Via Vino
No. 74 "Suchi & Wine III"
<すしとワイン3>
<日時・場所>
2017年10月28日(土)12:00〜15:00 淺草「寿司初総本店」
参加者:12名
<今日のワイン>
白・辛口・発泡性「ガンチア・ブリュット・スプマンテ」
白・辛口「サントネージュ・山梨産甲州葡萄 2015年」
白・辛口「ワイルド・ロック・ソーヴィニヨン・ブラン 2016年」
白・辛口・発泡性「ランソン・エクストラ・エイジ・ブリュット」
赤・辛口「ルイ・ラトゥール・マルサネ・ルージュ 2016年」
赤・辛口「ミッシェル・リンチ・ルージュ 2015年」
酒精強化・辛口「ウイリアム・ハンバート・ドン・ソイロ・アモンティリャード」
日本酒「寶劍・純米吟醸・秋あがり」
<今日のディナー>
【先付け】ツブ貝のわさび漬け/鮟肝のグレープフルーツ仕立て/小松菜と油揚げ和え/生牡蠣
【お造り】鮪の和風カルパッチョ/鮃の昆布〆ブルーチーズ巻
【焼き物】和牛の網焼き
【江戸前鮓】本鮪生中トロ炙り、とろサーモン炙り、墨烏賊炙り、いくら、〆鯖、活穴子、玉子
【揚げ物】秋野菜の海老しんじょう挟み揚げ
【椀物】かぶら蒸し松茸添え
【デザート】柿
1.すしとワインについて
「古くて新しい、すしとワインの世界」
発酵と熟成〜鮮度だけではない、すしとワインを繋ぐもの。
すしとワインのマリアージュを実践する店舗が続出。
海外からの観光客が日本のすしを味わう浅草。
江戸前寿司の鮮度が確実に上がったおかげで、ワインとの相性はより良くなったという印象がありますが、それだけでなく、すしと和食の調味料、醤油やみりん、味噌、そしてワインには、「発酵・熟成」という共通点があります。もともと鮨は発酵食品として開発されたものですし、最近では世田谷の「?邑(きむら)」などのように、ネタを1週間から1ヶ月近く寝かせる熟成鮨などを提供する寿司店も登場してきました。
伝統的な江戸前寿司にワインはなかなか受け入れられない、という風潮はいまだにあるものの、すしとワインのマリアージュを実践する店は確かに増えているように思います。山田五郎著「銀座のすし」では、ワインとのマリアージュに最初に挑戦した店として「寿司幸」の名を挙げていますが、近年では「和のつまみ」の本を出版した銀座の「鮨からく」や、オーストリアワインを中心に扱う銀座「壮石」(第68回「すしとワイン1」会場)、ソムリエがいてワインを勧めてくれる西麻布「すし通」など、様々なお店が率先してワインを積極的に取り上げるようになりました。
高級すしと言えば銀座が有名ですが、明治・大正の時代はむしろ浅草こそが東京の繁華街であり、明治末には18店が軒を連ねた「すしや通り」などを中心に、創業100年を越える店も幾つかあります。一時期閑散としていた浅草も、スカイツリー人気も後押しして多くの海外からの観光客で賑わっています。名の知れた寿司屋で海外から訪れた人々が、箸を器用に使って寿司を楽しむ光景がよく見られるようになりました。
2.ワインの品種とすしとの相性
ワインは産地で見るか、品種で見るか…。昔は地産地消、輸送手段も限られていましたから、ワインは本来産地で区別するものでした。しかし近年、技術の革新と流通手段の発達により、さまざまな化学分析や生産コントロールが可能になってくると、ワインをその原料である品種の特性で区別する方が分かりやすいと考えられるようになってきました。ワイン産地は世界中にありますが、品種に関しては、当然マイナーな地場品種も多くありますが、20種類近くの代表的な品種の特性を把握すれば、大抵のワインの味わいは予測できます。
【シャルドネ】
シャープな酸味、高いミネラル感は、すだちやかぼすなどの柑橘類、そして塩との相性が良いとされています。香りもニュートラルで、その点では和食と合わせやすい白ワインを造るとされている品種です。一方で樽熟成を経た高級ワインは生魚とは合わせにくいですし、その酸味はむしろ相手を選ぶとして敬遠する人も多いようです。
【ソーヴィニヨン・ブラン】
近年評価の高まっている品種で、あの田崎真也氏も、この品種の持つミントやレモングラスのような香りが、わさびの「青さ」を感じさせる香りと相性が良いとして、すしにあわせやすいワインとして推奨しています。刺身のツマに大葉や大根などを使うのも、本来海鮮サラダのように味わうためであり、その意味でも青っぽい風味を持つソーヴィニヨン・ブランを合わせることは非常に理に適っています。
【ピノ・ノワール】
デリケートな風味の肉や魚には、酸味があり味わいが柔らかなピノ・ノワールを合わせます。タンニンもエキスも控えめで、魚の繊細な味わいを邪魔しませんし、この品種から造られるワインの旨味も、マグロの漬けなどのやわらかな味わいを引き立ててくれます。また、「鮨からく」の戸川氏は、ソムリエの中本聡文氏から「かんぴょう巻きとピノ・ノワール」との相性について洗礼を受け、ワインに目覚めたと記しています。
【メルロー】
アナゴやウナギなどの濃厚なツメを加える物は、もちろんピノ・ノワールが合いますが、ややスパイシーな味わいでの相性から、柔らかいタンニンとスパイス風味を備えたメルローもお薦めです。あまりにも濃厚な赤ワインは、すしに限らずどうしても料理を選んでしまいますが、その意味では適度にバランスの良いメルローは合わせやすい赤ワインといえると思います。
3.ワインテイスティング
「ガンチア・ブリュット・スプマンテ」
(タイプ:白・辛口・発泡性、品種:シャルドネ他、産地:イタリア)
ジャパン・ワイン・チャレンジ2016銅賞受賞。ユネスコ世界遺産で造られるスパークリングワイン。フレッシュさの中にエレガントさを兼ね備えています。きめの細かい泡立ちと、新鮮な果実の香り。繊細でフルーティな味わいの、スタイリッシュな辛口です。
「サントネージュ・山梨産甲州葡萄 2015年」
(タイプ:白・辛口、品種:甲州100%、産地:日本/山梨)
昔から栽培されてきた日本古来の甲州ぶどうを100%使用しています。自然に流れでるフリーラン果汁を低温(12−18度)でじっくり発酵させ、さらに「シュール・リー(澱引きせずに澱の上で熟成させる製法)」によって貯蔵・熟成させることで、甲州ぶどうの個性を引き出しながら、豊かな味わいを実現しました。
「ワイルド・ロック・ソーヴィニヨン・ブラン 2016年」
(タイプ:白・辛口、品種:ソーヴィニヨン・ブラン100%、産地:ニュージーランド/マールボロー)
「日本で飲もう最高のワイン2017」プラチナ(愛好家)/ゴールド(専門家)受賞、「ワインスタイル夏の王座決定戦」でもベスト1に輝きました。フレッシュな香りと爽やかな酸味を持つ、軽快な味わいのワインです。ライム、ハーブ、そしてグレープフルーツの華やかなアロマを持ち、様々な柑橘類、ハーブや優雅な花の風味と共にフレッシュな味わいが口の中に広がります。
「ランソン・エクストラ・エイジ・ブリュット」
(タイプ:白・辛口・発泡性、品種:ピノ・ノワール60%、シャルドネ40%、産地:フランス/シャンパーニュ)
ジャパン・ワイン・チャレンジ2017金賞受賞。「エクストラ・エイジ」は、ランソン社創業250年の節目に発売されたプレミアム・シャンパーニュで、2000年、2002年、2004年のヴィンテージをブレンドして造られました。厚みのある口当たり。ふくよかで複雑味のあるボディ。繊細でフレッシュな余韻が残ります。
「ルイ・ラトゥール・マルサネ・ルージュ 2016年」
(タイプ:赤・辛口、品種:ピノ・ノワール100%、産地:フランス/ブルゴーニュ)
ルイ・ラトゥール社は200年以上も続く、ブルゴーニュを代表する造り手。今やコート・ドールで最大規模のグラン・クリュを所有しています。「マルサネ」は、凝縮した赤い果実のブーケと、成熟したタンニンをもちながらも、絹のようになめらかな味わいをもつ赤ワインです。
「ミッシェル・リンチ・ルージュ 2015年」
(タイプ:赤・辛口、品種:メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、産地:フランス/ボルドー)
ミッシェル・リンチは、シャトー・ランシュ・バージュのオーナーであるJMカーズが展開するワインです。熟した果実やスパイスの香りがあり、口に含むと、繊細なタンニンとモカやカシスのニュアンスがあり、心地よい余韻が楽しめます。
「ウイリアム・ハンバート・ドン・ソイロ・フィノ」
(タイプ:辛口/フィノ、品種:パロミノ100%、産地:スペイン/ヘレス、アルコール度19%)
1877年、イギリス人のアレクサンダー・ウィリアムズが義父のアーサー・ハンバートと共に興した、スペイン最大のボデガを持つウィリアムズ&ハンバート社が展開する「ドン・ソイロ」ブランド。アモンティリャードは、産膜酵母下での熟成を最低8年、さらに酸化熟成を4年。フィノ・シェリーであったときの繊細な香りと、長期熟成を経て得られた芳醇な香りが絶妙に交じり合っています。
「日本酒<寶劍・純米吟醸・秋あがり>(広島県呉市・宝剣酒造)」
(タイプ:辛口/純米吟醸 品種:八反錦・精米歩合55% 産地:広島県呉市/宝剣酒造株式会社)
「宝剣」を醸すのは蔵元杜氏の土井鉄也氏。20代の若さで酒造組合主催の杜氏が集う「全国利き酒選手権」でチャンピオンになり、「広島に宝剣あり。土井鉄也あり」と称されました。味覚の天才が仕掛ける酒は、蔵内に湧く湧水・宝剣銘水で仕込み、広島県産の八反錦などを使用。甑(こしき)による蒸米や、手作りの麹造りなどを実践。「宝剣 純米吟醸」は穏やかな香りと奥深い味で、後口はすっきりと透明感があり、中華料理など、こってりした料理にもよく合うバランスの良い食中酒です。
4.すしネタと漢字
果たして「寿司」と「鮨」は違う物なのでしょうか? 最も古くから使われている表記は「鮓」で、発酵させて作る馴れずしなど関西系のすしに使われました。その後中国で本来塩辛を意味した「鮨」が江戸前などで使用されるようになったと言われています。「寿司」は江戸時代に現れた当て字で、元々は縁起担ぎに使われたようですが、魚を使わないすしにも違和感なく使えるので、今では一般的な表記となっています。
「海老」と「蝦」も、厳密には前者は日本での当て字、かつ歩く物を「海老」、泳ぐ物を「蝦」と区別するとも言われていますが、これもあまり厳密ではなく、「車蝦」より「車海老」の方が通りは良さそうです。
ちなみに、「海胆」と「雲丹」は、前者が生きている状態、後者が加工品を指すとされています。