Via Vino No. 18 "North Italy"<北イタリア>

 

<日時・場所>
2008年6月21日(土)12:00〜15:00 目黒「SANTO SPIRITO」 
参加者:25名
<今日のワイン>
ヴェネト・スプマンテ「カルペネ・マルヴォルティ・プロセッコ・ディ・コネリアーノ」
フリウリ・白「コッレ・デューガ・コッリオ・トカイ・フリウラーノ2006年」
ヴェネト・白「モンテ・トンド・ソアヴェ・クラッシコ・スーペリオレ・カセッテ・フォスカリン2005年」
ヴェネト・赤「ヴィヴィアーニ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ・スーペリオレ・リパッソ2004年」
フリウリ・赤「ボルゴ・サン・ダニエーレ・アルビス・ロス2004年」
<今日のランチ>
海峡サーモンのマリネ、帆立の自家製スモークとホワイトアスパラガスのサラダ仕立て〜西洋わさびのマヨネーズ和え
リボッリータ(キャベツ、白インゲン豆、ビエトラなどお野菜を煮直し食べるスープ)
空豆とブリアンゼッタハム・パルミジャーノのタリアテッレ 豚肩ロース、レバー、パンチェッタのトマト煮〜ポレンタ添え
桃のゼリー、ヨーグルトのシャーベットのせ

     


1.はじめに
  ルキノ・ヴィスコンティの映画「ベニスに死す」では、冒頭に画面一杯映し出される水の都ベニスの風景にまず魅せられます。マーラーの交響曲第5番第4楽章「アダージェット」の音楽と共に、ゆっくりと流れるように画面 を横切る、灰色の空と湿っぽい風……大学生の頃リバイバルでこの映画を観た時、それはまさに他の何処でもない、ヨーロッパならではの風景のように思われました。時は1911年、主人公グスタフ・アッシェンバッハがベニスを訪れたのは5月の下旬、そしてその後1ヶ月ほど滞在したことになっています。ワイン会を開催したのが6月下旬、丁度同じ時期に当たるわけです。  
  ヴェネツィア(ベニス)は、多くの運河に囲まれた海洋都市ですが、その内陸にはヴェローナとコネリアーノという2つの大きなワイン産地があり、前者はソアヴェヴァルポリチェッラ、後者はプロセッコの産地として有名です。ヴェネトの隣に位 置するフリウリ・ヴェネツィア・ジュリアは、オーストリアのハプスブルク家の支配下にあったために早くからメルローやカベルネ、ソーヴィニヨン・ブランなどのフランス系品種が導入されましたが、一方でトカイ・フリウラーノ、レフォスコ、ピニョーロ、ピコリットなどの地場品種を大切に守ってきました。  
  「ベニスに死す」は、イタリア人のヴィスコンティが、ヴェネツィアを舞台に、ドイツ人トーマス・マンの原作を、ウィーンで活躍したグスタフ・マーラーの音楽を使って仕上げた作品です。イタリア、ドイツ、オーストリア……それぞれ異なる印象を持つこれらの国々も、歴史的に見ればかなり密接な関係性を持っています。イタリア北東部は、国境沿いの大国の影響を強く受けた結果 、外来品種が多く導入され、それと同時に昔から多くのワインを輸出してきた地域ですが、それだけに、その中で大切に受け継がれてきたイタリア系地場品種は、非常に興味深い存在と言えるのです。

2.スパークリングワインのテイスティング
●シードルのような軽やかさ、ヴェネトの「プロセッコ」で乾杯!
  
 最初の乾杯は、「カルペネ・マルヴォルティ・プロセッコ・ディ・コネリアーノ」です。ヴェネトで作られるプロセッコ種100%の辛口のスプマンテ(イタリアのスパークリングワイン)です。  
  プロセッコは、果房はやや大きめで、皮は薄くて丈夫、晩熟型の白品種です。主に辛口または弱甘口の発泡性ワインの原料となります。紀元前1世紀頃の伝説では、初代皇帝アウグストゥスの皇后リウィアはPucinoというワインがお気に入りで、トリエステ地区からローマへ運ばせていたと言われますが、このPucinoがプロセッコ種だとされています。実際トリエステにはProseccoという名の町が存在するそうです。  
  イタリアで初めてシャルマー式によるスパークリングワインを生み出したカルペネ・マルヴォルティは、シャンパーニュ式にもいち早く取り組むなど、イタリア・スパークリングワインの歴史に大きな役割を果 たしてきました。柔らかく軽やかな泡を持つ、フルーティーでとても飲みやすいスプマンテで、青リンゴの風味がありどこかシードルにも似た味わいを持っていました。

3.白ワインのテイスティング
●「トカイ・フリウラーノ」最後のヴィンテージと、力強い「ソアヴェ・クラシコ」 
   
 フリウリ・ヴェネツィア・ジュリアの「コッレ・デューガ・コッリオ・トカイ・フリウラーノ2006年」と、ヴェネトの「モンテ・トンド・ソアヴェ・クラッシコ・スーペリオレ・カセッテ・フォスカリン2005年」を用意して頂きました。  
  トカイ・フリウラーノは、中程度の果房で、丈夫な果皮を持つ、中期成熟型の白品種です。三大貴腐ワインとして有名なハンガリーのトカイと関係が深い品種です。トカイの原料となる品種はフルミントと呼ばれますが、17世紀前半、フリウリのフォルメンティーニ伯爵が娘をハンガリーに嫁がせた際、葡萄の苗木が持ち込まれたとされ、フルミントの名は「フリウラーノ・ディ・フォルメンティーニ」に由来すると言われています。もっともこれには異説もあり、ハンガリー側ではトカイがイタリアへ移されたと主張しています。1993年、EUとハンガリーは品種名トカイの呼称について異議を申し立て、結果 としてイタリアでのトカイの呼称使用は禁止され、2006年、トカイ・フリウラーノに代わりフリウラーノが品種登録されました。フランスの分類学者はフリウラーノがソーヴィニヨン・ブランと縁戚 関係にある品種だと主張していますが、イタリアの分類学者はこれに反対しています。  
  コッレ・デューガはコッリオ丘陸部のスロヴェニア国境沿いに位置するワイナリーです。年間生産本数は約6000本しかありません。このワインはステンレスタンクで6ヶ月熟成させており、非常にアロマティックで、ハーブや少し熟し始めたリンゴなど、この品種特有の香りがあります。ほどよい酸が心地良く、バランスに優れた、いかにも北イタリアらしい味わいの白ワインでした。2007年以降、「トカイ・フリウラーノ」の名称は名乗れなくなったので、この2006年物はトカイ・フリウラーノとしての最後のヴィンテージとなります。  
  今回はお店の協力を得て、一つのワインに一皿のお料理を合わせて楽しむことができました。フリウラーノに合わせたお料理は海峡サーモンのマリネ、帆立の自家製スモークとホワイトアスパラガスのサラダ仕立てです。アロマティックなフリウラーノが、サーモンや帆立といった魚介類と季節物のホワイトアスパラガスの旨みを引き立ててくれました。  
  一方、ガルガーネガは、果房が大きく、果皮は黄金がかった黄色で、日が当たる場所では琥珀色に輝く、中期成熟型の白ワインです。起源はギリシャ、エトルリアと言われており、15世紀末には既にその名が知られ、甘口ワインを造る高貴な品種として認められていました。ソアヴェ・クラシコは、急峻な段々畑の下に痩せてもろい火山性の多孔質石灰岩(トゥーファ)があり、他のソアヴェ地区とは区別 されていますが、多産系のガルガーネガはこの地では生育に歯止めがかかり、アーモンドのような独特の香りを身に付けます。  
 なお、ソアヴェのもう一つの品種、トレビアーノ・ディ・ソアヴェは、親戚 筋で多産系のトレビアーノ・トスカーノとは異なり、ワインに力強さを与えるとされています。
 ヴェネトのワイナリー、モンテ・トンドでは、今までワインはソアヴェのみ造っていましたが、2000年からはヴァルポリチェッラを、そして将来的にはアマローネなども造る予定とのことです。さらには、マルケ州の葡萄ヴェルディッキオも植える予定だそうです。輝きのある黄金色で、前述のコッレ・デューガ・コッリオ・トカイ・フリウラーノとは異なり、短期間のバリック熟成を経ているため、ほのかにバターやローストの香りがします。まろやかで厚みのある酸と程よい苦味が特徴的で、普段飲み慣れたソアヴェとは全く印象の異なるワインでした。  
 このソアヴェ・クラシコには濃厚な野菜のスープ、リボッリータを。ソアヴェの樽の風味が濃厚なスープと意外な相性を見せてくれました。

4.赤ワインのテイスティング
●リパッソ製法で作るヴァルポリチェッラと、土着品種ピニョーロ主体のアルビス・ロス
   
 ヴェネトの「ヴィヴィアーニ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ・スーペリオレ・リパッソ2004年」と、フリウリの「ボルゴ・サン・ダニエーレ・アルビス・ロス2004年」を用意して頂きました。  
  ヴァルポリチェッラの主要品種はコルヴィーナです。この葡萄は、果房が中程度で、厚くて丈夫な濃い青紫色の果 皮を持つ、中期〜晩熟型の品種です。酸は高めで、痩せている土地ほどプラムやキャラメルなどのアロマを持つようになります。紀元前2世紀頃まで記録をさかのぼることができる品種で、19世紀、ヴェローナ地方の大切な品種コルヴィーナ・ヴェロネーゼは他のコルヴィーナ種と区別 されるようになりました。名前はその紫を帯びた黒い色から、Corvo(カラス)に由来すると言われています。  
  なお、ヴァルポリチェッラは通常、コルヴィーナにロンディネッラ、モリナーラをブレンドします。ロンディネッラは比較的歴史の浅い、収量 のとても多い品種で、名前の由来は色がRondine(ツバメ)に似ているからとされています。モリナーラは色がやや薄く、表面 に粉をふりかけたように蝋分が多く付着していることから、Mulino(粉ひき場)がその名の由来とされています。  
  ヴィヴィアーニの畑は、標高350〜400mの南南東の斜面に広がる最高の条件下にあり、アマローネやレチョート用の葡萄を乾燥させるのにも最適な区画となっています。しなやかで甘いプルーンのような香りがあり、滑らかで口当たりが良く、タンニン、酸はしっかりと感じられ、ほどよいボリューム感があります。イタリアワイン特有の野性味が強く感じられるワインです。このワインはリパッソ製法で作られていますが、リパッソとは、『元に戻す』という意味で、一度醗酵の終わったワインにもう一度、アマローネの搾り粕を加えて再醗酵させるという、大変手間のかかる醸造方法です。アマローネの力強さとアロマをワインに与え、通 常の作り方では到達できないレベルに押し仕上げる効果があるとされています。  
  このヴァルポリチェッラには空豆とブリアンゼッタハム・パルミジャーノのタリアテッレで。ブリアンゼッタとは、2種類のスモークベーコンを縫い合わせた高級品のことだそうです。濃厚な味わいのパスタで、赤ワインとの相性も非常に良いものとなっていました。  
  アルビス・ロスの主要品種は、フリウリ・ヴェネツィア・ジュリアの土着品種、ピニョーロです。果 房は小さく、果皮が青黒く厚くて丈夫な、晩熟型の品種です。香りが強く、デリケートな味わいのワインとなります。14世紀には既に讃歌「Bacco in Friuli」の中に登場し、1823年には葡萄品種カタログにフリウリの葡萄として記載されていました。実成りが悪く農家には好まれませんでしたが、20世紀初頭に入りやっと再評価され、20世紀後半には絶滅寸前だったこの品種も何とか復活を遂げることができたのです。粒が詰まっており、Pignolo(松ぼっくり)に似ていたことからその名がついたと言われています。  
  ボルゴ・サン・ダニエーレは、1990年にできたばかりの新しいワイナリーで、D.O.Cコッリオとフリウリ・イソンツィオの境界線にある町、コルモンスにあります。ワインはマロラクティック醗酵後熟成され、各種別 にバリックと大樽で12ヶ月熟成させ、アッサンブラージュの後にノン・フィルターで瓶詰めされます。天然酵母、無農薬、有機栽培ですがあえてそれは申請していません。  
  アルビス・ロスの“アルビス”とはフリウリの言葉で「草」を意味しますが、これは葡萄の樹の列の間の自生の草のことで、この草は土壌を守り、葡萄の成長を程よく抑制する効果 があるとのことです。ピニョーロ55%、カベルネ・ソーヴィニョン25%、カベルネ・フラン20%で構成されていますが、カベルネ・フランで作られるワインに見られる、カシスやピーマン、グローブの様なスパイシーな香りが特徴的です。余韻の長い、エレガントなワインに仕上がっていて、土着品種の比率が高いにも関わらず非常に洗練された印象を受けました。フリウラーノやピノ・グリージョなど他品種にもこだわりを持ち、将来的にはピニョーロ100%でワインを造る予定だそうです。  
  メインディッシュの豚肩ロース、レバー、パンチェッタのトマト煮、ポレンタ添えと。ポレンタ (Polenta) はトウモロコシの粉を煮て粥状に仕上げたもので、濃い味付けの肉料理をまろやかに仕上げてくれます。主に小麦の生産に不適な北イタリアの寒冷な山岳地帯で主食とされてきたそうで、その意味ではまさに今回のテーマにうってつけの一皿。アルビス・ロスの持つスパイシーでヴェジタルな風味にぴったりのお料理でした。  
  デザートのヨーグルト・シャーベット付き桃のゼリーの後、希望者にはお店自家製のレモンチェッロと、一部の肩にはバジル酒も。レモンチェッロはレモンの皮をアルコール96度のウォッカ、スピリタスに漬け込んで作った甘いリキュールで、美しいグリーンのバジル酒も同じ手法で作られたとか。アルコールは30-40度に薄められてはいるものの、かなり強烈で、ワインでは酔い足りなかった方々もこの食後酒のお陰でほろ酔い気分になれた模様でした。
  

5.北イタリアワイン・ヴェネツィア共和国の歴史
726年  ヴェネツィア共和国、東ローマ帝国から自治権を獲得
1099年 第1回十字軍に参加
1204年 第4回十字軍に参加、コンスタンティノポリス占領、クレタ島獲得
1381年 ヴェネツィア共和国、ジェノヴァ共和国との戦役に勝利
1489年 ヴェネツィア共和国、キプロス島獲得
1495年 農業研究書の中にガルガニカ(ガルガーネガ)記載される
1571年 オスマン帝国によりキプロス島陥落
1632年 フォルメンティーニ伯爵、トカイにフリウラーノをもたらす
1669年 オスマン帝国にクレタ島を奪われる
1773年 コネリアーノで栽培されていた葡萄がプロセッコとして記録される
1797年 ナポレオン侵攻によりヴェネツィア共和国滅亡
1815年 ウィーン会議によりオーストリア帝国領となる(ロンバルド・ヴェネト王国)
1823年 葡萄品種カタログにピニューロが記載される
1824年 コルヴィーナ・ヴェロネーゼ、他のコルヴィーナ種と区別される
1848年 メッテルニヒ失脚、ヴェネト共和国(ヴェネツィア臨時政府、第2共和国)設立
1866年 イタリア併合
1968年 イタリア新ワイン法、ソアヴェの生産地域は3倍に拡大される
2006年 トカイ・フリウラーノがフリウラーノに改名される

 現在のヴェネト、フリウリを含む領土を持っていたイタリア最古の海洋都市国家ヴェネツィア共和国は、強大な海軍力と交易力を背景に、「アドリア海の女王」としてヨーロッパ世界に君臨していました。最盛期にはクレタ島やキプロス島をも領有し、弱体化した東ローマ帝国に代わって東地中海を制するようになりますが、やがてオスマン帝国の進出によりその権威は失墜していきます。これらの時代背景はワインにも影響を与えており、例えば甘口のレチョート・ディ・ソアヴェは、オスマン帝国の侵入によりギリシャ産の甘口ワインが手に入らなくなったため、地元で似た物を生産するようになったのがその始まりだとされています。  
 フリウリ・ヴェネツィア・ジュリアにはメルローのようなフランス系品種が多く栽培されていますが、その歴史は150年近くも昔にさかのぼることができます。ヴェネツィア共和国がオーストリア帝国領となると、貴族達は競って宮廷のフランス料理に合わせるためにフランス系品種を植えました。本来白ワインの産地であったこの地方は、オーストリアにとっては最南端の領土で、貴重な赤ワインの産地として位 置付けられたのです。  
  早くから統一国家として発展してきたフランスと異なり、イタリアは19世紀に統一されるまではそれぞれの地域が完全に独立した国家として、ハプスブルク朝やブルボン朝、東ローマ帝国やオスマン帝国に干渉されながら発展してきました。独自性を維持しながらも、度重なる侵略により同化や適応を繰り返すことによって獲得された国際性……それはそのまま、地場品種と国際品種のせめぎ合いの中で、土地に根差しつつも土着に安住しない、イタリアワインの持つ独自性に繋がっていくように思われます。  

6.おわりに
 イタリアにおける土着品種の数は二千種類を超えるとも言われており、他のワイン産出国に比べて圧倒的に多くなっています。地方によって歴史的背景が異なり、南北に長く、海と山が近くにある、多彩 な自然環境に恵まれ、ワインが交易品としてよりも地場消費を中心に発展したためだと言われています。  
  1980年代のイタリアブームで話題になったのは、スーパータスカンを始めとするフランス系品種を使ったワインでした。その先陣を切ったとされるトスカーナの「サシカイア」は、元々地場のイタリアワインよりもフランスワインを好んだ貴族の作った銘柄です。折しもファッショナブルでヘルシーなイタリア料理が脚光を浴びた時期でもあり、フランスと肩を並べるほど上質な国際品種使用ワインの登場は、それまでキャンティやソアヴェの普及品に代表されるような、安くて手頃というイタリアワインのイメージを覆したという点で非常に画期的な出来事だったのです。  
  しかしそれではフランスワイン市場に勝てないばかりか、近年力をつけてきた新世界ワインとの競争にも巻き込まれてしまいます。シャルドネ、メルロー、カベルネ……条件さえ揃えば赤道を越えた反対側の地域でも充分栽培可能なこれらの品種は、原産地呼称やユーロ高などの制約のない土地へ広がり、それだけに現在ではより高い水準が要求されるようになりました。  
  もはやフランス系品種を使って差別化を図ることは難しい……そこでイタリアの生産者達が注目したのが土着品種です。イタリアらしいイタリアワインを追及するならば、イタリア独自の品種を無視するわけにはいきません。何と言っても、イタリアの土着品種には、他の地域が追従できないほどの長い歴史があります。80年代以降急激に向上した生産技術を背景に、土着品種の隠れたポテンシャルが見出され、生産者達はその品種名を誇らしげにラベルに記すようになりました。この傾向は今後も続くと思われます。イタリアワインの分野では、これからも、今までにない新しいタイプのワインを楽しむことができるようになるでしょう。

<今回の1冊>
 
中川原まゆみ「土着品種で知るイタリアワイン」産調出版
 「イタリアワインは分かりやすい。もし分かりにくいと思うなら、それは入り口を間違っているからだ。フランスワインのように原産地呼称から入っても、新世界ワインのように国際品種から入っても、イタリアワインは見えてこない、分からない、おもしろくない。イタリアワインは、土着品種から知る。そこから、イタリアワインの本当の姿が見えてくる」  
  前書きで著者はそう断言しています。この本では、100種類の葡萄品種が1品種1ページ、写 真付きで丁寧に解説され、なおかつその品種を使用したワインのラベルも合わせて紹介されています。実際のところ、同じ品種でも全く違った味わいのワインになることが多いので、この100品種を相手にするのは並大抵のことではないと思いますし、その意味では「土着品種を知る」ことも決して楽な道のりではないでしょう。ただ、それぞれの品種が辿ってきた歴史を振り返りつつ味わうことで、イタリアワインは確かに、今までとは異なる姿を見せてくれます。イタリアンレストランに出掛ける時には鞄に忍ばせて置きたい一冊です。


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