「トポロス・ジンファンデル」94年


 カリフォルニアのトポロス・ジンファンデル。どちらかというとかなり野生味の強い味のワインなので、お勧めとは言いがたいかも知れませんが、私にとってはなかなか忘れがたい一品となりました。
 今年の四月、私は舌の左三分の一を切り取る手術を受けました。一ヶ月の入院を終わり、 六月七日、まあそろそろお酒も飲んでも良いということになったので、私はいそいそと性懲りもなく新宿の洋酒のお店「やまや」に行ったのでした。すると偶然、その日はワインフェアとかで、ブラインド・テイスティングコーナーが設けられ、赤ワインのグラステイスティングを100円でやっていたのでした。対象はお店にあるワインのどれか。見事当てられたら商品を、ということなので、さっそく挑戦。
 なにしろこの店には1000近くの銘柄が置かれており、全部の品の飲用経験などあるわけがない。しかも舌を一部切られたばかりとあっては、まともに味覚が分かる訳がない。どうせ当たるはずもないと思いながらも、まあどうせ100円程度だし、ということで……。
 グラスを覗いて外観チェック。色はどちらかというと明るい。少なくともカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローではない。ピノ・ノワールか……? しかし香りが強い様な気がする。洗練されたと言うよりは、もっとブドウの皮的な、どこか野性的な感じ……どこかで飲んだ記憶がある。もしピノ・ノワールでなければ……。 ジンファンデル……「刑事コロンボ」の「別れのワイン」の中のセリフにも出てくるアメリカ産のブドウ品種。以前にこの「やまや」でも「トポロス」の物を買ったことがある。そこで「トポロス・ジンファンデル」と書いたのでした。
 次の日の夜、自宅に電話が。「おめでとうございます! 優勝です!」(電話の向こうでぱちぱちと手を叩く音あり)「トポロスのジンファンデル、正解です。良く分かりましたね!」 さっそくお店に行って、商品の「ガヤ・バルバレスコ」をいただき、写真を撮ってもらったのでした。まあ単にたまたま最近飲んでいたワインだったわけで、運が良かっただけだとは思いますが、飲料の開発の仕事をしているのに舌を手術して、もうダメなんじゃないかと落ち込んでいた矢先のことだったので、感激もひとしお。ワインのテイスティングは色と香りが決め手で、味は最後の確認のみと本にもあったけど、そう言われてみればそういうものかも知れません。



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