Via Vino
No. 94 " Wine & Color"
<ワインと色>
<日時・場所>
2024年2月17日(土)18:00〜21:00 銀座「Furutoshi」
参加者:20名
<今日のワイン>
辛口・ロゼ「ドメーヌ・バサック・トランキル・ロゼ 2022年」
辛口・オレンジ「カンティーナ・ライナ・グレケット・ウンブリア 2022年」
辛口・白「ヴァオーナ・ビアンコ・ディ・クストーザ 2022年」
辛口・白「パニッツィ・ヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノ 2022年」
辛口・赤「シャトー・ド・ベル・アヴニール・ピノ・ノワール 2019年」
辛口・赤「アジェンダ・アグリコラ・パクラヴァン・パピ・カンチェッライア 2019年」
<今日のディナー>
【Stuzzichino(ストゥッツィキーノ:お通し)】
ポロ葱とカニのタルトレット タレッジョ入りポレンタとスペック
【Inizio(イニッツィオ:始まり)】
ホタルイカ 山椒の効いたパッパ・アル・ポモドーロ
【Antipasto(アンティパスト/前菜)】
スモークしたブリと菜花のタルタル レモンとケッパー
【Primopiatto(プリモ・ピアット/第一の皿)】
ふきのとうのカルボナーラ パスタ
【Secondopiatto(セコンド・ピアット/メイン・ディッシュ)】
鴨のカプネット 鴨のフォンドと味噌のソース
【Secondopiatto(セコンド・ピアット/メイン・ディッシュ)】
国産サーロインのタリアータ 胡椒のジャム
【Dolce(デザート)】
ボネと金柑のコンポート ホワイトチョコレートのガナッシュ
1.ワインと色について
ワインと料理の相性は、様々な側面から議論されてきました。
魚に白で肉に赤、地産地消、酸味やタンニンの影響など、専門的な知識を必要とするものも……
でも単に「見た目の色を合わせる」だけで、充分にマリアージュを楽しめるのでは?
【マリアージュの考え方】
<魚に白、肉に赤>
一般的にワインと料理の組み合わせでは、「魚に白、肉に赤」と言われています。多くの場合はこれが当てはまりますが、味の濃い鰻の蒲焼きには赤ワインの方が合いますし、比較的あっさりした味わいのしゃぶしゃぶなら白ワインの方が合います。必ずしも食材で決めつけるものでもなさそうです。
<地産地消>
以前のソムリエ資格試験なら、ワインと料理の組み合わせは必ず「地産地消」で答えたものでした。「ウィンナー・シュニッツェル(ウィーン風子牛肉のカツレツ)」に合うワインは? の問いには、「グリューナー・フェルトリナー(オーストリアの代表的な品種)」と答える、という風に。しかし今ではこの形式の問題は出題されていないようです。必ずしも生産地に縛られる必要はない、と多くのソムリエの方も考えています。
<酸とタンニン>
「ワイン常識がガラリと変わる本」(講談社+α文庫)では、ワインの成分に着目して料理との相性が論じられています。決め手となるのは有機酸、そして糖、タンニン、グリセリン、炭酸ガスなど。冷やすと美味しい有機酸であるリンゴ酸が多いワインなら、さっぱりした料理に合うし、温めると美味しい乳酸が多いワインなら、ボディのある暖かいメインディッシュに合います。ワインの成分を品種・産地ごとに細かく分析されていて、非常に参考になりますが、かなり細かい内容を覚えなくてはならないのが難点です。
<料理の色に合わせて>
1998年4月からNHKで放送された「趣味悠々・田崎真也とみつける自己流ワインの楽しみ」では、「料理の色とワインの色を合わせる」という方法が紹介されています。「魚に白、肉に赤」には例外もあるということで、同じ鶏肉でも、クリーム系の料理なら白ワイン、ドミグラスを使った料理なら赤ワインを合わせる、という考え方です。余計な知識がなくても、ただ見た目だけで選べば良い、という点がユニークです。
ワインの色 |
品種 |
合わせる料理(鶏肉なら……) |
緑がかった色で、柑橘系のさわやかな香りと酸味の白ワイン |
ソーヴィニヨン・ブラン |
緑色野菜やハーブを使った料理 |
黄色みがかった色で、バタークリームのような香りの白ワイン |
シャルドネ |
バターを使った料理、シチューなど |
ロゼワイン |
グルナッシュ |
明るいオレンジ色の料理、さわやかな酸味のあるもの |
オレンジワイン |
リボッラ・ジャッラ |
明るいオレンジ色の料理、上記ロゼワインよりも若干重めで
|
比較的明るめの色をした赤ワイン |
ピノ・ノワール |
濃いオレンジ色から薄い茶色の料理 |
色に深みのある赤ワイン |
メルロー、シラー |
濃い茶色をした料理 |
【昔々のマリアージュ】
一般的には、たとえばフレンチのディナー・コースなら、シャンパーニュなどスパークリングから始まって、軽めの料理と白ワイン、重いメインディッシュに赤ワイン、そしてデザートと甘口ワインで締めくくる、とされています。しかしこの流れが必ずしも昔から決まっていたわけではなく、マット・クレイマー「ワインがわかる」(白水社)には、1800年代のヴィクトリア朝時代のヨーロッパのメニューとワインの組み合わせが紹介されています。それによると、当時は甘いソーテルヌと生ガキと共に供することが正式なものとされており、牛肉料理とシャンパーニュを合わせることが一般的なスタイルとされていたのだとか。 今では軽快な味わいのワインと料理の後に、コクのあるワインと料理を持って来る、いわゆるハーモニーを重視した組み合わせが主流ですが、当時は濃い味の料理にさっぱりした酒を、というコントラストを重視した組み合わせも広く受け入れられていたのだと言えるかも知れません。
2.ワインテイスティング
「ドメーヌ・バサック・トランキル・ロゼ 2022年 :Domaine Bassac Tranquille Rose2022」(タイプ:ロゼ・辛口、品種:サンソー70% シラー20% テンプラニーリョ10%、産地:フランス/コート・ド・トング)
温暖な南フランスで作られる、「カジュアルに飲める心地よさ」を目指して作られたロゼワインです。「トランキル」とは、「リラックスして楽しめる」を意味します。フレッシュなイチゴやフランボワーズ等、赤い果実を想わせるサンソー由来の心地よい香りに、シラーの骨格、そしてテンプラニーリョの甘い香りが見事に合わさった辛口ロゼワインです。
「カンティーナ・ライナ・グレケット・ウンブリア 2022年 :Cantina Raina Grechetto Umbria 2022」(タイプ:オレンジ・辛口 品種:グレケット100%、産地:イタリア/ウンブリア)
ビオディナミに取り組むカンティーナ・ライナが、土着品種グレケットで造る、クリーンで力強い果実味が魅力のオレンジワインです。手摘みで収穫された葡萄をプレス後、ステンレスタンクで約48時間のスキンコンタクトを行い、野生酵母で発酵後、5ヶ月間澱と共に寝かせ、瓶詰めし、瓶内で2ヶ月熟成させます。洋ナシや青りんごの果物の香りに加えて、柑橘の爽やかな香りが広がります。クリーンで力強い果実と綺麗な酸のバランスが心地よく感じられる辛口ワインです。
「ヴァオーナ・ビアンコ・ディ・クストーザ 2022年 :Vaona Bianco di Custoza 2022」(タイプ:白・辛口、品種:ガルガーネガ、トレッビア-ノ、マルヴァジア、マンゾ-ニ、トレッビアネッロ、産地:イタリア/ヴェネト)
9月中旬に涼しい時間帯を見計らって手摘みで収穫し、ソフトプレス後、ステンレスタンクで約12度を保って発酵をおこない、引き続きステンレスタンクにて約5ヶ月熟成させます。柑橘のグレープフルーツを思わせるフレッシュな香りに心地よいフルーティな味わいが広がります。酸とミネラルのバランスが素晴らしく、野菜の軽い煮込み前菜、サラミやフリットなどとの相性もとても良いワインです。
「パニッツィ・ヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノ 2022年 :Panizzi Vernaccia S.Gimignano 2022」(タイプ:白・辛口、品種:ヴェルナッチャ、トレッビアーノ、マンゾーニ、産地:イタリア/トスカーナ)
トスカーナのサンタ・マルゲリータに位置するパニッツィが創業した1989年ヴィンテージから生産されているワインです。ヴェルナッチャを主体にステンレスタンクで発酵、澱とともに5ヶ月熟成しています。オレンジなどの柑橘系やリンゴやハーブの香り、芳醇な果実味とまろやかな酸味、ミネラル感が調和した、キレとコクのあるヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノです。
「シャトー・ド・ベル・アヴニール・ピノ・ノワール 2019年:Chateau de Bel Avenir Pinot Noir 2019」(タイプ:赤・辛口、品種:ピノ・ノワール100%、産地:フランス/ブルゴーニュ)
1850年代に設立されたワイナリーはボジョレーの北部、サン・タムール村と接するラ・シャベル・ド・ガンシャイにあります。2020年には12haの葡萄畑を有機栽培に切り替えました。醸造に関しては天然酵母を用いた発酵、グラスファイバーのタンクで発酵、アリエ産のオーク樽で15ヶ月の熟成の後、軽くフィルターをかけて瓶詰めします。 熟した赤いベリーや黒系果実の深み、スーボワなどの熟成感、さらに樽熟成による複雑さを感じるリッチなワインです。
「アジェンダ・アグリコラ・パクラヴァン・パピ・カンチェッライア 2019年 :Azienda Agricola Pakravan Papi Cancellaia 2019」(タイプ:赤・辛口、品種:カベルネ・ソーヴィニヨン60%+カベルネ・フラン40%、産地:イタリア/トスカーナ)
ワイナリーがあるトスカーナ、チェチナのエリアは、カベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フランから、ボルドー地方のような、エレガントな特徴もありながら、より力強いスタイルのワインを生み出しています。手摘みで収穫後に除梗して発酵、熟成はバリック12ヶ月後に、セメントタンクで4ヶ月。瓶詰から12か月後に出荷となります。プラムや赤い果実の香りが、スパイスのアロマと調和しており、味わいには新鮮なバルサミコのニュアンスがあります。
<今回の1冊>
【NHK趣味悠々「田崎真也とみつける自己流ワインの楽しみ」(日本放送出版協会)】(1998年刊行)
世界ソムリエコンクール優勝後間もない田崎真也氏が、NHKでワインと料理の相性について、1998年4月から5月にかけて、各回30分・全8回で放送されたテレビ番組のガイドブックです。当時はまだワインに関する書籍や映像なども少なく、資格などを取得する前に色々観ていた番組の中の一つです。同じ頃、第一次ワインブームの影響で漫画「ソムリエ」(集英社)や、「江川の食卓」(TBS)「ワインの馬鹿」(フジ)などの深夜TV番組でワインの知識が丁度紹介されていて、田崎真也氏もワイン普及のために頻繁にメディアに登場し、「江川の食卓」などにも出演されていたほどでした。「趣味悠々」では、ワインの基本的な品種8種の味わいと料理との相性を解説していて、特に「難しいことを考えなくても、ワインと料理は色で合わせれば良い」という提案が、その時はとても新鮮で納得いくものに感じたことを覚えています。