4行詩をつくってみよう


 ■ はじめに

 このコラムの内容は、4行詩という詩作理論の解説ではなく、楽しく詩作に取り組む方法についての説明です。月刊ポエムでは、どなたにも楽しめる口語体の自由詩を採用しています。このテキストを読んで、ぜひ、インターネットという便利なツールを利用して、詩の投稿、選詩、感想などの活動に参加してください。


 ■ 詩作を始めるのに必要なもの

 詩作を始めるのに必要なものは特にありません。しかし、長く続けていこう、上達したい、という方はいきなりパソコン直打ちで詩作をせずに、一度ノートに書き付ける習慣を持たれた方がよいと思います。

 書くもの → 鉛筆、シャーペン、ボールペンなど何でも。
 創作手帳 → メモではなくて小型のノートがいい。
 国語辞典 → 50,000語くらいのもの。


 ■ 口語体について

 ここで提唱している4行詩は「口語体」と規定しています。口語体とは、読んで字のごとく、口から語られる文体のことです。特に難しく考えることはありません。ふだん使っている普通の言葉が口語と呼ばれますし、これを使った文章を口語体と言うだけです。

 明治時代以降に提唱された「新体詩」という詩作の運動がありました。これはいわゆる「文語定型詩」と言われ、文章にしか使われないような難しい言い回しを用い、必ず韻を踏むという縛りの厳しいものでした。

 しかし、現代の私たちは日常を会話で過ごしています。そうした日常の1シーンを切り取る4行詩はやはり、親しみやすい、わかりやすい、口語体で書かれてほしいと思います。 


 ■ 自由詩について

 さきほどの「口語体」のところで説明した「文語定型詩」のように、伝統的な詩の韻律や形式を重んじる詩作の運動があります。それに対して「自由詩」とは一般に、そうした形式にとらわれない、自由な内容・形式で作る詩を意味するようです。

 しかしながら、月刊ポエムで提唱している4行詩は、1行30文字、最大4行まで、という形式を定めています。そういう意味では、月刊ポエムの4行詩は日本で言う「自由詩」からは少し外れていることになります。

 ちなみに、日本で自由詩というと、口語詩と同義につかわれることが多いようですが、海外では少し事情が異なるようです。特にイギリス・アメリカで自由詩というと、定型詩のような伝統的な韻律に従わず、他の要素(頭韻・全体の抑揚など)によるものをそう呼ぶとか。


 ■ なぜ30文字x4行なのか

 月刊ポエムでは「4行詩」を提唱しています。1行30文字、最大4行までという制限を付けていますが、これは月刊ポエムが電子メールで配信され、インターネットという媒体を通して閲覧や投稿などを行っているからです。

 私の経験では、パソコンのモニター上で文章を読むというのは、ある種の苦痛を伴います。人気の高いニュース番組ですらも、記事のひとつひとつは新聞に掲載されるもの比べて、短く編集されています。そうしないと読者が読まないからだそうです。

 長い文章は敬遠される。
 それなら、短いものなら読んでもらえるかもしれない。

 また、たいていの電子メールソフトには改行設定があります。ふつうは、全角36文字程度で強制的に改行してしまうものもあるそうです。1行30文字にしておけば、そういう電子メールソフトであっても、途中折り返しで、せっかくの詩のリズムが崩される心配もない。

 こういう単純な発想で生まれたのが、この4行詩という形なのです。


 ■ まずは作ってみましょう。

●簡単な約束事から

 本格的に詩を書こうということになると、理論的にはいろいろあると思います。しかし、ここではそういう高度なお話ではなくて、もっとベーシックなお約束をいくつか紹介します。これらは「必ず」守ってください。

・1行は全角文字30字以内
・本文は最大4行まで
・日本語口語体を使う

 なんだ、そんなことは分かってるよ、と言われそうですが、これがまず4行詩での前提条件です。これから外れるものは投稿されてもボツとなり、感想も選評もつきません。

●4文でつくる

 まずは次の作品を見てください。

 わたしは
 悲しくて
 涙を
 流した

 1行30文字以内で、4行になってますね。でも、これだと選詩からは漏れてしまいます。まず、この詩はひとつの文を4つに区切っただけです。ここは肝心なのですが「ひとつの文を4つに区切っただけでは、4行詩ではない」のです。

 この作品を文という観点から分解してみましょう。

 わたしは悲しい
 だから涙を流した

 2文です。
 せっかく4行あるのですから、4行を使って書いてください。あるいは、2文で終わるならわざわざ、4行にする必要はありませんよね。こうすると雰囲気がでてる、と誤解される方がいらっしゃいますが、果たしてそうでしょうか。


●シーンを切り取る

 さて、さきほどの作品ですが、これを読んでどういう情景を思い浮かべましたか。うーん。悲しいから泣いた、と。これだけではとても情景までは浮かびませんね。この作品の場合は「泣いた理由」や、泣きながら「どう思ったか」という気持ちの所在がほしい気がしますが、そもそも、この作品を書いた人が何を思って書いたかが分かりませんから、そこまでは立ち入れません。残念ながら、ボツですね。
 心情でも情景でも、4行詩にしようという場合は、そのシーンを切り取るように書いてほしいと思います。つまり、読んでいる人に、書いた人の情景が伝わるように。それが詩想というものではないでしょうか。


●考えて作らず、感じて作る

 幼子たちの素朴なことばや表現に思わず微笑んだり、感心させられた経験はどなたにもあるでしょう。子供たちは決して知識に頼んだり理屈で考えたりして話すのではありません。心に湧いた感動を、驚きをただ素直にことばにしているだけです。

 松尾芭蕉は、

 俳句は三歳の子供にもわかるように作りなさい

 と、弟子たちを諭したそうです。 むつかしい言葉を使わない。理屈を言わない。 つまり幼子のような気持ちになって、詠みなさい、と教えているのでしょう。4行詩も同じようなお願いをしたいです。


 ■ 投稿しましょう

● 勇気を出して投稿しましょう

 作品ができたら、それが他の人にどれだけ共感してもらえるかを確認してみたいですよね。勇気を出して月刊ポエムに投稿してみましょう。

 投稿掲示板はいつでも自由に投稿できます。インターネット上に作品を掲載するという意味ではいちばん手っ取り早い方法です。ただし、こちらには感想や寸評はつきません。選詩の対象になりますが、評価は編集人ひとりで行います。

 合評掲示板(準備中)は、投稿された作品すべてに寸評がつけられます(一人あたりの投稿作品数の制限があります)。自分の作品が他の人にどんなふうに受け入れられるかを知るのはとても励みになる思います。たとえ期待通りの感想でなくても、率直に受け入れる度量が必要ですけれど。


● 選詩にも挑戦してみましょう

 投稿したら、共感投票に参加する。これをセットで考えていただきたいと思います。こうすることで互いに自分の作品を他の人に評価してもらえるシステムとなります。投稿に自信がないという方でも、共感投票だけでも参加して下さい。良い作品に触れるだけでも詩心が養われます。


● 毎月の互選上位作品を読み直しましょう

 投稿された作品は毎月、評価された上で本誌翌月号へ掲載されます。また、4行詩の展覧会は同様に選ばれた4行詩のみが展示されますので、ぜひご覧になってください。


■ 上達するために

 "どうしたら上達できるでしょうか?”
 わたし自身の経験からいくつか、実践的な方法をご紹介しましょう。

● 学びのための基本姿勢

 最も大切なことはもらった感想や選詩の結果に一喜一憂して振り回されないことです。4行詩はそもそも新しい詩の形体ですし、月刊ポエムにはいわゆる「初心者」の方がとても多いのです。ですから、相互推薦や共感投票、あるいは選詩の結果が必ずしも、その詩の絶対的な評価であるとは言えないのです。

 ただ、選ばれた詩とボツ作品の違いを謙虚に受け止めることは必要だと思います。駄目なものは駄目と割り切って、次なる挑戦に気持ちを切り替える。このコントロールがうまくできる人は上達が早いのではないでしょうか。

● 良い作品をたくさん読む

 詩想が湧いてこない、書きたい気持ちが萎えてきた。そんなときは、現代詩集やお気に入りの詩人の作品などを読んでみたらどうでしょう。感性が少々鈍っているときは、良質の詩を読むことでまたみずみずしい感覚が刺激されることもあります。


● 外へ出かけて作りましょう

 家の中でパソコンとにらめっこしながらの詩作は、どうしても観念的な作風になってしまいがちです。それで悪いわけではないのですが、行き詰まりやすいと思うのです。とくに最初のうちは、戸外へ出かけて詩想を得る、という習慣を身につけたほうが良いと思います。人の動きや自然の変化に直接触れることで、驚きや感動に出会いやすいからです。

 ■最後に

 4行詩は、そうしたジャンルが文芸分野で確立されているわけではなく、月刊ポエムが勝手に提唱しているだけのマイナーな詩の形体です。そういう意味では、できるだけ気楽に参加していただいて、書く、読む、選ぶ、の楽しみをいっしょに味わいましょう。


月刊ポエム編集人「ジョッシュ」こと宮崎靖好