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        詩 と エ ッ セ イ の 月 刊 ポ エム

          2013年2月号 「 過ぎる 」

     http://www2c.biglobe.ne.jp/~joshjosh/poem/

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           表紙のひとこと

            「過ぎる」

 その日は珍しく朝から気分が良かった。
 いつもなら、会社へ行くことが憂鬱でたまらないのに。通勤電車から
見える車窓の景色までがとても輝いて見えた。たぶん、電車でぼくの前
にすわったとびっきりの美人のせいなのだろう。タイトなミニスカート
からすらりと伸びた形の良い脚。芸術的とも思える黒髪のウェーブ。
 うん、これだ。
 ぼくは迷わなかった。
「すみません、ぼくと結婚してください」
 脚のきれいな彼女はぼくを頭のてっぺんからつま先まで、じっくり観
察してからこう言った。
「おとといおいで」
「わかりました」
 ぼくはすぐに電車を降りると、タイムマシンを呼んだ。
 言われたとおり、2日前に遡るとやっぱり彼女が電車に乗っていた。
 ぼくは電車に乗り込むと、真っすぐ彼女の前に歩いた。
「ぼくと結婚してください」
 やはり彼女はぼくをゆっくり観察した後でこう言った。
「おとといおいで」
「はい、わかりました」
 ぼくは電車を降りると、タイムマシンを呼んだ。
 言われたとおり、2日前に戻った。
 やっぱり彼女は電車に乗っており、ぼくがプロポーズしたら
「おとといおいで」
 とそっぽを向いた。
 仕方がない。ぼくはまたタイムマシンを呼んで2日前に戻った……。

「それで?」
 会社に遅刻したぼくに総務課長が冷たく問い返す。「まさか、そんな
ことで遅くなったなんて言うのではないだろな」
「いえ、そのあの」
「だいたい新人のクセして、課長の私より遅く出社するなんて、10年
早い!」
「は、はい。わかりました」
 ぼくはそのまま会社を出ると、タイムマシンを呼んだ。
 課長に言われたとおり、10年後を目指す……。 

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         今月のテーマ素材:  [過ぎる]

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          [今月の巻頭詩]


      架橋

      作詩屋

      過信な自分を捨て切れなければ
      過去の自分のままで終わる
      過渡な自分に橋を架けなければ
      過去の自分は超えられない

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   ▽△▽△  4 行 詩 の 展 覧 会  △▽△▽ 

         テーマ素材 「 過ぎる 」

   普通に ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ nano
   架橋 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 作詩屋
   待つ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 暁牙隙
   セピア色 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ aoi
   青春18切符 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 実希


 ●作品表示の凡例 (作品は投稿順に並べてあります)
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タイトル
 No.:投稿番号
 Date:投稿日時
 Name:ペンネーム
 URL:ホームページURL
 4行詩本文
 あとがき
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 ■ 普通に

No. : 2409
Name : nano
Date : 2013/01/18(Fri) 23:44

街中で人だかりがあっても
ただ普通に通り過ぎるだけ
生まれつき野次馬性がない
これじゃ長生きできないな

** 色々あれこれ興味を示すというのは長生きには必要なようだ。
また,祭りとか改まった儀式なども大嫌い,普通じゃないから。

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 ■ 架橋

No. : 2410
Name : 作詩屋
Date : 2013/01/24(Thu) 23:44
URL : http://blog.goo.ne.jp/sakushiya

過信な自分を捨て切れなければ
過去の自分のままで終わる
過渡な自分に橋を架けなければ
過去の自分は超えられない

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 ■ 待つ

No. : 2412
Name : 暁牙隙
Date : 2013/01/30(Wed) 15:08
URL : http://ip.tosp.co.jp/i.asp?i=kage3333

正月は食べ過ぎ
成人式は寒過ぎ
多過ぎる借金を背負い
日本は春を待つ

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 ■ セピア色

No. : 2414
Name : aoi
Date : 2013/02/02(Sat) 02:18

過ぎし日々を思い浮かべる
昼下がりの公園のベンチで。
静けさが光る風景の端っこ
セピア色の猫が通り過ぎた。

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 ■ 青春18切符

No. : 2415
Name : 実希
Date : 2013/02/05(Tue) 23:28

乗換駅のホームにたたずみ
車窓を過ぎる景色を眺める
時刻表片手の鈍行列車の旅は
ふと郷愁に誘われる

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[記録室]
投稿全作品数:8
推薦詩:5
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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 編集室から ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

月刊ポエムの今後について、いろいろ検討しています。そのひとつの試
みとして、ウェブサイト(ホームページ)のメインをブログ形式に変更
してみました。投稿やコメント、テキスト版の公開など、今月号から試
行しています。ぜひご覧ください。従来のホームページと掲示板も当面
はそのままですが、将来的にはブログ形式に統一していきたいと考えて
います。ブログ形式を採用したのは、編集が必要なウェサイトと異なり
ページの管理がしやすいこと、スマホなどからの閲覧投稿が簡単なこと、
読者登録すれば更新情報が届くことなどが主な理由ですが、ウェブサイ
トの言語自体が大きく変化しており、私がそれについてゆけない懸念も
あったからです。使い勝手が変わるので戸惑うところもあるかと思いま
すが、なにとぞよろしくお願いします。

今月は「過ぎる」というテーマでした。巻頭には作詩屋さんの「架橋」
を選びました。行頭にテーマの「過」を揃えてつくるという縛りで、
きちっとまとめました。実希さんの「青春18切符」は自分の経験が思い
出されて懐かしいです。

3月号のテーマ素材は「流行」、発行予定は3月10日です。そういえば、
インフルエンザが大流行している様子。お気を付けてお過ごしください。

                      編集人 ジョッシュ

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 メールマガジン: 詩とエッセイの月刊ポエム2月号
     発行日: 2013年2月10日(通算189号)
   総発行部数: 約200
     発行元: mbooks(ジョッシュ)
          http://www2c.biglobe.ne.jp/~joshjosh/
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