「アリエル・カベルネ・ソーヴィニヨン」2000年




 「ノンアルコール・ワイン? なんでまたそんなもの……」今まではそうでした。
 実際、自分はアルコールが飲めない体質ではないので、無理してそういうものを買う必要もないわけで……。実際、飲んだことがあるという人に言わせると……「単なる甘くなくて苦いグレープジュースだったよ」ということらしいし。ワインの香りも味もアルコールあってこそのもの。香りの成分はアルコールによってワインに溶け込み、アルコールの揮発によってグラスの中に広がる。しかもぶどうの中の糖分がアルコールに変化したわけだから、そこからアルコールを抜き取ってしまったら本来持っていた成分の殆どが失われることになるし……。
 ただ気にはなっていました。以前テレビ東京で放送されていた田崎真也のレギュラー番組「わいん好き」に、一度だけこの「ノンアルコールワイン」が紹介されたことがあり、そこではしきりに「ワインと変わらない!」と言っていたのでした。果 たしてアルコールを奪われたワインが、同じ風味を持ちこたえることなどできるものだろうか……。
 日本人、というかモンゴロイドの半分は、アルコールの分解に必要な「アルデヒド脱水素酵素」の一部が欠けていてどちらかというと下戸なのだそうだ。この体質は欧米人には殆ど見られないそうだから、なるほど日本人のアルコール消費量 は欧米諸国には所詮及ばないし、逆に酔っ払っても大目に見られる訳だ。向こうの国では人前で酔っ払うなんてもっての他であります。もっとも、最近では日本でも道路交通 法の関係で飲酒運転の取り締まりは厳しくなる傾向にあるようですけど。
 さてノンアルコールビールもノンアルコールワインも、そのメッカはアメリカであります。ノンアルコールビールはそもそも長距離トラックの運転手向けに開発されたそうですが、なにしろ戦前には禁酒法が定められたこともあるお国柄、ノンカフェインやノンアルコールに関しては結構こだわりがあるみたい。やはり清教徒が渡ってできた国だからかしら? それにしても半分が下戸の国ならその類いのものがもっとあってもいいのではないかと思うのだけれど……。
 今回クリスマスパーティに来てくれた知人の一人がアルコールがダメな人なので、それならばと買ってみたのがこれ、「アリエル・カベルネ・ソーヴィニヨン」。先の「わいん好き」にも紹介されていたカリフォルニア産のノンアルコールワインであります。
 ノンアルコールワインとは言え、見かけは全くワインと変わらず、しっかりと緑色のボトルにコルクで栓をしてあります。「カベルネ・ソーヴィニヨン」と堂々と品種をうたっているところも普通 のワインと変わらないし。そこであえてノンアルコールとは言わずに飲んでもらったのだけれど、すぐには分からなかったみたい。なるほど確かに香りも味も控えめ、というかどこか物足りないのだけれど、ワインの持つフィネスとでもいうべき風味はそれなりに残されていて、必ずしも「苦いグレープジュース」とは言えないかも。何人かで集まれば中には飲めない人もいるだろうし、続けざまに飲んだ時の中休みとしても結構使える。これからはいざというときのためにノンアルコールワインをストックしておくことも必要になるかもなあ、と思ったのでした。
 



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