「シャトー・ムートン」2003年
あの五大シャトーの一つ、「シャトー・ムートン・ロートシルト」は、かのロスチャイルド家が購入する前は当然ながら「シャトー・ムートン」として知られていた……ということで、通
常「ムートン」といえば絵画ラベルで有名なあれですね、ということになるわけなんですが、何と全く同じ名前の違うワインが、しかもボルドーにあると聞けば、「何だ、それは?」と思わず問いただしてしまうに違いありません。
絵画ラベルならぬ「M」マークのラベルということで、価格も二千円台。「なるほど、なんちゃってムートンな奴ですね」などと軽い気持ちで試飲したら、これが意外としっかり者。2003年とかなり若いビンテージだからということもありますが、香りの強さといい、ふくらみのあるボディといい、極めてコストパフォーマンスの高い一品でありました。
ボルドー・シュペリエールに格付けされ、ポムロルの名門シャトーのシャトー・ラ・クロワ・サン・ジョルジュのオーナーの息子であるジャン・フィリップ・ジャノーが1997年から購入し管理しているとのこと。キャプシュールやラベルには、ラ・クロワ・サン・ジョルジュやシャンブルンやル・コンセイエと同様、十字のマークが入っています。名前の「ムートン」は、羊のムートンからではなく、MOTTE(塊・小丘)が名前の由来となっていて、しかもかのシャトー・ムートン・ロートシルトよりも古くからあったというから驚きです。メルロ70%にカベルネ・フランとプティ・ヴェルドを加えた、いかにもボルドーらしいブレンドですが、なめらかでそれでいてしっかりした余韻のあるところはさすがであります。ちなみに、この「M」のマーク、毎年色が変わるらしく、ネットで探してみたら2002年物は緑色になっていました。
お手頃価格で、しかも結構楽しめるワインとなれば、当然もっと話題になってもいいはず。たとえ古くからあっても、商標登録の方はどうなってるのか分からないので、もしかしたら圧力がかかって名前を変えなくちゃならないかも。こりゃ早めに押さえておかないと手に入らなくなるかも知れないなあ。