Via Vino
No. 107 "Georgia"
<ジョージア>
<日時・場所>
2026年4月25日(日)17:30〜20:30 神楽坂「AJIKA」
参加者:19名
<今日のワイン>
辛口・ロゼ・発泡性「ペットナット・ロゼ・オルトメリ・チュハヴェリ 2023年」
辛口・白「オルトメリ・ツォリカウリ2022年」
辛口・アンバー「ビンビリ・ツォリカウリ2020年」
辛口・白「アント・チヌリ・シャルドネ2023年」
辛口・アンバー「アンバニ・クヴェヴリ・ルカツィテリ 2020年」
辛口・赤「フェザンツ・ティアーズ・シャヴカピト2013年」
辛口・赤「エトノ・サペラビ2018年」
<今日のディナー>
ハチャプリ(Khachapuri:ジョージアチーズ入りパン)
ナスとクルミのロール
3種のプハリ(Pkhari: 野菜やハーブ類、スパイスなどを使った前菜)
AJIKA特製ジョージアチーズ
ロビオ(Lobio:伝統的なシチュー)
シュクメルリ(Shkmeruli: 鶏肉のガーリックソース煮込)
ジョージアスタイルサラダ
チヒルトマ・スープ(Chikhirtma:鶏肉の出汁と卵黄の酸味のあるスープ)
クブダリ(Kubdari:ジョージア伝統のミートパイ)
デザート:ペラムシ(Pelamushi:葡萄果汁とコーンミールのプリン)







1.ジョージアワインの歴史
【古代】
ワイン造りは約8千年前(紀元前6千年頃)、ジョージアを含むコーカサス地方で始まったとされています。ワインはジョージアからトルコ、ギリシャ、イタリア南部、マルセイユを経由してフランスに北上し広がったというのが定説となっています。ジョージアでは伝統的に、クヴェヴリと呼ばれる大きな素焼きの壺を地中に埋め、その中で果皮や種もすべて一緒に発酵させる独特の製法で造られますが、これは古代エジプトやギリシャ、ローマでワインの製造や貯蔵に使われていたアンフォラの原型と考えられています。
【中世】
ジョージアは古くから多くの民族が行き交う東西交易の要衝だった事から、アラブやモンゴル、ペルシャ、トルコ等からの侵略や支配が絶えることがありませんでしたが、紀元327年にキリスト教を国教とし、世界で二番目にキリスト教国家となりました。キリスト教へ導いた聖女ニノは、ブドウの枝を自身の髪で縛った十字架を携えていたと言われ、その十字架はジョージア正教会のシンボルとなり「葡萄十字」と呼ばれています。ワインは日常生活だけでなく、宗教儀式においても重要な意味を持つようになり、修道院でのワイン造りも行われてきました。特にカヘティ地方のアラヴェルディ修道院が有名で、8〜10世紀の修道院を2005年に修復、現在も修道士がクヴェヴリ製法でワインを造ります。
【現代】
ジョージアは19世紀にロシア帝国の支配を経て1991年に独立、今日に至っています。1991年まで旧ソ連諸国だったジョージアでは、最大の輸出国である旧ソ連やウクライナに安価なワインを供給する必要があるため、ステンレスタンクによる近代的なワイン造りがもたらされました。2006年〜2013年にはロシアが政治的理由から、ジョージアワインに禁輸措置を発動、ジョージアはその全輸出量の87%を失う大打撃を受けましたが、まさにこのことが別のワイン市場への道を拓き、自らの独自性や強みを見直すきっかけになりました。現在も輸出先トップはロシア・ウクライナですが、マーケットを世界市場に広げ、イギリスや中国・香港、アメリカ市場はもちろん日本でも積極的なプロモーションを実施しています。伝統的なワイン造りは、2013年にはユネスコの世界無形文化遺産にも登録されました。
2.ジョージアワインの品種 3.試飲
ジョージアには少なくとも525種類もの独自品種があるとされています。商業的に使われるのは約45品種ですが、国際品種は全体の6%ほどしか栽培されていません。
【ルカツィテリ】
ジョージア語で「赤い茎」を意味する、年間収穫量の約60%を占めるカヘティ地方の主要品種です。病気に強く熟しやすいのが特徴で、ロシアや中国でも広く栽培されています。芽吹きが遅い品種で寒さに強く、コーカサス地方の厳しい冬にも耐える事ができ、暖かく湿度が高い西ジョージアより東ジョージアの方が栽培には適しています。ニュートラルですっきりした白ワインから、クヴェヴリ製法のユニークなワインまで造ることができ、酸味が高く、暑い夏でも酸を保持する事ができます。香りが控えめな為、アロマティックなムツヴァネ・カフリ等とブレンドされる事があります。
【ツォリカウリ】
イメレティ地方原産の品種です。晩熟で果皮がやや厚いのでカビ病には強いですが、霜には弱い為、温暖で湿潤な西部での栽培に適しています。主要産地はイメレティ地方とグリア地方ですが、ラチャ/レチュフミ地方、サメグレロ地方、アジャラ地方でも栽培されています。暖かい気候と豊富な日照量によりブドウの糖度が高くなる為、伝統的に甘口又は中甘口のワインが造られていますが、辛口ワインの生産が増えてきています。柑橘系果実、黄色系果実、花の香りがあります。ボディの軽いツィツカやクラフナなどの他の品種とブレンドされる事があり、スパークリングワインも生産されます
【シャヴカピト】
「黒い茎のブドウ」を意味する、東ジョージアのカルトリ地方原産の黒ブドウです。中程度の大きさの円錐形の房を特徴とし、実は中程度の大きさで、丸く、濃い青色をしています。4月下旬に芽が出始め、通常9月中旬に成熟します。産地に影響されやすいブドウで、低地ではフルボディのスタイル、斜面では軽めで柔らかいスタイルのワインになります。サパラヴィと比較すると、軽やかで親しみやすい点が際立っています。赤やダークフルーツのアロマが特徴で、時にはジャムのようなキャラクターを呈します。



「ペットナット・ロゼ・オルトメリ・チュハヴェリ 2023年」 (タイプ:ロゼ・辛口・微発泡性、品種:チュハヴェリ100%、産地:ジョージア/カヘティ地方)
「ペット・ナット」とは、フランス語で「自然の微発泡ワイン」を意味する「ペティアン・ナチュール(Petillant Naturel)」を略した名前です。「オルトメリ」は、カヘティ地区の畑で収穫された最良のぶどうから、高品質なジョージアワインを作っています。チュハヴェリは、西ジョージアの黒ブドウ品種で、果実はピンクがかっており、皮は大変薄く、ドライな赤からスパークリングまで、様々なスタイルが造られていますが、いずれも、チェリーや赤いベリー系などのフレッシュな香りを持つワインとなります。SO2をはじめ一切の添加物を使用していません。果実のアロマと調和の取れたドライな味わいが特徴です。




「オルトメリ・ツォリカウリ2022年」 (タイプ:白・辛口、品種:ツォリカウリ100%、産地:ジョージア/カヘティ地方)
ツォリカウリは、晩熟で果皮がやや厚く、カビ病には強いですが霜には弱い為、温暖で湿潤な西部での栽培に適しています。甘口や中甘口に仕立てられることが多いのですが、現在では辛口タイプが増えてきました。軽やかで、柑橘と白い花の香りが特徴です。
「ビンビリ・ツォリカウリ2020年」 (タイプ:アンバー(オレンジ)・辛口、品種:ツォリカウリ100%、産地:ジョージア/カヘティ地方)
上記のオルトメリ・ツォリカウリが予定本数に足らず、急遽代わりの1本として出されたのがこの「ビンビリ・ツォリカウリ」でした。ドライ・アンバー・ワインとあり同じツォリカウリ100%ですがタイプが異なります。アンバーワインらしい濃厚な味わいに仕上がっていました。


「アント・チヌリ・シャルドネ2023年」 (タイプ:白・辛口、品種:チヌリ+シャルドネ、産地:ジョージア/カルトリ地方)
アント・ワインは、ジョージア東部の高地カルトリで作られる、小規模・個人主導のクラフトワイナリーです。カルトリ地方原産のチヌリは病害に対する耐性のある酸味の強い品種で、その名称は、ジョージアの古い言葉「赤味がかった緑色(chini)」に由来しますが、ムツバネやシャルドネ、アリゴテ等とブレンドされることもあります。


「アンバニ・クヴェヴリ・ルカツィテリ 2020年」 (タイプ:アンバー(オレンジ)・辛口、品種:ルカツィテリ100%、産地:ジョージア/カヘティ地方) 「フェザンツ・ティアーズ・シャヴカピト2013年」 (タイプ:赤・辛口、品種:シャヴカピト、産地:ジョージア/カヘティ地方) 「エトノ・サペラビ2018年」 (タイプ:赤・辛口、品種:サペラビ、産地:ジョージア/カヘティ地方) 4.ジョージア料理 チヒルトマ・スープ(Chikhirtma:鶏肉の出汁と卵黄の酸味のあるスープ) ハチャプリ(Khachapuri:ジョージアチーズ入りパン) Gobi ディナーセット シュクメルリ(Shkmeruli: 鶏肉のガーリックソース煮込) クブダリ(Kubdari:ジョージア伝統のミートパイ) ペラムシ(Pelamushi:葡萄果汁とコーンミールのプリン) <今回の1冊>
アンバニは、2015年に幼なじみの4人が自然派ワイン造りに惹かれて発足、2016年には1970年植樹のブドウ園を見つけ、それを所有しました。アンバニ・ルカツィテリは、ブドウを4週間、クヴェヴリで皮や茎とともに発酵後、6か月間チャチャ(皮・茎)とともに保存。発酵初期の4週間は、3時間ごとにワインをかき混ぜています。時を経てルカツィテリは熟成し、リッチなテイストになります。深みのあるアンバー色、ドライフルーツ、力強いタンニンが特徴です。


フィーザンツ・ティアーズは、2005年にグルジアで8世代続くワイン生産者のジェラ氏が、ブドウ畑で絵を描いていたアメリカ人の画家のジョン氏と偶然出会い、食事に誘ったことから誕生しました。ちなみにフィーザンツ・ティアーズという名前の由来は、予想を超える素晴らしいワインだけが、フィーザンツ(キジ)を喜びで泣かせる事が出来るという、グルジアのお話に由来しています。有機栽培を行い、グルジアの伝統的な醸造法にのっとり、自然酵母による発酵と熟成が行われます。
上記フェザンツ・ティアーズ・シャヴカピトのうち1本がブショネで提供不可となったため、急遽代わりの1本として供されたのがこの「エトノ・サペラビ」でした。エトノはジョージアのオーガニック・ワインで、サペラビはジョージアの主要な黒ブドウ品種の一つです。しっかりした濃厚な味わいで、かつジョージアの地場品種特有の香ばしい風味を備えています。

チヒルトゥマは鶏肉の出汁から作り、これにほぐした卵で味わいを濃厚にしたスープです。卵はボウルに割り入れて少量の生温い出汁と撹拌し、その後に少量の小麦粉とライムを加えていきます。この撹拌は5〜7分行い、温度の高い出汁を徐々に加えて撹拌して仕上げていきます。ハーブや香辛料、シナモンやコリアンダーシードを加えます。

ハチャプリは、ジョージア中西部イメレティ地方発祥のチーズ入りパンです。パンは発酵後にさまざまな形に成形され、フィリングにはチーズや卵などが使われます。

手前にあるのがショーティ・パン。ジョージア伝統の塩気のある窯焼きパンです。
その右上にあるのが茄子とクルミのロール。クルミ・茄子・ニンニク・コリアンダー・フェンネルのペーストを茄子で包んでいます。
その隣がジョージア西部サメグレロ地方の塩気のあるスグリニ・チーズ。
中央にあるのがロビオ。煮豆・コリアンダー・クルミ・ニンニクのシチューで、赤玉ネギのピクルスが添えられています。
左上にあるのがプハリ。ネギ、ニンニク、ホウレンソウの3種の野菜にクルミとスパイスを混ぜた冷製です。

鶏肉をガーリックソースで煮込んだ、伝統的なジョージア料理の一つです。鶏肉、ニンニク、そして牛乳が主な食材となります。2019年に松屋が定食で展開したことで話題となりました。

小麦粉で作られた薄い生地に、スパイスやニンニクで味付けした牛肉と玉ネギを挟んだ、スヴァネティ地方の郷土料理です。

葡萄果汁とコーンミールをじっくり煮詰めた、なめらかで濃厚なプリンです葡萄収穫の季節に親しまれてきたジョージアを代表する自然な味わいのデザートです。
【島村奈津他「ジョージアのクヴェヴリワインと食文化」(誠文堂新光社)】(2017年刊行)
ソ連時代にはワイン産地として殆ど取り上げられることのなかった旧グルジアことジョージアですが、白ブドウを漬け込んで発酵させるオレンジワインと、古代の土器の製法を再現するクヴェヴリワインで、2010年代に一躍脚光を浴びることになります。本書の刊行は2017年とありますから、ジョージアワインが話題になるようになって、いつの間にか10年近く経ったことになりますが、確かに古くて新しいワイン産地として、当時脚光を浴び始めたと記憶しています。その後松屋でジョージア料理のシュクメルリが登場し話題となりました。ジョージアワイン、ジョージア料理共に、従来の西洋のワイン文化とは全く異なるアプローチで楽しめるところが大きな魅力だと思います。