「ドミニク・ローラン・ジヴレイ・シャンベルタン」1997年


      


 何というかたまたまなのかもしれないけれど、このしばらくの間に「ドミニク・ローラン」を何本か立て続けに飲んでいます。自宅ワイン会の時に持ち込まれた「シャルム・シャンベルタン98年」、東銀座レカンで飲んだ「ヴォルネイ97年」、同じく自宅に持ち込まれた「ボーヌ・プルミエ・クリュ・ヴィエーユ・ヴィーニュ99年」、そしてこの「ジヴレイ・シャンベルタン97年」であります。1989年が最初のビンテージになるという新しい生産者なのですが、ある程度濃度があって、若いうちからボディがあり、私にとっては良いブルゴーニュ赤の指標となるムスクのニュアンスのある熟成香を持っている点で、非常にシンパシーを感じるというか……要するに好みのタイプのピノ・ノワールなのですね。
 ドミニク・ローランは元は菓子職人だったそうです。だからというわけではないのでしょうが、この銘柄はどれも皆どこか甘味のある、メルローのようなソフトな口当たりがあるように思います。ローランは畑を所有しているわけではなく、大勢の栽培家から果 汁を購入し自らの樽で熟成させたものを充填しているいわゆるネゴシアンで、従って本拠地はニュイ・サン・ジョルジュでも、ボーヌ、シャンベルタン、エシェゾー、ポマール、ヴォルネイと、ブルゴーニュのさまざまな畑のワインを展開している訳です。抗酸化剤としての硫黄の使用を極力抑え、ワインの風味を育てると考えられる澱も慎重に扱うというこだわりが、逆にブランドの個性として定着しているようで、伝統的な手法に従って作っているためにばらつきが多いということになっているのですが、何種類か飲んだ限りでは畑の違い以上に「ドミニク・ローラン」としてのスタイルの一貫性を感じました。
 以前は名前は知っていたもののなかなかお目にかかる機会がなかったのですが、最近ではやまやとかで特売リストになったりと、ここにきて意外と目にするようになりました。ロバート・パーカーが「世界のワイン・ブルゴーニュ・ボージョレ編」で12ページ近くを費やして絶賛していた銘柄なのですが、その反動で評価が落ちたのかな? いずれにしてもこれはチャンスなのだ。確かにある意味豊かなボディを持っている点ではアメリカ好みのスタイルと言えないこともないのですが、私にとっては普通 の意味で美味しいから別にいいけれど。
 都合四種類ほど飲んだ中で、希少価値なら特級畑の「シャルム・シャンベルタン」か、はたまた黒いラベルの「ボーヌ・プルミエ・クリュ」か、となるところでしょうが、敢えてこの「ジヴレイ・シャンベルタン」を選んだのは、この中で一番じっくりと飲むことができたから。どうしても大勢の飲み会になると、その時はそれなりに楽しんでるんだけれど、次から次へとボトルを開けてしまうので一本一本の印象は薄くなるし、別 の話題で盛り上がっていると後からどんな味だったか覚えていないなんてことになりかねません。その点これを飲んだ時は、他に赤ワインを開けず、鴨のローストと一緒にゆっくりと味わうことができたおかけで、この銘柄の特徴をそれなりに記憶に刻むことができたような気がするのでした。



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