デザイン・デッサンができる人
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 これまで、デッサンをラフスケッチと思っていました。ところがある時、レオナルド
・ダビンチのデッサンの展示に直接目をとめる機会があり、その時考えが大きく変わっ
たのです。それは、実に詳細にほとんど完成された絵と変わらないほどの緻密さで骨組
みが描かれていたのです。おどろきでした。
 もちろん、全体もバランス良く描かれており、さらに細部においても気を抜くことな
く緻密に丁寧に描かれたものでした。

 これと同じ感動を受けたのは、山下 清画伯の貼り絵でした。完成した貼り絵はもち
ろん心を打つものでしたが、そのデッサンがまた実に詳細に描かれているのに出合った
ときは、おどろきでした。実によく見ています、しっかりと見つめているのです。

 デッサンを行うためには、物事をどの位置から捉え、どの広がりの中のものとして捉
え、そしてどのような視点で見つめようとしているのかが整理されていなければなりま
せん。そのうえで、心で捕らえた映像をしっかりと詳細に見つめて描いていくのです。

 このように、デッサンができる力は、先を見通す力であり、こうありたいといったも
のを心に描くことができる力なのでしょう。ありたい姿が心に描かれているからこそ、
近づこうと努力しようとするのでしょう。

 この力は、他人から与えられたものではありません。あくまで、自分の心の中に経験
として蓄積された、美しい自然の光景、美しい生き物の心に感動した体験などが引き出
しにいっぱい詰まった人が、この力を最も発揮できる人なだろうと思えるのです。

 すでに、この世に生まれた時点で、選ばれた人なのだから。そしてもちろん、自分だ
けでなく、出会う人すべてが、選ばれた人なのですから・・。