Tipo購入記



1. Tipo以前

 そのころ、わたしはホンダ・シビックシャトル(初代)に乗っていました。とても気に入っていましたが、8年・12万キロ乗って少々やれてきたこともあり、次の車を物色していました。
 私はセダンタイプの車よりスペースユーティリティに優れたハッチバックタイプの車が好みです。また、某自動車評論巨匠(笑)の本を読み、ヨーロッパの実用車偉い、ゴルフは宇宙一(これは人が違うぞ)、と刷り込まれていたことも否定できません。
 そんなわけで、「次は欧州小型車だ!」と目標を定め、でも何より大事な予算ともにらめっこしながら雑誌をめくる日々を送っていたのです。当時、私は関西から関東へ移ってしばらくのこともあり、中古車屋の感覚がわかりませんでしたし、いずれにせよ新車を乗りつぶすのが好きなので、諸経費込み300万円くらいまでの新車を探していました。

 で、まず候補となったのは当然VWゴルフです。たとえゴルフ自身は買う気がなくても、欧州小型車を狙うなら、リファレンスとして候補に入れざるをえない、そんな位置にある車です。しかし、ゴルフは3代目にモデルチェンジしたころで、当時の目では、妙に肥大化したように見えました。初代、2代目となんとなくストイックな雰囲気があったのが、妙に豪華・贅沢になったように見えました。さらにあのメーターパネル。どうしてドイツ車ってどいつもこいつも、真っ黒いメーターパネルが絶壁のように立ちはだかっているんだ。なかでもゴルフのはひどいぞ。というわけで、ゴルフはあきらめてしまいました。

 で、本当はラテン系の車が欲しかったんです。予算で買えそうな車といえば、プジョー205、309、ルノー19、シトロエンAX、ZX、フィアットTipo、Uno、アウトビアンキY10などがありました。Y10なんか欲しかったけど、種々の理由で広めの車が欲しかったので、ルノー19、ZX、Tipoに絞られました。ルノー19は郵送でカタログはもらったけど、近くに実車のあるところがない。さすがに初めての外車で実物なしで買うほどの度胸はない。ZXは魅力的だったけど、どうもデザインがTipoのフォロワーに見えてしょうがない。
 それならば、オリジナルであるTipoに乗ってやれ、そもそも、Tipoが発表されたときにかっこいいって思ったじゃないか。そう考え、Tipoを第1候補にしたのです。


2. ディーラー探し・試乗


 そうと決まればディーラー探しです。当時既にFIAT車のディーラーシップはフィアットアンドアルファロメオモータースジャパン株式会社(長いぞ)に移っていました(サミットモータースで買われた方は本当にお気の毒です)。FARM社はとうにTipo 1.6DGTを売ることはあきらめていたでしょうが、たまたま2.0 16Vが発売された時期だったので雑誌広告が出ており、広告を通じてTipoのカタログを請求しました。FIAT車が売れていなかったせいか、CromaからPandaに至るまでカタログが送られてきました(CromaかPandaかで悩む奴なんていないと思うけど)。
 そして同時に送付された正規ディーラー一覧で、一番近くのディーラーを探しました(茨城県つくば市在住です)。どうやら一番近いのは水戸市で、2店あるようでした。その中でFIAT専売店である「アドヴァンス」に行くことに決め、休みの日にシャトルで出かけました。距離はほぼ50km。トラブルが出たときこそのディーラーですから、この距離はちょっと遠いと感じました(たしかにその後、この距離が問題となりかけたこともありました)。しかしまあ、そんなことを言っていたらどの車も買えません。

 アドヴァンスには、Tipoが4台(DGT、16Vとも2台)あり、DGTの1台は中古、16Vの1台は試乗車でした。DGTを見せてくれ、と言ったのですが、16Vが試乗できるから、まずそれに乗れと勧められます。それでは、と試乗したのですが、実はそれまで左ハンドルはボルボ760、ベンツSクラス(なぜこんな車ばかり?)しか乗ったことはなく、しかも両車ともATだったので、少々あせりました。しかも、イタリアンモンキースタイルかなんだか知りませんが、妙にペダルが遠いというか、ペダルに合わせるとステアリングが近いスタイルとなります。まあ、その辺はなんとかなる、ということで動きだしました。
 動きだすとまず、後方視界がシャトルより悪く、またサイドミラーも上下の視野が狭いため、後方がよくわかりません。まるで、「人より速く走れば問題なかろう」と言われているようです。まあ、たしかに、踏めば結構早い車だろうということはわかりましたが。それよりもステアリングが結構シャープな感じが気に入りました。一方、サンルーフ標準装備のため、全然車高が高い感じがしない(身長183cmだし、それまでシャトルだったし)のが問題と感じました。

 ディーラーに帰って、1.6DGTとともに観察しました。1.6DGTはよりオリジナルのフォルムを保っていること、デジタルメータがおもしろい(だけだろうけど)こと、サンルーフがない分だけヘッドクリアランスに余裕があることがメリットでした。一方、16Vはパワーや運転の楽しさに勝るのですが、前述のヘッドクリアランス、そして1.6DGTより81万円も高い点が問題となりました。
 それはそれとして、4台のTipoを触ってみたのですが、なんとすでに2台の灰皿の蓋が壊れているし、新車のDGT(ただし店外に置いてある)のリアワイパーは引っ張っても立たないのです。要するに錆びているのですね。う〜む、やはりイタリア車侮りがたし、と思って取り敢えず店を後にしました。


3. 商談・納車

 家に帰って色々考えましたが、やはりTipoが欲しい、という結論になりました。車種は1.6DGTです。16Vも真剣に考えましたが、ヘッドクリアランスと価格差、そしてなぜだか妙にフロントノーズのデザインが気になる点からあきらめました。

 1992年5月12日、再びアドヴァンスへ赴き、購入の意思を告げました。色はカタログにも使われ、イメージカラーと思われるストームブルーメタリックにしました。追加装備はフロアマットドライビングランプカセットケースです。ところがここで、最初の問題が生じました。1.6DGTはもうほとんど出ていないので、オプション品の在庫があるかわからないと言うのです。なら最初からオプションカタログなんて手渡すんじゃねーよ、とも思いましたが、とにかく確認をとってもらうことにしました。

 これらのオプションが用意できるものとして見積もりを取ってもらいました。まず車両本体価格が238万円です。本当はメタリック塗装だから4万円高となるはずですが、何も言われませんでしたのでラッキーでした。きっとめったに売れない車なので忘れられたのか、それともそっと値引きしてくれたのでしょう。
 オプションのフロアマットが2万円、ドライビングランプが3万円、カセットケースが8500円で、合計243万8500円也、です。これに税金等の諸経費(この当時、まだ車両の消費税率は4.5%でした)を加え、総支払額は286万4450円となりました。

 次に値引きですが、なんと、これだけ売れない車ながら表面上値引きはなし、とのこと。もちろん、実際には下取り車の価格アップで値引きにかえます、とのこと。下取り車のシビックシャトルは事故歴なし、機関・塗装等の程度上とはいえ、8年・12万キロですから事実上鉄屑です。がしかし、車検が1年残っていることから、代車用として転売可能とのことで、下取り価格24万4450円を提示されました。
 正直、こんなもんかなという気もしたのですが、そこはいろいろ粘ってみました。とはいえ、オプション品はもうほとんどありませんし、「値引きの最後は品物をつけさせる」みたいなテクニックは使えませんでした。それに、悪印象を与えるほどがめつくしたくはありませんでした。なんてったって数少ない正規ディーラーですし、今後も色々世話になる(実際なりました(笑))気がしましたので。で、適当にあーだこーだ言って遊んでから、手打ちと相成りました。

 支払方法ですが、無理して全額払うことも考えたのですが、この手の輸入車ってローンの金利が安いことが多いんです。ちょうどこのときもセール中で金利は1.9%だったので、頭金半分、残額を24ヶ月ローンとしました。毎月3万余り、ボーナス時に15万プラスという払い方で、たしか金利分は10万円以下だったはずです。

 数日後、オプション品の在庫があったこと、2週間ほどで納車できる旨の連絡が入りました。いよいよです。洋書屋でHaynesの整備マニュアルを買い、シャトルは自分で点検・洗車し、記念のドライブ、写真撮影をしました。
 そして当日...になったのですが連絡がありません。で、自分から連絡してみると、ディーラーに車両がまだ来ない、とのこと。そんなら早く連絡せーよ、と思いましたが、まあ悪いのは彼らではないし(注文を忘れていたのなら別ですが)、もうちょっと待つことにしました。それにしても、本国に注文したわけじゃなし、どっかの車庫に眠っている不良在庫を持ってくるのに遅れが生じるっつーのがよくわかりませんが。もしかして何台か運ぶ車が揃うまで待ってたんじゃないでしょうな(笑)。
 そして遅れること1週間後、ディーラーから連絡があり、車が来たので登録しますと誇らしげに告げられました。連絡しただけ前より良いが、別に誇らしげにせんでもよかろう(笑)。
 結局注文から1ヶ月後の6月13日、ついにTipoは我が元にやって来たのでした。


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