「メリーベル・カベルネ・ソーヴィニヨン」96年
東奥日報社主催の「ゆきのまち幻想文学賞」は雪をテーマにした短編の公募を受け付けるというもので、御多分にもれず私も投稿して見事玉
砕したわけですが、応募総数約800篇以上の中、以前受講していた空想小説ワークショップのメンバーのうち二人が最終選考まで残り、一人が入賞、と相成りました。
さっそくその受賞を祝ってパーティを開くことになり、審査員の一人、漫画家萩尾望都先生も招待することに。ワインのセレクトを任された……というか勝手に名乗りを上げた私は、やはりここは萩尾作品にちなんだ名前のボトルを選ぼうと考えたのでした。他からの情報もあって、意外と手堅いセレクションに。
まずは「ポーの一族」から、主人公エドガーと固い絆で結ばれた少女メリーベルにちなんでカリフォルニアの「メリーベル」。正確には「メリーヴェイル〜MERRYVALE(喜ばしき谷)」と発音するのですが、ホームページとかにも「メリーベル」と紹介されていたしまあいいか。これは以前プレステージタイプの「プロファイル」を飲んだことがあったのですが、カリフォルニアらしい果
実味豊かな柔らかいワインで、キャラクターのイメージにもぴったり。
次に「11人いる!」のヒロイン……というか両性体のフロルにちなんでスペインの「フロル・デ・ピングス」。これも実はたまたま以前に飲んだことがあったのですが、その時は「フロー・デ・ピングス」と記録していたので指摘を受けるまで気が付かなかったのでした。ワイン通
販のホームページにはしっかり「フロル」と書かれています。
赤ワインばかりではかたよるので白かシャンパーニュでも……と思っていたら、これも情報が入ったのでした。シャンパーニュ・メーカーの老舗「アラン・ロベール」。言うまでもなく「ポーの一族」の主要登場人物アランにちなんで。
以上三種類のボトルをネット販売でゲット。この他に本命とも言うべき「エドガー」の名を持つワインもあったのですが……。エドガー・シャージンガー所有のシャージンガー・ビンヤード。オカナガン湖近くでピノ・ノワールやシャルドネ、ゲヴルツトラミネール等を扱うワイナリーなのですが、専門店に問い合わせたところやはり日本未入荷らしい。うーん、残念。白ワインが揃えば完璧だったのに。
当日は司会までまかされてしまい(まあひどいもんだったと思いますが……)あたふた状態でしたが、一応三品種とも萩尾先生にまずはテイスティングしてもらい、コメントを頂くことに成功。シャンパーニュのアランはなんと先生自ら皆のグラスに注いでいただいたりしたのでした。
@Champagne Alain Robert le Mesnil Reserve 1983 「アラン・ロベール・ル・メニル・レゼルヴ
'83年」 (フランス・シャンパーニュ、シャルドネ100%)
グラン・クリュ「ル・メニル」に17世紀から続く、歴史あるシャンパンハウス。シャンパンの醍醐味を伝えるべく古くからの伝統的醸造を守り続けています。
アラン・ロベールは、受注を受けた後のみ、シャンパーニュにドサージュ(門出のリキュールを加える作業)をします。だから通
常は、シャンパーニュは瓶内の「澱」と共にセラーに保管され、それが永いだけ、シャンパーニュに複雑味を加えるのです。セラーで「澱」と共に5年間熟成されたシャンパンは、受注を受けた段階で「澱」を動かしボトルをデコルジュ(澱抜き)され、ドサージュが加えられます。(殆どのシャンパン・ハウスはあらゆるオーダー以前に前もってドサージュされています。)
「ル・メニル」はグラン・クリュ「ル・メニル」の自社畑でとれるシャルドネを100%使って造られるブラン・ド・ブラン。きめ細かな泡立ち、香ばしい香り、上品な味わいが楽しめる、非常に繊細でエレガントなシャンパーニュ。澱と共に永年寝かされたことによるふくよかさと、直前のドサージュによるフレッシュさの融合が見事です。
……というのはこのシャンパーニュを注文したホームページの案内文の記載。残念ながらパーティ当日私自身はこれを飲みそこねたのでした。ああっ悔やまれる!
AFlor de Pingus 1999 「フロル・デ・ピングス'99年」 (スペイン、ティント・デラ・パイス使用)
ドミオ・デ・ピングス社の「ピングス」のセカンド。これは実は以前飲んだことがあります。詳細はこちら。ファーストラベルの「ピングス」は、ロバート・パーカーが100点をつけたこともある絶品。とても濃厚なため、このセカンドの方がわかりやすいという声も。「ピングス」は、ポルトガル大学で醸造学を学び、ボルドーのシャトーで修行したピーター・シセックス氏がリベラ・デル・デュエロの土地とブドウに惚れ込み、この土地に住み着いてまで造り上げたワイン。ティント・デラ・パイス(テンプラニーリョ)を用い長期熟成の理論を徹底し造り上げたワインはアッという間に注目され、スペイン国内では手に入らなくなるほど欧米ワインジャーナリストに絶賛されたとのことです。
味はとにかくフルボディ。華やかさとコクのある赤。リオハワインは物によっては飲みにくいのですが、こちらはあまりクセもなくそれでいて個性のある味わいでした。
BMerryvale Reserve Cabernet Sauvignon 1996 「メリーベル・リザーヴ・カベルネ・ソーヴィニヨン'96年」
(アメリカ・カリフォルニア、カベルネ・ソーヴィニヨン使用)
カリフォルニア・ワインのメッカ、ナパ・ヴァレーの中心地セントヘレナに、ビル・ハーラン(ハーラン・エステート)、ピーター・ストッカー、ジョン・モンゴメリー、ロビン・レイル(ドミナスの共同設立者)の共同経営で1983年に設立されたワイナリーです。カリフォルニアワインは日照条件がよく灌漑方式での散水は降雨量
を調節出切る為、あまり年代によって差が認められないのが特徴です。現在ワイン醸造は、スティーヴ・テストが担当。フレンチ・オークの採用、フリーラン・ジュースだけを使用するなどヨーロピアン・スタイルを目指すワインは、有名な醸造コンサルタント、ミシェル・ロランが畑から造りに至るまで関与しており、その素晴らしい品質に大きく貢献しています。
「フロル・デ・ピングス」に比べると幾分柔らかい口当たりですが、こちらもボディのしっかりした柔らかいワイン。いい意味でカリフォルニアらしいフルーティな赤でした。
ちなみに、萩尾先生に一番気に入って頂けたのは二番目に開けた「フロル」だったと記憶しています。いきなりの注文だったので簡単なコメントしかいただけませんでしたが、こちらのぶしつけな要望にも終始丁寧に応対していただき恐縮してしまいました。
萩尾作品は私も80年代の短編の数々、「A-A'」「メッシュ」「半神」「エッグスタンド」「偽王」あたりでかなりハマったものでした。もし次の機会があったら、今度はまた別
の作品群にちなんだものを揃えたいですね。