■有効性を意識した行動のできる人
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生産性いう考え方があります。生産性=成果(O)/投入(I) をはかることによ
って、投入(I)に見合った成果(O)が得られたかを測定する指標です。
ちょっと固い話でしたが、この式はいろいろおもしろいことを教えてくれますのでご
紹介しましょう。
どうですか。これまで学校生活で、頭の良い人ってどんな人だと思っていましたか。
きっと「テストの点数が良い人」と考えるのではありませんか。そうですね。テストで
の問題を与えられて、人よりも正確に早く問題に回答できたかを測ることですね。たし
かに同じ問題を解くのに、はやく正確に解くというのですから、きっと人よりも最短の
ルートで答えにたどりつく能力を言っているのだろうと思います。このことを先ほどの
式で見てみると、同じ成果(0)を得るために、なるべく少ない投入(I)で問題を解
くことでした。とても“効率的”だったと言いますね。
つまり、この効率的にしようとすることは、与えられた問題を一番うまい方法(HO
W)で解いたかです。きっと、機械化やコンピュータによって置き換えられる方法なの
だろうと思います。
さて、頭の良い人ってもう一つのタイプが思い浮かびませんでしたか。たとえば、あ
の人といっしょに居ると、同じ時間を使ったのに、とても充実した時間を過ごせたと思
うことにたくさん出会うことが不思議、こんな人まわりにいませんか。どうして充実し
た時間の使い方ができるのでしょう。まず、いま与えられた時間で何をしようと決めた
かです。たとえば、休日に家でTVを見て過ごすと決めるのも良いでしょうし、街に出
かけて映画を見ると決めるのも良いでしょう。あるいは、アウトドアでご夫婦で自然の
中で過ごすと決めるのも良いでしょう。もちろん、何も決めないという過ごしかたがあ
っても良いでしょう。いずれにしても、休日の時間は限りがあるわけですから、どのよ
うな過ごし方を自分で選ぶかは、自分の意思決定のことです。その結果が充実する時間
を選んだとすれば、その意思決定は良かったことになるのでしょう。先ほどと同じよう
に、式で置き換えて考えてみましょう。同じ投入(I:ここでは“時間”でした)で、
成果(O:“満足”)が大きくなると、とても“有効”な時間だったと言いますね。
つまり、効果的な時間の使い方がじょうずな人とは、そうしようと決めた方向が求め
ているものにぴったり合っていることですね。そして、これまで出会ったことのないこ
と、やったことのないことの方が満足がありますね。また、内容の濃い価値の高いこと
に時間を使った方が、とても良かったと思えるようです。
このことは、有効性は、どのような方向に進むか、どういう時間で埋め尽くそうとす
るのか、何を(WHAT)決めたかによって決まってしまうのです。
これまでは、どちらかというと前者の効率性が重視されてきたように思います。定量
的に成果を測ることができましたし、量の拡大を重視する経済拡大優先の社会づくりに
おいてはおおいに役立つ考え方だったと思います。
しかし、これまでとは違った社会、つまり経済優先から循環型経済、自然との共生を
基盤に据えた社会づくりへの変換が求められる今、有限な資源をどのような方向に配分
しながら生き続けるかといった有効性が重視される社会にする必要が出てきています。
また、私たちも個性を大切にするといった社会の価値に変化するにつれ、質の高さを要
求するようになってきました。
以上のべた考え方に立ってみると、これまでの人づくりと、これから必要な人づくり
との違いが見えてきます。
これまでの人づくりは、何をやるかについては取り合えず世界のレベルに追いつこう
と、欧米の生活レベルを目標にし、どのようにしたらより効率的に目標達成できるかと
いった効率性重視になったようです。自分の学校時代を振り返っても、どの教科も同じ
学級,学年の中で人との比較として自分の位置を知らされてきました。これは、HOW
(いかに)といった能力の向上には大いに貢献したと思われます。この能力によってこ
れまでの日本の工業化社会,経済が強かった一つの要因にまちがいありません。しかし
、この結果、人との比較によって能力の有り無しを決定するといったことになり、いか
にやるかといった目標への到達の速さのみを競うこととなってしまったのでしょう。い
までも、この考えがあらゆる場面で能力測定の基準となっていることはまちがいないこ
とです。
しかし、これから必要とされる人づくりは、人から与えられた目標に到達する速さを
競うといったものではなく、自ら設定した人生目標に向かっていかに自分の与えられた
有限な資源を有効に割り当てていくことができるかでると思われます。つまりWHAT
(何を)にこだわりつづけていける目標設定型の人づくりと言えるのではないでしょう
か。ひとりひとりの人生目標は違って当然であって、その人の役割も、満足の度合も決
して一律なものではありません。「皆が同じ条件で生活することは、決して幸福とはい
えない。」といった言葉を思い出します。その人それぞれの持っているその人の可能性
が最大に発揮されるようになることこそが、幸福の一つの尺度ではないでしょうか。自
らの役割、それを自分らしさと言ってもよいのではないでしょうか。この自分らしさに
気付く必要があるのは、誰でもなく自分そのものなのですから・・。
これまでの教育では、自分さがしの教育がほとんどなされていないと考えます。人か
ら与えられた問題を解決することの速さを競う人づくり中心であって、自ら自発的に目
標を設定し関係者を巻き込んで、目標に近づくために努力するといった目標設定型の人
づくりは、まだまだこれからなのです。私の場合には社会人になってはじめてこういっ
た考えのあることを、実践の中で捕らえるチャンスが与えられました。そうして、あら
ゆる場面で、目標設定型の人づくりが不足していることを感じてきたのです。このこと
が、人との比較を気にする日本人、人と同じことをやることを安定と感じる日本人がで
きあがったのではないでしょうか。いま、人との差別化を指向することが、自己実現と
いった高い欲求に応えることなのではないでしょうか。有効性を重点にした判断尺度が
今こそ、求められる時なのではないでしょうか。
自分で人生の時間の使い方を決める、そして、満足した人生だったと思う、その人は
あなた自身なのですから・・・。