Via Vino
No. 73 "Champagne V"
<シャンパーニュ5>
<日時・場所>
2017年8月19日(土)12:00〜15:00 広尾「マノワ」
参加者:18名
<今日のワイン>
白・辛口・発泡性「ピエール・ペテルス・ブラン・ド・ブラン・ブリュット・メニル・マグナム」
白・辛口・発泡性「アンリ・ビリオ・ブリュット・アンボネイ・マグナム」
ロゼ・辛口・発泡性「ルイ・ニケーズ・ブリュット・ロゼ」
赤・辛口「ドメーヌ・ギィ・ラルマンディエ・コトー・シャンプノワ 」
<今日のディナー>
【アミューズ】 北海道の帆立貝と長野県・大島農園のフルーツトマトのガスパチョときゅうりのジュレ、山梨県・芦安のクレソンアイスと共に
【魚料理】 鮎の2時間コンフィ、鮎の肝と山梨県・芦安の山椒の香り
【肉料理】伊豆・河津の夏鹿のロースト、鹿のジュとビーツのソース
【デザート】山梨県一宮町の桃のコンポート
1.シャンパーニュについて
「シャンパーニュを味わう!」
ロゼやスティル・ワインなど、様々な味わいのあるシャンパーニュ。
歴史的にはブルゴーニュと並ぶ正統派ワインの生産地。
ブランド志向のワインから万能の食相性を持つワインへ。
シャンパーニュといえば、スパークリングワインの代名詞です。現在は禁止されていますが、かつてはシャンパンやシャンペンの名はスパークリングワイン一般に対して普通に使用されていました。かの炭酸飲料「三ツ矢サイダー」も1968年まで「三ツ矢シャンペンサイダー」を名乗っていました。 本来ブルゴーニュ同様スティル・ワインの生産地だったシャンパーニュは、本来防ぐべき瓶内2次発酵がむしろ輸出先の英国でマーケティング的に成功したことにより、その生産量のほぼ全てがスパークリングワインとなりました。ある意味マーケティングとブランドが先行して発展した背景があるため、ロゼの製法やヴィンテージの扱いも他のワイン産地とは異なる独自の指標を持つことになったのです。 ブランドものとして有り難がられていたシャンパーニュは、近年ハレの日の特別な飲み物から、日常的な食事の席を彩るより身近なものとなっています。幅広い食相性を持ち、ロゼもあればスティルもあるシャンパーニュについては、ブランドの宣伝やイベント協賛よりも、むしろその味わいの多様性を楽しむ時代が到来したように思われます。
【ブラン・ド・ブラン】
ブラン・ド・ブランは、「白の白」、すなわち白葡萄のみで造られるシャンパーニュで、基本的にはシャルドネ100%のシャンパーニュを指します。シャンパーニュ地方では黒葡萄も白葡萄も圧搾と同時に果汁を分離し、果皮の色が付く前に発酵へ回せば白ワインとなるため、黒葡萄と白葡萄の混合が原則となります。その中で特に例外的に白のみで造るものをブラン・ド・ブランと名付けるようになりました。。
【ブラン・ド・ノワール】
ブラン・ド・ノワールは、「黒の白」、すなわち黒葡萄のみで造られるシャンパーニュで、基本的にはピノ・ノワールとピノ・ムニエから造られるシャンパーニュを指します。
【ロゼ・シャンパーニュ】
EUでは基本的に白ワインと赤ワインをブレンドしてロゼを造ることは禁じられていますが、シャンパーニュにおいては認められています。一方、他の地方ではロゼの多くはセニエ法で造られますが、これは黒葡萄を潰した後しばらく果皮を漬け込み、ロゼ色となった段階で早めに果皮を分離するもので、シャンパーニュの一部の造り手はこちらを採用しています。より繊細な果実味があるとされています。ロゼ・シャンパーニュの生産量は全体の1割にも満たない少なさで、大変貴重な存在であり、通常のロゼワインがカジュアルなイメージがあるのに対して、同じブランドでは常に高額に設定されています。
【シャンパーニュのスティル・ワイン】
シャンパーニュは殆ど全て瓶内2次発酵によるスパークリングワインですが、一部シャンパーニュ地域で認められているスティル・ワインがあります。それがコトー・シャンプノワとロゼ・デ・リセーです。 コトー・シャンプノワは、シャンパーニュ地方で認められているスティル・ワインAOCで、赤・白・ロゼがあります。 ロゼ・デ・リセーは、シャンパーニュ生産地の南限、オーブ地区のレ・リセーにおいて、ピノ・ノワールのみで造るロゼのスティル・ワインAOCです。
2.ワインテイスティング
「ピエール・ペテルス・ブラン・ド・ブラン・ブリュット・メニル・マグナム」(タイプ:白・辛口・発泡性、品種:シャルドネ100%、産地:フランス/シャンパーニュ/コート・デ・ブラン/ル・メニル・シュル・オジェ)
総じて高い評価を獲得する造り手、ピエール・ペテルスは、クリュッグ・クロ・デュ・メニル、サロンという二大カリスマシャンパーニュによって名声が築かれたメニル・シュル・オジェ村で、100年以上の歴史を持ち、注目を集めているレコルタン・マニピュランです。2005年にはフランスのベストセラーワインガイド「デュセール・ジェルベ」で、クリュッグ、ボランジェ、ドン・ペリニヨンに並ぶ5ツ星の最高ドメーヌに格付けされました。すっきりとした果実味のアタックからミネラルを含んだ酸がシャープに広がり、フレッシュでミネラルな余韻へと繋がっていきます。
「アンリ ビリオ・ブリュット・アンボネイ・マグナム」(タイプ:白・辛口・発泡性、品種:ピノ・ノワール67%+シャルドネ33%、産地:フランス/シャンパーニュ/モンターニュ・ド・ランス/アンボネイ)
アイ村と並び、優れたピノ・ノワールの双璧である特級アンボネイ村内で5ha弱の畑を家族経営で守り続けています。斜面中腹部を中心に18区画所有しており、最高の状態で熟成されたブドウを収穫する事が出来ます。創始者アンリ・ビリオにより1940年代から元詰めを始め、現在は息子セルジュとその娘レティシアと3世代に渡り引継がれています。畑はほぼオーガニックに近いスタイルで耕作され、レコルタン・マニピュランらしく畑仕事に力を注いでおり、樹齢の高いブドウの木から低収量を守って収穫されています。マロラクティック発酵は一切行われず、その重厚な酒質に酸がエレガントに調和されています。
「ルイ・ニケーズ・ブリュット・ロゼ」(タイプ:ロゼ・辛口・発泡性、品種:ピノ・ノワール64%+シャルドネ36%、産地:フランス/シャンパーニュ/モンターニュ・ド・ランス /オーヴィレ)
ルイ・ニケーズは醸造学校の同級生だったロールとクレモンの夫婦が造るシャンパーニュです。ルイ・ニケーズの4代目であるロールは学校卒業後に実家に戻り父親の元でシャンパーニュ造りを始め、クレモンはジャック・セロスで栽培・醸造を担当した後に、2012年よりルイ・ニケーズに加わり、妻ロールと共に4代目としてシャンパーニュを造る様になりました。ニケーズは現在9.3haを所有していますが、その内の大部分はオーヴィレ村にあります。かのドン・ペリニョンは生涯をこのオーヴィレ村の修道院で過ごしました。シャンパーニュの聖地とも呼ばれるこの村の中心にあるチョーク層の丘は高い品質の葡萄が産出される事で古くから知られています。野イチゴやアプリコットのアロマと薔薇の花、ジャスミンなどの香りがあり、口に含むとクリーミーで新鮮な果実味が広がります。
「ドメーヌ・ギィ・ラルマンディエ・コトー・シャンプノワ」(タイプ:赤・辛口、品種:ピノ・ノワール 100%、産地:フランス/シャンパーニュ/コート・デ・ブラン/ヴェルテュ)
本拠をヴェルテュ村に置き、ブラン・ド・ブランのお手本のようなシャンパーニュを産み出し続けるギィ・ラルマンディエ。現在はギィ・ラルマンディエの息子、当主のフランソワが醸造・栽培を取り仕切っています。ヴェルテュ村はコート・デ・ブランの格付けされた村の中で唯一ピノ・ノワールの栽培が許されており、ギィ・ラルマンディエはピノ・ノワールが植えられた0.7haの畑を所有、粘土の表土が多い一部の区画からは優れたピノ・ノワールが生み出されています。同家がロゼワインのアッサンブラージュ用に醸す希少なコトー・シャンプノワ・ルージュの、美しい花束のようなたおやかな表情をお楽しみ下さい。
3.シャンパーニュの食相性
シャンパーニュはどちらかというと食前酒のイメージが多いかと思います。魚には白ワイン、メインの肉料理には赤ワイン、というのは、ある意味定番でもあると思うのですが、そうなるとシャンパーニュの相手は前菜のみとなってしまいます。 しかし食事の最初から最後までビールで通すことができるのと同様に、爽やかな炭酸で舌をリフレッシュさせてくれるシャンパーニュは、その過度にアロマティックではないイースト主体の香りや、好ましい酸味によって、軽快な料理から重厚なメインディッシュまで、充分に味わいを引き立ててくれます。
【前世紀初頭のシャンパーニュと料理の組み合わせ】
マット・クレイマー著「ワインがわかる」(白水社)には、1883年にニューヨークで実際に行われた晩餐会での29皿にものぼる料理とワインの取り合わせが紹介されていますが、そこではメインディッシュの「骨付き子羊のブラウンソース添え」にポメリー社のシャンパーニュを合わせるとしています。当時の感覚では、肉料理にシャンパンを配することは一般的風習でした。それどころか、「ヴィクトリア女王の料理長にとって、赤ワインの前に白ワインを出すことなど思いもよらなかった。」とすら記されています。
【世界ソムリエコンクールでのシャンパーニュ食相性の課題】
田崎真也氏が世界ソムリエコンクールに優勝するまでの道のりを記した「ソムリエ世界一の秘密」(朝日新聞社)には、実際のコンクールの課題として、提示された料理に合わせたワインを選ぶというシーンがあります。小エビの天ぷらからやまうずらのローストまで、和食、イタリアン、フレンチが並ぶ料理を、最初から最後までスパークリングワインで通したいという無茶な要望に対して、田崎氏が提示したのが「モエ・シャンドン・ロゼ・シャンパーニュ・ヴィンテージ1985年物」でした。