TRPGシステム博物館

第3回 『ゴーストハンターRPG』


アメリカ東部、マサチューセッツ州ニューカム。そこにウェザートップ館があった。ある日幽霊屋敷を探検にいく、といって家を出た子供たちが惨殺死体となって発見された。この事件をきっかけとして、ジャーナリスト、私立探偵、科学者といった連中がウェザートップ館に集まり始める。彼らこそ人呼んでゴーストハンターである。
こうした導入から始まる「ラプラスの魔」というコンピュータRPGがありました。安田均によってデザインされ、ハミングバードソフトから発売されたホラーRPGです。
『ゴーストハンターRPG』は、この「ラプラスの魔」と世界観を同じくするRPGとして安田均と白川剛らによってデザインされ、アスキーより刊行されました。
一年とちょっと前までアスキーは「ログアウト」というTRPG誌を出していました。そのログアウトの方針に「コンピュータRPGのユーザーをTRPGに引き込もう」というのがあり、「イース」「真・女神転生」「真ウィザードリィ」などのシステムを出していました。この『ゴーストハンターRPG』もそういったRPGのひとつとしてデザインされたのです。

舞台は1920年代から1930年代の欧米です。この時代は2つの世界大戦のあいだの時代であり、非常に安定性に欠いていました。このような時代には様々な奇現象が起こっていたとしても決して不思議ではないでしょう。PC達はこうした奇現象の原因を探り、さらにはそれを断ち切るゴーストハンターとなって冒険をしていくことになります。

では、システムの解説をしていきましょう。
まず用意するもの。6面と10面のサイコロ。それぞれ2個ずつはあったほうがいいでしょう。さらにトランプが1組以上必要です。システムを買えば付いてきますが、キャラクターメイクのときなどは、1人1組あったほうが便利です。もちろんキャラクターシート、筆記用具なども必要不可欠です。

キャラクターの作成ですが、はじめにトランプを引いて「特徴」というものを決めていきます。この「特徴」は直接プレイに関係してくることは少ないのですが、容姿や所持金など、ある意味キャラクターの運命を決めてしまうことが多いのも事実です。
能力値には体力、敏捷力、分析力、知覚力、意思力、魅力、運の7つがあり、これらは先程引いたトランプのスートを元にしてサイコロを振って決めます。

ゴーストハンターRPGの特徴のひとつとして「クラス+スキル」というふたつのシステムがひとつになっていることがあげられます。クラスにはディテクティブ(探偵)、ミスティック(霊能者)、エクスプローラー(探検家)、サイエンティスト(科学者)、ジャーナリスト(記者)、ディレッタント(好事家)の6種類があります。スキルには誰でも習得できる「一般スキル」とクラスによっては習得できない「専門スキル」が存在します。複数のクラスを兼任するマルチクラスも可能ですが、そうするとキャラクターの成長がどうしても遅くなってしまいます。
こういうシステムのため、経験点も「累積経験点」「クラス経験点」のふたつが存在します。スタイルとしては、「累積経験点」がたまるのを楽しみにしながら、「スキル経験点」でキャラクターを少しずつ成長させていくことになります。そういう意味では非常に欲張ったシステムといえるでしょう。

判定はD%(D100を振って目標値以下の目が出れば成功)で行います。非常に小さい目(だいたい10前後以下)が出れば「大成功」となり、非常に大きい目(だいたい90以上)が出てしまうと「大失敗」となります。
スキルはゴーストハンターとしての活動に必要と思われるものしかありません。それ以外の一般的な行動は、能力値ロールを行います。保有していないスキルを試みる時は「スキルなしロール」というものを行います。これは《運》の5倍で判定するという物なのですが、出目が51以上で大失敗になるという、非常にリスクの高いものになっています。

トランプはプレイ中において、「恐怖によるダメージ」を表現するために使用します。恐ろしい目にあったときには「恐怖チェック」というものを行い、失敗するとカードを受け取ります。そのカードが数札(2~10)であれば、MPにダメージが入りますが、このダメージはほかの人からは分かりません。
数札はダメージですが、絵札ならばそういったカードによるダメージを回復させることができます。さらにAの札であれば全回復、状況打開など、ヒーローポイントのような使い方ができます。つまりある程度怖い思いをしないとドラマチックな演出ができないわけです。
MPは先述の恐怖によるものだけでなく、精神攻撃、霊能力や魔術の使用によっても減少します。これらのダメージによって自分のMPが危険な状態であることは可能なかぎりロールプレイで表現するようルールブックには書いてあります。たとえば挙動が怪しくなってきたとか、妙に無口になったとかといった具合にです。そうすることでよりホラーらしくなるわけです。

ゴーストハンターRPGにおいて、もっとも画期的、かつ怪しいルールはサイエンティストのルールでしょう。「心霊機械」なるものを製作し、人目を気にせず持ち歩き、怪光線をばらまくその姿はまさに「ゴーストバスターズ」です。

全体を通して見てみると、システム自体にはクセもなく、分かりやすいと思いますが、問題点としては、スキルのとり方によってはセッションの間ほとんど出番がなくなってしまうことがある事、「抵抗力」のベースである意思力が低いと戦闘で全く役に立たなくなってしまうことがある事などがあります。かと思うとキャラクターが妙に強くなることもあり、バランスが取りづらいという事も最近知りました。

もともと私がゴーストハンターRPGを買った最大の理由は、まわりの人が持っていないシステム(つまりルール的にほかの人に突っ込まれることのないシステム)だったからです(苦笑)。後は今はなき「ログアウト」誌上でメインに取り上げられていたRPGであり、ホラーという題材に私自身が引かれたこと、かつプレイヤーが集まりそうなシステムであったことなどがあります。
実際、「ミッドガルド」内でも、しばらくゴーストハンターRPGのマスターは私だけがやっていたのですが、いつのまにか持っている人が増え、「ホラー」の部分に関しては私よりうまくマスターできる人が現れてしまいました。と、いってもはじめから私のシナリオはスプラッターアクションというべきものであったとは思いますが。

ゴーストハンターRPGはホラーRPGと銘打っていますが、同じホラーRPGの「クトゥルフの呼び声」と違い、幽霊や化物を比較的楽に倒すことができます。そういった意味では「ホラーアクションRPG」といえるでしょう。ただ、その気になれば本格的なホラーもできるようなので、結局GM次第といったところでしょうか。
はじめに述べた通り、元となるゲームがあるので、いまいち取っつきにくい、と思うのであればそちらから始めるというのもいいかもしれません。コンピュータゲームの方はパソコン版で続編である「パラケルススの魔剣」が出ていますし、家庭用機(といっても旧世代機だけど)にも移植されているはずです。あと、小説も出ているので、そちらを読んでみるのもいいでしょう。

実は、ここまで書くのにえらく苦労しています。「システム博物館」の原稿を引き受けたときはまだ良かったのですが、最近すっかりゴーストハンターRPGに「愛」を注げなくなってしまって。そんなこと言っても言い訳にしかなりませんけど。

かなり読みづらい文章になってしまいましたが、ここらで終わりにさせていただきます。これ以上書けば書くほど泥沼にはまっていきそうです。

文責:上総 智博