電ミス「書き出し限定」競作コンペ参加作品 |
Green-eyed Monster
ジョゼファン
「ここには死体がなかったんだ。あるはずのものがあるべき場所にないのは、何か気持ち悪いな」
宮田は確かめるように言った。大友は人を馬鹿にしたような顔でこれに応えた。
「警部、気持ち悪いっていうような問題ですか? だって『死体が"あった"』なんて通報初めてですよ。これは何かありますね」
宮田はここで彼の方を向き、何か言おうとしていたようだったが、結局それはやって来た巡査の声でなされなかった。巡査は言った。
「警部、彼女らは事件後には口裏を合わせる時間はありませんでした。それで個別に事情聴取をしたんですが……」
「どうした?」
巡査は一目見て分かる具合に困り果てた表情を顔に浮かべた。
「おかしいんですよ。三人の供述が食い違っているんです」
巡査はそう言うと話し始めた。
事件は十二月十日の夜八時に起こった。その日、川端善幸の家では彼の女友達である、西、佐原、藤堂の三人が遊びに来ていた。彼女達はこの日、川端の家に泊まる予定だった。そのために、それぞれが自分の部屋(これは二階にある)でシーツの整理やらをしている最中に事は発覚したのである。一階のリビングで川端が死んでいるのが発見されたのである。
「そんなことは分かってる」宮田はいらいらした様子で言った。「で、警察に通報したっていうんだろう?」
巡査は頭を掻きながら答えた。
「ええ、そうなんですが……、ここからがおかしいんですよ(ここで彼は「面白いという意味じゃないですよ」と冗談交じりに言ったが、宮田はこれを黙殺した)。死体の第一発見者が誰か分からない上に、死体がないときてるんです」
大友は笑って言った。
「ははは、それはおかしいですね」
「うるせえ。お前は黙ってろ。殺人事件もお前がいると笑い話になっちまう。……それで、どういうことなんだ?」
巡査は、はいとうなずいて言った。
「まず西さんなんですが、彼女は藤堂さんに川端さんが死んでいると聞いたんだそうです。そして佐原さんに伝えたということです。佐原さんは西さんにそのことを聞いてから、藤堂さんに伝えたのです。しかし、藤堂さんは佐原さんからそのことを聞いて、西さんに伝えたと言っているんです。誰かが一階で死体を発見して二階に行き、誰かに言ったことは間違いないんですが……。それが誰だか分からないんです。しかも、彼女達が揃って一階に降りてみると肝心の死体がなかったと言うんです。一応少し探してみたと言っていましたが……。私は面食らってしまいましたよ」
「そうすると」大友は珍しく関心があると見えて積極的に口を挟んだ。「全員が共犯なんじゃないんですか?」
「馬鹿野郎。だとしたら何で警察にすぐに通報したんだよ? そのまま逃げればいいものを」
「あ、そうですね。やっぱり共犯ではないでしょうね」
巡査は大友を横目でちらりと見てから言った。
「鑑識が一通り調べましたが、何もでませんでした」
宮田は大きなため息を一つついた。それを見た大友は彼に言った。
「警部、ため息は極力つかないほうがいいですよ。幸せが逃げる、とかいいますしね。僕の実家のほうでは百回ため息をつくと死んじゃう、なんていわれてましたよ」
宮田は大友をにらみつけて言った。
「お前は馬鹿か? そういう問題じゃないだろ。とにかく、その三人に直接話を聞いてみるか」
巡査は「三人は一人ずつ部屋にいるようにさせました。おかしなことが起こらないように……。二階です。どうぞ」と言って二人を案内した。
西は陰鬱な面持ちで椅子に座っていた。宮田達が部屋に入ってくると彼女はすぐそちらを向いた。宮田は前置きをせずに切り出した。
「お聞きしたいことがありますが、よろしいですか?」
西は弱々しくうなずいた。
「あなた達は川端さんと親しいそうですね。まずお聞きしたいんですが、他の二人は川端さんとはどういう感じですか?」
大友は宮田が何故このような質問をしているのか、全く見当がつかなかった。さらに不可解だったのは、その様子が何かを確かめる――事実を明らかにするために――ようなものだったことである。大友は宮田に何をしているのか聞こうとしたが、それはしないことにした。西もまた怪訝な表情だったが、断る理由がないと見えて答えていた。
「みんな彼とは友達なんです。でも、いつも美紀(藤堂)は不機嫌なんです。どうしてか分かりませんけど。でも仲が悪いという訳ではないんです」
「そうですか。この家によく泊まりに来るんですか?」
「ええ。大体二ヶ月くらいに一度は」
「川端さんですがね、どこに行ってしまったんでしょうかね?」
西はうつむいて答えた。
「私にも分かりません。でも美紀が『彼は死んでいる』と。あれは本当だったんでしょうか?」
宮田は曖昧に返事をした。はっきりしない返事の代わりにもう一つ質問をした。
「警察に通報したのは誰でしたか?」
答えはすぐに返ってきた。
「美紀です。沙耶(佐原)は反対していましたけど」
宮田は礼を言って部屋を辞去した。次に向かったのは佐原がいる部屋であった。
佐原はベッドに腰掛けており、なにかの本を読んでいたが、ノックが聞こえ、宮田達が入ってくると、本をそばの机の上に置いた。
「お聞きしたいことがありまして」宮田はそう言うと、西のときと同じように進めていった。「他の二人は川端さんとはどのような感じですか?」
佐原は西と同様に不思議そうな顔をしたが、すぐに答えた。
「私たち、高校の頃から一緒なんです。だいの仲良しで、二ヶ月に一階はこうしてこの家に泊まりに来て遊ぶんです。お互いに友達だって認識してるんですけど、どうやら美紀は川端君のことが好きみたいなんです。でも、まなみ(西)は川端君と一番仲がいいですから、もしかしたら嫉妬しているかもしれません。本当のことは分からないですが」
宮田はよく分かったという風にうなずいてみせてから言った。
「警察に通報されたのは?」
「美紀です。私ははっきりしていないことだから止めたほうがいいって言ったんですけど」
「それは賢明な判断です。しかし、行方不明ですからね。ところで、その彼はどこに行ってしまったんでしょうかね?」
佐原は少し考えているようだった。
「彼は……どこに行ったんでしょう。分かりません」
「そうですか。ではこれで……」
宮田達は部屋を後にして、最後に藤堂の部屋に向かった。
藤堂は宮田達が部屋に入ってきた後もうつむいていた。宮田はなるべく精神を乱させないように言った。
「ちょっとお聞きしたいことがあるんですが、よろしいですか?」
藤堂は顔を上げ、静かにうなずいた。宮田の最初の質問は先の二人のと同じものだった。藤堂もまた前の二人と同じような反応を見せた上に、話し始めるところまで同じだった。
「川端君と私たちは高校のときから一緒なんです。当時からよくみんなで遊んでいました。でもまなみは……川端君と付き合っているんじゃないかしら。友達関係を壊すようなことですよ。私はあまりいい風に思いません。でもそれが顔に出ちゃってたかもしれないですけど」
「なるほど。よくこの家には泊まっていたんですか?」
「はい。二ヶ月に一度くらいです」
「警察に通報されたのはあなただということですが?」
「はい、そうです。沙耶は何か反対していましたけど」
「まぁ、人がいなくなってしまった訳ですから、あなたが通報したのは間違いではなかったですね。ところで川端さんはどこに行ってしまったんでしょうかね?」
「さぁ、分かりません。隠れたりするような人じゃないから」
「ありがとうございました。どうも失礼しました」
宮田はそう言って部屋を出た。
一階に降りてくると、宮田はまたため息をついた。大友はここで久し振りに口を開いた。
「警部、ため息はやめてくださいよ。こっちまで沈んできちゃうじゃないですか。どうしたんです?」
「なぁ、男と女の間に友情は成立すると思うか?」
「ど、どうしたんです警部、急に。まさか、警部、女の人と……」
「馬鹿。そうじゃない。川端って男と女が三人。組み合わせとしてはおかしなもんじゃないか」
「警部、友情は成立しますよ。時代の流れ、っていうんですか? 警部ももう少し柔軟な頭を……」
「もういい。お前に話したのが間違いだったな。とにかく、全員を集めてくれ」
大友はここで飛び上がらんばかりに驚いて言った。
「まさかもう何か分かったんですか? 僕には何がなんだかさっぱりですよ。事件はどうなったんです? 三人の証言の食い違いとかはどうなんです?」
宮田はこれを無視して無言で大友に命じた。"早く行け"。
まもなく、三人が一階のリビングに集められた。彼女達は何があったのかとしきりに周りの警官達を見ていた。すぐに宮田が一同の前に進み出て、口を開いた。
「この奇妙な出来事について説明をするために皆さんには集まっていただきました」
三人はお互いを見つめ合っていた。見知らぬ土地に置き去りにされたような様相だった。宮田は混乱する彼女達を尻目に話し始めた。
「あなた方には初耳かもしれませんが、あなた方の証言は食い違っているんです。西さんは藤堂さんに川端さんが死んでいると聞いたそうです。佐原さんは西さんにそのことを聞いたそうです。しかし藤堂さんは佐原さんにそのことを聞いたというのです。これはあり得ないことなんです。誰かが死体を発見したんですが、誰もが自分は第一発見者ではないと言っているんです。実際第一発見者はいなかったのではないでしょうか」
大友は大袈裟な身振りで質問した。
「どういうことです? 第一発見者はいないって」
宮田は大友の方から三人の方に向き直ると、丁寧に説明し始めた。
「例えば、例えばです、西さんが死体を発見したとしましょう。彼女は二階にあがり、まず佐原さんに言います。佐原さんはそれを聞いて藤堂さんに伝えます。ここまでは辻褄が合っています。しかし、藤堂さんがもし、西さんにそのことを伝えたのなら、西さんは死体を発見して佐原さんに報告しておきながら、自分は部屋に戻って藤堂さんの口から死体発見のことを聞いたということになります。これは先程も言ったようにあり得ません。この一連の行動は全く説明がつかないのです。つまり第一発見者はいないということになる」
大友は顎に手をやりながら言った。
「でも、そうなるとどういうことになるんです?」
宮田はこの言葉を聞いてか、また説明し始めた。
「また別の考え方もあります。この証言の不一致からあなた方のうちの何人かが予め組んでいた場合が考えられます。まず三人の場合を考えてみましょう。これはあり得ないように思えます。なぜなら、三人が組んでいたとすれば、それぞれの証言はきちんと辻褄の合うものになっているはずだからです。証言が食い違えば疑いの目は否応無しに向けられますからね。となると、あなた方の二人が組んでいたということになります。その中の一人は分かっています。それはある事実から判明しました」
一同は動揺を隠せないようだった。しかし、皆しっかりと宮田の話を聞いていた。
「藤堂さん、確かあなたが警察に通報されたんでしたね?」
「は、はい」
「佐原さん、あなたはなぜそのとき通報することに反対したんですか?」
全員の目は一気に彼女に向けられた。彼女の顔は青ざめていた。
「そ、それは、はっきりしないことだからやめたほうがいいと思って……」
「なるほど、確かにあなたはそんなことを先程も仰っていましたね。しかし、"死体があった"という事実があるにもかかわらず、なぜあなたはそのような選択肢を取ったのですか? おかしなことじゃないですか。反対する理由は全くないのにあなたは反対した」
一同は固唾を飲んで宮田の次の言葉を待っていた。
「このことと先程の証言の不一致のことを踏まえるとあることが分かるのです。第一発見者がおらず、"死体があった"という事実があるのに、警察への通報を反対する理由が生まれる場合は、"この事件は嘘だった"というときのみです」
大友は大声を上げていた。場は騒然となっていた。宮田は手で静かにするように促してその先を続けた。
「どういう意図があったか知りませんが、とにかく佐原さん、あなたはあとの二人のうちのどちらかとこの嘘を計画したんです」
大友は何かに気付いたかのような顔だった。そしてそのことを我先に、というように口にした。
「ということは、川端さんはまだ生きているということですね」
「そういうことになる」
佐原は藤堂と顔を見合わせて観念したように頭を下げて言った。
「すいません。ご迷惑をおかけしました。警部さんの言う通りです。これは嘘だったんです」
「なぜそのような嘘を?」
藤堂はしぶしぶ口を開いた。
「この場で言っていいのか分かりませんが、これは川端君と一緒に計画したことなんです。川端君はまなみにプロポーズをしようとしていたんです。それで今回このような嘘をついてまなみを驚かせてプロポーズをしようということになったんです。それがこんなことになってしまって……」
大友は安堵の表情だった。
「そうだったんですか。それはおめでたいですね。これから川端さんのところに行きましょうよ。プロポーズといきましょう!」
西は頬を赤らめていたが、それは全く予期していないことが起こったからであるようだった。佐原と藤堂も肩の荷を降ろしたように元気になり、裏庭の物置の中に隠れているんです、といって一同を案内した。その場にいた警官たちはその後についていき、お祝いムードは最高潮になった。大友にいたっては踊りだす始末だった。それ以上ひどくなるのを宮田に何とか抑えられたのだが。
一同は緊張の面持ちで物置の前に到着した。なぜかその場の指揮を取っていたのは大友だった。
「さぁ、開けますよー。ご対面!」
物置の戸が静かに開けられた。次の瞬間、一同は目を疑った。そこには変わり果てた川端の姿があったのである。悲鳴が響き渡った。
三人はすぐさま現場から離れるように言われた。どの顔からも恐怖が読み取れた。三人が遠ざけられると、すぐに捜査が始まった。
「腹部を二回刺されています。出血死ですな。死亡推定時刻は大体一時間ほど前、といったところでしょうか。つまり、午後八時ごろと見て間違いないでしょうな。それにしても人生最後の場所が物置とは……」
「警部、死体に刺さったままになっている包丁ですが、これはこの家のものに間違いないそうです。台所にあるのを三人は知っていたようです。お約束といいますか、指紋はありませんでした。きれいに拭かれた後手袋か何かで指紋が残らないように犯行に及んだのでしょう。それと、ポケットからは指輪が発見されましたよ……」
次々と報告が入り、現場はいっそう緊張感が増してきた。三人にも再び事情聴取が取られた。問題の時間、三人はアリバイはなかった。捜査が始まって一時間ほど経ったころ、大友が思案ありげに宮田の元に近づいてきた。
「警部、犯人は佐原さんしかいませんよ。ほら、言ってたでしょう、警察に通報するのに反対していたって」
宮田はじっと彼の話に聞き入っていたが、やがて叫ぶように言った。
「そうか、そうなんだ。大友、そうだよ!」
大友は宮田の下について初めて手柄を立てることが出来たと内心大喜びしていた。早速宮田が全員を集めるように言うと彼は足取りも軽く去っていった。
再び三人はリビングに集められた。先程と違うのは、幸せが抹殺されたために悲しみが増したこの雰囲気だけだった。三人もひどく沈んでいるようだった。重い空気の中、宮田は一同の前に進み出て話し始めた。
「まさか事件がこのような展開をみせるとは思いもよりませんでした。お察しします。しかし、これからこの事件の真相についてお話しようと思いますが、ご勘弁ください。
さて、川端さんを殺害したのは誰か。犯人は藤堂さんと佐原さんの二人の内のどちらかです。なぜなら、川端さんがあの物置に隠れていることを知らなくてはいけないからです。佐原さん、あなたもこのことをご存知でしたね?」
一斉に全員の視線が彼女に向けられた。「まさか、彼女が犯人?」という声も聞こえた。
「さらにあなたは藤堂さんが警察に通報するのに反対した。なぜなら事が厄介になるからです。"嘘なのに警察沙汰になっては困る"からです」
大友は目を丸くしていた。
「え? じゃあ彼女は……」
「犯人ではあり得ない」
「じゃあ犯人は藤堂さん?」
藤堂は驚きの表情だった。
「ちょっと待ってください。なんでそうなるんですか? 私は――」
「説明しましょう。私は全ての事柄が、あなたが犯人だといっていると考えています。まず、私はあなた方一人ずつと話をした訳ですが、そこであることが分かったのです。考えの違いなんです。私はこう思いました。西さんは男と女の間に友情は成立すると考えており、藤堂さんはそう考えていなかった。佐原さんはその二つの考えを客観的に見ている立場だと。今回の"嘘"は幸せに満ちたものだったはずです。しかしこうして殺意は生まれています。殺意を生み出したものは嫉妬心です。それを持つことが考えられるのは藤堂さん、あなたしかいないんですよ」
藤堂は大声で言い放った。
「そんな、そんなことで私が犯人に? いい加減にしてください!」
「まだあるんですよ。それも決定的なことが。佐原さんが警察への通報を反対したのは、最初この事件が嘘だと知っていたからです。あなたも知っていた。しかしあなたは警察に通報したのです。あなたはある心理の裏を突いたのです。"嘘の殺人ならば、警察には通報したくないはず"です。これは周知の事実です。だから犯人もこのことは容易に気付いていたはずです。しかし犯人はもう一つ重要なことを知っているのです。それは"この殺人は嘘ではない"ということです。だから変に警察への通報に反対してしまっては逆に怪しまれる。だから自発的に通報する必要があったのです。その証拠に藤堂さんは西さんよりも早く通報することにしている。そうすることによって本当の殺人が明るみにでた場合、自分は容疑者から外れることが出来る。"犯人なら自分から警察に通報はしないだろうと考えられるから"です。
藤堂さん、あなたはどうして今回の殺人が嘘でないと発覚する前から実際に殺人が起こっていることを知っていたのですか? それはあなたが犯人だからです。どうですか?」
藤堂は両手で顔を覆った。すすり泣く声が聞こえた。
「ああ、……ごめんなさい。……まなみが川端君と婚約するって言うから私、まなみに嫉妬して……。まなみが幸せになるのが許せなかったんです。高校のときから友情を築いてきたのに、付き合うなんて……」
実際、嫉妬の相手に手を下さず、その相手が大切にしている人物に間接的に手を下すケースは多いという。宮田は口を開いた。
「しかし、私は西さんは川端さんと付き合ってもいなかったと思っています。先程川端さんが西さんにプロポーズをすることが判明したとき、彼女は"初めて知ったような顔"をしていました。元々付き合っていたのなら、相手の態度の変化は充分見極めることが出来たはずです。しかし、彼女はそうでなかった。二人は付き合っていなかったからです」
西は宮田に促されると口を開いた。
「警部さんの言う通りだよ、美紀。私たちは付き合ってなんかいなかったの。それに私はずっと川端君を"友達"として見てきた。プロポーズされても断ったと思う。だって結婚なんてしたら、きっと皆とは顔を合わせられないよ。美紀は川端君のこと好きだったんでしょ? ――それくらい分かるよ。美紀は何でも顔に出やすいし、私たちずっと友達だもん――皆とはいつまでも友達でいたいじゃない。結婚でこれがギクシャクしたら嫌だよ。でも結局こんなことになって……。私が悪かったのね……。うまく言えないけど、ごめんね」
藤堂はその場に泣き崩れた。
嫉妬心と誤解が招いた悲劇。
気を付けないとそれはすぐに忍び寄ってくる。