混声合唱組曲「青春のネガティブ」
作詞 片岡輝 作曲 新実徳英
明るく暗く、楽しくつらく、甘く苦い。
そんな青春を、遠くに、近くに感じながら、しかるべき音素材を発見し、
育て、曲にしたと、作曲家新実徳英氏は語っている。
とんだばやし混声合唱団にとって、新実作品は、「聞こえる」(作詞/岩間芳樹)に続いて、
二作目である。 (1989年作)
この曲では、音がぶつかりあい、微妙な響きをかもし出すハ−モニ−や、
ボカリ−ズのような言葉のない音だけ(hum−、uh−、o−)のメロディ−が、
随所に使われている。
その音感こそ、言葉では語りつくせない、アンビバレント(ambivalent:両面的)な
価値観や感情が混在する青春そのものではないだろうか。
きっと、歌う者、聞く者の心の中に、忘れかけていた青春の残像が、
蘇ってくることであろう。
T.どこにも存在ない街へ
空は澄み 川は清らかに流れ
雨が降り 土が豊かに潤い
花は咲き 人は愛の歌うたっている
そんなどこにも存在しない街で、ぼくは、いつか巡り会うでしょう
安らかな笑顔 虹を追う笑顔 晴れやかな笑顔のまだ見ぬあなたに・・・
そして、あなたを愛するでしょう
U.まだ見ぬ人に
花の美しさ あなたの輝き
花よりも香しく
風の激しさ あなたの勇気
風よりも軽やかに
海の深さ あなたのやさしさ
海よりもさやけく
あなたが愛する花、仰ぐ空、旅する海と一つになれたら
どこまでも、いつまでも、旅していこう
命のある限り・・・
V.愛のネガティブ
シャッタ−が光り フラッシュが降りる
青春のはなやぎを背に、あざやかに切り取られた一瞬
かすかな憂いの影を宿している君
青春を燃やし尽くし、美しく演じきった一瞬
涙と流れる汗にまみれた君
青春を力のかぎり、唱い上げた一瞬
遥かにあしたを見続ける君
二度と帰ってこない思い出
そんな一瞬を切り取った三枚のスナップショット
それは、いちずにこがれつつも、告白されなかった愛
W.架空の時
それから、時が経ち、少し人間的にも成長したのだろうか
静かに過去を振り返りながら・・・
自分を飾らず、素直にあなたと向きあえる時
昨日のすべてを捨て去り、明日と向きあえる時
きびしい試練を乗り越え、希望と向きあえる時
生命の炎を燃やして、若さと向きあった時
いつか そんな時を、
迎え、過ごし、語り、思い出すことができるだろうか・・・
X.反語
絶望と希望、冬の寒さと春の芽吹き、悲しみと喜び
憎しみと愛、別れのつらさと出会いの輝き、ためらい・迷いと信頼・・・
人は、
絶望や悲しみに耐えつつも
憎しみやためらい・迷いに身をこがしながらも
希望を語り、喜びをうたい、人を愛し、信じあうために
今を生きていく 生命のかぎり
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
「青春とは、人生のある期間ではなく、心の持ちかたをいう。
年を重ねただけで人は老いない。
理想を失うとき初めて老いる。
人から 神から、
美・希望・よろこび・勇気・力の霊感を受ける限り、君は若い。」
この曲を歌っていると、詩人サムエル・ウルマンの「青春」のこんな一節が、浮かんでくる。
「君」とは、もちろん私たちである。
人生という時間の流れの上の「青春」という地点から、過去、現在、未来を見晴らしながら、
愛する人への想いを詠った<ラブ・ソング>であると、
作詞の片岡輝(ひかる)氏は、臆面もなく言う。
私たちは、この曲を、
これまでひたすらに歩みを積み重ねてきた一人一人の<人生の讃歌>として、
歌い上げたいと思っている。
いささかの恥じらいを感じつつ、まだ見ぬ人との出会い(=夢)を求めて・・・