*** 登録作家による小説競作 ***


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「都道府県名(地名)+?+謎」に挑戦


沖縄守神の謎

野坂橋象

プロローグ シーサー
 シーサー。シーサーとは沖縄の守神といわれている獅子ライオンのことである。しかし、本来は沖縄をのための守神ではなく、集落や家のためにいるものである。
 そう、守神には人を守る力がある・・・・・・・・・・。

第一章 現場
 「で、被害者の身元は?」
「はい。え〜っと名前は虎野剛(とらのたける)。年齢は28歳。沖縄から観光の目的で来たと思われます。死因は頭部をフライパンで殴られた物と思われます。死亡推定時刻は16時から17時の間だと思われます。そのとき、容疑者はみんなアリバイがありません。」
「ふん、観光か・・・・・・。で、容疑者は?」
「あちらの宿舎にいます。みんな被害者の仲間で沖縄から観光の目的で来ました。」
「まあとりあえず。仏さんをみせてくれ。」
 
 ここで紹介しておこう。彼の名前は島重造(しまじゅうぞう)。警視である。そしてもう一人は、松尾相(まつおそう)新米の警部補である。この二人は警視庁から、この事件を解決するために、ここ奥多摩町にある多摩宿舎にきたのである。

 死体は奇妙に横たわっていた。死体という物はは奇妙な物だけれど、その死体は左手だけがバックの方にのびていた。そして、死体の右手の人差し指の下に血で「ひふ」と書かれていた。
「ひふってなんだ?ったく意味の分からないこと書きやがって。ん?これは何だ?」
死体の左手は、何かを握っていた。それを警視が取り出そうと、死後硬直した手を無理に開かせようとした。
「警視、あまりいじらないでくださいよ。」
と、松尾は忠告したのだが警視は聞かなかった。そして、死体の手の中から犬のマスコットみたいな物が出てきた。
「これはなんだ?」
「ああ。それはシーサーですね。あの沖縄の守り神ですよ。家の屋根とかについてる。ああ、そういえば被害者のバックの中からもシーサーらしき物が出てきましたよ。ほら、これ。」
「なんなんだ、シーサーとかひふとか。ったくダイイングメッセージってやつなのか?」と、警視は怒りながらその二つのシーサーを見比べて言った。そして、警視はあることに気づいた。
「おい、死体の手に握ってあったシーサーは口を開いているが、バックの中に入ってた、シーサーは口が閉じてあるぞ。一体どういう違いがあるんだ?」
「ああそれは口が閉じた方が雄で、災難を家に入れないという意味があるんです。そして、口の開いた方が雌で祝福を招き入れるという意味があるんです。」
松尾は自分は沖縄生まれ沖縄育ちだと言わんばかりの口調で言った。
「そうか、ありがとう。祝福を招き入れるか・・・・・。一体どういう意味があるんだ?まあいい。とりあえず容疑者たちに会わせてくれ。」
そして二人は宿舎へと向かった。

第2章 尋問
 尋問は宿舎の一室を借りてすることにした。 
 そして、まず最初に男の人が入ってきた。
「名前は?」
「南田五郎です。」
この南田という男は世間ではイケメンと呼ばれる奴だろう。
「南田さんあなたは犯行時刻の16時〜17時の間なにをやっていましたか?」
「え〜っと。たしかあの時間は、川でつりをしていました。いっぴきもとれませんでしたけど・・・・・。」
「なるほど、アリバイはないわけですか。では何か、しっていることはありませんか?」
「知っていることですか?特にありませんけど、まあ強いて言うなら僕たち全員に動機があるということですね。」
「ということは貴方にも動機があるんですか?」
「まあそういうことですね」
「そうですか、ありがとうございます。隣の部屋で待っていてください。」
「警視さん。早く犯人をつかまえてくださいね。」
「はい。全力をつくすつもりです。」
 南田が出て行ってまもなく女の人が入ってきた。
「名前は?」 
「鳥野洋子です・・・。」
この女は、めがねをかけていて、いわゆるネクラというやつだろう。
「鳥野さんは、16時から17時の間何をしていましたか?」
「え〜っとその時間は宿舎で寝てました。ねぇ警視さん、どうしてたけるは殴られて殺されたんですか?どうしてこんなむごいことになったんですか?どうしてですか?」
その時の鳥野は本来の性格とは真反対で、とても怒っていた。
「落ち着いてください。鳥野さん。一体どうしたんです?」
「すみません・・・・私と剛は恋人同士でした。だから・・・すみません・・」
「そうですか・・・僕も全力で犯人を見つけようと思います。そのために何か知っていることがあったら教えてください」
「はい。でもとくにありません・・・・・すみません」
「そうですか・・・ありがとうございます」
そして、鳥野は出て行った。
「彼女のためにも早く犯人を逮捕しなくちゃな、松尾」
「そうですね警視。」
 次に体の大きい男の人が入ってきた。
「名前は?」
「東陽(ひがしよう)だ。」
この男はかなり低い声をしていた。体もでかかったのでとても恐いというイメージだ。
「東さんは16時から17時の間なにをしていました?」
「アリバイはない。部屋で本読んでた。いっとくが俺は殺してないぞ。」
「まぁ落ち着いてください。」
「人が死んだってぇ〜のに落ち着いてられっか。」
「そのお気持ちは分かります。しかしこの事件を1分、1秒でも早く解決するために、落ち着いてください。何か知っていることとかあったら教えてください。」
「知ってることかぁ・・・う〜んまぁこの旅行はあいつが誘ったて言うことは知ってるか?」
「知りませんでした。」
「この旅行はあいつが行こうって言いだしたんだよ。まぁそのせいで死んだってぇのは気の毒だったな。」
「ありがとうございました。また何か気づいたことがあったら教えてください。」
「警視さん、まぁ頑張ってくれよ。」
「はい。」
そして、東は出て行った。
「警視。あいつめちゃくちゃ怪しくないですか?」
「どこが?」
「いやぁ、なんとなくですよ。」
「人を外見で決めるな。」
 そして最後の容疑者の女のひとが入ってきた。
「お名前は何と言いますか?」
「亀岡聡美といいます。」
この女は、はっきり言ってきれいだ。キレイとしかいいようがない。
「で、あなたは犯行時間の16時から17時の間アリバイはありますか?」
「ありません・・・・。」
「何をしていました?」
「散歩に行っていました。」
「第一発見者というのはあなたですね?何かおかしい所などはありませんでしたか?」
「いいえ。特にありませんでした。」
「何か何か気づいたこととか何でも良いですよ。」
「ないです。」
彼女はすこしむきになっていった。
「分かりました。では、何か思い出したことがあったら教えてください。」
「失礼します。」
そして彼女はこの部屋を去った。
「松尾、何か分かったか?」
「全然分かりません。」
「やっぱりそうか・・・・。ダイイングメッセージも気になるダイイングメッセージのことでも調べてみるか。」

第3章 調査
 (う〜ん。この「ひふ」って言うのはどういう意味なんだ?)
警視は尋問の後ベッドの中で考えていた。
(ひふ、皮膚・・・・・どういう意味だ?・・・・。容疑者たちは全然知らないって言ってたし。多分シーサーに関係があると言うところまでは分かったのに・・・・)
と考えている間に警視は眠ってしまった。
〜翌朝〜
 プルルルルルルル
電話の音で警視は起きた。
「モシモシ。」
「警視約束の時間すぎてますよ。」
電話の相手は松尾だった。
「ああわりい。すぐ行く。」
警視は軽い朝食を取り、すぐに出かけていった。 
「おはよう、待ったか?」
「待ったていうもんだいじゃないですよ。3時間遅れる人なんていますか?」
「わりぃ、わりぃ。まっおれの顔に免じて許してくれ。」
「嫌です。」
「・・・・・・何食いたい?」
「寿司!!」
〜寿司屋〜
 「ったく3時間おくれたぐらいで寿司なんていうやつがどこにいるんだよったく。」
「何言ってるんですか?警視が3時間も遅れたのが悪いんですよ。」
警視はわざと無視した。
「そうだ、ダイイングメッセージのことだが何か分かったことはあるか?」
「いっぱいあります。まず一つ、あれは犯人を示しているダイイングメッセージという物です。」
「・・・・・・今俺が言ったばっかだろう。」
「・・・第二にダイイングメッセージあの「ひふ」と言う言葉はシーサーに関係がある。」
「そりゃそうだ。仏はシーサーにぎってたんだから。」
「というわけで、これ、シーサーについての本です。」
松尾は本を出した。
「お前、なにげに気が利くな・・・。まぁよんで見るか。」
本にはこう書いてあった。

 シーサーは、雄を向かって左、雌を向かって右に置く。口の閉じた方が雄、口の開いた方が雌である。
 シーサーの向いているのには意味があります。鬼門の方角となる東北、火伏せの方角となる南です。・・・・

ここまで読んで警視は考えた。
「そうか!!ひふというのは・・・・でも、一つ矛盾することが・・・」
「警視分かったんですか?」
「ああ、しかし・・・・・」
警視は髪の毛をかいた。これは金田一耕助のくせのまねをしているのである。その時、警視はすべての謎に気づいた。
「そうか、分かったぞ。なるほど、髪か・・・・・これで辻褄があう。後は証拠だ。」
警視は手帳を開いた。昨日尋問したことをすべて書いておいたのだ。
「そうか、証拠もこれでそろった。」
「本当ですか?!」
「ああ」
二人は宿舎へと向かった。

第4章 ダイイングメッセージと犯人
 「みなさん集まってください。これから謎解きを始めます。」
「は、犯人が分かったんですか?」
と、鳥野。
「はいそうです。」
と、警視は自信たっぷりの表情で言った。
「では、皆さん集まりましたね。これからこの事件の真相をお話しします。よく聞いておいてください。では、今回の最大の謎、それはダイイングメッセージですね。まず、皮膚というのから説明しましょう。本を読んでいたら、すぐに分かりました。ひふというのは書きかけだったんです。」
「書きかけ!??」
「そうです。確かありましたよね、火伏せの方角というのが。」
「火伏せ?そうか!火伏せの方角と言ったら南だ!ということは犯人は南田だったのか!!」
と、東がいうと、みんな南田から離れていった。
「違います、僕殺してなんていません。本当です信じてください。」
みんなが南田をするどい視線で見る。すると警視は突然しゃべり出した。
「そうです。南田さんは犯人ではありません。私も最初はそう思っていました。しかし南田さんを犯人だとすると一つ矛盾が生まれたのです。」
「矛盾ってなんですか?警視?」
「お前いってただろ、あのシーサーはメスだって。」
みんなは、はっとした。
「ていうことは、犯人は女っていうことですか?」
「その通り。」
と、警視がいうと、みんなが鳥野と亀岡を見た。
「しかし、女で南がつくひとなんていませんよ。」
「そうよ、私たち二人のどちらかが犯人なんてあり得ないわ。」
と、亀岡はいうと、鳥野と顔を見合わせた。
「たしかにそうですね。しかし、一人だけいるんですよ。犯人は貴方です。」
警視は指を指した。その先にはなんと鳥野洋子がいたのだ。
「な、なにいってるのよ。私のどこに南なんてつくのよ。」
と、鳥野は弁解した。
「それが、つくんですよ、南を別の言葉に置き換えるんですよ。」
「警視、僕にはなんだかさっぱり分かりません。」
「私が説明しましょう。あのシーサーの意味はじつは二重だったのです。」
「二重!?」
「そうです。あのシーサーは実は女というのと後もう一つ意味があるのです。それは・・・・神です。」
「神!?」
「そう、皆さんは知っていますよね。東西南北の神を、四聖獣というやつです。」
「四聖獣ってあれだろう、北の玄武、西の白虎、東の青龍、南の・・・・そうか!」
「東さんは分かったみたいですね。そうです、南は朱雀。朱雀というのは鳥です。」
みんなはポカーンと口を開けた。そしてしばらくして、鳥野が言った。
「そんなの、こじつけよ・・・」
「筋は通ってます。」
「証拠は?証拠はあるの?」
「残念ながらあります。昨日の尋問なんであなたは凶器を知っていたんですか?フライパンということを。」
「それは・・・」
「あなたが犯人だからですね」
しばらく沈黙が続いた。それから彼女はしゃべり出した。
「あいつが悪いのよ、あいつが・・・・私のお姉ちゃんを殺したりするのだから。私の大好きだったお姉ちゃんを・・・」
「彼が直接殺したわけではないでしょ?」
「直接殺したも同然よ。あいつがお姉ちゃんにちゃんと借金を返さなかったから自殺したのよ。」
「彼があなたのお姉様に借金をされたのですか?」
「そうよ。あいつが・・あいつが・・・・」
「後は署で聞きましょう。」
と、松尾が口を割って入ってきた。そして、彼女は連れて行かれたのである・・・・。

エピローグ 帰り道にて   
「なぁ、松尾。」
「なんですか?警視?」
「お前推理小説とか読むか?」
「はい、読みますよ」
「ダイイングメッセージが出てくる話ってこう思ったことはないか?どうしてダイイングメッセージに直接犯人の名前を書かないのだろうと。」
「そりゃあ、思いますけど小説ですし・・・」
「そこで今回の事件だがどうしてそのまま名前を書かなかったのだろう?私の推理を聞いてくれるか?」
「はい。」
こうして警視は話し出した。
「あの二人はつき合っていた。このことについてだ。私が思うにこれは彼の罪滅ぼしじゃないのかなぁ。」
「罪滅ぼし?」
「ああ、彼は彼女のお姉さんが自殺してすごく自己嫌悪した。そして殺されることまで予測し彼女とつき合ったんだ。」
「なぜそう思うのですか。」
「だいたいあんな暗号をすぐおもいつくわけないだろう。そして、彼は考えた。彼女に自分を殺させて無念を晴らさせてやろうと。しかし、殺人はやっていいものではない。だから考えたんだ運に任せようとな。だから彼はあんなダイイングメッセージを残したんだ。これで彼がこの旅行を計画したことも説明がつく。」
松尾は唖然として言った
「・・・・・悲しいですね」
「ああ」
雲一つ無い空の中で星がキラキラと輝いていた・・・・