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     百 花 繚 乱 の ま じ め な 小 説 マ ガ ジ ン

      月  刊  ノ  ベ  ル 8 月 号
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   今月の1作 「 停 電 」  作者:青木無常
   ジャンル:ユーモア      長さ:文庫本3ページ  
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 ほんとうに暑い夏、お元気でしょうか。

 まじめな小説マガジンの月刊ノベルです。ネット上に毎日のように発
表される小説の中から、編集者ジョッシュが独断と偏見で、面白そうな
作品を月に1本だけ選抜し、作者の了解を得て掲載してゆくメルマガが
「月刊ノベル」です。

 今月はAWC(アマチュアライターズクラブ)のメンバー、青木無常
氏のケッサク短編「停電」を選びました。氏の得意分野はファンタジー
小説なのですが、私の好みを主張して、この短編の掲載で了解をいただ
きました。

 なお、本編終了後に簡単なアンケートがあります。今後の作品選択の
参考にしたいと思いますので、なにとぞご協力ください。

           平成12年8月8日 編集人 ジョッシュ

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  「 停 電 」           青木無常

   

「おお、やっと出られたぞ」
 うれしそうにいうそいつの顔が、ろうそくの灯にゆらめく。あんぐり
と口をあけておれは、
「なんだこれは」
 思わずつぶやいた。
「これ、とは何だこれとは。失礼なやつめ」
 それはそういった。身長は煌々と灯るろうそくとほぼおなじくらい。
巨大な頭にぎょろ目と三本のツノ、尻からひょろりとのびたしっぽの先
端は、ごていねいに矢印型になっている。
「なんだこれは」
 おれはもう一度口にした。
 そいつは顔をしかめて「しつこいやつだな」とつぶやき、それからに
んまりと笑った。
「要するに、わしはろうそくの魔神だ」
「ろうそくの魔神?」
「さよう」得意げに胸をそらす。「心得たか?」
「そんなもん、きいたこともねえ」
「ばかをぬかせ。ランプの魔神なら知っておろうが」
「……だから、ろうそくの魔神もいるはずだ、と?」
「そのとおり」
 自信たっぷりにうなずかれてしまう。ろうそくの精霊とかいうのなら
まだ納得もできないことはないが、魔神てのは。
「で、結局なんなんだ、てめえは」
「わからんやつだな。ろうそくの魔神だというのに」
「じゃなくて」焦れてきた。「なんだっててめえは突然、こんなとこに
出てきやがったんだ」
「よくぞきいた」にやりと“魔神”は笑った。「なにしろろうそくとい
うものが日常生活に密着していた時代ははるか彼方に遠ざかってしまっ
たわけだ」
 突然妙なことをいいだした。
「はあ?」
 おれは呆れ顔。いったいなにをいいたいのか、こいつは。
「まあいいからきけ。つまりだな。ろうそくが日々欠かさず灯されてい
た時代は遠くなりにけり、ということだ。そうだろう?」
 答えようがない。妙な顔をしておれはだまりこむ。
 そいつはかまわず先をつづける。
「だからまあ、われわれ魔神もなかなか外に出る機会がなくなってしま
った。停電などという現象も、それこそこの世の中からはどんどん駆逐
されてしまったしなあ。で、そうやって閉じこめられたままでいるうち
に、次第におれたちの存在は濃縮され凝結していき、ついにこうして実
体をともなうまでになってしまったわけだな。あとはろうそくに灯が灯
されるのを待つばかりだった、と、そういうようなことなのだよ。いや、
ながいこと待たされたわい」
「っつってもおまえ」呆れ口調でおれはいう。「ろうそくくらい、ちょ
いとしゃれた店あたりなら、ムードだすためにテーブルの上でゆらめい
たりしてねえか」
“魔神”は一瞬、むっとしたようにだまりこんだが、すぐににやりと笑
ってちっちっちっと舌をならしながら人さし指を左右にふった。
「あれはろうそくではない。キャンドルだ」
「はあ?」
 ろうそくとキャンドルのどこがどうちがうのか。
「キャンドルとろうそくとでは、まるでちがうだろうが」
「それにしたっておまえ……。んじゃ、神社とか寺とかはどうなんだよ。
ろうそく使ってるだろうがばんばん」
「やかましい。細かいことを気にするやつめ。その話題はもう終わり。
終わりったら終わり」
 言葉の継ぎ穂をうしない、おれは一瞬だまりこむ。
 それから、憮然としながら問いかけた。
「で、何しに出てきたんだよ」
「よくぞきいた」“魔神”またもやにんまり。「見てのとおりのわしは
ろうそくの魔神である。ろうそくといえば火。いまよりわしはおまえた
ち人間界に炎の恐怖を伝導すべく、おそるべき火災をたまわることとな
るわけだな。まずは手はじめにおまえの部屋を黒こげに完膚なきまでに
焼きつくしだな――ああっ、なにをする」
 みなまでいわせず、ゆらめく炎にふっと息を吹きかけた。暗闇ととも
に“魔神”の気配も消失する。
「なんだったんだ」
 つぶやきつつ、おれは改めて押入内部を手さぐりでまさぐり、ようや
くのことで懐中電灯をさがしだすと、これもずいぶんとひさかたぶりの
スイッチを入れた。すると、
「おお、やっと出られたぞ」
                      停電――了
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 青木無常氏のホームページ GADGET BOX
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http://www2u.biglobe.ne.jp/~g-box/
   小説とCGが盛りだくさん。この作品で笑えた人なら、
  「山田三平帝国」は必読ですぞ!
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     タイトル:テキスト版月刊ノベル
      発行日:平成12年08月08日
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    編集・発行:MiyazakiBookspace 
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