六本木の「テラウチ」にて、H氏の一時帰国祝い。
ワインアドバイザーの試験を受けるというNさんのために、試験に出そうなイタリアワインを選びました。
一本目は白の「グレコ・ディ・トゥーフォ2002年」。カンパーニャ州の白ワイン(DOC)
。品種は品名と同じグレコ・ディ・トゥーフォ。花香が特徴の白。カンパーニャでは古代ギリシャ人によってブドウ栽培が始まったといわれていますが、おそらく「グレコ」という名も、画家の「エル・グレコ」同様ギリシャを表わしているのでしょう。
二本目は「カブリオーネ2002 年」。 ロンバルディア州の白(IGT)
シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、キアヴェンナスカの1:1:1のブレンド。ボディを感じる白。キアヴェンナスカは同じくロンバルディアのDOCG赤ワイン「ヴァルテリーナ・スペリオーレ」に使われている品種で、バローロに使用されるネビオロ種と同じもの。それが白ワインに使われているというのが意外で面
白いですね。実際、飲んでみると非常にコクがあって酸も控えめ。花のように軽やかな「グレコ」とは対象的に、ブルゴーニュの白のようにどっしりとした味わい。
三本目は「タウラジ1999年」 カンパーニャ州の赤 (DOCG) アリアニコ種
色合いも濃く、一見してカベルネ・ソーヴィニヨンを思わせましたが、より野性味がある、スモーキーな赤でした。実際、シンプルに美味しい! イタリアワインはキャンティにしてもバローロにしても、どこか酸味が立っていてどこか構えてしまうものも多いのですが、このタウラジに関してはボディがあり、甘い後味は独特の余韻があって、また飲みたい! と思うワインです。ラムのローストなどと一緒に飲んだのですが、イタリアワインだけあって、素材の味を生かした食事には申し分なく相性が良いみたいです。
何はともあれ、「タウラジ」というネーミングが面白いですね。また、品種の「アリアニコ」もこの地方独特のものでユニーク。いかにも「試験に出そうな」ワインであります。アリアニコの語源は、ギリシャを意味する「エレニコ」、もしくはブドウを意味するギリシャ語「エイラニコス」とされており、いずれにしても前述の「グレコ・ディ・トゥーフォ」同様、ギリシャに関係の深いカンパーニャならではの品種です。
実際、南イタリアはローマ帝国における銘醸地として栄え、中世から近世にかけてナポリ王国のもと繁栄を極めていましたが、ナポレオンに蹂躙された後、1860年のイタリア統一によりその富を剥奪され、上質なブドウも北イタリアへブレンド用に買い取られたといいます。トスカーナのキャンティも、ヴェネトのアマローネも南イタリアのカンパーニャやバジリカータのブドウなしには成り立たなかったとされています。
温暖な土地では野性味が出過ぎるアリアニコ種も、標高400mで石灰岩土壌の多いタウラジでは、凝縮度があってかつ気品もある極上の赤ワインになります。高価でクリスマスや記念日に飲むワインだったタウラジも、92年にDOCGに昇格してから輸出量
が伸び、今では生産量の6割が輸出となっているとのこと。いずれにしても、注目を浴び始めたのは最近のことなので、これからが楽しみな生産地。カンパーニャだけで124種もあるブドウ品種、その中にはまだまだ隠れた実力を備えたものがあるような気がします。