「シャトー・ネナン」62年



 昨年の秋、銀座に新しいワインの店、エノテカができたので、開店セールに行ったのですが、並べてあった数々の有名ワインの中に、見慣れないラベルが。ビンテージは何と62年。とにかく置いてある物の中では一番古い。私が生まれる前のワインであります。
 ボルドータイプのワインは寝かせた方がうまいと言うし、ポムロールは結構濃いタイプのワインを作る所だし……しかし61年がグレートビンテージというのは聞いたことがあるけど、62年はどうだったっけ……。お店の人に聞くと、「このビンテージでこの値段なら……でももう寿命でしょう。すぐ開けた方がいいくらいではないでしょうか。私も試してみたいとはおもうのですがね……」うーん、今一つ頼りないお言葉。五大シャトークラスなら、40年代でも飲み頃でしょうが、大抵のワインはそんなには保たないし。しかし、興味は津々。はずれても話の種にはなるだろうと思って購入。
 もったいないとも思いつつ、大勢で開けたとき失敗だったらということを考えて、四人くらいの集まりの時についに抜栓。慎重にデカンテーションする。うーんレンガ色。心なしか濁っているようにも……。やや不安。でも香りは良い。フルーティーな感じは残っている。口に含むと、エグ味や雑味はない……でもコクも足りないような……。ラベルを隠して自由意見を求める。「うーん、分からない……」「カベルネじゃないね……メルローかな」「古くはないね……95年か96年」「スペイン物ならもう少し雑味がありそう……アルゼンチンとか?」
 フランスのビンテージ物と思った人はいなかったです。62年のボルドーと聞いて、そんなことなら前もって言ってくれと思わず非難の声あり。その前に「シャサーニュ・モンラッシュ」という白ワインにしては結構濃いタイプの物を空けたばかりだったので、余計に微妙なニュアンスは分かりづらかったかも。白の次に赤、というパターンにこだわり過ぎたかな。味わい的には、少々盛りを過ぎてしまったかな、という印象は否めないなあ。でもそんなに古い物を飲み慣れている訳じゃないし、こりゃ難しいところだ。37年前の物がおいしく飲めるというだけでも、考えれば凄いことですけど。



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