「シャトー・クリマン」89年



 昨今のワインブームは赤が主体で、しかも辛口が殆ど。というわけで白の甘口というのは時代に逆行している、ということになってしまうのでしょうが、どうも私の回りを見ても、たとえばドイツワインの甘い白が好き! という人は意外に多くて、ある意味で不思議な感じがしますね。甘くておいしい、はある意味当たり前だし。実際高級な貴腐ワインやポートはそこそこの値段もするけど、ジュースの甘さとは違った濃厚さとキレの良さがあります。
 今回の飲み会でも「赤はどうしてもだめ」という方がいたので、用意していたのがこのバルザックの貴腐ワイン「シャトー・クリマン」。貴腐ワインと言えば「シャトー・ディケム」という特別一級ワインがありますが、これを別格とすると、それ以外の銘柄は意外とそこそこの値段で買えますね。なかなか店には並んでいないけど。
 貴腐ワインはブドウに寄付金が……もとい貴腐菌(ボトリティス・シネレアというカビ)がとりつき、果皮に穴を開けるのでそこから水分が蒸発して濃縮されると共に、果実成分も貴腐菌の影響を受けて変質するので、非常に濃厚でかつ甘みの強いワインに仕上るというもの。
 さて今回の「シャトー・クリマン」ですが、ドイツの貴腐ワインと比べて大きく違うのはアルコール度数ですね。ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼはアルコールが6%位。残糖度が高いけど酸味もあるので全体としてはとてもさっぱりしています。一方ボルドーの貴腐ワイン、ソーテルヌやバルザックはアルコールが14%もある! 酔っ払うはずです。高いアルコールのおかげで香りもより華やかに、強く感じられ、これはもうやみつきになりそう。89年というビンテージも良かったのかも。ある本のビンテージチャートでは三重丸だったし。
 今回飲んだ五本のワインの中では、これが一番人気だったようです。実際、誰にでも安心しておすすめできるワインだと思うので、案外これからはこのタイプの物が静かにブームになるのでは……あ、でもそうなるとかえって手に入りにくくなるので困るな。
 この89年のクリマンは社販で安く買った物。あともう一本、エノテカの開店セールで買った73年物がセラーにあるけれど、うーん、いつ飲んだものやら……。



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