湯煙の向こうに自分が見える
  (関甲信・首都圏)


(栃木県)塩の湯温泉 明賀屋(露天風呂)
(栃木県)塩原温泉郷 湯の幸リバーランド
(栃木県)塩原 大綱温泉 ホテルニューおおあみ
(栃木県)喜連川温泉 老人福祉センター「喜連川城」




(栃木県)喜連川温泉 簡保の宿

「良く晴れてますね。星があんなに良く見える」

丘の上に建っている宿だから、日が沈んだ後の澄んだ空気が肌に当たって、ひやり
として気持ちが良い。そして、露天風呂の湯舟から見える空には、星が光っていた。

「あれあれ、こんなところから彗星が良く見えますね。」

「えっ、どこですか? すごいねえ、見えるんだって」

「あれですよ」
といって、風呂に入ってきた親子に対し、地平線から30度ほど上を指差した。

「はあ、あれがヘールボップ彗星なんですか。はじめて見ました。」「良かったね
」とにこにこ顔で親子が顔を見つめていた。

きっと、一生この日のことは露天風呂で出会った親子の心に刻まれたに違いない。

「あと何千年後に、またこの地球近くを通ったら、元気な地球、元気な親子に見て
もらえるようにしないといけないなあ」




(栃木県)奥塩原温泉 新湯 共同浴場「むじなの湯」

「“男湯”って書いてありましたけど・・・」

「うん、どうぞ!」

風呂の戸を開けて・・・。たしか、“男湯”って書いてあるドアから入って、服を
脱いで、お風呂場の戸をあけたら、そこには地元のおばさんやおばあさんが数人で湯
気の中に見えている・・・???。

「入れ、入れ。男と女は、付いているものが違うだけだ!!」
「せっかくここまで来て、こんな良い湯に入っていかないとバチ当たるよ!!」
「本当に良い湯だから、入って行け!!」

では、お言葉に甘えて・・。

「最近、バスタオルで体を巻いて入る人とか、水着で入ってくる人がいるけど、お
湯が汚れてしまう。共同風呂では駄目だよ!!」

“はずかしい”とかは自分の思いだけのこと。それより、こんなに有り難い恵みの
湯を、皆でいつまでも大切にいただく心掛けの方が、ずっとずっと大切にしたいこと
でした。

「良い湯ですねえ」

ゆで卵のようなイオウの匂いに、もう頭の芯まで有り難さが充満してきてなんとも
なんともかたじけない気持ちで、つい長湯に。

湯舟にのぞく岩の割れ目から、熱い湯がジワリジワリとしみだしてきて・・・。た
しかに“男と女は付いているのが違うだけ”と念仏を唱えているうちに、のぼせてし
まい頭がクラクラ・・・。

「修業がたりませんね」


(栃木県)川治温泉 共同露天風呂
(栃木県)大金温泉 大金温泉
(栃木県)中三依温泉 男鹿の湯
(栃木県)湯西川温泉 共同浴場(「本家伴久旅館」裏)
(栃木県)湯津上温泉 湯津上村健康センター




(栃木県)★那須湯本温泉 共同浴場「鹿の湯」

「あっっち、ちち!」

イオウの強い匂いのいい湯、湯舟がたくさんあったものだから、奥のじいちゃんが
気持ち良さそうに入っている湯に足を入れたところ、とんでもない。なんでこんな熱
い湯に平気で首まで浸かっていられるの?

“猫舌”ならぬ“猫肌”では、とっても耐え切らない地獄湯のよう。

「あっちの湯は、入り良いよ」

といっしょに入っているじいちゃんから教えてもらった。ここは、熱さの順番に湯舟
が用意されていたのだ。

「あれ、おまえ熱くないの?」

まだ小さい長男は、猫肌の小生ではとてもヒリヒリして入れそうもない高温の湯に
、足から腰、腹、胸、肩までへと、ソロリソロリと浸っていくではないか。

不思議!

まわりは、“殺生石”といわれ、ツンと鼻をつくイオウの蒸気が吹き出している場
所に、そのまま木造の共同浴場が建ったような、素朴な荒削りな野趣あふれる雰囲気
が心の芯まで沁みてくる。


(栃木県)那須湯本温泉 富士見市民の家「満天星苑」
(栃木県)日光湯元温泉
(栃木県)福渡温泉 露天風呂「不動の湯」
(栃木県)弁天温泉 弁天温泉旅館


(茨城県)★鵜の島温泉 鵜の島温泉旅館

(茨城県)常陸温泉 常陸の湯
(茨城県)伝正寺鉱泉 桜井館

(茨城県)★潮騒の湯

(群馬県)あずま温泉 桔梗館「息吹の湯」
(群馬県)伊香保温泉 金太夫「ベルツの湯」
(群馬県)伊香保温泉 石段の湯




(群馬県)伊香保温泉 町営共同露天風呂

 まだまだ温泉にとって良い時代、つまり乱暴な入り方の人が居なかった時、本当の
楽しみ方ができる人に夜通し開放されていたころのお話。

「真ん中の岩にロウソクを立てて、湯に入ると風情があるよ」

「よく提灯を持ってきて夜中に夫婦で入り来たものだ」

 こんな話が本当だったころ。風呂に入りながら、夫婦や恋人同志が寄り添って、本
当の湯を楽しんでいた。

「どこからですか?」

「ここは、最高ですね。真っ赤なもみじの葉も電灯の灯りに透けて、暗い星空を背景
に見える光景を見ながら、暖かい湯煙の中にいるなんて、なんて贅沢なんでしょうね
。」

「本当に、最高の贅沢ですね」

見知らぬ者同志、すぐに話が自然にできてしまう。心底、心が開放されているから
だろう。
 でも、東北の湯治場とも違って、ここ関東は、さまざまな土地で生まれた人が集ま
る接点ともいえるところ。それなのに、ここ群馬の湯は、不思議にさまざまな人々を
やさしく受け入れてしまう懐の深さを持っているように思う。農家の人も、山仕事の
人も、そして会社員も、土地に密着しながらも、時の話題を互いに交わしながら湯の
中で楽しんでいる。

さらに贅沢だったのは、発砲スチロールの浅い箱をお盆変わりに湯舟に浮かべ、「
おでん」「赤貝の缶詰」「鯖の缶詰」を突きながら、飲み物をいただけたこと。公営
であっても、管理人の方の運営方法が生かされていたし、お客の方も、その贅沢さを
守るためにお互いに遠慮深く感謝してこの湯をいただいていた。

いつのころか、心無い少数の人の行為(夜中に湯舟でビール瓶を割るとか・・)に
よって、この微妙なバランスが壊れ、心の贅沢な湯の入り方が、あっという間に消え
てしまった。

 こっそり、隠れ家のようにして入ることができる心の贅沢を感じる公共の湯、こん
な贅沢な入り方には、礼儀がやっぱりある。人に対する礼儀というより、自然の恵み
に対する感謝と、それを維持する方々への感謝があってこそ、こんな贅沢な湯にいつ
までも入ることができてきたことを、出来なくなった今、それを気づかせてくれた。

きっと、この地球も贅沢な湯舟の一つなんだろうと思う。自然の恵みに感謝、それ
を維持する方々へもっともっと感謝、感謝。 それが出来なくなってから初めて気づ
く、なんてことのないようにしないと・・・・。




(群馬県)猿ケ京温泉 長生館(露天風呂)
(群馬県)榛東温泉
(群馬県)群馬温泉
(群馬県)塩川温泉 小野上村温泉センター
(群馬県)温川温泉
(群馬県)丸沼温泉 丸沼温泉ホテル




(群馬県)亀沢温泉 倉淵村亀沢温泉センター

 いくら温泉好きだといっても、車ごと谷底の湯煙に入って行きそうになったのには
、驚いた。
現在のログハウス風の亀沢温泉が建つ前、道も狭く曲がりくねった林道の奥にその
湯はあった。入り口がいっぱいで、今来た道を坂道をバック登りしばらく登って行く
うちに、ガクンと車輪がくぼみに落ちるような感覚を受けた。後ろを振り向かないで
前進ギアに入れていれば進めたのかもしれない。「あれー、こわーい」なんと、後輪
が崖から落ちそうになっている。もう、とっさに谷底を見ると、さすが温泉が沸いて
いるらしくて湯煙が上がっているではないか。車ごと転げて湯につかるなんてことに
なったら、いくら温泉好きでもかなわない。とっさに、「動くな」と子供たちに声を
かけた。
 通りがかった人が、子供をゆっくり車の外に引っ張り出してくれた。残るは助手席
の妻と、運転席でハンドルにしがみつきながら、賢明にブレーキを踏み続ける自分が
車のなかで動けない。
                            
そこに居合わせた別の車の人も、おそるおそる覗いては「大変だねえ」と言うばか
りで、生きるか死ぬかに直面して、当事者と傍観者との命を掛けた差を感じた。生き
るか死ぬか、ほんのちょっとの違いしかないのに・・・。映画「ポセイドンアドベン
チャー」が、現実に自分の事として起こっているなんて。

 温泉の方が、消防署に連絡してくれたらしく、しばらくして消防自動車が到着。し
かし、こちらは、強くブレーキを踏み続け、もう足の感覚が無くなっているほど極度
の緊張の中にある。

「これはたいへんだなあ、どこへロープをかけたらいいかなあ」

これもまた、極度の緊張のこちら側との立場の大きな違いであることを、心底感じさ
せられた。
間もなくロープを掛け、重力のある消防車にいとも楽々と引き上げられ、大事にい
たることなく帰路につくことができた。

車ごと、谷底の湯煙に誘われそうになったこわーいお話でした(ドキドキ)。当時
の関係者の皆様、ありがとうございました。おかげさまで、今でも無事に温泉を楽し
まさせていただいております。


(群馬県)四万温泉 共同浴場「御夢想の湯」
(群馬県)四万温泉 やまぐち館




(群馬県)★四万温泉 積善館

 四万と書いてなんと呼びますか?

「四万(しま)温泉」と呼びます。その名の通り、四万(よんまん)の病気に効く
と言われるほどの、ありがたい湯であるとのことから
その名が付いたとのこと。

「関東の近郊でどこかお勧めないですか」の問いには、これまでまずここを薦めて
きた。たしか、休養保養地の第一号に選ばれた所と聞いている。そのために、温泉街
には歓楽街はなく、良い意味で温泉街らしいお土産物屋が並んでいる。そして、なに
よりも飲泉所がしっかりと作ってあり、透明な熱い湯が流れているのをコップに注い
でゆっくりゆっくりと飲む習慣があることが驚かされた。刺激はほとんどなく、とて
も飲みやすい。「飲むと胃腸が丈夫になるよ」とばあちゃんに教わったことがあった
ことを思い出
した。しかし、ここ四万温泉の湯は本当に飲みやすい。

老舗の温泉旅館が何軒かある。田村旅館、山口館などなど。どこも、さすがに雰囲
気があり、澄んだ四万川の渓流を眺めながらの露天風呂は、一流の温泉情緒を感じる


 その中で、積善館の昔からの湯舟がとても印象的で、子供が小さい頃から家族で何
度も訪れた。大正ロマンの残る大理石の湯舟と窓、なんとも気品があって、どういう
わけかただ騒がしい客には一度も出会ったことがない。その品格に圧倒されるという
か、入ろうとする者が湯舟から選ばれていると感じる不思議さ。

「なんだか不思議。“気配”とか“品格”とか、でもそれを感じたい、それに出会
いたいと、出かけて湯に入りにいくのかもしれないなあ」


(群馬県)鹿沢温泉 紅葉館(「雪山賛歌」の発祥の宿)
(群馬県)沼田温泉 沼田温泉センター
(群馬県)尻焼温泉 関晴館別館
(群馬県)榛名湖温泉 国民宿舎「ゆうすげ」
(群馬県)水沼温泉 水沼駅温泉センター
(群馬県)水上温泉 共同浴場




(群馬県)★河原湯温泉 共同浴場「王湯」

 「のぼせないで湯に入るにはなあ・・・」

山仕事を終わって一風呂浴びにきたおじさんから、息子といっしょに入った共同浴
場で声をかけられた。
 その方法は、両足を湯舟のへりに上げて、湯の外に出して入る入り方。教えられた
通りに、湯舟のへりに足を上げ、両手で湯舟の体を支えて入ってみた。 なんと、か
なりの時間入っていてものぼせない。これは良い! 体がとても楽!

息子とともに、真似して楽ちん、楽ちん。手先の皮がしわしわになるほど、湯舟に
ゆらゆら。

「よっこいしょ」

二階の階段をのぼると、そこには、広々と大広間で、ばあちゃんやじいちゃんが足
を投げ出して、ゆったりと良い時間。湯上がりの休憩室で、顔見知りの人と「やあ、
こんにちわ。お元気そうでなによりですね」。

 食事を頼んだ人の前には、お善で食事が並んでいる。
「あ、先程はどうも・・・」「ああ、どうもどうも・・・・」

あったかい湯の回りには、あったかい人の言葉がいっぱいあふれていた。




(群馬県)★川中温泉 かど半旅館

「日本三大美人の湯」の一つ。
「きょうは誰もいないから、家族で入っても良いですよ」

 家族全員で一つの湯舟に貸し切りで入った経験は貴重。ここもその一つ。

差し込む太陽の明かりで、透明な湯がさらさら光る。がらっと開け放した窓から、
河鹿の鳴き声が聞こえてくる静かな山里の一軒家。自然の声がしっかり受け止められ
るような、かつてのあったかい農家の庭先のような素朴な空間。

小学校の息子と娘、そして妻とともに広い明るい大きな湯舟を貸し切り。明るい日
差し暖かい風、緑の木々、せせらぎの音と香、安心してゆっくりと自然の声に身を任
せている。あたりまえと言えるほどにあたりまえな湯。

あたりまえがうれしい、あたりまえが大切と気づく。

いつのまにか、心が澄んでいく。心が自然の声を聞けるようになっていく。心がや
わらかい笑顔をつくっていく。

「おやおや、かわいい子供さんね。そうそう、雑炊余っているけど食べる?バナナ
もあるけどどう?」

ここは、日本三大美人の湯。

入浴記念に、この旅館が表紙になったガイドブックを買い求めた。おかみさんから
、記念にサインを入れてもらった。

 そこに、書いていただいた言葉、それは“心の美人”。




(群馬県)★草津温泉 共同浴場「凪の湯」

「じいちゃんは、一人で草津に行ったなんて話聞かされたけど、一回も行ったこと
ないなあ」

90歳を過ぎたばあちゃんが、山形から埼玉の我が家に尋ねてきた夜に、こんな話
しが出てきた。

「ふーん。じゃ、明日、草津温泉に入りに行くか」

こんなことで、すぐに出かけることに。

小さな車で狭かったけど、家族みんなで草津温泉目指して田んぼを駆け抜け、山す
そを走り、急な山道を登っていった。

「草津良いとこ一度はおいで、どっこいしょ。お湯の中にもこーりゃ、花が咲くよ
、ちょいなちょいな〜」

草津温泉街の中心にある“湯畑”。もうもうと立ち上る湯煙の前で、明治生まれの
着物を着たばあちゃんとちゃんちゃんこを着た小さな息子が揃って写真におさまった
。まるで、ドラマ“おしん”の一コマであるかのよう。

その息子も、もうすぐ大学生ですよ。


(群馬県)草津温泉 共同浴場「こぶしの湯」
(群馬県)草津温泉 共同浴場「白旗の湯」
(群馬県)草津温泉 大滝の湯
(群馬県)沢渡温泉 共同浴場
(群馬県)猪の田温泉 久恵屋旅館「絹の湯」
(群馬県)湯の平温泉 松泉閣
(群馬県)湯宿温泉 共同浴場
(群馬県)八塩温泉 神水館
(群馬県)鳩ノ湯温泉 鳩ノ湯温泉旅館
(群馬県)武尊温泉 木賊山荘
(群馬県)宝川温泉 おう泉閣
(群馬県)湯の小屋温泉 龍洞



(群馬県)★法師温泉 長寿館

 「スターの上原 謙さんや高峰三枝子さんが亡くなられたとき、取材にこられまし
たよ」入り口の囲炉裏でお茶をいただきながら、宿のおかみさんから伺った話。

そう、ここはフルムーンのポスターになった湯。太い木の柱で屋ねがけしてあり、
木造の大きな空間に仕切りはない。四隅にあんどんの灯りが闇を照らし、隅が丸い板
戸から差し込む明かりが一筋となって湯舟にそそいでいる。湯舟の底は玉砂利で新し
い湯が沸き出すものと、注ぐものがある。入るものは、独特の気配を感じ、静かにな
っていくのが不思議。圧倒されている感じ。

そんな中、この湯舟はいまでも混浴。でも、お風呂に二人だけならロマンもあるけ
ど、知り合いといっしょにご夫婦で入ると、はずかしい様子で、互いに「どなたでし
たっけ」と知らぬふり。そこへ、若いカップルがいっしょに入って来たときには、ど
うやって湯から出て着替えるのかと興味津々。

そうしていると、手ぬぐいで前を押さえながら、サッと湯舟の外へ出て、着替えの
服の所に置いてあった浴衣(ゆかた)を取り上げ、濡れた湯上がりの体のまま、スル
スルと袖を通し、あっという間に腰ひもを結んで、それでおしまい。

「おみごと」の一言。

「そうなんですね。浴衣(ゆかた)って、湯上がりの体をそのまま包むものだった
  のですね」

きっとどこかで、往年の大スターも笑って見ていたかも・・・。




(群馬県)★万座温泉 万座高原ロッジ

 高原の露天風呂、入ったことありますか?

「あれ、だれもいないよ。こんなに広い庭の露天風呂だよ。」

まだまだ、今ほど温泉ブームでなかったから、温泉だけ昼に入りに来るお客さんな
んてほとんどいなかった。だから、昼のこんなに立派なホテルの露天風呂に入るなん
て、あまり気がつかないころだったからかなあ。

「ね、ね、家族で入ろうか?」「もったいないよ、だれもいないんだから・・・」

ということで、まだ小さかった子供らとともに、家族みんなで入ってしまった。

「贅沢だね。こんなに空に近いところで、雲がすぐそこにあるところで、貸し切り
  の露天風呂だよ」
「ね、ね、おかあさん。こっちに花咲いてるよ。」

 「おにいちゃん、こっちの風呂はあまり熱くなくていいから、来てみて・・・」

天気は晴れ上がり、真っ青な空に手が届きそう。ふうふうと火照った湯上がりの体
を湯舟を囲む石に横たえるうちに、ひんやりとした風が通り過ぎていく。頭の中にあ
った雑念を払いのけるかのように。

まだ、夏真っ盛りというのに、もう高原では、ススキの穂に赤とんぼが羽根を休め
て揺れていた。


(群馬県)霧積温泉
(群馬県)薬師温泉 薬師温泉旅館
(群馬県)梨木温泉
(群馬県)老神温泉 若の湯
(群馬県)観音温泉

(埼玉県)かやの湯鉱泉 鉱泉民宿「かやの湯」
(埼玉県)黒山鉱泉 東上閣
(埼玉県)玉川温泉 玉川温泉センター
(埼玉県)山田温泉 山田温泉旅館
(埼玉県)柴原鉱泉 柳屋




(埼玉県)新木鉱泉 新木鉱泉旅館

 ここは、これだけ温泉にどっぷり浸かることになったきっかけを作ってくれた湯で
ある。心底、体力を使い果たし、へたへたになってたどり着き、4番札所金昌時近く
の素朴な湯でこそ、ゆっくりゆっくり回復し、元気になるまでずっとお世話になった
思い出の湯。

 東京で暮らすことになって、ちょっとしたきっかけで秩父にたどりつき、そこでで
あった田んぼで走り回る子供の光景、寄り合いバスでふざけて騒ぐ子供にきちっと声
をかけてやさしく注意するおばさんにあった。そして、都会に返る電車のドアが開い
たとたん、いっせいに鳴いている蛙の鳴き声に感動した所、それが秩父。

 それ以来、秩父に近い所にぜひ住みたい、という思いが強くなった。そして今、こ
こ埼玉に住んで満足している自分を見ている。

 きっとこんな素朴な秩父だったからこそ、体力、気力のレベルがこれほど低下した
ときでも行ってみたいと強く思えたのだろう。そして、この新木鉱泉の湯は、小さい
頃に嗅いだ、イオウの香(蔵王温泉を温泉と思って過ごした)がなんとも懐かしく、
心のど真ん中が揺さぶれる感じで、もうたまらない。特に、かつての浴槽は湯の出口
から岩を伝って湯舟に注ぐため、イオウの成分が流れに添って黄色く湯花が付着して
いた。湯舟すれすれに口と鼻をすりよせて、体中のすべての感覚で溺れるように香り
を嗅いだ。透明な湯につかると、ぬるりとした感触にまた感激。有り難し、有り難し
。もう、なにもかも有り難くて有り難くて。

そして湯上がりの脱衣上に流れる秩父音頭の素朴な民謡に、いつしか心が癒されて
いった。

秩父は、とても魅力的なところ。札所巡りの地で、山里の道ばたのいたるところに
観音様がいらっしゃるようなやさしい気配がするところ。板塀のすき間から覗く、外
の景色も農家の畑の景色のまま。こんな気取らない普段のなにげない景色がいい。

 こんなやさしさいっぱいの地に、素朴な落ち着いた民芸調の宿。そして、夜9時を
過ぎると、今日も元気で働いた宿のおばさんたちと「こんにちわ、お元気そうですね
」。


(埼玉県)水神温泉 旅館「すいじん」
(埼玉県)千鹿谷鉱泉 千鹿谷鉱泉旅館
(埼玉県)鳩の湯鉱泉 鳩の湯旅館
(埼玉県)美やま鉱泉 ホテル「美やま」




(埼玉県)★名栗鉱泉 大松閣

「“鉱泉”って、温泉じゃないの?」

ちょっと前まで、鉱泉を温泉と比べて考えていた。そして、無色透明な湯だったから
、なおさら成分がないのかと思い違いをしていた。

「不思議? なんだか、このぬるく透明な湯に入ったり、湯の外に出てフウフウし
ていると、頭の芯からいろんな余計な考えが一つ一つ抜け出していき、だるくなって
いくような感覚がいい。」

これが、ラジウム鉱泉独特の入った感覚。イオウの香の温泉とは違った、無色透明
なのに、体の途中に引っかかっていたものを、表面に健在化させることから、それが
だるさとなって感じるようになったもののよう。

湯当たりのように、体全体がだるい。でも、このだるさを楽しんで、誰もいない湯
舟のへりで寝そべっていた。窓からせせらぎの音が聞こえてきて、手放しで解放感を
楽しんだ。

若山牧水がこの名栗の宿に籠って、執筆したとのこと。ほら、そこでいっしょに風
呂に入っていますよ。

「牧水先生、良い湯ですね。まあ、ごゆっくりしてください」


(埼玉県)和銅鉱泉

(千葉県)清津峡温泉
(千葉県)千倉温泉 千倉館
(千葉県)白子温泉 砂風呂
(千葉県)鴨川温泉 民宿「 」
(千葉県)養老温泉

(東京都)岩蔵温泉 儘多屋




(東京都)★芝浦鉱泉 芝浦浴場

 会社の帰りに入った湯。東京都内の銭湯だけど、正真正銘の温泉。

「コーヒー色しているけど、美人の湯って書いてあるよ」

「それはね、この辺は昔、海で海草があったそうだ。そこに川が運んだ土砂や火山
  灰で関東平野が出来ていったのだけど、その海草の化石ともいえる地層を湯が通
  って涌き出すと、こんな色になって出てくるんだ」

“植物性の温泉”ということになる。「海草の化石なんだなあ」なんて思いながら
蛇口をひねって、流れ出るコーヒー色の液体を手ですくっては、なんとも有り難い気
持ちになっていた。

でも、東京の銭湯の湯の熱いこと熱いこと、

 「江戸っ子は、ぬるい湯には入らねえ」

なんて、真っ赤な顔をしながら地元の年寄りがにらんでいるものだから、蛇口を
ひねって、思い切ってうめられない。

「良い湯なんですけどねえ・・・」


(神奈川県)大涌谷温泉 箱根小湧園
(神奈川県)鶴巻温泉 大和旅館
(神奈川県)湯河原温泉
(神奈川県)箱根上湯温泉 上湯温泉浴場
(神奈川県)箱根湯本温泉 天山野天風呂
(神奈川県)飯山温泉 元湯温泉

(静岡県)下田温泉
(静岡県)御殿場温泉 御殿場市温泉会館
(静岡県)修善寺温泉 公共露天風呂「独鈷の湯」
(静岡県)石部温泉 公共露天風呂
(静岡県)熱海温泉 熱海後楽園ホテル

(長野県)稲子湯温泉
(長野県)塩沢温泉 高林閣
(長野県)下諏訪温泉 共同浴場
(長野県)海ノ口温泉
(長野県)蒲原温泉
(長野県)駒ケ根温泉
(長野県)沓掛温泉 共同浴場
(長野県)五色温泉 五色の湯旅館
(長野県)高山温泉 和郷園
(長野県)高峰温泉
(長野県)山田温泉 共同浴場
(長野県)鹿教湯温泉 かんぽ保養センター
(長野県)渋温泉 薬湯信玄籠風呂




(長野県)★初谷温泉

 ショヤ温泉?。

コスモス街道からちょっと外れて山の谷間へ降りていくと、物静かに品良くその宿
は建っていた。内山牧場にキャンプに来て立ち寄った湯。

風呂場の開け放った浴槽のへり腰をかけ、火照った体を休めている。山の木々の濃
い緑の中、澄んだ川面に夏の日差しが照り返し、沢を渡る風に乗ってオニヤンマがす
ーっと通り過ぎていった。

川べりの物干し竿に掛けられた白いエプロンが、いっそう庶民的な光景としてほほ
えましく映った。

「体中に小さい泡が着いているよ」

息子が驚いている。そう、ここは炭酸泉として有名な湯。湯上がりに川向こうの源
泉を尋ねた。

「サイダーだ!!」


(長野県)上諏訪温泉 片倉館
(長野県)切明温泉 雄川閣(秋山郷)
(長野県)仙仁温泉 大洞窟風呂「岩の湯」
(長野県)田沢温泉  ますや旅館




(長野県)★扉温泉 公共露天風呂

 月夜の晩に、岩影で服を脱いで、数家族で入った露天風呂。

初めての車でのキャンプに誘われた時、知り合ったご家族を山間の温泉にお誘いし
たのがここ。

狸のような夫婦が何組みか、岩影から湯に入ってきた。月夜の明かりが湯面にゆら
ゆら映っている中で、手足を伸ばして湯に揺られ、星空を見上げている。しばらくの
間、解放感で心も体も満たされていた。

「ぬるくて、出られないよ」

山奥の夜の冷え込みに、ぬるくて湯から出られない。それに、どのようにして、岩
影にさっと戻ろうかと思いを巡らしながら・・・。


(長野県)菱野温泉 薬師館
(長野県)姫川温泉 ホテル国富(露天風呂)
(長野県)布引温泉 国民年金健康保養センター「こもろ」
(長野県)別所温泉 石湯(真田幸村公隠しの湯)
(長野県)望月温泉 みどりの村
(長野県)野沢温泉 共同浴場「大湯」「真湯」
(長野県)霊泉寺温泉 共同浴場
(長野県)和山温泉 仁成館(秋山郷)露天風呂

(山梨県)芦安温泉 北岳荘
(山梨県)下部温泉 共同浴場
(山梨県)神の湯温泉
(山梨県)身延温泉 身延温泉旅館
(山梨県)西山温泉 白根館
(山梨県)石和温泉
(山梨県)増富温泉 不老閣
(山梨県)裂石温泉 番屋荘
(山梨県)三富温泉 三富村温泉センター

(新潟県)貝掛温泉 貝掛温泉旅館
(新潟県)清津狭温泉
(新潟県)湯沢温泉