「シャトー・グリュオー・ラローズ」1975年



 年始に持ち込みワイン会を、ということで、Mさんのワインエキスパート合格祝いと称して開催しましたいろいろ候補も挙げましたが、最終的に5つの銘柄を味わいました。ある程度ヴィンテージを経たものを飲もうということになり、事前に2、3週間前に預かり立てて置いたのですが、偶然にも1996年が5本中3本に…!

 「シャンパーニュ・ヴーヴ・フルニ1996年」
 「ドメーヌ・ルイ・シャーヴ・エルミタージュ・ブラン1996年」
 「ニコラ・ポテル・ムルソー・シャルム1981年」
 「ドメーヌ・ルブルソー・クロ・ド・ヴージョ1996年」
 「シャトー・グリュオー・ラローズ1975年」


 1本目の「ヴーヴ・フルニ」は、同じ生産者の「キュヴェ・R」がとても美味しかったので、合わせて購入したヴィンテージ物。1990年代の中では優良とされています。最初の乾杯には最適な味わい。20年近い熟成を経ていながら、まだまだ現役、というかフレッシュ&フルーティという印象。濃密さならもしかしたら「キュヴェ・R」の方に軍配が上がるかも知れませんが、バランスと余韻の長さはさすがにヴィンテージ物ならではのものでした。チーズや生ハム、カラスミなどと共に。

 2本目はシャーヴのエルミタージュの白で、同じく1996年物。色は黄金色で、甘味のある香りはやはりローヌならではのもの。酸は控えめですが、アルコール感は高く非常に濃密な味わいで、花のような香りと非常にマッチしていました。

 3本目はニコラ・ポテルの「ムルソー」、33年熟成ということで、ラベルはきれいでしたがコルクはかなり厳しい状態。パニエに寝かせて慎重にソムリエナイフを入れましたが、真ん中当たりでコルクが崩れてしまいました。コルクの破片が中に落ちてはアウトなので、瓶内に残っている、ボトルの壁面にこびりついたコルクを少しずつソムリエナイフのスクリューの先で引っ張り出しました。何とか破片を落とさずに抜栓。古酒の抜栓は慣れているとは言えないので、かなりヒヤヒヤしました。
 さてコルクはきわどかったものの、中身の方はありがたいことに全く健全! 甘いバニラとグレープフルーツの香りを持ちつつ、ミネラル感と酸のしっかりした味わいは、むしろまだ若いと感じられたほどでした。これには是非ともアメリケーヌソースを、ということで、久しぶりに「魚介のミルフィーユ」を造りました。買ってきたパイ生地をオーブンで焼く間に魚介をソテー、海老の殻は別にフランベして、トマトソースとクリームを加えてソースへ。まさに教科書通りではありますが、文句なしの相性が楽しめました。

 4本目はルブルソーの「クロ・ド・ヴージョ」、1996年ということでまさに申し分ないバランス! 熟成ブルゴーニュ特有のムスク香がベリー香と合わさってとても風味豊かであります。料理と楽しむには理想的な熟成具合でした! 合わせたのはエゾジカのロースト。たまたま肉が売っていたので、牛しゃぶを巻いてグリルで15分程焼いて、ブルーベリーとアモンティリャードのソースで。初めて料理したので焼き加減は何とも微妙でしたが、固すぎるということはなかったかなと。

 5本目は「シャトー・グリュオー・ラローズ1975年」。15年近く前に大塚のスーパーで購入したもの。正直なところ買った時のことはよく憶えていないので、ぼろぼろになったラベルも元からそうだったのか自信ないのですが、さてさて…コルクを確認してみると、81年のムルソー同様やや汚れているものの、同じようにパニエに寝かせてゆっくりとソムリエナイフで引き抜いてみると、長さがある分なんとか折れずに取り出すことができました。やれやれ。
 「シャトー・グリュオー・ラローズ」といえば、しっかりしたムスク香の強いボルドーというイメージが自分にはあるのですが、この1975年物も、昨年末飲んだ1920年物に比べると、かなりボルドーらしいと言うか、熟成感のある、それでいてお肉ともしっかり合うような動物風味のある赤ワインでした。まだまだ力強いし、料理ともしっかり合うポテンシャルを感じるのです。やはり「ワインの王、王のワイン(LE ROI DES VINS LE VIN DES ROIS)」と名乗るだけのことはあります! これには私の十八番でもある「ラムのグリーンソース」で。とはいうものの正月のためかソースの材料となるクレソンが見つからず、バジルとルッコラで造りました。ややパンチは弱まるものの、熟成ボルドーには逆にマッチしたのかも。骨付きラムをそのままフライパンでローストし、グリーンソースを合わせる、シンプルながらボルドーワインとは絶対の相性の良さを誇る一皿であります。今回もしっかりはまったと思うのですが…。

 
 ↑左から、5つのボトル、魚介のミルフィーユ、ラムのグリーンソース、コルク(崩れたのがムルソーのコルク、真っ赤に染まっているのがグリュオー・ラローズのコルク。)



◆トップページに戻る。
◆「宇都宮斉作品集紹介」のコーナーへ。
◆「宇都宮斉プロフィール」のコーナーへ。
◆「一杯のお酒でくつろごう」のコーナーへ。
◆「漫画・映画・小説・その他もろもろ」のコーナーへ戻る。
◆「オリジナル・イラスト」のコーナーへ。
◆「短編小説」のコーナーへ。