「モンタルベラ・ルケ・ディ・カスタニョーレ・モンフェラート・ラチェント」2008年
10年以上前にワイン・アドバイザー資格試験に挑戦した時は、イタリアの最高格付DOCGは21種類。まあまあノート1ページで収まる程度の内容で、暗記できないこともないレベルでした。
ところが今や、ワインを教える立場になって、2012年版テキストを開くと、今やDOCGの数は72種類。一体いつのまにこんなに増えたんだ……? そもそもDOCもDOCGもDOPに統一されて、覚える必要もなくなるんじゃと思っていたのに。実際には、DOPもDOCGも両方の表記が認められるとのことで、今後もDOCGは増え続ける模様。ボルドー・メドックの格付が60アイテムで固定されているというのに、延々毎年表を追加していかねばならないのだろうか。しかもイタリアは必ずしも格付と一般の評価が連動していないのであります。メドック格付の1級の評価は、ビンテージによって値段は変わってもほぼ不動、たとえ「バルメ」や「モンローズ」が1級並と言われても、1級格付の「ラフィット」「マルゴー」「ラトゥール」「ムートン」の別格扱いは変わらないようです。しかし、DOCGの「キャンティ」や「バローロ」は、必ずしも特別扱いを意味してはおらず、むしろ個々の畑も生産者も無視した一律の銘柄付けなので、心ある生産者ほどDOCGの名称を避けたがったりするわけです。
というわけで色々と問題のあるDOCG、2010年から2011年にかけて、DOCGに昇格したピエモンテ州のワインはといえば…。
ドルチェット・ディ・ディアーノ・ダルバ Dolcetto di Diano d'Alba
ルケ・ディ・カスタニョーレ・モンフェラート Ruche di Castagnole Monferrato
エアバルーチェ・ディ・カルーソ Erbaluce di Caluso
アルタ・ランガ Alta Langa
ルケもエアバルーチェも品種名ですが、正直どちらも今まで見たことがない…というわけで、これはもう少しずつでも飲んで覚えるしか……と思って購入したのが、この「モンタルベラ・ルケ・ディ・カスタニョーレ・モンフェラート・ラチェント」。たまたまお店で見かけたのですが、1本5,000円という価格が妥当なのかどうかもピンと来ない有様。後からネットで検索してみると…。
「ガヤもオルネライアも真っ青!」「頂点を極めた1本!」「ルカ・マローニ2010年版で最高得点の98点を獲得!」と、なかなか景気の良いあおり文句が満載。その一方で、個人のブログの中には、「バローロ並みとか言われても、飲んでみるといやいやとてもとても……」等々、必ずしも肯定的な意見ばかりでもないようです。ただ、「非常に変わった、花のような香り」という表現は、実際に飲んだ人達が多くコメントしていました。
というわけで、買ったその日にさっそく開けてみました。色はやや明るめの輝きのある赤紫色、そして香りは…これは確かに個性的。まさに「白い花の香り」…。白品種ヴィオニエを思わせる風味。実際、目を閉じて香りだけ嗅ぐと、赤ワインとは思わないのでは……? マスカットやライチなど、甘味があり、酸味は控えめな果実の香りを想起させますが、味わいはむしろ苦味も酸味もある真っ当な赤ワインで、香りと味のギャップが実に印象的。
実は同席された方々にはブラインドで飲んでもらったのですが、イタリア産と明かしても、やはり意見は分かれたのでした。バルベーラを思わせるとして、ピエモンテ州と答えた方もいましたが、やはりこれは難しいところ。その素性を推測するのは至難の業でしょう。造り手のモンタルベラは、このルケに惚れ込んで、所有畑の5割以上に植えているとのことですが、実際面白く個性的なことは間違いありません。他のDOCG新メンバーもテイスティングしてみたくなりました。