「シヤトー・ラ・ラギューヌ」1975年


 


 1〜2ヶ月おきに定例の開催となっているWINESCHOLA TEAM2000のワイン会。今回は六本木の「ル・ブルギニヨン」にボルドーワインのビンテージ物を持ち込んでの企画。ブルゴーニュワインと料理がメインのお店であえてボルドーを飲むというのがミソ
 最初のシャンパーニュはヴーヴ・クリコのイエローラベルで。さわやかな酸味が心地よい、スタンダードながら優しい口当たりの文字通 り「ほっとさせてくれる」シャンパーニュであります。
 前菜はトマトのゼリーをあしらったホワイトアスパラガス。今年はわりと暖冬のようで、もうフランスでもホワイトアスパラが採れるのだとか。柔らかく煮たホワイトアスパラには、透明なのにしっかりとトマトの味がするゼリーが寄せられてるのですが、何でもトマトを煮出して色が分離した後の透明部分だけを取りだして使うのだそうです。この間自宅でも買ってきたホワイトアスパラを塩と砂糖とレモン汁で煮てみたんだけど、スジが残ってあんまり美味しいものではありませんでした。どうもなんかコツがあるみたいなんだけど……。
   ←トマトのゼリー添えホワイトアスパラガス 殆ど白くぼけてて見えないけど……。
 最初の白ワインは、「ル・ブルギニヨン」に敬意を表して(?)ブルゴーニュの白「ドメーヌ・ジェラール・シャヴィ・エ・フィス ピュリニー・モンラッシェ プルミエ・クリュ・レ・フォラティエール1999年」。空けたばかりのコルクを少し嗅いだだけで甘い香りが感じられ、樽香をかなり効かせている感じでしたが、それでも結構なじんでいて決して嫌みではない感じでした。柔らかで酸も穏やか。
 二皿目はウズラのロースト。そのまま手づかみで食べられるようフィンガーボールが一緒に出されました。食べ物は元々手づかみが基本。カトリーヌ・ド・メディチがフランスに嫁いだ時にフォークを持ってきたと言われていますが、それより時代の下ったルイ16世も基本的には料理を手づかみで食べていたそうです。今だにインドとかでも手で食べる習慣が根強く残っているのを見ると、基本的に触感も食感にとって重要な要素だということでしょうか。素材の手触りも味のうちというか……。
 持ち込まれた錚々たるボルドーの銘酒「シャトー・オーゾンヌ」「シャトー・ラトゥール」「シャトー・デュクリュ・ボーカイユ」「シャトー・ラ・ラギューヌ」……いずれも主役を張れる堂々とした銘柄ばかりで、しかも良いビンテージの物ばかり。一度に飲むには勿体ないとの声も。
 どれから飲むべきか迷うところですが、まずは「シャトー・オーゾンヌ1986年」から。「まだ若いかも」という判断なのですが、これが筆頭に来るところが既に……。メルロ60%+カベルネ・フラン40%というシノニムと、下層土壌に石灰質を多く含む粘土質の土壌とが、このワインに独特の深い奥行きを与えているようで、以前グラス・テイスティングでサンテミリオンのもう一つの巨頭「シャトー・シュヴァル・ブラン」と比べて飲んだことがあるのですが、きびきびして固いイメージのシュヴァル・ブランに対して、オーゾンヌはグラマラスで芳醇な印象がありました。濃い赤紫色はまだまだ熟成途中にあることを感じさせますが、若干のムスク香を含んだ複雑な香りはやはり特級クラスのメルロ主体のボルドーワインならではのもの。
 三皿目はあいなめのポワレ。赤ワインと合わせることを考慮して赤ワインソースで。柔らかく火を通 したナスの上に切り身が乗せられていて、さらにその上に菜の花が。あまりにもこのナスが柔らかくて美味しいので、どうやって調理したのか聞いたところ、油でさっと揚げて皮を剥いてあるのだとか。確かに普通 に焼いたのではばさばさになるし、バターで炒めると美味しいけれどもっとくたくたになるし、茹でるともっとどろどろになってしまうし……。
   ←あいなめのポワレ
 続いては「シャトー・ラ・ラギューヌ1975年」のマグナムボトル。「ラ・ラギューヌ」は18世紀末から代々受け継がれてきたブドウ園で、さまざまな紆余曲折を経て、1950年代に一時は4ha近くまで縮小し荒廃したものの、シヤンパーニュ・アヤラに売却されその資金力を背景に復活したワイン。「サン・テステフ」「ポイヤック」「マルゴー」「サン・ジュリアン」といったメドックの有名な村に属さないながらも、オー・メドックの第三級に格付けされていることで、ある意味試験問題対策で覚えさせられた銘柄ではあるのですが、実際に飲むのはこれが初めて。三十年近い熟成を経ているだけあって無駄 な要素がなく、それでいて果実味を感じさせる非常にしっかりした骨格の「一本筋の通 った」ワインという印象を受けました。さらに続けて「シャトー・デュクリュ・ボーカイユ1975年」。サン・ジュリアンの格付け2級の銘酒。香りが非常に特徴的。最初は少し狐臭的な要素が感じられたのですが、しばらく置くとなじんできてバランスが良くなってきました。同じビンテージながら、マグナムということもあるのでしょうか、味わいの点では「ラ・ラギューヌ」の方に少し部があるように思われました。
  今回Oさんの持ち込んだワインは同じく「シャトー・ラ・ラギューヌ1970年」。自らのバースデイ・ビンテージとして贈られた物なのだそうで、そのありがたい一本を皆で味わうことに。75年物のマグナムと比べても殆ど遜色ない味わい。非常に長命なワインだなあとあらためて実感。言われてみればより角が取れて果 実香がドライフルーツのように落ち着いているように感じるものの、ブラインドで飲んだらそこまで違いが分かるかどうか。「ラ・ラギューヌ」に関しては、「ボルドー・ワイン・セレクション」(小学館)でも「カシス、プラム、サクランボの香りが、焦がしたオークの過度にならない香りをベースにして匂い立ってくるだろう。それらが洗練されるには、10年という年月が必要だが、時には最高のレベルを、25年間も維持することがある」と、手放しの褒めようであります。
 四皿目は「子豚のスペアリブ」。骨付きなのですが、肉はするりと骨から抜け落ちるほど柔らかくなっていました。最近どうしても鶏肉や牛肉を敬遠してしまうためか、自然と豚肉を料理したり食べたりすることが増えましたが、確かにひと手間加えると、豚肉って驚くほど甘味が出て美味いものだなあとあらためて感じますね。ある意味白にも赤にも合います。このスペアリブもおそらくは酒で煮込んでいるに違いない、とか思ったりして。
 赤ワインのしめくくりは「シャトー・ラトゥール1982年」で。ここぞとばかり真打ち登場、であります。カベルネ・ソーヴィニヨン75%、厚い砂礫土壌から生まれた正統派の赤ワインは、当然ながらまだまだ飲むには早い、と言われかねないくらいしっかりしていて、まさに身が引き締まる感じ。香りも複雑で、ミネラル感を感じさせる味わいも重量 級のメドック・ポイヤックならではのものでした。
 食後にはバニラ・アイスとアルマニャックのヴァン・ド・リキュール。「VIN DE LIQUERU A L'AMNAGNAC DOMAINE DE LACQUY COMTE J.V.DE BOISSESON」とラベルには書かれてました。ヴァン・ド・リキュール(VdL)は、果 汁にアルコールを添加して作る、いわゆるリキュールワイン。発酵途中にアルコールを添加するヴァン・ドゥー・ナチュレル(VDN)とよく間違える……というかあまりなじみがないのでいまだに良く分かっていないのが正直なところですが。琥珀色をしていて、みかけはウイスキーみたいな感じなのですが、非常に甘味があってある意味ブランデーに近いデザートワインといったところ。とは言うものの、この段階まで来ると相当アルコールが回っていて(勿体ないものだからボトルに残ってる分も頂いてしまいましたので)、微妙な味わいはあまり記憶に残っていないのが残念。
                           
 ブルゴーニュ、ローヌ、イタリアDOCG、ボルドー……と続いたワイン会、次回のテーマはロワール。白もあり赤もあり、辛口もあれば甘口もありと、ある意味かなりのバリエーションが期待できそうです。  



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