Via Vino No. 92 "Sherry & Dinner"
シェリーと料理


<日時・場所>
2023年11月11日(土)19:00〜21:00 銀座「しぇりークラブ」 
参加者:11名
<今日のワイン>
辛口・マンサニージャ「イダルゴ・ラ・ヒターナ・エンラマ 2023」
辛口・アモンティリャード「ウィリアムズ&ハンバート・ドン・ソイロ・アモンティリャード12年 」
辛口・オロロソ「ウィズドム&ウォルター・ウィズドム・オロロソ」
辛口・パロ・コルタード「ゴンザレス・ビアス・レオノール・パロ・コルタード」
辛口・フィノ「ウィリアムズ&ハンバート・ドン・ソイロ・フィノ」
甘口・クリーム「ウィリアムズ&ハンバート・クリーム
<今日のディナー>
【マンサニージャと】
鴨の生ハムと千住ネギの一口タパス 牡蠣とキノコのマリネ バルデオンソース 豚頬肉の燻製と赤玉ネギのピクルス
【アモンティリャードと】
仔羊と松の実のエンパナディージャ 豚ホルモンの燻製のコカ
【オロロソと】
冬穴子の炭火焼き 根セロリのピューレとシェリービネガーソース
【パロ・コルタードと】
金井さんが育てる熟成豚のアサードと白インゲン豆の煮込み
【フィノと】
魚介のパエリア
【クリームと】
栗のクレマカタラナ

     


1.シェリーについて

 シェリーはスペインを代表する酒精強化ワインです。生産地はイベリア半島最南端のカディス県、「ヘレス・デ・ラ・フロンテラ」「サンルーカル・デ・バラメーダ」「エル・プエルト・デ・サンタ・マリア」の3つの町を結ぶ三角地帯で、葡萄品種は辛口ワインではパロミノを主体として使用し、甘口にはペドロ・ヒメネスとモスカテルを使用します。発酵終了後に酒精強化されます。

【シェリーの製法】
<フィノとマンサニージャ>
 まず基本となる辛口の白ワインをパロミノで通常のアルコール発酵で造ります。そしてそれを樽へ移して熟成させますが、満量充填せずにワインがやや空気に触れる状態にします。これにより「フロール」と呼ばれる産膜酵母による膜が液面に発生します。ワインは15%までアルコールが添加され、これにより酸化による褐変が防止され、黄色く透明なすっきりとした辛口の「フィノ」が造られます。なお、「サンルーカル・デ・バラメーダ」で造られるフィノは「マンサニージャ」と呼ばれます。

<オロロソとアモンティリャード>
 上記と同様にまずパロミノから白ワインが造られますが、フロールが付かなかった、もしくは敢えて付けなかった物は、18%までアルコールが添加され、これによりフロールの発生は抑えられるため、酸化の影響で褐色になり香ばしい風味の強い「オロロソ」となります。なお、フロールの付いていたフィノ・タイプから、フロールが途中で消失した、もしくは人為的に消失させた物は、17%まで酒精強化され、「アモンティリャード」となります。

<甘口シェリー>
 「ペドロ・ヒメネス」と「モスカテル」は、それぞれ単一品種をベースに造られる甘口シェリーで、収穫後に天日干しされ、糖度を極端に高めた状態で圧搾、わずかに発酵させた後に酒精強化され、甘さをかなり残した状態で製品化されます。300〜400g/L近い糖度を持つ、「黒蜜」のような甘さが特徴です。また、オロロソにペドロ・ヒメネスをブレンドした「クリーム」や、アモンティリャードにペドロ・ヒメネスをブレンドした「ミディアム」、フィノに濃縮マストを加えた「ペール・クリーム」などブレンドによって造られる甘口シェリーもあります。

【シェリーの歴史】  
  「シェリー」という名前はあくまで英語で、スペインでは「ヘレス」という地名がそのままワインの名称となっています。「ヘレス」の地は元々この地を治めていたイスラム教徒によって「シェリッシュ」と呼ばれており、そこから転じて「シェリー」と呼ばれるようになりました。もともとスペインの濃厚な酒だったシェリーは、大航海時代に劣化を防ぐために酒精強化されるようになり、1519年マゼランの世界航海の時には、265名の乗組員に対して253樽のシェリーが積み込まれ、その金額は全航海予算の約1/6を占めていたと言われています。1588年にスペインの無敵艦隊をイギリスが破ってからは、シェイクスピアの時代にイギリスに広まり、18世紀から19世紀にかけて、現在の様々なスタイルのシェリーが開発されました。

2.ワインテイスティング
 
     

「ウェルカムドリンク:レブヒート :Rebjito」
 レブヒートは、シェリーを炭酸飲料で割ったシェリー・カクテルです。今回は乾杯用のウェルカム・ドリンクとして用意して頂きました。「マンサニージャ・ラ・ゴヤ」と「三ツ矢サイダー」から作られていました。

「イダルゴ・ラ・ヒターナ・エンラマ 2023 :Hidalgo La Gitana Manzanilla En Rama 2023」(タイプ:辛口 品種:パロミノ100%   産地:スペイン/ヘレス アルコール度15%)
 イダルゴ社は1792年に、ホセ・バンタレオン・イダルゴ氏によってアンダルシアに設立されました。メインのマンサニージャ・ラ・ヒターナを筆頭に数多くの賞を受賞する、スペイン国内でもトップブランドのひとつです。エン・ラマとは、「無濾過」「生」という意味を持つ季節限定のシェリー酒で、最低限のフィルターによる不純物除去のみを行い出荷されます。1年に1回、春にボトルリングされるエン・ラマはフレッシュで樽の個性をそのまま感じることのできる特別な味わいで、通常のマンサニージャよりも香り高く、ふくよかな酵母の香りが広がります。前菜と合わせましたが、特に牡蠣とキノコのマリネとの組み合わせがおすすめとのことでした。

「ウィリアムズ&ハンバート・ドン・ソイロ・アモンティリャード15年 :Williams & Humbert Don Zoilo Amontillado 15 years old」(タイプ:辛口/アモンティリャード 品種:パロミノ100%  産地:スペイン/ヘレス アルコール度19%)
 全面にフロールを生じさせてできるフィノに対し、アモンティリャードは樽の上面の70-80%しかフロールが生じないものを更に時間をかけて熟成させています。以前は12年熟成表記でしたが、現在は15年熟成表記、産膜酵母下での熟成を最低8年、さらに酸化熟成を7年経た上で出荷されます。トパーズのような魅力的な色合いと、ほのかな甘さを感じさせる豪直な香りが特徴 です。香ばしくローストしたニュアンスが 酸味と引き立てあい、その味わいを一層甘美に、かつ複雑にしています。中国料理やエスニックのスパイシーさや、熟成の進んだチーズ、ハム、ソーセージとの相性は最高です。仔羊と松の実のエンパナディージャ 豚ホルモンの燻製のコカ

「ウィズドム&ウォルター・ウィズドム・オロロソ :Wisdom&Warter Wisdom Oloroso」(タイプ:辛口 品種:パロミノ100%   産地:スペイン/ヘレス アルコール度18%)
 ウィズドム&ウォルター社は、1854年に設立され、シェリーでは大変著名なブランドとして英国中心に販売されていました。1932年にティオ・ペペの生産者である世界最大のシェリーメーカー、ゴンザレス・ビアス社が買収し、このブランドを今日まで維持しています。ラベルにあるフクロウは知識の象徴で、旗にある三本の横線は水を表しています。明るいつやのある琥珀色で、クルミなどのナッティーな香りやオイリーな黒オリーブの風味と、豊かで穏やかなブーケが特徴で、なめらかな口当たりで余韻が長い辛口シェリーです。

    

「ゴンザレス・ビアス・レオノール・パロ・コルタード :Gonzales Byass Leonor Palo Cortado」(タイプ:辛口 品種:パロミノ100%  産地:スペイン/ヘレス アルコール度20%)
 「レオノール」は、1835年創業、5代にわたってシェリーを生産し続けているゴンザレス・ビアス社を代表するパロ・コルタドの銘柄です。アメリカンオーク樽を使ったソレラシステムで12年熟成させた原酒を使用しています。パロ・コルタドは特殊なシェリーで、始めはフィノやアモンティリャードと同じくフロールの下で発酵、途中で一部フロールが自然消滅して酸化発酵が始まり、これを酒精強化してソレラシステムで熟成させています。スペイン語で斜線を意味するパロと、カットを意味するコルタドに由来する名前で、フロールが無くなった原酒樽に斜線で印を入れることから名付けられました。

「ウィリアムズ&ハンバート・ドン・ソイロ・フィノ:Williams & Humbert Don Zoilo Fino」(タイプ:辛口/フィノ 品種:パロミノ100%  産地:スペイン/ヘレス アルコール度15%)
 1877年、イギリス人のアレクサンダー・ウィリアムズが義父のアーサー・ハンバートと共に興した、スペイン最大のボデガを持つウィリアムズ&ハンバート社。同社は世界的名声を築き上げてきたルイス・パエス社の「ドン・ソイロ」ブランドを引き継ぎ、より優れた品質と長い熟成を重ねたシェリーとしてリリースしています。厳選したパロミノ種のファーストプレスの果汁のみを使い、ホワイトオーク樽でのソレラ・システムによる熟成を経て生まれる辛口のフィノで、かすかに緑色を帯び、輝く透明感のある黄色の色調があります。その香りはストレートで華やかで、すっきりとした酸味を持ちながらも丸みがあります。

「ウィリアムズ&ハンバート・ドン・ソイロ・クリーム :Williams & Humbert Don Zoilo Cream」(タイプ:中甘口 品種:パロミノ、ペドロ・ヒメネス  産地:スペイン/ヘレス アルコール度19%)
 「ウィリアムズ&ハンバート・ドン・ソイロ」シリーズの1つですが、パロミノ種とペドロ・ヒメネス種から造られます。ペドロ・ヒメネス種を天日乾燥させてから搾汁。糖度の高い果汁を発酵させ、ソレラ・システムで熟成させます。香りとコクの強い、オロロソベースの甘口シェリーです。干したプルーンやレーズン、イチジクなどを思わせる香りは、リッチで滑らかな味わいと共に至福の時に誘います。決して甘すぎることのない絶妙な調和が心地よく余韻として残ります。

<今回の1冊>
   
【しぇりークラブ「Sherry〜樽の中の劇場」株式会社スペクトラム・コミュニケーションズ】(2017年刊行)
「1986年創立のシェリー酒専門店しぇりークラブが、3年半に亘る生産地ヘレス・デ・ラ・フロンテーラでの取材を経て、 シェリーのミステリアスな生まれと育ちを解明した、3部構成のガイドブック」です。全編フルカラー256ページの、まさにシェリー入門書の決定版といった内容で、「ヘレスの1年」ではシェリーの生まれ故郷アンダルシア地方の1年をシェリーと共に振り返り、「シェリーの製造」では栽培・製法・種類について解説、全体の半分以上を占める「ボデガ図鑑」ではシェリーの代表的な生産者を紹介するという、非常に贅沢な内容の本となっています。

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