Via Vino
No. 69 "Japanese Food with Sherry IV"
<和食とシェリー4>
<日時・場所>
2016年11月12日(土)12:00〜15:00 日比谷「なだ万讃アプローズ」
参加者:12名
<今日のワイン>
辛口・マンサニージャ「エミリオ・ルスタウ・アルマセニスタ・マンサニージャ・パサダ」
辛口・フィノ「ウィリアムズ&ハンバート・ドン・ソイロ・フィノ」
辛口・アモンティリャード「ウィリアムズ&ハンバート・ドン・ソイロ・アモンティリャード12年」
辛口・パロ・コルタド「ロマテ・レヘンテ・パロ・コルタード」
甘口・クリーム「ウィリアムズ&ハンバート・ドン・ソイロ・クリーム」
甘口・ポート「グラハム・ルビー・ポート」
<今日のディナー>
【先付】丹波黒豆胡麻豆腐、山葵、べっ甲餡/青菜と薄揚げ煮浸し、揚げスルメ
【お造り】2種盛り合わせ 野菜サラダ、胡麻ドレッシング
【メイン】季節野菜のフリット盛り合わせ/豚バラアスパラ巻、海老、フライソース、タルタルソース
【食事】白飯、香の物、赤出し
【デザート】グラマラッカ
1.和食とシェリーについて
「インターナショナル・シェリー・ウィークを和食で祝う!」
辛口から極甘口まで、多彩な味わいを持つシェリー。
現地では食前酒というよりもむしろ食中酒。
魚介類を中心とした日本料理とは抜群の相性を見せます。。
日本ではシェリー、特にドライ・フィノ・シェリーは、代表的な食前酒として扱われています。しかし、現地スペインでは、バルなどでタパスなどと共に気軽に食中酒として楽しまれています。
ヘレスやマンサニージャは海に近く、シェリーはそこで魚介類と一緒に飲まれています。アルコールが高く酸が低いところなども日本酒に通じるものがあり、日本でももっと親しまれて良いお酒だと言えるでしょう。
当初6月だった「インターナショナル・シェリー・ウィーク」、昨年からは11月となりました。ここ日本でシェリー・ウィークを祝うのなら、やはり日本料理がふさわしいでしょう。
今年のインターナショナル・シェリー・ウィークのイベント登録数は、すでに、世界25カ国から1,000件以上。世界各地のレストラン、バル、ホテル、ワインショップなどで、シェリーのテイスティング、ペアリングメニュー、シェリーカクテルのサービスのほか、シェリーをテーマにした様々なイベントが催されます。今年は、リトアニアからも初参加。また、ワールドワイドなガストロノミー都市パリ(フランス)でも、シェリーイベントが予定されています。。
2.シェリーとポート/シェリーと日本料理
【シェリーとポート】
シェリーとポートは、共に「酒精強化ワイン」に分類されます。通常のスティルワインに、高アルコールを加えてアルコール度を高めた物で、シェリーのように辛口のものと、ポートのように甘口のものがあります。
シェリーはスペイン、アンダルシア地方の酒精強化ワインで、多くがパロミノ種から造られる辛口ワインです。発酵が終了した段階で高アルコールを加えますが、熟成時に産膜酵母(フロール)が発生し独特の香味がついたものをフィノ、特にサンルーカル・ド・バラメーダで造られるものをマンサニージャと呼びます。一方、産膜酵母が発生せず、酸化熟成が進んだものをオロロソと呼びますが、他にもフィノがそのまま酸化熟成したアモンティリャードなどがあります。
ポートはポルトガル、ドウロ地方の酒精強化ワインで、ポルトガルで「港」をあらわすポルトがそのまま都市名となり、ポートという名前となっています。発酵の途中で甘味が残ったまま高アルコールを加えているため、より自然な甘さを備えています。。
【シェリーと日本料理】
日本料理は魚介が中心となり、ワインと合わせようとすると、特に生ものや干物、塩辛などは生臭さが強調されてしまう場合があります。ワインに含まれる鉄イオンや二酸化イオウが、魚介のDHA成分と結びつくことで、生臭さの原因となるアルデヒドなどの物質が発生するとされています。その点シェリーは、酸が低くアルコール度が高い点で日本酒や紹興酒に近い味わいをもっており、あらゆる魚介類と抜群の相性を見せてくれるのです。 マンサニージャは海に近いサンルーカル・デ・バラメーダで作られており、磯の香りとさっぱりした味わいが魚介の刺身に合うとされています。フィノはより味わいが強いので、すこし炙りを入れたサーモンや、塩味を利かせた焼き魚などが合います。
アモンティリャードは、コンソメとの相性が良いとされていますが、出汁を利かせた煮魚などの味も引き立ててくれます。オロロソは肉料理やチーズと合いますが、その意味では和風の上品な味付けの肉料理とも赤ワイン以上の相性を見せてくれます。
甘口シェリーであるクリームは、あんみつや和菓子など、砂糖の味を利かせた甘い物と合わせます。さらに濃厚な甘さを持つペドロ・ヒメネスは、黒蜜の代わりにもなるので、かなり幅広く応用できます。
3.ワインテイスティング
「エミリオ・ルスタウ・アルマセニスタ・マンサニージャ・パサダ」
(タイプ:辛口/マンサニージャ 品種:パロミノ100% 産地:スペイン/ヘレス アルコール度17%)
古くから伝わるボデガを持ち、代々受け継がれてきた素晴らしいシェリーをストックしている人々の事をアルマセニスタと呼びます。エミリオ・ルスタウ社では、彼らの生み出す素晴らしいシェリーを、アルマセニスタ・シリーズとしてリリースしています。全くブレンドを行わず、個々に瓶詰し彼らの名前と共に産地も明記しています。「マンサニージャ」は、潮の香りを感じる辛口で、乾いた、ピリっとした刺激的な香りがし、果実の豊かな味わいとコクが感じられます。
「ウィリアムズ&ハンバート・ドン・ソイロ・フィノ」
(タイプ:辛口/フィノ 品種:パロミノ100% 産地:スペイン/ヘレス アルコール度15%)
1877年、イギリス人のアレクサンダー・ウィリアムズが義父のアーサー・ハンバートと共に興した、スペイン最大のボデガを持つウィリアムズ&ハンバート社。同社が世界的名声を築き上げてきたルイス・パエス社の「ドン・ソイロ」ブランドを引き継ぎ、より優れた品質と長い熟成を重ねたシェリーとしてリリースしたのが「ウィリアムズ&ハンバート・コレクション」です。厳選したパロミノ種のファーストプレスの果汁のみを使い、ホワイトオーク樽でのソレラ・システムによる熟成を経て生まれる辛口のフィノで、かすかに緑色を帯び、輝く透明感のある黄色の色調があります。その香りはストレートで華やかで、すっきりとした酸味を持ちながらも丸みがあり、口中には熟成による繊細な複雑さが広がります。
「ウィリアムズ&ハンバート・ドン・ソイロ・アモンティリャード12年」
(タイプ:辛口/アモンティリャード 品種:パロミノ100% 産地:スペイン/ヘレス アルコール度18%)
「ウィリアムズ&ハンバート・コレクション」の1つですが、全面にフロールを生じさせてできるフィノに対し、アモンティリャードは樽の上面の70-80%しかフロールが生じないものを更に時間をかけて熟成させています。「12年」の表示はソレラ・システムによる平均熟成年数を示しています。トパーズのような魅力的な色合いと、ほのかな甘さを感じさせる豪直な香りが特徴 です。香ばしくローストしたニュアンスが 酸味と引き立てあい、その味わいを一層甘美に、かつ複雑にしています。中国料理やエスニックのスパイシーさや、熟成の進んだチーズ、ハム、ソーセージとの相性は最高です。
「ロマテ・レヘンテ・パロ・コルタド15年熟成」
(タイプ:辛口/オロロソ 品種:パロミノ100% 産地:スペイン/ヘレス アルコール度20%)
サンチェス・ロマテ・エルマノス社は、1781年に慈善家で当時有名だったホワン・サンチェス・デ・ラ・トーレ氏が創業した最も古いスペインのボデガスの一つです。ヘレス・ド・ラ・フロンテラ市の中心に位置し、1887年には最初のブランデーのソレラを組みました。「パロ・コルタド」は、フィノにさらに酒精強化して熟成させたもので、「アモンティリャード」と「オロロソ」の中間的な性格を備えています。ナッティーでオイリー。ドライ・アプリコットやドライ・フィグを思わせる力強い風味のシェリーです。
「ウィリアムズ&ハンバート・ドン・ソイロ・クリーム」
(タイプ:甘口/クリーム 品種:パロミノ+ペドロ・ヒメネス 産地:スペイン/ヘレス アルコール度18%)
「ウィリアムズ&ハンバート・コレクション」の1つですが、パロミノ種とペドロ・ヒメネス種から造られます。ペドロ・ヒメネス種を天日乾燥させてから搾汁。糖度の高い果汁を発酵させ、夏にソレラ・システムで熟成させます。香りとコクの強い、オロロソベースの甘口シェリーです。干したプルーンやレーズン、イチジクなどを思わせる香りは、リッチで滑らかな味わいと共に至福の時に誘います。決して甘すぎることのない絶妙な調和が心地よく余韻として残ります。
「グラハム・ファイン・ルビー」
(タイプ:甘口 品種:トウリガ・ナシオナル、トウリガ・フランカ他 産地:ポルトガル/ポルト アルコール度19%)
1820年、オポルト市の事務所のマネージメントを任されていたグラハム家の兄弟、ウイリアムとジョンは、取り扱ったポートワインが大人気を呼び、多くの発注依頼を取りつけます。これがグラハム社の始まりとされています。ファイン・ルビーは、鮮やかな深紅色と天然の心地良い甘さをもつルビー・ポートです。熟した赤い果実の香り、口に含むとブラックチェリーのフレーヴァーが広がります。凝縮した果実味とバランスの良さ、長い余韻を楽しめます。