「シャトー・オーゾンヌ」88年



 「オーゾンヌ」という名前は、江川卓氏の本じゃないけれど大損ぬ ?(「ぬ」ってなんだ……「ぬ」って……)」 と聞こえないこともないので逆の意味で印象に残りやすいと思うんだけど、なかなか売っているのをみたことがないですね。これともう一つ「シャトー・シュヴァル・ブラン」がサンテミリオン地区では「第一級特A」となっているんだけど、「シュヴァル・ブラン」が年間12万本生産されているのに対し、「オーゾンヌ」は約2万本。その分やはり希少価値があるかな? ちなみに「オーゾンヌ」とは、その地方にブドウ園を所有していたという古代ローマの詩人アウソニウスに由来するのだそうです。
 「シャトー・フィジャック」「シャトー・カノン」といった、サンテミリオンのどちらかというとメルローを使用したコクのある赤からハマった私としては、飲む前から「きっと私好みの味に違いない」と決めつけていたこともあって、五つ星の88年物を意外と手の届く価格で買えた時は思い切って二本購入してしまいました。その少し前に、「オーゾンヌ」と「シュヴァル・ブラン」の94年物の有料比較テイスティングを試したことがあったんですが、その時のメモによると「シュヴァルブラン:色は明るめ、香りはやや樽っぽい、渋味ややあり」に対し「オーゾンヌ:色はより濃い、マゼンダ色強い、香りに葡萄の皮のニュアンスあり、口当たりは柔らかい」とコメントしており、「オーゾンヌ」の方が好みと判断。調べてみると、「オーゾンヌ」がメルロー60%、カベルネ・フラン40%であるのに対し、「シュヴァル・ブラン」がカベルネ・フラン60%、メルロー40%だそうですから、やっぱりこっちの方が柔らかいのかな、と勝手に納得したりして。白地に金文字の「シュヴァル・ブラン」と比べて、「オーゾンヌ」のクリーム色の上に茶文字で描かれたラベルはシンプルで好感が持てたし。
 さて、結局一本は実家で新年に開けちゃったわけですが、いざデカンテーションしようとしたら肝心のデカンターがあんまし使っていなかったらしくいまいち汚れている……いいやそのままボトルから注いじゃえ、と思ったのか運の尽き、思ったより澱が多く、後半かなりグラスに黒い粒々が……。しかし味の方は実際想像以上に満足のいくものでした。華やかでどこか甘い香り、苦渋味は控えめで非常にまろやか、舌触りも柔らかくボルドータイプのワインの愉しみが全部詰まっているという感じ。 さすが私の好きなサンテミリオンの特Aワインだけのことはある、などと一人悦に入っていたりして。



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