Via Vino No. 78 "Suchi & Wine IV"
すしとワイン4


<日時・場所>
2018年4月21日(土)12:00〜15:00 東銀座「壮石」 
参加者:17名
<今日のワイン>
白・辛口・発泡性「ランソン・エクストラ・エイジ・ブラン・ド・ブラン」
白・辛口「ツァーヘル・ヴィーナー・ホイリゲ 2017年 」
白・辛口「レート・ローター・ヴェルトリーナー・シャイベン 2016年」
白・辛口「ハイサン・ノイマン・ゲミシュター・サッツ・ヌスベルク 2015年」
白・辛口「モリッツ・スーパーナチュラル 2016年」
オレンジ・辛口「ウヴェ・シーファー・ヴァイサーシーファー 2012年」
ロゼ・辛口「ハインリッヒ・ロゼ・ブラウフレンキッシュ・フライハイト 2016年」
赤・辛口「モリッツ・ブラウフレンキッシュ・ブルゲンラント 2013年」
<今日のディナー>
【先付け】こごみ、アスパラの胡麻和え、青柳、分葱のぬた
【お造り】あいなめ・白海老
【江戸前鮓1】 鱚(塩)、細魚(柚子皮、醤油)、鳥貝(醤油)
【煮物】京都の筍、蕗、神奈川の蛸の柔らか煮
【焼物】銀だら西京焼き
【江戸前鮓2(赤酢)】鰹(薬味醤油)、本鮪中トロ(醤油)、煮穴子(煮ツメ)
【椀物】赤出汁

     


1.すしとワインについて

魚介類とワインとの相性〜進化するマリアージュ。
素材の良さを活かしつつ最低限の職人技を加える点が共通している。
地産地消が原則でありながら、世界に広まる美酒と美食の世界。。

 ソムリエ協会教本に載っているような食とワインの相性を江戸前寿司で実践しようとすると、なかなか大変なことになります。フレンチでは、1つの皿に1つの食材と1つのソースが基本。その食材とソースに合う一杯を、香りや酸との相性から選ぶことになります。しかし、握り寿司は一口サイズの握りに1つの食材なので、生の白身魚、濃い味の煮魚とネタが代わる度に別のワインを用意することになりかねません。ある意味、1つの皿に様々な魚介が並ぶ握り寿司は、非常に贅沢な料理であると言えます。それに全ての握りには米が使われるのですから、ぶどうが原料のワインより、米を原料とする日本酒が合うに決まっています。

 しかし「ミシュラン」などで江戸前握りの店が紹介され、世界的にもその知名度が上がると共に、銀座や六本木でもワインを扱う店が増えてきており、実際に味わってみると、以前に比べてあまり違和感を感じなくなってきました。私見ですが、意識の高い職人が新鮮な素材を扱って握るなら、ワインと寿司は意外に合わせやすいのではないでしょうか。上質な握り寿司は厳選された良質なネタと熟戦した職人の腕を必要としますが、それはワインが優れた産地と造り手を要求するのと同じことです。

 ワインは元々、その土地に根ざしたブドウで造り、その土地で味わうものでした。ある意味ローカルな地酒であったものが、流通技術の発達によって世界中で親しまれるようになったわけです。そして今、日本の江戸前寿司も、鮮度の良い魚介を味わう美食として、日本の枠を越えて世界に広まりつつあります。素晴らしい自然の味わいを活かしつつ、そこに丹念な人の技が若干加わることで見事な一品に仕上がる、というところに共通点があるように思うのです。

2.オーストリアワイン

 馴染みがないかも知れません。最近の辛口志向であまり見かけなくなったドイツワインと近いようなイメージがおぼろげにある程度でしょうか。しかしドイツ以上の厳しい基準を持ち、ヨーロッパの中心であり中東にも近かったハプスブルク帝国の輝かしい歴史を持つオーストリアワインは、まさしくウィーンで活躍したモーツァルトの音楽にも似て、親しみやすく、それでいて非常に奥深い味わいを持っています。その純粋さと深遠さは、ある意味日本の食文化にも通じるものがあると思うのです。栽培面積はスペインの1/25、国別輸入量では第17位にとどまりますが、有機ワインに力を入れており、非常にピュアな味わいのワインを造り出しています。

【オーストリアワインの生産地】  

 オーストリアの主要16栽培地域は、ハンガリー国境沿いの東側の地域に集まっています。首都ウィーンはかつての帝国の中心地でありながら、今も630軒のワイナリーがあり、石灰質土壌によりミネラリティの高いワインが造られています。カンプタールやクレムスタールで知られるニーダーエスタライヒ州は、中世以来常に銘醸地であり続けたワイン生産の中心地であり、フルボディで透明感のある辛口白ワインが造られます。栽培地の中心にあるブルゲンラント州は、3000年の歴史を持つ最古のワイン産地ですが、1921年まではハンガリー領で、その意味では新しい産地とも言えます。湖周辺で貴腐ワインが造られるノイジードラーゼーなどの産地が含まれます。南に位置するシュタイヤーマルク州は、辺境の地として長く知られていませんでしたが、ブルゴーニュと同じ緯度に位置し、石灰質やシスト土壌を含む理想的なテロワールを持ち、近年注目を集めています。

【オーストリアワインの品種】  

 ドイツ系のリースリングやシルヴァーナー(いずれもオートリア原産との説もある)、フランス・ピノ系のヴァイスブルグンターやグラウアーブルグンダー(それぞれピノ・ブラン、ピノ・グリに相当)などが知られていますが、オーストリア固有品種としては、なんといっても全ぶどう栽培面積の1/3を占める白のグリュイナー・フェルトリナー(トラミナー種の子孫、収量を抑えれば長熟のワインとなる)、そして優れた赤ワインの原料となる、フランク王国に由来するブラウフレンキッシュ、ピノ・ノワールを片親に持つザンクト・ラウレント、そしてこの2つを交配して造られたツヴァイゲルトを忘れるわけにはいきません。

3.ワインテイスティング
 
    

「ランソン・エクストラ・エイジ・ブリュット・ブラン・ド・ブラン」
(タイプ:白・辛口・発泡性  品種:シャルドネ100% 産地:フランス/シャンパーニュ)

 1760年、シャンパーニュ地方の都市ランスで、フランソワ・ドゥラモット判事がシャンパン事業を興しました。1837年から社名をランソンに変更。1860年のヴィクトリア女王時代より、150年以上英国王室に愛され続けています。エクストラ・エイジは、2003年、2004年、2005年の3つのヴィンテージから、グラン・クリュ、プルミエ・クリュのみをブレンドしたもので、西洋サンザシや菩提樹を思わせる白い花の香りを持ち、爽やかな余韻が長く持続します。

「ツァーヘル・ヴィーナー・ホイリゲ 2017年 」
(タイプ:白・辛口  品種:シャルドネ、リースリング、グリューナー・フェルトリナー  産地:オーストリア/ウィーン)

 ツァーヘルは1930年代以降、ホイリゲ(居酒屋)を営み、またホイリゲワイン(新酒)を造ってきた歴史あるワイナリーで、ホイリゲの本場ウィーンを代表するワイナリーです。ロゴにある蝶は、極力化学的な農薬などを使用せず、蝶が畑にくるような自然なブドウ栽培を象徴しています。リースリングのオイリーな風味が味わえます。

「レート・ローター・フェルトリーナー・シャイベン 2016年」
(タイプ:白・辛口  品種:ローター・フェルトリーナー100%  産地:オーストリア/ニーダーエスターライヒ)
 当主のレート氏は1990年からヴァーグラムのフェルス村でワイン造りをしています。彼は25年に渡って、持続可能なブドウ栽培を目指して、化学物質を一切使わずに、自家製酵母を育ててきました。ローター・フェルトリナーはこのヴァーグラムだけて栽培されており、減少傾向にある稀少な品種ですが、ほんのりとした甘味としっかりとした酸がバランスの良い味わいを見せてくれる品種です。香りは黄色いリンゴとマルメロがほのかに香ります。またレーズンやドライフルーツ、焼きリンゴなどの熟した構成を感じ、余韻を長く楽しめます。

「ハイサン・ノイマン・ゲミシュター・サッツ・ヌスベルク 2015年」
(タイプ:白・辛口  品種:ゲミッシュター・サッツ100%  産地:オーストリア/ウィーン)

 ハイサン=ノイマンは、ビアパブを成功させたウィーン出身のシュテファン・ハイサンが2000年に店の従業員から譲り受けた小さな畑から興したワイナリーです。その後、ウィーン西駅などの設計で名高い建築家ハインツ・ノイマンとの共同経営としました。2006年にビオディナミ農法に転向するとともに、ハイリゲンシュタットの一等地にある現ワイナリーを入手しました。貝殻石灰土壌の「ヌスベルク」と単一畑「ウァイスライテン」から2種類のゲミシュター・サッツを造っています。ゲミシュター・サッツは8種類の品種をブレンドしており、非常に深みのある味わいを持っています。「ヌスベルク」は、柑橘系の果物の香り、うりやミントやミネラル感を味わえるワインです。

    

「モリッツ・スーパーナチュラル 2016年」
(タイプ:白・辛口 品種:グリューナー・ヴェルトリーナー80%+シャルドネ20%+リースリング1%未満  産地:オーストリア/ブルゲンラント)
 ブルゲンラント州はオーストリア東部に広がるワイン産地で、ブラウフレンキッシュを主体とする赤ワインの生産が盛んです。モリッツは2001年設立の醸造所で、当主のローラント・フェリッヒ氏はブラウフレンキッシュのパイオニア的存在として知られています。このスーパーナチュラルは、モリッツが造る希少な白ワインで、塩味を感じるほどリッチなミネラル感と、とても柔らかなボディが調和する旨みいっぱいのワインです。

「ウヴェ・シーファー・ヴァイサーシーファー 2012年」
(タイプ:オレンジ・辛口 品種:ヴェルシュリースリング、ヴァイスブルグンダー(=ピノ・ブラン)  産地:オーストリア/ブルゲンラント)
 ウヴェ・シーファーは超一流のレストランでソムリエを務めた後、故郷で全くのゼロからワイナリーを興し、独学で古木からエレガントなワインを造りだしています。グリーン・シーファー(緑色の粘板岩)土壌由来のミネラル溢れる個性をストレートに表現しているといえます。開放系の樽で3ヶ月醸しており、非常に強い旨味とコクが感じられます。

「ハインリッヒ ロゼ・ブラウフレンキッシュ・フライハイト 2016年」
(タイプ:ロゼ・辛口 品種:ブラウフレンキッシュ  産地:オーストリア/ブルゲンラント・ノイジードラーゼー)
 ハンガリー国境近くの湖、ノイジードラーゼーの周囲は発生する霧の影響もあり、貴腐ワインの産地として知られています。ハインリッヒ醸造所はそんなノイジードラーゼー北部の村ゴルスにあり、そちらで最先端の赤ワインを作り続けています。このロゼはやや濁りがあり非常に強い還元臭がありますが、100%の自然派でこの硫黄香も発酵由来のものとのことです。

「モリッツ・ブラウフレンキッシュ・ブルゲンラント 2013年」
(タイプ:赤・辛口 品種:ブラウフレンキッシュ  産地:オーストリア/ブルゲンラント・ノイジードラーゼー)
 モリッツのワイナリーはワイン生産地域であるブルゲンランドにあり、オーストリアの中で一番東に位置。いわゆるハンガリーからの温暖なパノニア気候の影響を大きく受ける産地にあります。こちらの産地で盛んなのが赤ワインで、その中でも高級品種はブラウフレンキッシュです。しっかりした苦渋味のある、ある意味正統派の赤ワインでした。

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