「マウント・エドワード」2002


 


 昨年10月に「プロヴィダンス」の試飲会があった時、「来年1月にはぜひニュージーランドへ!」と言ったものの、所々の仕事の都合で断念せざるを得ず、結局ツアーに参加した方々のみやげ話を聞くしかありませんでした。そんなこんなで、六本木「小田島」で行われた、ニュージーランドの生産者、マウント・エドワードの試飲会に参加したのでした。
 マウント・エドワードは ニュージーランドの南島、セントラル・オタゴにあり、クイーンズタウンの25km東に 位置するギブストンのワイン生産者。アラン・ブラディ、ダンカン・フォーシス、ジョン・ブキャナンの3名がワイン造りに 取り組んでいます。
 今回は生産者のダンカン・フォーシス氏を迎えての試飲会。職場からの帰りだったので、デジカメを持っていかなかったのが悔やまれます。
 用意されたワインは以下の通り。
 ・Mount Edward RIESLING 2005「マウント・エドワード・リースリング05年」
 ・Mount Edward PINOT NOIR 2002「マウント・エドワード・ピノ・ノワール02年」
 ・Mount Edward PINOT NOIR 2003「マウント・エドワード・ピノ・ノワール03年」
 ・Mount Edward PINOT NOIR 2004「マウント・エドワード・ピノ・ノワール04年」
 ・Mount Edward PINOT NOIR Susan's Vineyard 2004「マウント・エドワード・ピノ・ノワール・スーザン・ヴィンヤード04年」

 ニュージーランドの中で最も代表的なピノ・ノワールの生産地はオタゴ……丁度一年前くらいにワインセミナーで教わったことでしたが、それは他のニュージーランドの生産地が海洋性気候であるのに対し、ここが山に囲まれた内陸性気候で、昼夜の寒暖の差が激しく、ブルゴーニュの気候に近いからなのだそうです。ブルゴーニュとの違いは、より雨が少ないこと(ブルゴーニュの約1/3)、そしてあまり石灰質を含まないことで、ブルゴーニュのミネラル感の強いワインに対し、ニュージーランドはよりふくよかなスタイルのワインとなります。
 最初はシャンパーニュから。これはフランス物(銘柄分からず)。お料理は小皿でウド、アンコウの肝、ワカサギの唐揚げ、タラノメの天ぷらなど。
 そしてリースリング05年。昨年3月に収穫されたばかり。元々0.23haしかない小さい畑で作っているので、生産量 はわずか30〜50ケースとか。アルコール8.5%。明るい黄色で、香りはミネラル香を感じさせるものの、意外と果 実香は控えめ。さすがに若すぎるのかしら? 甘味が強く、味わい深いワイン。この土地はシャルドネを作るには寒すぎるのだとか。
 そして、ピノ・ノワール02年。通常ワインは熟成を経た物は後回しにしますが、「プロヴィダンス」の時もそうだけど新しい方を後回し。南半球は逆だから、というのはダンカンさん流のジョークで、熟成したワインの繊細さを最初に味わって欲しいとの配慮から。02年は暑い年で、香りも味もしっかりしたタイプとか。グラスの底が見える明るい透明なルビー色で、強いベリー香が印象的。アタックは強く、ミネラル感もあり、タンニンがしっかりしていて余韻がとても長い。ギブストンにはタイムが多く植わっていて、ワインにもそのタイムや野草の香りがあるのだそうです。そう言われてみると、どこか動物的なニュアンスのあるブルゴーニュに比べ、こちらはいかにも植物系。
 お食事は何故かここでホタルイカの赤出し味噌汁が……。日本酒はともかく、ピノ・ノワールに合うのかしら? と思ったのですが、さすが和食とワインの相性を20-30年近く研究している「小田島」であります。何故か意外と合ってしまいました。ふ、不思議だ……。
 ピノ・ノワール03年。02年と比べるとちょっと硬い印象。でもダンカン・フォーシス氏に言わせると、より果 実味があるのだそうです。ちょっと南に位置するクロンウェルの畑の果実が混じるからだとか。お料理はフォアグラと大根の煮物。味付けはあっさりめで、しつこくないところがかえってピノには合うみたい。同席したNさんの話では、大根を醤油で煮てからバターで炒めると非常にピノと合うのだとか。今度試してみよう。そしてスズキとマグロの刺身、豆腐と大根おろし。刺身と赤ワイン……? 普通 は避ける組み合わせですが、何故かまったく生臭さを感じさせずすんなりと酒が進む。
 ピノ・ノワール04年。気温が低かったため、いつもの半分の収穫量しか確保できなかった年だそうな。さすがにまだ若い。ダンカンさん曰く「まだティーン・エイジャー。話しかけてくるけれど、意味をなさない。あと三年は必要」 だとか。お料理は、中にズッキーニなどの西洋野菜を入れた薩摩揚げと、シメジやタケノコの入ったかぶら蒸し。僅かに乗せられたユズの香りと酸味がワインとの相性を増して居る感じ。
 基本的に魚介中心の和食メニューなのに、赤ワインとケンカしないどころか、すんなりなじんでくるのはやはり「小田島」さんならではでしょう。普通 はこうはいかないと思うんですが。
 最後にスーザン・ヴィンヤード04年。スーザン・ヴィンヤードの畑は0.4haしかなく、そもそも一樽(225L)しか作られない希少品ですが、さすがに個性的。ムスク香があり、酸味も強く、上述の通 常品の04年とはかなり印象が異ります。お料理はニュージーランド産ラムの煮込み、トリュフ添え。マウント・エドワードのピノは何と合うのかとの質問に、ダンカンさんの答えはラムやウサギなどの繊細な肉。確かにどちらもニュージーランドでメインとなりそうな食材ですが、ラムならボルドーのカベルネ、牛肉ならブルゴーニュのピノと決めつけていたところのある私にとっては、妙に感心してしまったのでした。確かにニュージーランドならラムにピノの組み合わせは自然なはず。世界は広いってことかな。



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