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         ま じ め な 小 説 マ ガ ジ ン

       月 刊 ノ ベ ル ・ 3 月 号 の 3

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  インターネット上にきら星のごとく散らばる創作サイトの中か
 ら、私(編集人)ミヤザキ、が独断と偏見(?)に基づき選抜し
 た小説を、作者の了解を得てから順次掲載してゆくメールマガジ
 ンが「月刊ノベル」です。

  コミカル、ミステリ、叙情、ラブロマンス、ファンタジーSF、
 などなどジャンルは多彩ですが、アダルトはありません。

  なお、本編終了後に簡単なアンケートがあります。今後の編集
 に役立てたいと思いますので、なにとぞご協力ください。


    http://www2c.biglobe.ne.jp/~joshjosh/novel/

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      月刊ノベルは等幅フォントでお読みください。
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  今月の小説:誤解(連載第3回)   作者:つきかげ

  ジャンル:ファンタジー       長さ:文庫本11ページ  

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 今回はAWC大賞受賞作「誤解(つきかげ氏作)」の連載第3回
(最終回)をお送りいたします。どうぞお楽しみください。

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■誤解 連載第3回 つきかげ

 よく朝僕らが目覚めたとき、世界はしんとした静けさと、真っ白な雪
に覆われていた。僕らは毛布を身体に巻きつけて馬車にのる。
 漆黒の鋼鉄で造られた馬は、雪を蹴たてて快調に走っていった。僕は
ひどく楽天的な気分になってきた。あっという間に四国に着くような気
がしてくる。
 四国には発病せずにすんだ人たちが終結し、コミューンを作っている
らしい。むろんあやふやな情報ではあるが、そこに行ってみる以外にす
ることもないし、僕はいけばなんとかなるような気がしていた。
 でも、旅の終わりはひどく唐突に訪れる。
 巨大なヘリコプターが僕らの頭上に出現した。全部で7機。軍用の輸
送ヘリのようだ。そのヘリは明確に僕らを意識している。
 やがてヘリは僕らの前後に降りてきた。スーザンは馬車を止める。ヘ
リは僕らの前方に四機、僕らの後方に三機着陸した。
 ヘリの中から兵士たちが降りてくる。その姿を見て、僕は息を呑んだ。
それはロボット兵士だった。自衛隊が遠隔操作のロボット兵士を使用し
ているという情報は、どうやら本当だったようだ。
 兵士は一見人間のような姿をしているが、その動作の不自然さによっ
て明確にロボットだと判る。ロボットたちは四体一組になって行動して
いるが、それらの兵士の動きは機械的正確さで連携がとれていた。皆、
寸分違わず同じ動作をして展開してゆくのだ。
 二足歩行の兵士の他に、四足歩行のロボットもいた。大きさはスプレ
イニルと同じくらいであめうか。その背にミサイルランチャーを背負っ
ており、顔にあたる部分には重機関銃が装備されている。
 二足歩行の兵士たちは自動ライフルを構えていた。それは人間の兵士
が使用するものと全く同じ種類のもののようだ。
 兵士たちは都市迷彩の施された装甲をつけている。手(マニュピレー
タ)の長さが人間の倍近くあり、足(歩行装置)の長さは人間の半分く
らいであった。類人猿のように歩行の際にはその長い手も使用している
が、結構移動速度は速い。
 ロボット兵士たちは五十メートルくらいの距離をおいて、僕らの前後
を封鎖した。
一体、他の兵士より高い身長を持つロボットが歩みでてくる。その兵士
は顔の部分に液晶ディスプレイが取り付けられていた。
 その背の高いロボット一体だけが僕らの十メートル手前まで近づく。
スーザンと僕は馬車を降りた。
 ロボットの液晶ディスプレイには、初老の男が映っている。その男が
しゃべり始めた。
「天川啓一とかの子だね」
 僕は返答しない。それを気にしたふうもなく、男はロボットを通じて
話を続ける。
「私の指示に従いたまえ。殺すつもりはない。見て判るように、君たち
は逃げることはできない。むろん君たちに逃げる理由はないはずだがね。
我々はあくまでも君たちを保護しにきたのだから」
「どうするつもりだ、僕らを」
 僕の問いに男が答える。
「私は国立生化学研究所所長、佐川というものだ。獣化ウィルスを造っ
たものだといったほうがいいかな」
 僕は息をのむ。
「世界を滅ぼしたのはおまえか」
「馬鹿をいっちゃいかん。確かに日本では一億近くの人間が獣化病で死
んだが、それは大した問題じゃない。才能のある優秀な人間は皆海外へ
脱出しているし、日本以外の国では特に混乱はおきていない。世界に
とって日本という国はそれほど重要な存在じゃあないんだよ」
 僕は目の眩むような憎悪を感じた。
「一体なんのためにおまえは」
「実験だよ。獣化ウィルスは元々人間を進化させるために造られたもの
だ。残念ながら、生体実験は殆ど失敗に終わっている。しかし、私は確
率的には成功する例がありうると思っていた。そのためには大量の人体
実験をする必要があった。天川君。君の妹はその一億近くの実験の果て
に生じた、唯一の成功例だ」
 僕は静かに言った。
「かの子をどうするつもりだ」
「大事な検体だ。大切にするよ。ただ、彼女の意思は無くさねばならん。
彼女は世界を改変しうる力を持つ。それを彼女自身の意思によってコン
トロールされてはたまらないからね。私たちは急いでる。君の妹が目覚
める前に確保し、マインドコントロールを完了させないといけない」
 僕は拳銃で液晶ディスプレイを撃った。哄笑が響く。
 ディスプレイの破壊されたロボットは、全く変わらぬ口調で話しつづ
ける。
「そんなことをしても意味がない。天川君、君に事態の危険性を理解し
てもらいたかったが、無理なようだね。しかたない、始めようか」
「今判った」
 スーザンは前に出る。
 呪文の詠唱と同時に炎が発生し、ロボットが火に包まれた。
「この世界は、救われることを望んでいる。私は、啓一、おまえの妹に
よってこの世界を救うために呼び出されたのだ」
 ロボット兵士たちが動き出す。
 ロボットたちは、一斉にグレネードランチャーを撃った。弧を描き、
僕らの足元に次々と催涙弾が落ちてゆく。催涙ガスがあたりを覆い始め
た。
「天空を渡る力にして、大地を渡り、渓谷を走り抜け、木々を振るわせ
る大いなる風の精霊よ。世界が歌う声を我のもとにもたらせ。いにしえ
に我が一族が空に捧げた血と、肉体。それをあがなうためになされた契
約を果たせ」
 スーザンの叫びに答えるように、風が巻き起こった。催涙ガスは風に
よって、運び去られてゆく。
 詠唱を終えたスーザンは、がっくりと膝をついた。ひどく疲労してい
るようだ。僕は慌ててスーザンを抱き起こす。ロボットたちは前後から
迫ってきていた。
 スーザンは、僕を払いのける。
「邪魔だ」
「スーザン、どうしたんだ。ひどく疲れているみたいだけど」
「うるさい!」
 スーザンは詠唱を始める。
「遥かなる大地の果てに住まう、偉大なる火炎地獄の覇者にして、死せ
る大地を渡る神秘なる力の顕在化である炎の精霊よ、いにしえに捧げら
れた我が一族の血と肉によって為された約定を果たす時が今きた」
 時空が裂け、紅蓮の炎が出現した。炎がロボットたちを襲う。しかし、
炎はロボットの足を止めることはできなかった。

 ロボットの自動ライフルが、銃声を轟かせる。
 スーザンは膝をつく。苦鳴がもれ、膝の間に赤い染みができる。
「スーザン!」
 スーザンは苦しげに語る。
「やはりこの世界は伝説に語られるデルファイだったようだ。全ての魔
道の発現が阻害されるところ。魔道とは幻想の現実化だ。意識を持たぬ、
機械の存在を前にして、魔法を発現させるのはひどく困難だ」
 ロボットたちは間近に迫る。スーザンは叫んだ。
「スプレイニル!」
 漆黒の馬は馬車から解き放たれ、ロボットたちへ向かう。四足歩行の
ロボットの背にあるミサイルランチャーが火を噴いた。
 爆煙が漆黒の馬を包む。炎と煙が去った後に、身体を両断されたスプ
レイニルが姿を現す。鋼鉄の馬は横たわったまま、動かない。
 もう一発ミサイルランチャーが発射される。それは馬車に命中した。
僕は爆風になぎ倒される。意識が遠のいた。
「ケイイチ!」
 スーザンの叫びで、僕は気づく。かの子は、雪の上にほうりだされて
いた。気を失っているようだ。助けに行こうとしたが、身体が動かない。
 スーザンももがきながら、雪の上を這いずっている。その先にはあの
棺桶があった。棺桶はほうりだされ、蓋が開いている。その中がどう
なっているかは、判らない。
 ロボットたちは、かの子のすぐそばまで来た。
 僕は絶叫した。
「ごああああうううううおおっ」
 僕は自分の声に驚いた。獣の声だ。僕は自分の両手を見る。それは既
に、狼の前足に変化しつつあった。
 さっき一瞬気が遠のいた時に、発病したらしい。僕は全身を覆ってゆ
く快感のような苦痛のような、どうしようもなく狂おしい感覚に身悶え
する。
 僕の心の中には暴風が吹き荒れていた。意識を飲み込み、全てを紅蓮
に燃やし尽くそうとする破壊衝動。殺したかった。血と肉を喰らいたい。
 僕は狂ってゆく!
 リン、と水晶の鳴る音がした。
 僕は一瞬、正気に戻る。
 激しい暴風雨が、台風の目に入ることによって一瞬途切れるように。
 熱病患者が解熱剤で一瞬正気を取り戻すように。
 僕の前に黒焦げになったロボットが立っている。ロボットはかの子を
指差して言った。
「見ろ。奇跡が顕現するところをお前は見ることができる。祝福するが
いい」
 黒焦げのロボットは関節から火花を散らし、ぎしぎしと身体を軋ませ
ながら言葉を続ける。
「ウィルスは人間の身体に刻まれている『折り畳まれた』潜在的形質を
発動させる。その潜在的形質は、世界そのものに『折り畳まれて』いる
潜在的形質をも発動させるのだ」
 かの子は立っていた。
 僕を見て微笑む。
 その背には七枚の翼が開いていた。
 かの子が言った。
「お兄ちゃん、見て」

 その瞬間、静寂が降臨した。あたりは野に晒された骨のような真白き
雪に、満たされている。
 リン、ともう一度、水晶の鳴く音が響く。
 白き静寂の野には鋼鉄でできた異形の兵士たちが、立ち尽くしていた。
そして、僕の傍らには、沈みゆく太陽の紅で雪を染めてゆく魔法使いが
倒れている。
 天使は雪の中でほほ笑みながら、全てを見ていた。
 リン、ともう一度水晶が鳴く。
 そして影が空に舞った。
 夜を身に纏った水晶の人形が、真白き雪煙をたて静かに大地へ降りる。
 僕は僕を支配してゆく狂気にあらがうため、もう一度叫ぶ。
 そして、静かに宴が始まった。

 世界を救う人形。
 鐔広の帽子を目深に被っていても、水晶で造られた肌の輝きは見るこ
とができる。その透明の肌の下には、微細なガラスの血管があり、その
ガラス管を輝く水銀が激しく流れていた。水晶は歌う。世界を救う歌を。
 包帯がとれた手足は、やはり水晶でてきている。銀色のワイアーでで
きた筋肉は、縦横に流れる水銀の力によって駆動されていた。
 さあっ、と雪が舞う。
 自動ライフルが一斉に射撃されたが、人形を捕らえることはできない。
 その速度は人の属する速度ではない。異界に棲むものの速度だ。
 人形は叫ぶ。
「天使には正気を失うような苦痛に見えるのだろうが、地獄の火のなか
で私は精霊の楽しみと歓びに満たされていた」
 僕の足元でスーザンが呟いた。
「エリウス人形は、人形であるがゆえに自身の言葉を待たない。彼の言
葉はいにしえの詩篇から引用される」
 人形は剣を抜いた。その刀身は半ばで断ち切られている。息を呑んだ
僕に、スーザンが囁きかけた。
「心配するな。あれは金剛石の刃を刀身の中に仕込んだ剣、ノゥトゥン
グだ。ワイヤーで金剛石の刃を操り、あらゆるものを切断する」
 人形は疾駆する闇と化し、飛来する銃弾をかわしながら、もう一度叫
ぶ。
「獅子の咆哮、狼の唸り、嵐の海のうねり、破壊の剣は、人間には計り
知れぬ永遠の栄光の一端である」
 透明の光が中空を走り抜ける。ノゥトゥングの一振りで、十体ものロ
ボットが胴を両断され、地に倒れ臥した。青白い火花が大地を這い回る。
 人形はもう一度叫ぶ。
「雷鳴と炎を持つ王は、星の軍勢を率いて荒地を進み、十の命令を広め
た。暗く沈んだ海に刺すような視線を投げながら」
 透明の刃はロボットたちを切り裂く。その鋼鉄の腕を。足を。
 ロボットたちは鋏で切り刻まれた紙片のように、無造作に断片へ切り
刻まれてゆく。宙を舞う金剛石の刃は、飛来する星の煌めきであり、人
形自身の姿は漆黒の風のゆらめきとなっている。
 水晶のあげる叫び声は轟音と化していた。僕らは、水晶の液が瀑布と
なって世界へ雪崩落ちてゆく、そのただなかにいる。
 僕は獣と化し、四足で立った。
 人形は水晶の爆音を貫き、もう一度叫ぶ。その刃は、さらにロボット
たちを死においやる。
「帝国は消滅した。獅子と狼の戦いは終わる」
 全てのロボットは地に落ちていた。精緻な構造を持つ機関部をさらけ
出したロボットの死体は、大地の上で青白い火花に包まれている。
 軍用輸送ヘリもまた、そのボディを両断され、死を迎えている。その
様は、まるで巨大な鯨が、陸の上で解体された姿のようだ。
 スーザンは眠り落ちるように目を閉じた。その身体は、真白き雪の中
へ静かに沈んでゆく。
 気がつくと、僕の傍らにかの子がいた。四足で立つ僕は、かの子を見
上げる。眩く輝く七枚の翼につつまれたかの子は、とても美しい。
「見て、お兄ちゃん」
 僕はその時、僕がとてつもなく世界を誤解していたのではないかとい
う感覚に囚われる。全ては誤解だったのだ。全てはあるようにして、
あっただけなのだと。
 僕は、二本足で立つ。
 周りに多くの人たちがいた。
 高速道路の上は様々な人たちで満たされている。
 お父さんもいた。
 お母さんもいた。
 大人も、子供も、老人も、様々な人たちがいた。
 皆、祝福している。僕とかの子を。
 全ては誤解だったのだ。そう知ったとき、全ては終わった。
 皆が光に包まれ、かの子が空に舞い上がる。天空には巨大な暗黒の穴
が開いていた。その彼方に銀河が渦巻いているのが見える。
 かの子はその暗黒へ向かって飛んでゆく。光につつまれた皆も、かの
子に続く。全てがその暗黒の穴へ吸い込まれていった。
 穴は閉じられる。
 僕は再び、四足で立つ。僕は眠るように目を閉じている魔導師と、役
目を終え再び眠りについた人形に、別れをつげる。
 僕は雪を蹴たてて走り始めた。
 西へ向かって。

 私たちはよく朝、雪につつまれた高速道路を西に向かって走り出す。
気がついたときには、私たちは機動隊の包囲の中にいた。
 スプレイニルと名づけられたワンボックスカーは雪の中に横転する。
後の記憶は断片的だ。
 スーザン・マクドゥガルは銃に撃たれて、大地に倒れる。その身体の
下の雪は、真っ赤に染まってゆく。兄さん狂ったように叫びながら、四
つん這いで這い回る。
 私は朦朧とした意識の中で、自分の身体が雪の中に埋まっているのを
感じた。機動隊員が私の回りにいる。
 リン、と水晶の鳴る音がした

 その瞬間、静寂が降臨した。あたりは野に晒された骨のような真白き
雪に、満たされている。
 リン、ともう一度、水晶の鳴く音が響く。
 白き静寂の野には灰色の制服を着た機動隊員たちが、立ち尽くしてい
た。そして、兄さんの傍らには、沈みゆく太陽の紅で雪を染めてゆく魔
法使いが倒れている。
 私は雪の中で、全てを見ていた。
 リン、ともう一度水晶が鳴く。
 そして影が空に舞った。
 夜を身に纏った人形が、真白き雪煙をたて静かに大地へ降りる。
 兄さんは身体の中からわき起こる狂気を絞り出すように、もう一度
叫ぶ。
 そして、静かに宴が始まった。

 棺桶の中に入っていたのは、スーザンの弟、エリック・マクドゥガル
だった。ほんとうのサイコキラーは、そのエリックだったらしい。エ
リックは刀身が半ばで断ち切られてている日本刀を抜き、数人の機動隊
員を切り伏せる。
 その日本刀は折れているにも関わらず、凄まじい切れ味を持っていた。
機動隊員の手足が無造作に切り落とされていく。
 銃声が何度も轟いたが、漆黒の風となったエリックを捕らえられない。
 人形のように切り刻まれた機動隊員たちは、雪の中に沈む。切り刻ま
れた胴体から内蔵がはみ出し、大地をのたうつ。真白き雪は、深紅にそ
まってゆく。
 エリックが斬る度に、水晶の鳴く音がする。
 その半ばで断ち切られて日本刀には、鋼の刃の替わりに、水晶の透明
な刃が付けられているらしい。
 エリックは叫んだ。
「雷鳴と炎を持つ王は、星の軍勢を率いて荒地を進み、十の命令を広め
た。暗く沈んだ海に刺すような視線を投げながら」
 それは、ウィリアム・ブレイクの詩編の引用のようだ。
「帝国は消滅した。獅子と狼の戦いは終わる」
 しかし、エリックも取り押さえられた。
 私は雪の中に埋もれている。歪んだ視界の中で兄さんが光に包まれる
のを見た。
 私はふと思う。
 私はとんでもない誤解をしていたのだと。
 本当の世界を知っていたのは、兄さんだけだったのだと。
 兄さんは光に包まれたまま、空へ昇ってゆく。灰色に閉ざされた空の
中に、一ヶ所だけ漆黒の部分がある。兄さんはそこへ吸い込まれていく。
 私は高速道路の上にいろんな人がいるのを感じた。お父さんもいる。
お母さんもいる。お母さんは死んでなかったんだ、と思いながら私は気
を失った。
 今、私は精神病院にいる。
 医者がいうには、私に兄さんなんていないらしい。戸籍上も存在しな
いし、私の回りの人たちもそんな人はいないという。
 でも兄さんはいるんだ。たった一人本当の世界を知った人として。
 私はそう思うがゆえに、精神病院にいるらしい。
 どうでもいいことだ。
 本当の世界はあの時、兄さんがひとりで行ったところなのだから。
 ここは偽りの世界。
 そして、それが私の生きる場所。

(誤解−終わり)

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     つきかげ氏の作品は次のサイトで読めます。

       「 戎 克 庭 園 junk garden」
 
   http://www5a.biglobe.ne.jp/~tukikage/index.html

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   これまで登場していただいた作家(敬称略)と作品リスト

      佐野祭      「排水管にあこがれて」
      広東       「賽の河原」
      神楽坂玉菊    「ますから」
      伊勢湊      「夜行列車」
      みぃしゃ     「ハードル」
      KOZY     「缶蹴り」
      つきかげ     「1対1」
      えびす      「青空」「ボーイ・ミーツ……」
      のぼりん     「男の考え 女の思い」
      河本勝昭      世相百断「告知」
      RIBOS    「安全な食べ物」
      飯田橋      「噂のカツ丼」
      秋野しあ     「水の花」
      青木無常     「停電」
      ドルフィン    「5号室の秘密」
      叙朱       「花火」「音」

      バックナンバーはこちらで読めます。
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