Via Vino No. 104 "Sherry History"   
<シェリーの歴史>


<日時・場所>
2025年11月8日(土)18:00〜21:00 銀座「しぇりークラブ」 
参加者:7名
<今日のワイン>
 辛口・マンサニージャ「バルバディージョ・マンサニージャ・ムイ・フィナ」
 辛口・フィノ「オスボルネ・フィノ・キンタ」
辛口・アモンティリャード「ボデガス・イダルゴ・ラ・ヒターナ・アモンティリャード・ナポレオン」 
辛口・オロロソ「バルバディージョ・ドライ・オロロソ」
辛口・パロ・コルタード「ゴンザレス・ビアス・レオノール・パロ・コルタード」
甘口・ペドロ・ヒメネス「ボデガス・ディオス・バコ・オックスフォード 1970 ペドロ・ヒメネス」
<今日のディナー>  
 
マグロと韮のエンパナディージャ、マッシュルームのセゴビア風、ウサギのリエット 
牡蠣のアヒージョ
スペイン風ネギ鮪鍋
マグロテールのグリル
ポルチーニとスペアリブのパエリア
洋梨のコンポート

 

     


「シェリーの歴史」
大航海時代のスペインの躍進を支えたのは、
ヘレスの酒精強化ワインでした。
ヨーロッパの飛躍的な発展の裏に
ワインの歴史を垣間見ることができます。

1.シェリーの歴史

 スペインでは「ヘレス」という地名がそのままワインの名称となっています。「ヘレス」の地は元々この地を治めていたイスラム教徒によって「シェリッシュ」と呼ばれており、そこから転じて「シェリー」と呼ばれるようになりました。
 レバンテ(東風)とポニエンテ(西風)の重なるヘレス地方は、年間を通じて温暖な気候となり、そこで育つ葡萄は糖度が上がり高いアルコール度数となりました。葡萄の糖度の高さがワインの日持ちにつながることに気付いた造り手の間で酒精強化が始まったと言われています。
 大航海時代には劣化を防ぐための酒精強化が定着し、1519年マゼランの世界航海の時には、265名の乗組員に対して253樽のシェリーが積み込まれ、その金額は全航海予算の約1/6を占めていたと言われています。1588年にスペインの無敵艦隊をイギリスが破ってからは、シェイクスピアの時代にイギリスに広まりました。
 17世紀はシェリー・ビジネスが盛んとなります。記録の上で一番古いのは、「CZ」ブランドで、1653年には既に葡萄とワインの税金を払ったという記録があります。このメーカーはつい最近まであったJ.M.リベロの前身でした。 

 B.C.1000〜700年 フェニキア人による葡萄栽培導入
 711年 イスラムの侵入
 1236年 コルドバ陥落
 1248年 セビリア陥落、イスラム圏はグラナダが残る
 1264年 レコンキスタ〜アルフォンソ10世によるヘレスの征服
 1338年 英仏百年戦争の勃発、英国でヘレスのワインの需要が高まる
 1469年 カスティーリャ王国とアラゴン王国の統一
 1483年 スペインにおいて葡萄栽培者やワイン醸造者達によって協同組合が作られる
 1485年 英国のヘンリー7世による航海条例〜英国への輸入は英国籍船のみに認められる
 1492年 グラナダ陥落、イスラムの撤退
 1519年 マゼラン、アンダルシア州サンルーカル・デ・バラメダを出航
 1587年 英国のフランシス・ドレイク、カディスを攻略、三千樽のシェリーを奪う
 1611年 メキシコ・フィリピン経由でシェリーが日本にも運ばれる
 1651年 オリバー・クロムウェルによる航海条例、輸入品の英語化が進む
 1653年 最も古いCZブランドによる税金支払いの記録
 1678年 初めて「ポートワイン Vinho do Porto」の表記が登場
 1682年 英国人フィッツ・ジェラルドによる産地に取引会社を設立した最初の外国人の記録
 1781年 マンサニージャの登場
 1823年 フィノの登場、ガルウェー社のフィノ、サン・パトリシオ輸出される
 1834年 ヘレスのギルドの解散、シェリーの貯蔵熟成が自由化される
 1894年 フィロキセラ、ヘレスを襲う
 1933年 スペインのワイン法制定
 1935年 ヘレスD.O.の制定
 1983年 巨大企業ルマサ、国家に接収される

2.シェリーの製法

【マンサニージャ、フィノ】
 まず基本となる辛口白ワインをパロミノで通常のアルコール発酵で造ります。そしてそれを樽へ移して熟成させますが、満量充填せずにワインがやや空気に触れる状態にします。これにより「フロール」と呼ばれる産膜酵母による膜が液面に発生します。ワインは15%までアルコールが添加され、これにより酸化による褐変が防止され、黄色で透明なすっきりとした辛口の「フィノ」が造られます。「サンルーカル・デ・バラメーダ」で造られるフィノは「マンサニージャ」と呼ばれますが、実は「マンサニージャ」の方が歴史が古いとされています。
【アモンティリャード、オロロソ、パロ・コルタード】
 上記と同様にまずパロミノから白ワインが造られますが、フロールが付かなかった、もしくは敢えて付けなかった物は、18%までアルコールが添加され、これによりフロールの発生は抑えられるため、酸化の影響で褐色になり香ばしい風味の強い「オロロソ」となります。一方フィノ・タイプに17%まで酒精強化し、フロールを消して熟成されたものは「アモンティリャード」となります。「パロ・コルタード」は、フィノとして醸造していたものが、一部フロールが自然消滅して酸化発酵が始まり、これを酒精強化して熟成させたものです。スペイン語で斜線を意味するパロと、カットを意味するコルタドに由来する名前で、フロールが無くなった原酒樽に斜線で印を入れることから名付けられました。香りはアモンティリャード的、味はオロロソ的になるとされています。
【ペドロ・ヒメネス】
 「ペドロ・ヒメネス」は、単一品種をベースに造られる甘口シェリーで、収穫後に天日干しされ、糖度を極端に高めた状態で圧搾、わずかに発酵させた後に酒精強化され、甘さをかなり残した状態で製品化されます。300〜400g/L近い糖度を持つ、「黒蜜」のような甘さが特徴です。

3.試飲


「バルバディージョ・マンサニージャ・ムイ・フィナ」  (タイプ:辛口/マンサニージャ、品種:パロミノ100%、産地:スペイン/サンルーカル・デ・バラメダ、アルコール度15%)
 1821年、メキシコの独立の年にスペインへ帰国したベニーニョ・バルバディージョは、サン・ルーカルでシェリー・ビジネスを始めました。1827年には初めてマンサニージャの樽をフィラデルフィアへ出荷、早くからフィノとの差別化を図ったメーカーとして知られています。「Muy Fina(ムイ・フィナ)」はスペイン語で、直訳すると 「とても上品な」という意味です。青リンゴやカモミールのようなアロマがあり、フルーティでフレッシュ。酵母由来のミネラル感や持続的な酸味を持ち、旨みとコクを感じる味わいが特徴です。


  

「オスボルネ・フィノ・キンタ 」  (タイプ:辛口/フィノ、品種:パロミノ100%、産地:スペイン/ヘレス、アルコール度15%)
 1772年にイギリスのトーマス・オズボーンが創業したオスボルネ社は、スペイン国内で二番目に歴史のあるシェリー醸造会社です。その後オズボーンはプエルトに闘牛場を造り、トレードマークの「トロ(雄牛)」は、1956年に画家のマスエル・プリエトが同社のブランデーの広告用にデザインしたもので、スペイン全土の国道沿い約90箇所に巨大な看板が立てられています。「キンタ」は、ポルトガル語のキンタ(畑)とは無関係で、「5番目」すなわち瓶熟成5年のシェリーを意味し、同社の「フィノ」よりもより香ばしく、まろやかな味わいとなっています。


    

「ボデガス・イダルゴ・ラ・ヒターナ・アモンティリャード・ナポレオン」  (タイプ:辛口/アモンティリャード、品種:パロミノ100%、産地:スペイン/ヘレス アルコール度17.5%)
 1792年に、ホセ・バンタレオン・イダルゴ氏によってアンダルシアに設立されたシェリーメーカーです。マンサニージャ・ラ・ヒターナを筆頭に数多くの賞を受賞する、スペイン国内でもトップブランドのひとつです。ラベルに描かれた、フランスの皇帝ナポレオンがインパクトと高級感を漂わせるシェリー酒で、8年間の熟成による、複雑でコク深く豊かな風味が楽しめます。すっきりとした辛さのなかに、ローストされたような芳ばしさやほのかな甘さ、さらに酸味が複雑に絡み合う深く豊かな味わいも楽しめます。

 

「バルバディージョ・ドライ・オロロソ」  (タイプ:辛口/オロロソ、品種:パロミノ100%、産地:スペイン/サンルーカル・デ・バラメダ、アルコール度18%)
 2世紀近い歴史を経てなお、家族だけで営んでいるボデガで、700haものぶどう畑を所有するバルバディージョが造るオロロソです。オロロソは、パロミノ種のブドウを使用して醸造して醸造し、フロール(産膜酵母)なしで酸化発酵させており、フィノと違って産膜酵母の風味はなく、ナッツやオーク、カラメルなどの風味が特徴となっています。琥珀色の濃い色をしています。

   

「ゴンザレス・ビアス・レオノール・パロ・コルタード」  (タイプ:辛口/パロ・コルタード、品種:パロミノ100%、産地:スペイン/ヘレス、アルコール度20%)
 1835年、マヌエル・マリア・ゴンザレス・アンヘルが、叔父のホセ・アンヘル・デ・ラ・ペーニャの助言を受けて創設したコンザレス・ビアス社は、1844年発売の「ティオ・ペペ」で有名ですが、その商品名は文字通りこの叔父(ティオ=叔父、ペペ=ホセの愛称)にちなんで付けられています。「レオノール」は、創業者 マヌエルの親族にあたる レオノール・ゴンサレスに由来するとされています。伝統的なソレラ・システムのもと、アメリカ産オーク樽で12年間の熟成を経て、明るい黄金色で樽熟成の心地よいアロマとパワフルでドライな口当たりのシェリーに仕上がっています。


   

「ボデガス・ディオス・バコ・オックスフォード1970ペドロ・ヒメネス」  (タイプ:甘口/ペドロ・ヒメネス、品種:ペドロ・ヒメネス、産地:スペイン/ヘレス、アルコール度17.5%)
 1264年にレコンキスタの戦いでヘレス奪還時に封土騎士に任じられたパロミノ家に由来し、その名は品種のパロミノの名前の起源とされています。その後1765年パロミノ・ヴェルガラ社はプエルトで創業、以後ルマサ社、ハーヴェイ社、そして1992年ホセ・パエス・モリージャに買収され現在に至ります。「オックスフォード 1970」は、「1970年に始まった “Oxford” という名前のソレラから詰めた」ことを意味します。ソレラ名にはクラシックな欧州都市名・文化的象徴名をつける慣習があり、“Oxford”=英国の伝統と知性・格調 を象徴する名前として使われています。黒蜜を思わせる濃厚な極甘シェリーです。

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