが産み出されています。
【グリューナー・フェルトリナー Gru¨ner Veltliner】
 グリューナー・フェルトリナーは、オーストリア独自の最も重要な品種で、全栽培面積の約1/3を占めています。アルザスのスタイルのように、香りが高く存在感のあるワインを造ることが可能で、ワインは基本的に辛口でフルボディ、良く凝縮したものは若干スパイシーで、ブルゴーニュの白の銘醸品のような特色を醸し出すことがあるとされています。
【ポルトギーザー Portugieser】
 この品種は1700年代後半にポルトガル北部から、オーストリアの農園に移植され、その後1800年代にドイツに広がったと言われていますが、その由来は実証されていません。樹勢が強く耐寒性のあるこの黒葡萄品種は、色が淡く酸の低い赤ワイン向けとされています。栽培のしやすさから、中央ヨーロッパ全域に広まりました。
【ツヴァイゲルト Zweigelt】
 1922年にクロスターノイブルグ研究所のツヴァイゲルト博士によって、ブラウフレンキッシュとザンクト・ラウレントから開発された交配品種です。前者の刺激的な味わいと後者のボディを受け継ぎ、オーストリアで最も広く栽培されている黒葡萄品種です。やや強めのタンニンを持ち、穏やかな酸が感じられるフルーティーな味わいが特徴です。1970年には北海道にも導入され、赤ワイン用品種として多く栽培されています。
【ピノ・ノワール Pinot Noir】
 フランス、ブルゴーニュを代表する赤ワイン用品種で、明るく透明感のある色合い、イチゴやサクランボ、スミレを思わせる華やかな香りと、低いタンニン、高い酸が特徴です。ドイツ語圏では「シュペートブルグンダー (Spa¨tburgunder)」、またオーストリアでは「ブラウブルグンダー (Blauburgunder) 」とも呼ばれています。オーストリアにおいて、1999年から2009年までの10年間で栽培面積は6割近く増加しました。

2.すしとワイン
 一般的には、酸味の爽やかな白ワインと、脂が少なくさっぱりした味わいの白身魚は相性が良く、苦渋味を持つ赤ワインと、脂がのった濃厚な味わいのマグロのような赤身魚も合うとされています。
 ワインと魚介は合わせにくいと言われますが、一説には、ワインに含まれる鉄イオンが、干物などに含まれる(E,Z)-2,4-ヘプタジエナール(DHAが酸化したもの)と反応して生臭さを発生させるとのこと。また一説には、ワインに微量に含まれる二酸化イオウが、魚介のDHAと反応してアルデヒドが発生し不快臭を感じさせるとも言われています。鉄分をあまり含まない白ワインや、二酸化イオウ含有量の低い自然派ワインが合わせやすい理由として説明されています。

3.試飲


「シュティフト・クロスター・ノイブルク・クロスターゼクト」  (タイプ:発泡性・白・辛口、品種:ヴェルシュリースリング 60%+グリューナー・フェルトリーナー40%、産地:オーストリア/ウィーン)
 1114年にアウグスティヌス派修道院のなかに建てられたクロスター・ノイブルクは、オーストリアで最も古い醸造所のひとつであり、信者から寄進された108haの畑は最大規模を誇ります。2009年5月には秋篠宮両陛下も訪問されました。9カ月間以上酵母とともに寝かせることによって生まれる調和の取れた風味が印象的なこちらのスパークリングは、青リンゴや柑橘系の爽やかな風味と酸味に、弾けるミネラル感があります。


  

「ヒードラー・グリュイナー・フェルトリナー・レス」  (タイプ:白・辛口、品種:グリューナー・フェルトリナー100%、産地:オーストリア/ニーダーエスタライヒ州)
 1856年に設立された、自然農法による完璧なワイン造りに尽力する老舗のワイナリーの一つです。畑での自然農法はもちろんのこと2005年よりすべてのワインを自発的発酵に切り替え、一部で自発的なMLFを促すなど極力葡萄に手を加えない自然な醸造も行っています。ステンレスタンクにて熟成。白い花やりんご、洋ナシの香りに、わずかにハーブのニュアンスが感じられ、味わいにスモモやイエローアップル、溌剌とした酸味があります。


    

「セッツァー・イン・ピンク・ロゼ」  (タイプ:ロゼ・辛口、品種:ピノ・ノワール、ポルトギーザー、ツヴァイゲルト、産地:オーストリア/ニーダーエスタライヒ州)
 銀座・壮石のオーナー兼ソムリエである岡田さんがオーストリアで出会い、その後に輸入が決まったワイナリーです。1705年に創業、約22haに広がる畑は、ホーエンヴァルトの標高400メートルに位置し、新鮮で活気にあふれたワインを生み出す理想的な条件を提供しています。「セッツァー・イン・ピンク」は、軽い味わいのロゼで、どのような料理にもマルチに合います。キリッとした酸とミネラル、桃やオレンジのような果実味もあります。

 

「ネッツル・ルーヴィン・カルヌントゥム」  (タイプ:赤・辛口、品種:ツヴァイゲルト100%、産地:オーストリア/ニーダーエスタライヒ州)
 ローマ帝国時代にオーストリアで最初にワインが造られたと言われるカルヌントゥムの地で、赤ワインの生産者として確固たる地位を持つネッツル。年間18,000本を生産し、2014年から化学肥料を使わない有機栽培を始めています。「ルーヴィン・カルヌントゥム」は、良い年しか造られない、生産者のフラッグシップ的なワインです。9月の終わりに手摘みにて収穫。天然酵母を使用し、温度管理されたステンレスタンクで発酵させています。ブラックチェリーやラズベリーにロースト香が混じります。フレッシュ感もあり、柔らかなタンニンが感じられます。煮穴子、赤身のヅケ、きんきの煮つけ等とも好相性です。

   

「マラート・ピノ・ノワール」  (タイプ:赤・辛口、品種:ピノ・ノワール、産地:オーストリア/ニーダーエスタライヒ州)
 マラートは、1722年に設立された家族経営のワイナリーで、ドナウ川の南岸にあるシュティフト・グートヴァイグ修道院の丘陵地帯に拠点を置き、隣接するヴァッハウ地域にも畑を所有、多様な土壌からユニークなワインを生み出しています。「ピノ・ノワール・クラシック」は、30〜40年の樹齢のブドウを使用し、主に新樽で18カ月熟成されています。野生ベリーのコンフィのようなジューシーなアロマに、繊細なハーブのスパイスが縁取り、オレンジの皮やフローラルなニュアンスも感じられます。心地よいタンニンと酸が見事なレイヤーとなり、エレガントな味わいをより引き立てています。ブルゴーニュの村名クラスと見紛うほどの、官能的でエレガントな味わいを堪能できます。

<今回の1冊>
   
【季刊誌「Winart No.122 オーストリア」(美術出版社 )】(2025年刊行)
  「季刊誌Winart」は、1999年に「デザインの現場」の別冊として発刊されたワイン専門誌で、創刊号からいまだに定期購読している雑誌です。最新号の2025年秋号・No.122では「オーストリアワイン」が特集されています。銀座「壮石」さんは、オープン当初から「オーストリアワイン」を推していますが、今まさに「知られざる銘醸地」として注目されていることが、この最新号を一読しても分かります。フランスのシャンパーニュやブルゴーニュ、ボルドーワインがなかなか入手困難となる中で、優れた品質のオーストリアワインは、まさに今選ぶべきワインであると言えるのです。


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