大吟醸「生きててよかった」
柏駅にあるメニューの豊富な居酒屋で見つけた日本酒です。殆どの地酒が720mlだった中で、これだけ手ごろな500ml瓶だったこともありますが、何より「生きててよかった」という銘柄名に魅かれたわけであります。店長のおすすめは別
の銘柄だったのですが、あえて名前で選んでしまいました。
注文して出てきたのは鮮やかなブルーの細瓶。ラベルは版画家大野隆司氏によるもので、可愛らしい二匹の猫が乾杯をしているという非常にユニークなもの。
裏のラベルも手書きで、活字は一切ありません。「 原料米は山田錦、日本酒度+4.0、酸度1.2、岩手県の横屋酒造株式会社醸」と書かれています。猫が月に向かって杯をかかげているイラスト付き。
飲んでみると、非常にすっきりした淡泊な味。水のようにさらりと飲めて、柔らかい口当たり。なるほどボトルのイメージにぴったりと言えるかも知れません。本当の日本酒好きにはちょっと物足りないかもしれないけれど、重たいお酒が苦手な人にはむしろ安心して勧められそう。料理を邪魔しないので、ものの三十分もしないうちにボトルは空に。シンプルながらインパクトのあるラベルが気に入り、開いたボトルをそのまま貰ってきてしまいました。
そういえば「生きててよかった」と心から言えたことって今までどれだけあったかしら。それは身も心も満ち足りた瞬間であったり、九死に一生を得た時であったりするわけで、それほど沢山訪れてくれるものではないものの全くなかった訳ではないし、その時のことは今でも鮮明に記憶に残っていて、過去も自分はちゃんと生きていたんだという証しになっているような気がします。
今は「生きててよかった」と言える人生を送っているだろうか、とあらためて問い直して見ると、正直言って自分でも良く分からない。別
に死にたいとは思わないけれど、ただ死んでいないだけで、惰性で毎日をやり過ごしているような気もします。どこかでまた、心から「生きててよかった」と言えるような時に巡り合えたらいいなと思いつつ、にこやかな二匹の猫のラベルをしげしげと見つめながら杯を傾けたのでした。