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         ま じ め な 小 説 マ ガ ジ ン

        月 刊 ノ ベ ル ・ 2 月 号

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  インターネット上にきら星のごとく散らばる創作サイトの中か
 ら、私(編集人)ミヤザキ、が独断と偏見(?)に基づき選抜し
 た小説を、作者の了解を得てから順次掲載してゆくメールマガジ
 ンが「月刊ノベル」です。

  コミカル、ミステリ、叙情、ラブロマンス、ファンタジーSF、
 などなどジャンルは多彩ですが、アダルトはありません。

  なお、本編終了後に簡単なアンケートがあります。今後の編集
 に役立てたいと思いますので、なにとぞご協力ください。


    
http://www2c.biglobe.ne.jp/~joshjosh/novel/

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      月刊ノベルは等幅フォントでお読みください。
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  今月の小説:排水管にあこがれて   作者:佐野祭

  ジャンル:大型小説         長さ:文庫本2ページ  

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 2001年度AWC大賞は、めでたく次のように決定しました。

   大賞 ● つきかげ(憑木影) ● 誤解

  長編賞 ● 悠歩 ● 【OBORO】 =第4幕・異形胎動=
  短編賞 ● 時 貴斗 ● 階段
  連載賞 ● 永山 ● 対決の場
      ● 佐野祭 ● 新種のあひる〜初代佐野祭の生涯〜
  お題賞 ● 青木無常 ● 恩返し
  HP賞 ● えびす ● 毒まつたけ
 
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 今月は、いよいよというか、アマチュアライターズクラブ(AWC)
を主宰する佐野祭氏の作品を紹介させていただきます。まずは、その
AWCの案内口上(一部抜粋)を。

@AWCとは@

「作品を書き、感想を書く」それがAWCのテーマです。

 AWCは小説を中心に随筆、詩、シナリオ、戯曲、ノンフィクション
などあなたの文芸作品の発表の舞台です。
 ネットですから、「ボツにならない」「書いたらすぐ全国の人に読ん
でもらえる」「作品に対する反応がある」などなど、紙による媒体では
難しい利点 もあります。
 ジャンル、長さは全くの自由です。純文学、ミステリー、SF、ポル
ノ、お笑いなどはもちろん、既成のジャンルに当てはまらない作品もお
待ちしております。どうも回りの作品と雰囲気が違うなあ、なんてこと
を恐れる必要はありません。

 AWCのホームページ:  
http://www.awcjapan.net/

@(以下略)@

 AWCでは毎年1回、その前の年にAWCのボード(掲示板)に発表
された作品を対象に、参加者の投票によるAWC大賞を選定しています。
今月お送りする大型生活小説「排水管にあこがれて」は、その中では、
惜しくも短編賞の次点に留まりましたが、私にとっては、どうにも頬が
緩んでしまうのを止めることができない傑作でした。

 佐野祭氏はすでにネット上に「大型小説」というサブタイトル付きの
小説を多数発表し、また昨年には、新潮社から本を出版。実績的にもメ
ジャーなネット作家となっておられます。大型小説という呼称も、その
小説の雰囲気を醸し出す為の効果的な演出になっていて、それだけで楽
しくなります。ひょっとしたら、大型小説という新しい小説ジャンルま
で創作されたのではないかと、思ったりします。今回は、無料メルマガ
なのですが、幸いにも掲載依頼に快諾いただきました。短い作品ですが、
どうぞお楽しみください。

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 大型生活小説

 ■排水管にあこがれて  佐野祭

 梅田さんご一家はどこにでもある普通のご家庭です。
 3LDKの賃貸マンションにご主人と奥さん、小学生の長女と幼稚園
の長男の四人暮らし。いつも笑い声が絶えない梅田さんご一家です。
 そんな梅田さんちには、排水管を見張っている人がいます。
 松本喜三郎さん27歳。松本さんはここで、排水管がつまっていない
かどうか常に目を光らせています。
「もしもし松本です。梅田さん宅で洗面所の排水管がつまった模様です。
至急対応願います」
 さっそく作業員がかけつけ、排水管の掃除が始まりました。
 作業すること30分。排水管はすっかりきれいになりました。
 奥さんの手児奈さんも大喜びです。
「ほんと助かってます。もし見張る人がいなくて排水管が詰まったらと
思うと、ぞっとしますね」
 今日も松本さんは排水管を見張ります。そんな松本さんの夢は、台所
の排水管の担当になることです。
「やはり台所の排水管が一番詰まりやすいんで、経験が必要なんですよ」
 いま梅田さんちの台所では、松本さんの先輩が排水管を見張っていま
す。松本さんは台所の排水管を見張る資格を取るべく、休みの日も遅く
まで勉強しています。
 松本さんは排水管の担当になる前は、蛍光灯の見張りをやっていまし
た。蛍光灯が切れそうになっていないかどうか、常に目を光らせている
のです。
 いまでも梅田さんちでは、松本さんの後輩たちが各部屋三人ずつ配置
されています。上の輪を見張る係。下の輪を見張る係。そして、豆球を
見張る係です。
「やっぱ将来はね、松本さんみたいに排水管の見張りをやりたいですよ
ね」
 排水管を見張るのは厳しい社内審査を通った人でないとできません。
若者たちは今日も排水管を見張る日を夢見て蛍光灯を見張り続けます。
 松本さんの上司にあたる杉野森さんは松本さんについてこう語ってい
ます。
「とにかく真面目にこつこつやってますね。将来はドアが半開きになっ
ていないか見張る係を任せてもよいのではないかと思ってます」
 そう語る杉野森さんは、いま梅田さんちでブレーカーの見張りをやっ
てます。
 今日も奥さんの手児奈さんがうっかり電子レンジを使いながら掃除機
をかけてしまいました。
「落ちました」
 さっそく作業員の人が飛んできてブレーカーを元に戻します。
 そんな梅田家に、新人が配属になりました。
 新人がまず最初にやる仕事は、ベランダですずめが来ないか見張る係
です。
 来ました。すずめが三羽、梅田さんちのベランダで遊んでいます。
 新人さんはさっそく梅田さんに連絡を取ります。
「あもしもし、今すずめが三羽ベランダに来ているのですがどうしま
しょうか」
「そのままで結構です」
「了解しました」
 梅田さんの判断で、すずめを追い払うことはしないことになりました。
 松本さんはそんな新人の姿を頼もしそうに見つめています。
「私も新人のときはまずすずめの見張りから始めました。当時はそうで
すねえ、自分が排水管の見張りをやる日ってのは、ちょっと想像できま
せんでしたね」
 梅田さんちの快適な生活は、数多くの人々によって支えられています。


  (完)

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     佐野祭氏の作品は次のサイトで読めます。

     「 佐野祭の大型小説 」
 
     
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      広東       「賽の河原」
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      叙朱       「花火」「音」

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