「シャトー・カントナック・ブラウン」94年
ワインを何か一つしか選べないとなると、どーしてもボルドータイプになってしまう。濃くて渋目の、それでいて広がりのある香りのある物が好きなので、やはり白やブルゴーニュ、シャンパーニュだといつでもという訳にはいかないし、イタリアやスペインの個性的な物も好きなんだけど飲みごたえという点では当たりはずれも多く、そういう意味ではボルドーのシャトー物が一番安心できるのでした。
大学に入りたての頃は白から入ったせいもあって、まずは白ワイン、だったんだけど、醸造学の講義かなんかで色々と利き酒をやった時に、ある先輩から「今に赤が好きになるって」と断定されたのをよく覚えています。(その先輩のことはすっかり忘れましたが……)
という訳で、場所は浅草の麦とろ、何でも良いから一本選んで、と言われた時には、迷わずボルドーの上級品を指名してしまったのでした。相手に払って貰うんだからちょっとは遠慮して……という常識は酒の席にいる私には通用しない。「シャトー・カントナック・ブラウン94年」、12000円。結局調子に乗って二本も空けたという……。
「カントナック・ブラウン」は「キルヴァン」や「パルメ」や「ジスクール」といった名品と同様、マルゴー村の第三特級で、第一特級の「シャトー・マルゴー」に次ぐ位置付け。実際には当然第二特級が間にあって、本には「ローザン・セグラ」とか「ローザン・セグラ」とかあまり聞いたことのない銘柄が載っているんですが、売っているのを見たことがないし、百年以上前の格付けではあまり現在では意味がないらしいです。実際、「パルメ」は殆ど味的に「マルゴー」と変わらないと個人的には思いますし。
さて、この「カントナック・ブラウン」ですが、かなり香りは強いのですが、色的にはややマルゴーやパルメと比べて明るめで、グラスの底が上から微かに見えるくらい。贅沢を言えば、味的にはやや濃厚さがもう少し欲しいかな、といった印象でした。もっともこれでもかなり重たい部類に入るんですけどね。